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2020年06月19日 (金) | 編集 |
もう一つの“地獄の黙示録”。
Netflixオリジナル作品。
ベトナム戦争の四人の黒人帰還兵が、戦死した隊長の遺骨収集と隠された金塊を探すために、数十年ぶりにベトナムを訪れる。
彼らは記憶に導かれ、様々な思い出が埋まっているジャングルの奥地を目指すのだが、金塊への欲望と考え方の違いから軋轢が生じ、予期せぬ事件を引き起こす。
ダニー・ビルソンと故ポール・デ・メオが2013年に執筆したシナリオ「The Last Tour」をベースに、スパイク・リーが人種差別への怒りを前面に出してリライト。
デルロイ・リンドー、クラーク・ピーターズ、ノーム・ルイス、イザイア・ウィットロックが今は老人となった四人の帰還兵を演じ、彼らの人生を変えた亡き隊長を「ブラックパンサー」のチャドウィック・ボーズマンが演じる。
例によって色々詰め込んでるので、えらくバランスは悪いのに、パワフルで目が離せないくらいに面白いのはさすがリーだ。
ベトナム戦争から半世紀。
同じ部隊に所属していたポール(デルロイ・リンドー)、オーティス(クラーク・ピーターズ)、エディ(ノーム・ルイス)、メルヴィン(イザイア・ウィットロックJr)の四人は、戦死したノーマン隊長(チャドウィック・ボーズマン)の遺骨と、当時ひょんなことから手に入れ、ジャングルに隠したCIAの金塊を探すため、再びベトナムの地に降り立つ。
ポールの息子、ディッド(ジョナサン・メイジャーズ)も同行することになり、五人のアメリカ人はガイドのヴィン(ジョニー・グエン)と共に、目的地へと向かう。
かつて戦場だったジャングルの奥地で、彼らはノーマンの遺骨と金塊を見つけることに成功したが、地雷除去のNGOに所属するヘディ(メラニー・ティエリー)たちに金塊を見られてしまう。
予期せぬ事態に五人は困惑するが、そこへ現地のギャングたちが襲いかかってくる。
金塊を換金するために雇った裏社会の顔役のデローシュ(ジャン・レノ)が、利益を独占しようと裏切ったのだ。
一度は撃退したものの、ここは敵の地元で状況は圧倒的に不利。
再びの地獄へと堕ちた元老兵士たちは、ヴィンやヘディの協力を得て戦うことを決意するのだが・・・・
これまた、スパイク・リーの怒りのパワーに満ちた大怪作だ。
前作の「ブラック・クランズマン」は、70年代初期を舞台に、白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)への奇妙な潜入捜査に挑んだ黒人警官を描く、異色の人種差別サスペンスだった。
その同じ時代に、ベトナムのジャングルでは多くの黒人の兵士たちが戦っていた。
米国の人口に黒人が占める割合はわずかに11%だが、ベトナムに派遣された黒人兵の割合は32%にものぼる。
第二次世界大戦や朝鮮戦争では、白人と黒人の部隊が分けられていアメリカ陸軍は、公民権法の成立を受けてベトナム戦争では基本的に混成部隊。
この戦争で初めて人種の壁を越え、肌の色の違う同胞と”戦友”となった者も多かった。
しかしそれでも研究によると、ベトナム戦争の黒人帰還兵がPTSDを発症する確率は、白人兵士の二倍に達するという。
これは黒人兵により危険な任務が与えられ、凄惨な戦場を体験してきたことを意味するのだが、ベトナム戦争での黒人兵を描いた作品は相対的に少ない。
もちろん、いろいろな映画にキャラクターとしては出てくるし、主役級が黒人の作品もある。
しかし人種葛藤をテーマにベトナム戦争を描いた作品は実際皆無で、本作の存在は画期的だ。
ある意味アメリカ社会全体に喧嘩を売ってるような話なので、全てのスタジオに断られ、Netflix直行というのも然もありなん。
スパイク・リーの作品の例に漏れず、いろいろな要素が闇鍋的にぶち込まれているので、序盤の印象はゴチャゴチャしていて作品の骨格はなかなか見えてこない。
はじまってしばらくは、お爺ちゃんたちの緩い観光旅行が続くのだけど、中盤から彼らの中に疼く殺戮と狂気の記憶が前面に出て緊迫度が増してくる。
四人が訪れるクラブのDJブースの背後には「Apocalypse Now」の巨大な文字が輝き、すっかり近代化され高層ビルが建ち並ぶホーチミン市から、一行が船でジャングルへと入っていくシーンではワーグナーの「ワルキューレの騎行」が鳴り響く。
リーは同じくベトナム戦争をモチーフとしたフランシス・コッポラの伝説的な大作、「地獄の黙示録」を換骨奪胎し、四人の帰還兵の“闇の奥”への旅を描く。
ジャングルの深淵で彼らを待ち受けるカーツ大佐に当たるのが、本作ではチャドウィック・ボーズマン演じるノーマン隊長だ。
ただし、カーツと違ってノーマンは何十年も前に死んでいる。
彼は全ての黒人の開放を願う高潔な思想を持ち、戦争の中でも部下たちに大きな影響を与えた人物で、死してなお彼らを精神的に支配しているのである。
特に、帰還兵たちの中でもPTSDの症状がひどく、攻撃的な言動を繰り返し、実質的な主人公とも言えるポールに関しては、ノーマンとの間に決して他人には言えない秘密を抱えていることもあり、描かれる感情も非常に複雑。
旅をしながら過去のノーマンと対話し、そのトラウマの根元と向き合うポールを演じるデルロイ・リンドーが圧巻の素晴らしさ。
狂気が滲み出る怒りの独白の演技は、同時に彼が負った絶対に癒せない深い心の傷を感じさせ、まことに秀逸だ。
おそらくリンドーは、本年度の映画賞の演技部門に確実に絡んでくるだろう。
7年前にビルソンとデ・メオが「The Last Tour」を書き上げた時、本作の主人公は白人の設定だったそうだが、リーが参加して黒人設定になったことで、新たなテーマが付与され驚くべき未見性を備えた作品となった。
ノーマンに影響を受けた四人の帰還兵が抱える葛藤のベースにも、今も昔も変わらないアメリカ社会への怒りと批判が組み込まれてことで、本作には大きな思想的バックボーンが入った。
戦時中を描く回想シーン(もしくは記憶の中のシーン)では、ノーマンだけ若く他の四人は老人となった彼らがそのまま演じてるのが面白い。
本作で帰還兵たちが辿る闇の奥への冒険は、地理的なものだけでなく、過去の記憶への帰還と絡み合い、より精神的な旅となっているのだ。
しかし、コロナ禍の中で本作の配信がスタートしたのと時を同じくして、米国では白人警官に黒人男性が殺された事件をきっかけに「Black lives matter」の一大ムーブメントが始まった。
この標語自体は2013年から使われているので、本作の中にも出てくる。
図らずもタイムリーな公開になってしまったが、やっぱり時代に呼ばれる映画というのはあるのだと思う。
「アメリカのために、有色人種や飢えで苦しむ人々を撃つのは良心が許さない。彼らは俺を侮辱したり、犬をけしかけたりしてない」
冒頭、ベトナム戦争への徴兵を拒否し、長年に渡って政府と闘ったモハメド・アリのニュース映像から始まる本作は、全編からマイノリティーである黒人が白人のルールの下で生きる苦難と理不尽さが滲み出る。
「金持ち(白人)の息子は大学へ行き、貧乏人(有色人種)の息子は戦争へ行く」
この構図は今なお変わってないのかもしれない。
今回はベトナムのビール「333(バーバーバー)」をチョイス。
国内シェア7割を誇るトップブランドのピスルナーで、高温多湿の南国のビールらしく、さっぱりとしたテイスト。
ベトナムのビールの中では苦味が強目で、ほんのりとフルーティーな香りが漂い、爽やかに喉を潤してくれる。
東南アジアではビールジョッキに氷が入ってることが多いが、このビールも氷入りで飲むとより気分が高まる。
ちなみに「333」という名前は、ラッキー7的なベトナムの幸運の数字なんだとか。
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Netflixオリジナル作品。
ベトナム戦争の四人の黒人帰還兵が、戦死した隊長の遺骨収集と隠された金塊を探すために、数十年ぶりにベトナムを訪れる。
彼らは記憶に導かれ、様々な思い出が埋まっているジャングルの奥地を目指すのだが、金塊への欲望と考え方の違いから軋轢が生じ、予期せぬ事件を引き起こす。
ダニー・ビルソンと故ポール・デ・メオが2013年に執筆したシナリオ「The Last Tour」をベースに、スパイク・リーが人種差別への怒りを前面に出してリライト。
デルロイ・リンドー、クラーク・ピーターズ、ノーム・ルイス、イザイア・ウィットロックが今は老人となった四人の帰還兵を演じ、彼らの人生を変えた亡き隊長を「ブラックパンサー」のチャドウィック・ボーズマンが演じる。
例によって色々詰め込んでるので、えらくバランスは悪いのに、パワフルで目が離せないくらいに面白いのはさすがリーだ。
ベトナム戦争から半世紀。
同じ部隊に所属していたポール(デルロイ・リンドー)、オーティス(クラーク・ピーターズ)、エディ(ノーム・ルイス)、メルヴィン(イザイア・ウィットロックJr)の四人は、戦死したノーマン隊長(チャドウィック・ボーズマン)の遺骨と、当時ひょんなことから手に入れ、ジャングルに隠したCIAの金塊を探すため、再びベトナムの地に降り立つ。
ポールの息子、ディッド(ジョナサン・メイジャーズ)も同行することになり、五人のアメリカ人はガイドのヴィン(ジョニー・グエン)と共に、目的地へと向かう。
かつて戦場だったジャングルの奥地で、彼らはノーマンの遺骨と金塊を見つけることに成功したが、地雷除去のNGOに所属するヘディ(メラニー・ティエリー)たちに金塊を見られてしまう。
予期せぬ事態に五人は困惑するが、そこへ現地のギャングたちが襲いかかってくる。
金塊を換金するために雇った裏社会の顔役のデローシュ(ジャン・レノ)が、利益を独占しようと裏切ったのだ。
一度は撃退したものの、ここは敵の地元で状況は圧倒的に不利。
再びの地獄へと堕ちた元老兵士たちは、ヴィンやヘディの協力を得て戦うことを決意するのだが・・・・
これまた、スパイク・リーの怒りのパワーに満ちた大怪作だ。
前作の「ブラック・クランズマン」は、70年代初期を舞台に、白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)への奇妙な潜入捜査に挑んだ黒人警官を描く、異色の人種差別サスペンスだった。
その同じ時代に、ベトナムのジャングルでは多くの黒人の兵士たちが戦っていた。
米国の人口に黒人が占める割合はわずかに11%だが、ベトナムに派遣された黒人兵の割合は32%にものぼる。
第二次世界大戦や朝鮮戦争では、白人と黒人の部隊が分けられていアメリカ陸軍は、公民権法の成立を受けてベトナム戦争では基本的に混成部隊。
この戦争で初めて人種の壁を越え、肌の色の違う同胞と”戦友”となった者も多かった。
しかしそれでも研究によると、ベトナム戦争の黒人帰還兵がPTSDを発症する確率は、白人兵士の二倍に達するという。
これは黒人兵により危険な任務が与えられ、凄惨な戦場を体験してきたことを意味するのだが、ベトナム戦争での黒人兵を描いた作品は相対的に少ない。
もちろん、いろいろな映画にキャラクターとしては出てくるし、主役級が黒人の作品もある。
しかし人種葛藤をテーマにベトナム戦争を描いた作品は実際皆無で、本作の存在は画期的だ。
ある意味アメリカ社会全体に喧嘩を売ってるような話なので、全てのスタジオに断られ、Netflix直行というのも然もありなん。
スパイク・リーの作品の例に漏れず、いろいろな要素が闇鍋的にぶち込まれているので、序盤の印象はゴチャゴチャしていて作品の骨格はなかなか見えてこない。
はじまってしばらくは、お爺ちゃんたちの緩い観光旅行が続くのだけど、中盤から彼らの中に疼く殺戮と狂気の記憶が前面に出て緊迫度が増してくる。
四人が訪れるクラブのDJブースの背後には「Apocalypse Now」の巨大な文字が輝き、すっかり近代化され高層ビルが建ち並ぶホーチミン市から、一行が船でジャングルへと入っていくシーンではワーグナーの「ワルキューレの騎行」が鳴り響く。
リーは同じくベトナム戦争をモチーフとしたフランシス・コッポラの伝説的な大作、「地獄の黙示録」を換骨奪胎し、四人の帰還兵の“闇の奥”への旅を描く。
ジャングルの深淵で彼らを待ち受けるカーツ大佐に当たるのが、本作ではチャドウィック・ボーズマン演じるノーマン隊長だ。
ただし、カーツと違ってノーマンは何十年も前に死んでいる。
彼は全ての黒人の開放を願う高潔な思想を持ち、戦争の中でも部下たちに大きな影響を与えた人物で、死してなお彼らを精神的に支配しているのである。
特に、帰還兵たちの中でもPTSDの症状がひどく、攻撃的な言動を繰り返し、実質的な主人公とも言えるポールに関しては、ノーマンとの間に決して他人には言えない秘密を抱えていることもあり、描かれる感情も非常に複雑。
旅をしながら過去のノーマンと対話し、そのトラウマの根元と向き合うポールを演じるデルロイ・リンドーが圧巻の素晴らしさ。
狂気が滲み出る怒りの独白の演技は、同時に彼が負った絶対に癒せない深い心の傷を感じさせ、まことに秀逸だ。
おそらくリンドーは、本年度の映画賞の演技部門に確実に絡んでくるだろう。
7年前にビルソンとデ・メオが「The Last Tour」を書き上げた時、本作の主人公は白人の設定だったそうだが、リーが参加して黒人設定になったことで、新たなテーマが付与され驚くべき未見性を備えた作品となった。
ノーマンに影響を受けた四人の帰還兵が抱える葛藤のベースにも、今も昔も変わらないアメリカ社会への怒りと批判が組み込まれてことで、本作には大きな思想的バックボーンが入った。
戦時中を描く回想シーン(もしくは記憶の中のシーン)では、ノーマンだけ若く他の四人は老人となった彼らがそのまま演じてるのが面白い。
本作で帰還兵たちが辿る闇の奥への冒険は、地理的なものだけでなく、過去の記憶への帰還と絡み合い、より精神的な旅となっているのだ。
しかし、コロナ禍の中で本作の配信がスタートしたのと時を同じくして、米国では白人警官に黒人男性が殺された事件をきっかけに「Black lives matter」の一大ムーブメントが始まった。
この標語自体は2013年から使われているので、本作の中にも出てくる。
図らずもタイムリーな公開になってしまったが、やっぱり時代に呼ばれる映画というのはあるのだと思う。
「アメリカのために、有色人種や飢えで苦しむ人々を撃つのは良心が許さない。彼らは俺を侮辱したり、犬をけしかけたりしてない」
冒頭、ベトナム戦争への徴兵を拒否し、長年に渡って政府と闘ったモハメド・アリのニュース映像から始まる本作は、全編からマイノリティーである黒人が白人のルールの下で生きる苦難と理不尽さが滲み出る。
「金持ち(白人)の息子は大学へ行き、貧乏人(有色人種)の息子は戦争へ行く」
この構図は今なお変わってないのかもしれない。
今回はベトナムのビール「333(バーバーバー)」をチョイス。
国内シェア7割を誇るトップブランドのピスルナーで、高温多湿の南国のビールらしく、さっぱりとしたテイスト。
ベトナムのビールの中では苦味が強目で、ほんのりとフルーティーな香りが漂い、爽やかに喉を潤してくれる。
東南アジアではビールジョッキに氷が入ってることが多いが、このビールも氷入りで飲むとより気分が高まる。
ちなみに「333」という名前は、ラッキー7的なベトナムの幸運の数字なんだとか。

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