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ショートレビュー「静かな雨・・・・・評価額1650円」
2020年02月21日 (金) | 編集 |
心の雨があがる時。

愛すべき映画だ。

仲野大賀が演じる行助は大学の研究室に勤めているが、左足に先天的な麻痺があり、いつも引きずっている。
そんな主人公が、パチンコ屋の駐車場で小さな鯛焼き屋を営む美女こよみに恋をする。
だんだんと距離を縮め、いよいよ恋が成就しようとした時、彼女は事故に遭い、短期記憶が保てない脳の障害を負ってしまう。
事故の前のことは覚えているが、こよみが新しい記憶を保てるのは、たった一日。
眠れば前日にあったことは忘れてしまう。
この設定だけ見たら、日本でもリメイクされたドリュー・バリモア主演の「50回目のファースト・キス」のようだが、こちらはコメディではなくシリアスなラブストーリーだ。


三年前に亡くなった恋人からの手紙が、止まっていた主人公の時間を動かす「四月の永い夢」、愛する人と故郷を失った主人公が、初めて傍観者としてではなく、自らの意思で”終わり”を作り出そうとする「わたしは光をにぎっている」
中川龍太郎監督の作品では、常に登場人の心にある記憶が重要な要素になるが、これは記憶が作り出す世界の違いと現実の揺らぎを描いた物語だ。

事故後、行助とこよみは共に暮らし始めるも、彼の思い出は毎日積み重なってゆくのに、彼女が生きているのはずっと「今日」のままで「明日」は永遠に来ない。

人間は誰でも、それぞれの主観の中で異なる世界を生きている。

だが近しい人、愛する人ほど世界が重なり合う部分が増えてゆくはずなのに、この二人の共有した世界は一晩経てば消えてしまうのである。
どんなに楽しいことや嬉しいことがあっても、彼女の心の中には何も残らない。
最初はこよみのいる暮らしに幸せを感じていた行助の中に、次第に未来に対する漠然とした不安と焦りがうまれてきて、ささやかな日常を揺さぶりはじめる。

二人の間に降り続く静かな雨は、いつ止むのか。

「未来のミライ」など、細田守監督の作品で知られる高木正勝が手掛けた繊細な雨音の様なピアノの劇盤が、行助の閉塞感を表現するスタンダードサイズの映像と共に登場人物の揺れ動く感情をフォロー。
音楽は映像全編を流しながら、即興で曲をつけてゆくという手法で制作されたそう。

粒あんの鯛焼き、リスが残したクルミ、燃やされた60年分の日記、片手のないザリガニ、そしてこよみの最後の記憶である月夜の雨など、脚本の細部に組み込まれたたくさんの記憶にまつわる伏線と暗喩が、物語を効果的に展開させる。

劇中に起こる非日常的な事件はこよりの事故のみだが、世界の違いがもたらす葛藤を描いた心理劇として非常に丁寧な作り。

たぶんメジャーどころの集まる映画賞には絡んだりはしないけど、心の中で大切にしたい小さな宝石の様な佳作だ。

こよみを演じた衛藤美彩という人を全く知らなかったのだが、元乃木坂46の人気アイドルだったとはビックリ。

こんな才能が隠れていたとは。
「あん」繋がりなのか、河瀬直美がこよみの母親役でワンシーンだけ役者として出演していて、そこにいるだけで圧が凄い。
さすがはカンヌ三冠監督の貫禄だ(笑

今回は映画の二人のイメージで「ピュア・ラブ」をチョイス。
ドライジン30ml、クレーム・ド・フランボワーズ15ml、ライムジュース15mlをシェイクして、氷の入ったグラスに注ぐ。
最後に適量のジンジャーエールでグラスを満たし、スライスしたライムを飾って完成。
味わいはその名の通りに甘酸っぱい恋の味。
フランボワーズの甘みとライムの酸味、ジンジャーの辛味がうまくバランスしている。

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大学の研究室で働く、足を引き摺る青年・行助(ゆきすけ)は、小さな“たい焼き屋”の常連だった。 店の若い女主人こよみと親しくなり始めた矢先、彼女は事故に遭ってしまう。 行助を娘の恋人だと思い込んだこよみの母から入院中の世話を頼まれるが、意識を取り戻したこよみは、新しい記憶を短時間しか留めておけなくなっていた…。 ラブ・ストーリー。
2020/02/24(月) 07:17:41 | 象のロケット