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許された子どもたち・・・・・評価額1700円
2020年06月04日 (木) | 編集 |
煉獄を彷徨う。

コロナ自粛明けに凄い映画と出会った。
1993年に山形県の中学校でじめの果てに起こった、いわゆる「山形マット死事件」と、2015年に川崎の河川敷で13歳の少年が殺害された「川崎市中1殺害事件」にインスパイされた作品。
「先生を流産させる会」「ミスミソウ」など、主に少年少女のダークサイドを描いてきた内藤瑛亮のキャリアベストだ。
同級生をいじめ殺してしまった加害者の少年を軸に、事件によって人生を狂わされてしまった、狂わせてしまった人々のドラマを描く。
本作のために集まった小学生から高校生までの16人の子どもたちとは、専門家のサポートを受けながら、撮影前にワークショップを実施することで問題意識を高めていったという。
自主制作体制で一年をかけてじっくりと撮影された作品は、一つの事件をきっかけにベクトルの異なる幾つもの視点が交錯するダイナミックな作劇が特徴。
果たして、法律で「無罪」とされることは、加害者にとって幸せに繋がるのだろうか?
観る者の倫理観が試される、緊迫の131分だ。

とある地方都市。
不良グループのリーダーで13歳の市川絆星(きら)(上村侑)は、同級生の倉持樹(阿部匠晟)をグループのパシリとしていじめていた。
いじめはエスカレートし、樹の行動に激昂した絆星は、彼を手製のボウガンで射殺してしまう。
すぐに事件は明らかになり、警察に犯行を自供する絆星だったが、息子の無実を信じる母親の真理(黒岩よし)と弁護士の説得によって否認に転じる。
ボウガンは処分され、物的証拠がない中、少年審判は無罪に相当する「不処分」を決定する。
自由になったと思ったのもつかの間、決定に対し世間から激しいバッシングが巻き起こり、瞬く間に絆星の実名がネットに晒され、「不処分」に納得出来ない樹の両親は、改めて絆星たちの罪を問うために民事訴訟を起こす。
絆星を待っていたのは、訴状から逃れるため名前を替え両親と共に引越しを繰り返す日々。
偽名で通っていた中学校では、女子グループからいじめられていた櫻井桃子(名倉雪乃)と仲良くなるも、あることで本名が明るみ出て、絆星は追い詰められてゆくのだが・・・


「許された子どもたち」というタイトルが秀逸。
事件を起こした後、警察の取り調べを受けた絆星は、グループの他のメンバーが完落ちしていることを知らされると、あっさり自供する。
ところが、母の真理と弁護士の女性の説得によって供述を覆す。
この時、真理は息子の無実を信じ続けることが愛だと考え、弁護士もまた少年たちの口裏合わせを手引きしてでも不処分を勝ち取ることが自分の責務であり、正義だと思っている。
結果的に二人の思惑は現実となり、絆星は自由の身となるのだが、許される日など永遠に来ないことを彼はまだ知らないのだ。

少年審判の甘い結論は、世間の怒りにガソリンを投下。
マスコミは押しかけ、ネット上の“正義の味方”たちによる私刑が始まる。
ここで重要なのは、真理も弁護士も本心では絆星の無実を信じていないということだ。
真理は絆星から嫌疑をそらせるために、帰宅時間を欺く。
弁護士も子どもたちを言葉巧みに誘導し、偽証を指示するのである。
二人は、絆星を守っているつもりで、罪を認め償うことで許される機会があったのを、奪ってしまったことに気づかない。
法的には彼らは「許された子どもたち」だが、真実に免罪符は無く、加害者も被害者も日常を失い、煉獄を彷徨い続けるしかないのだ。

内藤監督は元教員だったそうだが、純粋さも邪悪さも含めて子どもたちをよく知っている。
学校のクラスで虐めについてディスカッションするシーンは、おそらくワークショップの延長線上で、本音のフリートークに近いのではないか。
子どもたちの秘めたる内面と葛藤を、リアリティたっぷりに描いているのは過去の作品と共通。
しかし本作では、相対的にドラマの中で大人たちが占める比重が大きい。
例えば「ミスミソウ」などは、とんでもない事件が起こっているのに、大人たちの存在感がとことん希薄だったのに対して、本作は正反対なのである。
当事者である加害者の子どもたちはもとより、その家族、被害者遺族、学校関係者や隣近所のコミュニティ、裁判所にマスコミ、果てはネット社会まで、事件に関わる全てを描くことで、本質を浮かび上がらせる。

きっかけは同じでも、それぞれの思考と行動のベクトルは違う。
加害者は罪と責任から逃れようとし、被害者遺族は真実を求め、学校や近隣コミュニティは面倒を嫌い、裁判所はあくまでも原則論を貫き、マスコミやネット社会は己が正義を振りかざす。
さらに加害者の間でも事件へのスタンスは異なるし、自分勝手なネット社会の正義は被害者遺族にとって何のより所にももならない。
制御不能の正義の矛先は、時として被害者遺族に向かうことすらあるのだ。

逃げ続け、逃げた先でも追い詰められた絆星は、一度は樹の両親に謝りに行こうとするのだが、いざ対面するとどう謝って良いのかわからず、樹の母親に「あなたは何を謝りたいの?」と言われてしまう。
そもそも、彼はなぜ樹を殺してしまったのか?なぜこんな目に合わなければならないのか?
根本の部分を自分でも分かってないのだから、心から謝れるわけがない。
謝ろうと思ったのも、現状を打破したかっただけで、彼は本当の意味で自分の罪と向き合ってはいないのである。

事件の関係者の小さな世界から始まって、現実社会のリフレクションとして、外連味たっぷりのテリングのスタイルも効いている。
終盤、絆星が出口の無い迷宮に迷い込んでしまったことに気づいた瞬間から、演出にドライブがかかって絆星と真理がシンクロし一体化するシークエンスが凄い。
夕暮れの河川敷で、ボウガンを振り回しながら暴れ回る絆星の姿は、まるで「悪魔のいけにえ」のラストでチェンソーを手に雄叫びを上げるレザーフェイスだ。
ただし、絆星はレザーフェイスのような怪物ではなく、幼くて弱い人間ゆえにどこにもぶつけられない感情を爆発させる。
かつての柳楽優弥を思わせる、強い目力を持つ絆星役の上村侑、頑なに息子を信じる母を演じる黒岩よしの親子が鮮烈。
天国に上ることも地獄に落ちることも許されず、延々と煉獄を巡る旅の中で、もはや歪な一心同体となった彼らのドラマに全く目が離せない。

もし本作がメジャーで作られたなら、物語にもう少し救いを持たせるか、倫理的に分かりやすい落とし所を探っただろう。
しかしこの映画は全ての予定調和を拒否して、想像力のその先まで突っ走る。
驚くべき思い切りの良さは、やっぱり自主制作体制ゆえか。
極めてパワフルな、“小さな大作”である。

今回は「有罪確定」を意味する「ギルティ・ヴァーディクト」をチョイス。
半分まで氷を入れたハイボールグラスに、バカルディ151ラムを30ml、オレンジジュースを210ml注ぎ、ステアする。
手指消毒にも使えちゃうアルコール度数75.5°のためか、今は全世界的に品薄になってしまっているが、悪魔的な味わいをたっぷりのオレンジジュースがさっぱりした柑橘香と共にいい感じに中和。
ちょうどストロング系と同じ9°くらいなので、かなり飲みやすい。
これなら「推定無罪」?
残念ながら今は市場で手に入らないが、ストック持ってる人は是非お試しを。

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