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2020年05月22日 (金) | 編集 |
母なる大地に抱かれて。
Netflixオリジナル作品。
「火星人メルカーノ」で知られるアルゼンチン出身のファン・アンティン監督が、世界中を渡り歩いて資金を集め、企画研究を始めてから14年を費やし作り上げたのは、インカ帝国時代のアンデス地方を舞台とした神話的冒険譚。
セザール賞にノミネートされ、東京アニメアワードフェスティバル2019の長編コンペティションでは優秀賞に輝いた、素晴らしいクオリティのアニメーション映画だ。
タイトルの「パチャママ」とは万物の母であり、大地の豊穣を司る地母神のこと。
パチャママを祀る村の宝”ワカ”を、帝国の徴税官に奪われた10歳の少年テプルパイと少女ナイラが、ワカを取り戻すために大冒険を繰り広げる。
ラマのラミータとアルマジロのキルキンチョを旅の仲間に、帝国の首都クスコまでたどり着くも、スペインの侵略者も加わってワカを巡る争奪戦となり、故郷の村まで巻き込まれてしまう。
とにかく可愛い絵柄が印象に残る。
当初アンティンは、ストップモーション手法による制作を考えていたという。
実際に完成した作品は美しい手描きテクスチャを生かした3DCGアニメーションだが、キャラクターはまるで粘土を削り出した様なザラザラとした質感がユニーク。
幾何学的な先住民族のデザインが、画面の隅々にまで配されていて、水彩のタッチで描かれた特徴ある美術は、一目見たら忘れられない位にデザイン性が高い。
権威主義的なクスコの街は直線的に構成され、自然と共に生きる村の建物は地球を思わせる球形にデザインされているのも象徴的。
アンティンは人類学者の妻と共にインカ時代の文化を徹底的にリサーチし、そこからカリカチュアしていったそうだが、その成果は極めて未見性の高いビジュアルとして結実している。
またインカにはミイラ信仰があり、村の神聖な祠では、亡くなった長老たちのミイラがワカを守る様に安置されていたり、最後のインカ皇帝となったアタワルパが、自分が地面に足を触れれば大きな災が起こると信じて巨大な輿に乗っていたり、史実に基づく民俗学的な描写も面白い。
自らを太陽神の化身と信じ、母なる地面に触れないことは、即ちパチャママへの裏切り。
スペインの到来を知らせる”観測者”の言葉を信じず、彼の目を潰し地下迷宮に追放したアタワルパは、すでにパチャママの庇護を失っていたのである。
本作は大人の鑑賞にも十分たえるものの、基本はキッズムービーなので物語的には特に捻った部分はなく、フォークロアの成長物語の王道的な構成。
しっかり者のナイラに対して、子供っぽく描かれるテプルパイは、村のリーダーでもあるシャーマンに憧れている。
だが物語の初めに描かれる成人の儀式で、彼は「大切なもの」を捧げる利他の精神を理解できていないことが露見してしまう。
テプルパイの世界はまだまだ自分が中心で、大人になる準備ができていないのだ。
しかし未熟な少年だったテプルパイは、村のワカを取り戻す冒険の旅を通し、利己的な心がもたらす最悪の結果である“戦争”を目の当たりにすることで、大きく成長してゆく。
悪しき者は去り少年は(それなりに)大人になり、物語はハッピーエンドを迎えるが、余韻にはそこはかとなくもの悲しさが漂う。
それはたぶん、私たちがアンデスの文明に起こったその後の歴史を知っているからだろう。
パチャママは今も人々と共にいるのだろうか。
今回は、インカの末裔ペルーの蒸留酒「タカマ ピスコ アチョラード」をチョイス。
葡萄を蒸留して作るピスコは300年ほどの歴史を持ち、首都リマよりも南で生産されたものを指し、アチョラードは二種類以上の葡萄品種から作られる種類。
最大銘柄のタカマのアチョラードは5種類の葡萄をブレンドしており、すっきりした香りでクセもない。
カクテルのピスコサワーが有名だが、シンプルに炭酸割りでレモン汁を適量加えるのもオススメ。
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Netflixオリジナル作品。
「火星人メルカーノ」で知られるアルゼンチン出身のファン・アンティン監督が、世界中を渡り歩いて資金を集め、企画研究を始めてから14年を費やし作り上げたのは、インカ帝国時代のアンデス地方を舞台とした神話的冒険譚。
セザール賞にノミネートされ、東京アニメアワードフェスティバル2019の長編コンペティションでは優秀賞に輝いた、素晴らしいクオリティのアニメーション映画だ。
タイトルの「パチャママ」とは万物の母であり、大地の豊穣を司る地母神のこと。
パチャママを祀る村の宝”ワカ”を、帝国の徴税官に奪われた10歳の少年テプルパイと少女ナイラが、ワカを取り戻すために大冒険を繰り広げる。
ラマのラミータとアルマジロのキルキンチョを旅の仲間に、帝国の首都クスコまでたどり着くも、スペインの侵略者も加わってワカを巡る争奪戦となり、故郷の村まで巻き込まれてしまう。
とにかく可愛い絵柄が印象に残る。
当初アンティンは、ストップモーション手法による制作を考えていたという。
実際に完成した作品は美しい手描きテクスチャを生かした3DCGアニメーションだが、キャラクターはまるで粘土を削り出した様なザラザラとした質感がユニーク。
幾何学的な先住民族のデザインが、画面の隅々にまで配されていて、水彩のタッチで描かれた特徴ある美術は、一目見たら忘れられない位にデザイン性が高い。
権威主義的なクスコの街は直線的に構成され、自然と共に生きる村の建物は地球を思わせる球形にデザインされているのも象徴的。
アンティンは人類学者の妻と共にインカ時代の文化を徹底的にリサーチし、そこからカリカチュアしていったそうだが、その成果は極めて未見性の高いビジュアルとして結実している。
またインカにはミイラ信仰があり、村の神聖な祠では、亡くなった長老たちのミイラがワカを守る様に安置されていたり、最後のインカ皇帝となったアタワルパが、自分が地面に足を触れれば大きな災が起こると信じて巨大な輿に乗っていたり、史実に基づく民俗学的な描写も面白い。
自らを太陽神の化身と信じ、母なる地面に触れないことは、即ちパチャママへの裏切り。
スペインの到来を知らせる”観測者”の言葉を信じず、彼の目を潰し地下迷宮に追放したアタワルパは、すでにパチャママの庇護を失っていたのである。
本作は大人の鑑賞にも十分たえるものの、基本はキッズムービーなので物語的には特に捻った部分はなく、フォークロアの成長物語の王道的な構成。
しっかり者のナイラに対して、子供っぽく描かれるテプルパイは、村のリーダーでもあるシャーマンに憧れている。
だが物語の初めに描かれる成人の儀式で、彼は「大切なもの」を捧げる利他の精神を理解できていないことが露見してしまう。
テプルパイの世界はまだまだ自分が中心で、大人になる準備ができていないのだ。
しかし未熟な少年だったテプルパイは、村のワカを取り戻す冒険の旅を通し、利己的な心がもたらす最悪の結果である“戦争”を目の当たりにすることで、大きく成長してゆく。
悪しき者は去り少年は(それなりに)大人になり、物語はハッピーエンドを迎えるが、余韻にはそこはかとなくもの悲しさが漂う。
それはたぶん、私たちがアンデスの文明に起こったその後の歴史を知っているからだろう。
パチャママは今も人々と共にいるのだろうか。
今回は、インカの末裔ペルーの蒸留酒「タカマ ピスコ アチョラード」をチョイス。
葡萄を蒸留して作るピスコは300年ほどの歴史を持ち、首都リマよりも南で生産されたものを指し、アチョラードは二種類以上の葡萄品種から作られる種類。
最大銘柄のタカマのアチョラードは5種類の葡萄をブレンドしており、すっきりした香りでクセもない。
カクテルのピスコサワーが有名だが、シンプルに炭酸割りでレモン汁を適量加えるのもオススメ。

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