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2020年02月03日 (月) | 編集 |
ドーナツの穴から見えるものは?
これはすごく面白い!
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のライアン・ジョンソン監督が、アガサ・クリスティーにオマージュをささげた、オリジナル脚本のミステリ映画。
ニューヨークの豪邸で、世界的な人気ミステリ作家のハーラン・スロンビーの85歳のバースデーパーティーが開かれる。
ところがその翌朝、スロンビーは喉にナイフを突き立てられて死亡。
状況から警察は自殺だと考えるが、匿名の人物からの捜査依頼を受けた、ダニエル・グレイグ演じる名探偵のブノワ・ブランが事件の謎に迫る。
※ネタばれ配慮していますが、観てから読むのをオススメします!
これミステリとしては相当トリッキーな作りで、序盤に全体像を見せてしまう。
スロンビーの専属看護師だったアナ・デ・アルマス演じるマルタが、パーティー後に薬の種類を間違えてスロンビーに注射。
死を免れないと知ったスロンビーは、自分を親身にケアしてくれたマルタを守るため、自ら喉を突いて自殺する。
実質的な主人公のマルタは、嘘をつくと嘔吐してしまうという特異体質。
移民の子で、正規の在留資格を持たない母親を抱えた彼女が、健気な感情移入キャラクターに造形されているので、観客は名探偵の灰色の頭脳が事件を解き明かすのではなく、解き明かさないことを期待するというユニークな構造。
ただし、これはあくまでも最初から見えている部分のみ。
名探偵の言葉を借りると、「(全体のカタチは見えるが)ドーナツの様に中心だけが欠けている」状況なのである。
そこに何があったかが分からないと、事件の本当の真相は見えてこない。
自殺で方がつきそうだったのに、わざわざ探偵を雇って事件の再検証をさせようとした依頼人は誰か?そもそもなぜそんなことをさせようとするのか?
ジャミー・リー・カーティス、ドン・ジョンソン、マイケル・シャノン、トニ・コレット、クリス・エヴァンスら、地味にすごいオールスターキャストが演じるスロンビー家の親族は、色々な意味で大作家の業績に寄生して生きているので、誰もが彼の遺産を狙っている。
疑わしい人物はたくさんいて、スロンビーの死で職を失うであろうマルタは、パーティーの夜に屋敷にいた人々の中では一番疑われない人物。
感情移入キャラクターのマルタを名探偵の助手的なポジションに置くことで、彼女が作品世界の案内人の役割も果たすようにしているのは上手い。
一見すると「よき常識人」の仮面をかぶっているスロンビー家の親族たちは、最初のうちはマルタを気遣うそぶりを見せているものの、状況が変化してゆくと、仮面の下のゆがんだ素顔が露見してくる。
マルタを守ろうとしたスロンビーが死に、もう一人の移民のキャラクターもひどい目に遭わされるのもポイントだ。
物語の中で、“ナチスかぶれ”と揶揄されるスロンビーの孫が、ある意味一番正直者なのかも知れない。
ミステリのパッケージに巧妙に包んであるものの、この映画もまたトランプ時代の不寛容と人種間の分断を重要なテーマとしているのである。
そういえば、オマージュをささげられたクリスティの作品も、しばしば英国人の人種偏見をさりげなく批判していた。
二転三転する物語は全く先を読ませず、文字通りの主客転倒の瞬間が訪れる最後まで、ストーリーテリングのカタルシスを堪能。
ライアン・ジョンソン、実にいい仕事してるわ。
さっさと「スター・ウォーズ」から手を引いたのは正解だったのかも。
ここまでの彼の作品を観る限り、「何かに囚われていた者が(良くも悪くも)自由になる」というのが彼の創作意識の根源にあるように思う。
まあ現在の日本のマーケットの状況では、おそらくそう長くは上映されないだろうし、ネタバレ食らうまえに急いで観に行くのが正解だ。
今回は、真っ赤な血のようなカクテル、「ブラッディ・メアリー」をチョイス。
メアリーとは、プロテスタントを弾圧し、数百人の宗教指導者を処刑した事で知られる16世紀の英国の女王、メアリー一世のこと。
氷を入れたタンブラーにウオッカ40mlと冷やしたトマトジュース160mlを注ぐ。
好みでタバスコや塩を添えたり、トマトソース感覚でセロリなどの野菜スティックをディップしてもいい。
恐ろし気な名前とは違って、さっぱりして飲みやすい。
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これはすごく面白い!
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のライアン・ジョンソン監督が、アガサ・クリスティーにオマージュをささげた、オリジナル脚本のミステリ映画。
ニューヨークの豪邸で、世界的な人気ミステリ作家のハーラン・スロンビーの85歳のバースデーパーティーが開かれる。
ところがその翌朝、スロンビーは喉にナイフを突き立てられて死亡。
状況から警察は自殺だと考えるが、匿名の人物からの捜査依頼を受けた、ダニエル・グレイグ演じる名探偵のブノワ・ブランが事件の謎に迫る。
※ネタばれ配慮していますが、観てから読むのをオススメします!
これミステリとしては相当トリッキーな作りで、序盤に全体像を見せてしまう。
スロンビーの専属看護師だったアナ・デ・アルマス演じるマルタが、パーティー後に薬の種類を間違えてスロンビーに注射。
死を免れないと知ったスロンビーは、自分を親身にケアしてくれたマルタを守るため、自ら喉を突いて自殺する。
実質的な主人公のマルタは、嘘をつくと嘔吐してしまうという特異体質。
移民の子で、正規の在留資格を持たない母親を抱えた彼女が、健気な感情移入キャラクターに造形されているので、観客は名探偵の灰色の頭脳が事件を解き明かすのではなく、解き明かさないことを期待するというユニークな構造。
ただし、これはあくまでも最初から見えている部分のみ。
名探偵の言葉を借りると、「(全体のカタチは見えるが)ドーナツの様に中心だけが欠けている」状況なのである。
そこに何があったかが分からないと、事件の本当の真相は見えてこない。
自殺で方がつきそうだったのに、わざわざ探偵を雇って事件の再検証をさせようとした依頼人は誰か?そもそもなぜそんなことをさせようとするのか?
ジャミー・リー・カーティス、ドン・ジョンソン、マイケル・シャノン、トニ・コレット、クリス・エヴァンスら、地味にすごいオールスターキャストが演じるスロンビー家の親族は、色々な意味で大作家の業績に寄生して生きているので、誰もが彼の遺産を狙っている。
疑わしい人物はたくさんいて、スロンビーの死で職を失うであろうマルタは、パーティーの夜に屋敷にいた人々の中では一番疑われない人物。
感情移入キャラクターのマルタを名探偵の助手的なポジションに置くことで、彼女が作品世界の案内人の役割も果たすようにしているのは上手い。
一見すると「よき常識人」の仮面をかぶっているスロンビー家の親族たちは、最初のうちはマルタを気遣うそぶりを見せているものの、状況が変化してゆくと、仮面の下のゆがんだ素顔が露見してくる。
マルタを守ろうとしたスロンビーが死に、もう一人の移民のキャラクターもひどい目に遭わされるのもポイントだ。
物語の中で、“ナチスかぶれ”と揶揄されるスロンビーの孫が、ある意味一番正直者なのかも知れない。
ミステリのパッケージに巧妙に包んであるものの、この映画もまたトランプ時代の不寛容と人種間の分断を重要なテーマとしているのである。
そういえば、オマージュをささげられたクリスティの作品も、しばしば英国人の人種偏見をさりげなく批判していた。
二転三転する物語は全く先を読ませず、文字通りの主客転倒の瞬間が訪れる最後まで、ストーリーテリングのカタルシスを堪能。
ライアン・ジョンソン、実にいい仕事してるわ。
さっさと「スター・ウォーズ」から手を引いたのは正解だったのかも。
ここまでの彼の作品を観る限り、「何かに囚われていた者が(良くも悪くも)自由になる」というのが彼の創作意識の根源にあるように思う。
まあ現在の日本のマーケットの状況では、おそらくそう長くは上映されないだろうし、ネタバレ食らうまえに急いで観に行くのが正解だ。
今回は、真っ赤な血のようなカクテル、「ブラッディ・メアリー」をチョイス。
メアリーとは、プロテスタントを弾圧し、数百人の宗教指導者を処刑した事で知られる16世紀の英国の女王、メアリー一世のこと。
氷を入れたタンブラーにウオッカ40mlと冷やしたトマトジュース160mlを注ぐ。
好みでタバスコや塩を添えたり、トマトソース感覚でセロリなどの野菜スティックをディップしてもいい。
恐ろし気な名前とは違って、さっぱりして飲みやすい。

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この記事へのコメント
こんにちは。これ、とても面白かったです。コメディタッチだったのも◎でした。
が、邦題のサブタイトルって要るんですかねぇ…。
が、邦題のサブタイトルって要るんですかねぇ…。
ノラネコさんこんばんわ♪
これは自分もとても面白く観れましたね^^確かに全体像が観客にもすでに分かっていますから、観てる側からすれば関与した人物と同じ焦燥感のようなものを要所で感じることもできてどこかハラハラした目線にもなっちゃいましたし、そこに真犯人の思惑や真相も上手く覆い隠されていて見応え充分でした。今年のアカデミー賞の脚本賞もなんか応援したくなっちゃいますね。
これは自分もとても面白く観れましたね^^確かに全体像が観客にもすでに分かっていますから、観てる側からすれば関与した人物と同じ焦燥感のようなものを要所で感じることもできてどこかハラハラした目線にもなっちゃいましたし、そこに真犯人の思惑や真相も上手く覆い隠されていて見応え充分でした。今年のアカデミー賞の脚本賞もなんか応援したくなっちゃいますね。
かなりの部分を最初に明かしていて、肝心な部分を観客に推理させますね。
ミステリー物は原作の映画化が多い中、オリジナルというのがすごいですよね。
面白かったです。
ミステリー物は原作の映画化が多い中、オリジナルというのがすごいですよね。
面白かったです。
>ここなつさん
まあ「ナイブズ・アウト」だけだと理解してもらえないでしょうから、邦題工夫するか何らかのサブタイはいるでしょうね。
もうちょっとシンプルにして欲しかったですが。
>メビウスさん
全体像を見せた上で、アルマに感情移入させてるのが上手いですね。彼女を助けたい方に意識がいってるから、ミスリードにまんまとハマってしまう。
ライアン・ジョンソン、過去作は結構脚本アバウトだったのに、どうした?と思っちゃいましたw
>風子さん
クリスティにオマージュ捧げただけあって、なかなかトリッキーで面白かったですね。
やっぱクリスティはミステリのギミックの女王ですから。
まあ「ナイブズ・アウト」だけだと理解してもらえないでしょうから、邦題工夫するか何らかのサブタイはいるでしょうね。
もうちょっとシンプルにして欲しかったですが。
>メビウスさん
全体像を見せた上で、アルマに感情移入させてるのが上手いですね。彼女を助けたい方に意識がいってるから、ミスリードにまんまとハマってしまう。
ライアン・ジョンソン、過去作は結構脚本アバウトだったのに、どうした?と思っちゃいましたw
>風子さん
クリスティにオマージュ捧げただけあって、なかなかトリッキーで面白かったですね。
やっぱクリスティはミステリのギミックの女王ですから。
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アメリカ・ニューヨーク。 世界的ミステリー作家で出版社の創設者ハーラン・スロンビーが、85歳の誕生日パーティーの翌朝に遺体で発見された。 名探偵ブノワ・ブランは、匿名の人物から事件の調査依頼を受ける。 容疑者はパーティーに参加していた家族と看護師、家政婦ら屋敷にいた全員であり、やがて一家のもつれた謎が浮かび上がってきた…。 ミステリー。
2020/02/04(火) 09:07:10 | 象のロケット
極上の作品。古典的とも言える位にベタベタな推理モノ…とはなっていない。一見そう見えるのだけれど、ユーモアがまぶされていて、それが多少は下品混じりのものになっていたとしても、かなり愉快である。さすが「アガサ・クリスティーに捧げるオリジナル脚本」だけのことはある。そういえば、どことなく「ねじれた家」のテイストがあった。似ているのは豪邸とそれを取り巻くキナ臭い家族、という設定だけなのかもしれないけ...
2020/02/04(火) 10:52:19 | ここなつ映画レビュー
【監督】ライアン・ジョンソン
【出演】 ダニエル・クレイグ/クリス・エバンス/アナ・デ・アルマス/ジェイミー・リー・カーティス/マイケル・シャノン/ドン・ジョンソン/トニ・コレット/クリストファー・プラマー/他
【公開日】2020年1月31日
【製作】アメリカ
【ストーリー】
NY郊外の館で巨大な出版社の創設者ハーラン・スロンビーが、85歳の誕生日パーティーの翌朝に遺体で発見される。名探偵...
2020/02/05(水) 20:26:05 | シネマをぶった斬りっ!!
◆『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』ユナイテッドシネマス豊洲9
▲画像は後から。
五つ星評価で【★★登場人物が多い推理物ダメなの俺】
むーづかしー。そーだそーだ俺バカだった。
ってのがツイッター最初の感想。だってバカなんだもん。
んー、ラスト畳みかけるようにちゃんと謎の解説を探偵がやってくれるので一応分かった感は出たんだけど、前半かなり舟を漕いでしまったので満足度が下がってし...
2020/02/09(日) 22:15:16 | ふじき78の死屍累々映画日記・第二章
「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」のライアン・ジョンソン監督がアガサ・クリスティに捧げたミステリー。ジェームズ・ボンド役で知られるダニエル・クレイグ扮する南部訛りの名探偵が、ワケあり家族相手に名推理を繰り広げる。一家イチのロクデナシを演じる「キャプテン・アメリカ」のクリス・エヴァンスを始め、一家の長を演じるクリストファー・ブラマーを始めとし、右から左まで演技はだらけ。抜群のセンスとトリック...
2020/03/04(水) 16:23:10 | 映画に夢中
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2021/02/23(火) 10:54:31 | 或る日の出来事
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