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ショートレビュー「ハリエット・・・・・評価額1550円」
2020年06月09日 (火) | 編集 |
自由か、それとも死か。

新しい20ドル札の肖像になる予定の、19世紀の元逃亡奴隷で奴隷解放活動家のハリエット・タブマンの物語。
のちの南北戦争では北軍の諜報員として活躍し、米国史上初めて軍を指揮した女性となった彼女の激動の半生を描く。
発端は1849年のメリーランド州ドーチェスター。
奴隷の両親からアラミンタ・ロス、通称ミンティとして出生したハリエットは、ブローダス家の農園で働いている。
ところが、当主の突然の死によって一族が困窮し、自らが売りに出されることを知ってしまう。
ミンティの夫は自由黒人だが、白人社会での立場は当然弱く、もし遠くに売られてしまえば、おそらくはもう二度と会えない。
家族へ危険が及ぶことを考えて、ミンティは単身脱出を図るのだが、およそ200キロの道のりを逃げ切り、自由州のペンシルバニア州フィラデルフィアに到達する。

と、ここまでの展開もかなりスリリングだが、当時は沢山いたであろう、いち逃亡奴隷のエピソードに過ぎない。
ミンティが傑物として歴史に名を残すのはここからだ。
母と同じ“ハリエット”と改名した彼女は、奴隷解放組織の”地下鉄道”に参加すると、組織の”車掌”となって危険を顧みずに奴隷州に潜入し、自らの家族を含めた多くの奴隷たちの逃亡に手を貸すことになるのだ。
当然、奴隷のオーナーたちも警戒しているのだが、ハリエットは絶対不可能と思える逃亡をいくつも成功させ、いつしか奴隷たちを約束の地に導く“モーゼ”と呼ばれるようになる。
面白いのは、実際にハリエットはモーゼと同じく神の見えざる手に守られていたという逸話だ。
彼女は少女だった頃に、奴隷監督に金属の重りを投げられて頭蓋骨骨折の重傷を負い、生涯目眩や痛み、突発的な過眠症と言った後遺症に苦しめられていたのだが、時に神の啓示としか思えないビジョンを見ていたという。
本作では彼女が危機に陥りそうになると、直後の出来事が断片的に見える、予知夢として表現されている。

そんなハリエットに対して、「神に黒人の声は届かない」と言い放ち、愛憎入り混じった態度で執拗に粘着するのがブローダス家の息子ギデオン。
彼は黒人の奴隷ハンターを雇ってまで、“自分のもの”であるハリエットを取り戻そうとするのだ。
とことんゲスな白人農園主と黒人の裏切り者が出て来るのは、タランティーノの「ジャンゴ 繋がれざる者」風味。
物語の話型の外枠は西部劇なのだが、中身はモーゼとジャンヌ・ダルクを掛け合わせた様な宗教的世界観というミスマッチが、本作の味わいをユニークなものにしている。
とは言え、史実を描いた作品としては、神様頼りの部分が大きく描かれてるのは好みが分かれるところ。
ハリエットは奴隷解放に大きな役割を果たした不屈の人であり、危険な状況に陥っても生涯ただの一度も捕まってないのは間違いない。
頭の怪我の後遺症で不思議なビジョンを見ていたのも、それを本人が神の啓示と受け取っていたのも事実だろう。
しかし、これを全て文字通りの意味で描いてしまうと、宗教映画というジャンルにはめ込まれ、ハリエット自身の活動も含め、人間の自由への闘争が神様の手のひらの上で矮小化されてしまう印象は否めない。
もっとも、信心深い人にとっては、それこそが至福なのかもしれないけど。

今回は、バーボンリキュールの「ジム・ビーム レッドスタッグ」をチョイス。
ケンタッキーバーボンの代表的な銘柄、ジム・ビームの4年以上熟成させた原酒ににペンシルバニア名物のブラックチェリーを漬け込んだ酒。
ちなみにケンタッキーは奴隷州だったが、南北戦争では北部の合衆国に留まった。
ブラックチェリーのナチュラルな甘みとバーボン本来のコクのある味わいが融合し、とても美味しい。
カクテルベースにしても面白い酒だが、ロックがオススメだ。

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コメント
この記事へのコメント
こんにちは
こんにちは。ハリエットはすごい人物だったことがわかった作品でした。でも確かに「神の声」を巡ってのお考えはうなづける部分があります。
というのとは別に、そして「ハリエット個人」に対してよりも、私は個人的には、宿の女主人の最期がとてもショックで尾を引いています…
2020/06/24(水) 15:59:13 | URL | ここなつ #/qX1gsKM[ 編集]
こんばんは
>ここなつさん
あの女主人は実在の人かは分かりませんが、あまりにも理不尽でしたね。
当時は自由があったと言っても、レイシストからは人間扱いされてなかったのでしょう。
ハリエットが非常に信心深い人で、神のビジョンを観ていたのは史実なのですが、額面通りに描かれちゃうと、それはそれでなあと思ってしまいました。
すごい人なのは確かですが。
2020/07/06(月) 22:28:24 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
神の啓示をどう描くかはポイントですよね。
ここで見てずっと、見ようと思っていたんですが、やっとみれました。おっしゃるとおり、「神の啓示」を額面どおりに描くかはものすごく重要ですよ、映画の「言いたいこと」に直結する。でも神の啓示を額面い受け取る感じは、アメリカらしい感じがして、これで良し!とする人も多いだろうなぁとも思いました。
個人的には、軍隊を指揮したシーンで、あの時代で、部隊を指揮した指揮官としての史実が残っているというだけで、胸が熱くなりました。特に無抵抗で殺されたり蹂躙されるアフリカンアメリカンを、ずっと見続けたあとだと、「銃を持ってアッセイや先生に戦い自由を獲得する」というアメリカの重要な価値ってこれなんだろうなーと思いつつも、かっこよさに痺れました。でも、じゃあ際限なく銃を持って秩序に対抗していいかというと、、、それも、、、。でも、これは、映画としては、わかりやすくとても面白かったです!。
2021/02/15(月) 04:26:28 | URL | ペトロニウス #-[ 編集]
こんばんは
>ペトロニウスさん
この宗教的な啓示の部分をそのまんまの意味で描いている部分は、一番引っ掛かったのですが、ある意味原理主義的キリスト教国家のアメリカで、黎明期の神話の一つと考えるとこれでいいのかも。
奴隷を助けたり、軍を指揮したりという史実の部分はちゃんと描いてますもんね。
いろいろな意味で、アメリカ以外では成立しない描き方だとは思いますけど。
2021/02/17(水) 22:28:55 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
ファンダメンタリスト
>ある意味原理主義的キリスト教国家のアメリカで、黎明期の神話の一つと考えるとこれでいいのかも

僕は、むしろアメリカのドラマや映画に出てくる(現代ものでさえ!)こういう福音派的な感覚は慣れてしまっていて、そうか、考えてみれば、アメリカ以外でこれ見せられたら、なんだこれ!?と思うという視点が抜け落ちていました。たしかに、この描き方だと、アメリカ以外では成立しない宗教映画になってしまいますね。もうすぐ20ドル紙幣(トランプさんが止めてたやつ)にもなることですし、子供にも見せようかなとおもっちたのですが、「この部分」は説明が要りますねぇ。

とはいえ、やはり、この時代に軍の指揮官として、兵を率いたアフリカンアメリカの女性がいたというのを絵で見せることは、重要な感じがします。おおーーーと思いましたもの。
2021/02/19(金) 03:48:17 | URL | ペトロニウス #-[ 編集]
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