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ガリーボーイ・・・・・評価額1650円
2019年11月21日 (木) | 編集 |
インド人もラップが好き!


インド最大の都市、ムンバイのスラム街出身の青年ムラドが、ヒンディー語のラッパーとして才能を開花させる青春音楽映画。
日ごろから心に生じた想いをリリックとして書き留めていたムラドは、大学の音楽フェスで見事なラップパフォーマンスを見せたMCシェールと出会い、彼を音楽のメンターとして自分もラッパーとして活動を始めることになる。
目指すは、インドナンバーワンのラッパーを決めるフリースタイルラップのコンテスト。
描かれるのは、青春の熱情と閉塞、栄光と挫折、恋と音楽。
主人公の”ガリーボーイ”ムラドを「パドマーワト 女神の誕生」のランヴィール・シンが演じ、恋人サフィナにアーリヤー・バット、MCシェールにシッダーント・チャトルヴェーディー、彼らとコラボするアメリカ帰りのスカイに、「マルガリータで乾杯を!」が記憶に新しいカルキ・ケクラン。
ゾーヤー・アクタル監督は、このド直球な青春映画の枠組みに、インドの若者たちの置かれた社会状況を絡め、深みのあるヒューマンドラマを構築している。

ムンバイの貧民街ダラヴィに暮らすムラド(ランヴィール・シン)は、大学卒業を一年後に控えたヒップホップ好きの青年。
幼馴染で恋人のサフィナ(アーリヤー・バット)は、自分の診療所を開設することを目指し、医大に通っている。 
ある日、MCシェール(シッダーント・チャトルヴェーディー)のラップを見て感動したムラドは、フリースタイルのイベントへ参加しているシェールの元へ自分で書いたリリックを持ってゆく。
リリックは好評で、ムラドはラッパー”ガリーボーイ”として活動を始めることに。
動画投稿サイトを通じて、バークリー音楽院生のスカイ(カルキ・ケクラン)という女性からコラボのオファーを受けたムラドとシェールは、ムラドの住むタラヴィで新曲のMVを撮影する。
MVは瞬く間に人気となり、ガリーボーイの名は高まってゆくが、音楽活動を知った父からは叱責され、スカイとの仲を疑ったサフィナとも別れてしまう。
失意の中、来印するヒップホップ界の超大物、NAZのインド公演の前座を務めるラッパーのコンテストが迫っていた・・・・


タイトルの「ガリー」とは、ムラドの住む「路地裏」のこと。
先日公開された「ヒンディー・ミディアム」でも描かれていた、インドの格差・階級社会が重要な背景となっているのが特徴だ。
ムラドはインドでは少数派のムスリムの家庭に生まれ、決して経済的に豊かではないものの、大学には行かせてもらっていて、親には内緒で13歳から付き合っている医大生の恋人サフィナもいる。
ちなみに彼女、ムラドのことが超大好きだけど、やたら喧嘩っ早くて凶暴、インド版ラムちゃん的なキャラクターがかわいい。
スラムの悪友たちとはちょい悪な行動もして、それなりに青春を謳歌しているのだが、それでも自分の置かれた状況に疑念を募らせ、心には鬱屈とした想いが溜まってゆく。

金持ちのお抱え運転手として働く父のアフターブは抑圧的で、母のラズィアに無断で家に若い第二婦人を迎え入れる。
生活環境が狭小なこともあって、家族関係は常にギクシャク。
傷ついた母の気持ちに寄り添いたいムラドだったが、厳格な家長制度のもとでは父親に抗議することなど許されない。
そんな時に、アフターブがケガをしてムラドが代役を務めることになり、持てる者と持たざる者の差を目の当たりにすることになる。
たとえ大学を出ていても、マイノリティのムスリムへの求人は少ない。
医師免許をとって、自分の診療所を持ちたいという夢があるサフィナと違って、ムラドには大学を出た後のはっきりとした展望がないのだ。
使用人の子は孫子の代まで使用人、金持ちの子はずっと金持ちと、世代を超えて階級が固定化され、誰もが諦めてしまっている社会にあって、ラップはムラドの心に湧き上がる現状への反逆の狼煙

日々の生活に触発された、リリックのセンスは抜群。
MCシェールやアメリカのバークリー音楽院帰りの新しい仲間、スカイの力も借りて制作した新曲のMVはたちまち動画投稿サイトで大人気となるのだが、それはラップを退廃した音楽とみなす大人たちに、自分の活動が知られることを意味する。
ムラドが、インドのラップスター”ガリーボーイ”になる道には、無理解な親との関係をはじめとした家庭事情から、安定か夢かの将来の進路、サフィナとスカイとの恋愛三角関係まで、次から次へとハードルが立ちはだかってくるのだ。
本作のストーリーは、ムンバイ出身のラッパー、ネイジーとディヴィンの実話をモチーフにしていて、キャラクターはかなり脚色されているようだが、ムラドがネイジーでMCシェールがディヴィンにあたる。
映画と同じように動画がきっかけでブレイクしたネイジーは、スターになった後も家族の反対に対応するために、2018年にしばらく音楽活動を休止していたというのだから、親の時代には存在していないかった表現を、新しい芸術として理解してもらうのは大変なのだな。

ムラドの葛藤はてんこ盛りゆえ、基本シンプルな内容も非常にドラマチック。
彼自身が抱えている問題以外にも、一夫多妻制が作り出す不和、女性蔑視の風潮、スラム街に住む子供の貧困、世代間の価値観の分断など、様々な問題が綿密に描きこまれている。

13億もの人間が暮らす世界有数の多民族、多文化社会ゆえに、複雑化する問題がリソースとなり、物語を内容豊かにしているのは皮肉だ。


だからこそムラドは、そんな社会問題を盛り込んでラップを創るのだが、劇中音楽も非常に充実。

ヒンディー語とラップが、こんなに合うとは思わなかったけど、何しろミュージカル大国だもんね。
中盤のタラヴィでロケしたMCシェールとスカイとのコラボMV「Mere Gully Mein」は、実際にネイジーとディヴィン撮ったオリジナルを映画用にリメイクしているのだけど、むっちゃカッコいい。
クライマックスのラップコンテスト決勝の「Apna Time Aayega」まで、 演じるランヴィール・シンのパフォーマンスも素晴らしく、音楽映画として非常に見ごたえ、聴きごたえがある。
この人は、「パドマーワト 女神の誕生」の憎々しい悪役スルタン役が記憶に新しいが、こちらでは正反対の爽やかラップスターを好演していて、演技のふり幅がなかなか凄い。

本作とは関係ないけど、あの映画では人妻のパドマーワトに横恋慕して戦争まで仕掛けるも、結局彼女には殉死されちゃって、何も手に入れられなかったけど、実生活ではちゃっかりパドマーワト役のディーピカー・パードゥコーンを射止めてたのね。

ムラドはムスリムだからか、単に下戸なのか、アルコールを飲まない人だったが、今回はヒンディーラップを聴きながら飲みたい一本。
北インドの代表的なビールの一つ、デヴァンス醸造所の「ゴッドファーザー スーパーストロング」をチョイス。
アルコール度はちょっと高めで、すっきり爽やかだが甘味を強く感じる。
売れ筋インドビール全般に見られる特徴なので、おそらくはスパイシーなインド料理との相性を追求して進化したのだろうな。

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