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ショートレビュー「泣きたい私は猫をかぶる・・・・・評価★★★★+0.3」
2020年06月23日 (火) | 編集 |
猫の愛、人間の愛。

Netflixオリジナルアニメーション。
とは言っても、本作は元々今年の6月5日に劇場公開が予定されていたのだが、コロナ禍の影響でネトフリ直行となってしまった作品。
おそらく劇場のブッキングの混乱はしばらく続くだろうし、世界中で似たようなケースが続出するのではないかな。
まあよく出来た作品だから、出来ればスクリーンで観たかったが、とりあえず作品が無駄に死蔵されず、ほぼ予定通りのスケジュールでファンに届けられることになったのは喜ばしい。

本作は傑作「ペンギン・ハイウェイ」を世に出した、新興アニメーションスタジオ「スタジオ・コロリド」の長編第二作。
今回は「心が叫びたがってるんだ」「空の青さを知る人よ」の岡田麿里のオリジナル脚本を、「美少女戦士セーラームーン」などのベテラン演出家の佐藤順一と「ペンギン・ハイウェイ」で絵コンテを担当した柴山智隆の共同監督で映画化。
淡い色彩の美しいアニメーションで描かれるのは、ひょんなことから猫に変身できる魔法を手に入れた、中二少女のリリカルな成長物語だ。

主人公の笹木美代は、クラスメイトから「ムゲ(無限大謎人間)」というあだ名で呼ばれ、常に一生懸命で元気いっぱいの少女。
クラスメイトの日之出賢人に想いをよせ、毎日のように全力で「好き」アピールしているが、全然相手にされていない。
そんな美代は、祭りの縁日で出会った奇妙なお面屋から、かぶると猫に変身できるお面をもらい、毎夜白猫の姿となって賢人と逢瀬を重ねているのだ。
もちろん賢人は、死んだ愛犬の生まれ変わりと信じる白猫が、文字通りに猫をかぶった美代だとは知らない。

実は美代には、変身の魔法以外にも秘密がある。
両親が離婚して、一緒に暮らす父はその後再婚。
継母はよくしてくれているのだが、美代はどうしても気を遣ってしまう。
実母は実母で今さら美代と暮らしたいと言い出し、彼女は二人の母親の間で板挟みになってしまっているのだ。
賢人への猛アタックも、親たちのややこしい事情を見ているからこその、彼女の愛し愛されたがりの感情の発露なのである。

一見天真爛漫だが家庭環境が複雑で、人知れず色々こじらせてる主人公。
このキャラクターの内面描写のリアリティこそ、岡田麿里脚本の真骨頂。
ワンアイディアから始まる物語は、序盤「心が叫びたがってるんだ」を思わせるが、本作では「愛されない人間より、いっそ愛される猫になりたい」と思った美代が元に戻れなくなり、そこから成長のステージとして、「千と千尋の神隠し」的な異世界への冒険に物語が広がってゆく。
高校生が主人公だった「ここさけ」や「空青」よりも、年少のこちらはファンタジー色が強いのが特徴だ。

招き猫通りが有名な焼物の街、常滑のロケーションがいい。
聖地巡礼なる言葉もすっかり定着したが、陶芸窯のレンガ煙突が並ぶ街並みは初めからちょっとした非日常感があり、こう言った現実からのファンタジーの裏打ちは、日本のアニメーション作品の大きな魅力になっていると思う。
あのファンタジックに魅力的な街なら、実は異世界に繋がっていると思えるし、実際に行ってみたくなるもの。

猫の姿のまま冒険の旅に出た美代は、初めて心の中の問題と初めてきちんと向き合い、愛の意味を考え、思春期という未知の海に漕ぎだすための大きな成長を果たす。
美代を演じるのは志田未来。
米林宏昌監督の「借りぐらしのアリエッティ」などで声優としても定評のある人だが、本作でも中二少女の絡みあった心を繊細に表現して素晴らしい。
主人公だけじゃなくて、登場人物全員の葛藤へのソリューションが用意されているのもいい。
誰もが物語を通して少しだけ変化し、物語の始まりより少しだけ幸せになる

そして猫飼いとしては、美代が変身した白猫のキャラクターも可愛いのだが、別のある猫と飼い主の絆のエピソードには思わず涙腺が・・・
本作では猫と人間の時間の違い、寿命の違いが物語のキーになっていて、あの猫は自分の命が残り少ないのを承知で飼い主との終の猫生を選んだんだよなあ。
この辺りは岡田麿里が初監督した「さよならの朝に約束の花をかざろう」にも通じる、切なくて優しい絆を感じさせる。
普遍性のある青春ファンタジーだが、猫飼いは余計に自分の子が愛しくなるだろう。

今回は舞台となる常滑の地酒、澤田酒造の「白老 大吟醸」をチョイス。
山田錦を40%まで精米して作り上げられる一本は、吟醸酒らしいフルーティーで芳醇な香りが特徴。
やや辛口で、海の幸はもちろん、肉料理などとも相性がいい。
これからの季節は冷でいただきたい。

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コメント
この記事へのコメント
遊びで猫になっていたムゲが、一転、人に返る道を閉ざされた時の恐怖感を凄く買います。あと、お面屋の背後にいる猫の世界の神々しさが人の神様にヒケを取ってない事も良い。

猫好きの人に見てもらいたい映画ですよね。SNSに写真あげる人みんな見ろ。
2020/11/23(月) 10:55:50 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
コロナだからしょうがないんだけど、もうちょっと大々的に劇場公開して欲しかったですねー
猫世界の描写も魅力的で、ファンタジーに微妙にホラーテイスト混ぜてくるあたりセンスを感じます。
常滑のご当地映画としても優秀。
2020/11/28(土) 21:36:24 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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