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ショートレビュー「巻貝たちの歓喜・・・・・評価額1600円」
2019年12月11日 (水) | 編集 |
海底からの歓喜の歌。

映画ブロガーでもある、齋藤新監督の自主制作映画「巻貝たちの歓喜」を上映会で鑑賞。
不思議なタイトルだが、これがかなり面白い。
北海道沖で突如大爆発が起こり、キノコ雲が目撃される。
放射能が検出され、人々は核爆発だと噂するも、政府は否定。
爆発の正体は謎のまま、以降その海域産のつぶ貝を食べた人に入水自殺者が相次ぐようになる。
政府の依頼を受け、原因を探る女性生物学者の洲谷は、つぶ貝を食べたことで、10年前に死んだ妻の幻覚を見たという元写真家の男、来栖と出会う。
自殺者たちは皆、つぶ貝によって今は亡き愛する者の姿を見せられて、海に誘い込まれて沈められていたのだ。

事態の核心を握る来栖と、真相を解き明かしたい洲谷を軸とした会話劇。
幻覚というにはあまりに生々しく、脳が虚実を判断できないその現象を、洲谷はチベットの言葉で実態化した思念を表す「トゥルパ」と呼ぶ。
なぜ、つぶ貝たちは死者の姿を見せるのか。
なぜ、他の者たちと違い、来栖は沈められずに生きているのか。
水を介した死者との邂逅は、タルコフスキーの「惑星ソラリス」を思わせる。
実際影響を受けているそうだが、うまく本歌取してオリジナリティのある作品に仕上げている。

現象の謎を追う物語は、やがて第二次世界大戦中にドイツのハイゼンベルグ博士が開発していた幻の原爆と、フルトヴェングラー指揮の「交響曲第9番」のレコードという“鍵”に行き着く。
「交響曲第9番」は、駆け出しの音楽家だったベートーベンが、シラーの詩「歓喜に寄す」に感銘を受けて、曲をつけようと思い立ったことから構想された作品。
実際に交響曲が書き下ろされたのは晩年になってからだが、シラーの詩をアレンジしたパワフルな第四楽章は「歓喜の歌」として知られ、日本では年末の風物詩だ。
74年前に、何処かへと忽然と消えた死と破壊の象徴としての原爆と、あふれんばかりに生命の喜びをうたう交響曲。
時空を超えた科学と芸術は溶け合い、一体となってこの世界に再び現れたのだろう。

海は命が帰り、生まれるところ。
浜辺は現世と常世が、渾然一体に混じり合うところ。
よくできた推理小説のように、ミステリアスに展開する物語は、いつしか生と死、永遠と一瞬、記憶と実存の曖昧な境界へと踏み込んでゆく。
ハードSFに行ってもおかしくない設定ながら、二つの世界を結びつけるのが“愛”という、もっとも強くウェットな感情なのが面白い。
先日鑑賞した「ライフ・イットセルフ 未来に続く物語」も、虚実が入り乱れる世界観の中、唯一実存を確信できるものが、目に見えない“愛”であるという結論だったが、人間はつくづく愛し愛されたい生き物なのだなあ。

よく考えられた脚本だが、説明的要素を極力排したがゆえ、来栖以外のキャラクターの伏線はちょっと分かりにくい。
ケロイドの皮膚の洲谷や、キーパーソンとなる地下アイドルのるる子の過去の喪失に関しては、もう少し描写があっても良かったように思う。
全体の完成度が高いので、音が割れ気味だったり、シーンによってはノイズが目立つなど技術的な欠点もちょっと気になった。
しかしSF的設定から詩的な心理ドラマへと持ってゆくあたり、センス・オブ・ワンダーを感じさせる力作。
非常に文学的なプロットなので、小説化しても面白そうだ。

今回はつぶ貝をつまみに食べたい旭川の地酒、高砂酒造の「国士無双 純米大吟醸」をチョイス。
明治時代に、戊辰戦争に敗れた会津藩から移り住んだ、小檜山鉄三郎が創業した蔵。
国士無双は淡麗辛口、雑味無くスッキリとした北国らしい酒で、爽やかな吟醸香に、米の深い旨みが引き立つ。
魚介類との相性もバッチリだ。

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