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2020年10月25日 (日) | 編集 |
裏切りもまた愛なのか。
日独伊三国同盟が締結され、いよいよ大平洋戦争開戦前夜となった1940年。
神戸で貿易商社を営む福原優作と、その妻の聡子の物語だ。
戦争で自由な渡航が出来なくなる前にと、好奇心旺盛に満洲へ渡った優作は、日本本土では知られていない、関東軍の恥ずべき秘密を知ってしまう。
義憤に駆られた優作は、その事実を国際社会に公表しようと画策するのだが、不穏な動きを察知した憲兵隊から、連合国側のスパイとして疑われることになる
人気の高い黒沢清監督だが、私はずっと過大評価されている作家だと考えてきた。
彼の映画は演出一流、シナリオ三流で、特に単独シナリオの作品は、たいてい前半だけなら傑作なのに後半グダグダになって空中分解してしまう。
ところが、本作は最後まですごく面白いじゃないか。
劇映画ではなく、NHKの8Kドラマとして制作されたという成り立ちのためか、プロットが最後まできっちりと設計されていてスキがない。
なぜ民間人の優作が、聞くだけならまだしも軍の秘密を直接見ることができたのか?というあたりは疑問だが、直接描写しないことでうまく誤魔化している。
TV放送は見逃したのだが、同じような制作経緯を持つイ・チャンドン監督の「バーニング」が、ドラマ版と劇場版とで大きく構成を変えたのに対し、本作はフレームレートを24fpsに変換し、スクリーンサイズと色調を調整しているだけだという。
もともと演出家としては優れていただけに、綿密に構成されたシナリオを得た本作は鬼に金棒である。
重大な国家機密を知ってしまった福原優作を演じるのは高橋一生だが、物語の主人公はタイトル通り、黒沢清とは三度目のタッグとなる蒼井優が怪演する聡子だ。
物語の始まりの時点では、聡子がドラマを持っていないため、いつもの黒沢作品とは逆に、むしろ前半がやや冗長に感じられた。
しかし、満洲を旅していた優作が帰って来てからは、妻と夫と憲兵隊が本心を隠したまま腹の底を探り合う、三つ巴のコンゲームとなり全く目が離せなくなる。
ミスリードを誘うタイトルに騙されるが、国家による組織的戦争犯罪に義憤を感じた私人が、正義感から裏切りを図るという、ヨーロッパ映画を思わせる切り口もユニーク。
日本映画で「国家vs個人」の構図を持つ歴史劇は珍しく、そこに時代の波に翻弄される夫婦の愛の騙し合いが加わる。
いつしか二人の共通の目的となる真実の暴露を、お互いを守りながら出来るのか?という展開は全く先を読ませない。
面白いのは、いつもは常に映画的であろうとする黒沢作品には珍しく、演劇的なテリングが目立つことだ。
物語の重要な舞台となる優作の商社の倉庫や、容疑者が連行される憲兵隊の詰め所などが、まるで大きなステージのようにだだっ広く、前面に開けた空間であること。
主人公の蒼井優を筆頭に、演者の台詞回しがやたらと芝居がかっていることと相まって、一瞬観劇しているような錯覚におちいる。
このような演劇的なテリングが、作り込まれた美術や衣装、独特の色調の画面と相まってレトロな時代感を強めているのである。
光と影の演出など、ところどころにらしさを見せるが、いつものクセは抑え気味。
やっぱり天才肌の演出家の作品は、抑制を効かせたほうが面白いものになる。
相変わらず死んだ目をした東出昌大演じる、密かに主人公に想いを寄せる憲兵隊分隊長のサイコっぽさもいい。
今回は二人の脱出地の一つ、「シャンハイ」の名を持つカクテルを。
ジャマイカ・ラム30ml、アニゼット7.5ml、レモン・ジュース22.5ml、グレナデン・シロップ2dashを、氷と共にシェイクしてグラスに注ぐ。
ジャマイカ・ラムとアニゼットの独特な香りとグレナデン・シロップが作る淡い赤が、エキゾチックなアジアの都市を連想させる。
大人な女性に似合う、やや甘口のカクテル。
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日独伊三国同盟が締結され、いよいよ大平洋戦争開戦前夜となった1940年。
神戸で貿易商社を営む福原優作と、その妻の聡子の物語だ。
戦争で自由な渡航が出来なくなる前にと、好奇心旺盛に満洲へ渡った優作は、日本本土では知られていない、関東軍の恥ずべき秘密を知ってしまう。
義憤に駆られた優作は、その事実を国際社会に公表しようと画策するのだが、不穏な動きを察知した憲兵隊から、連合国側のスパイとして疑われることになる
人気の高い黒沢清監督だが、私はずっと過大評価されている作家だと考えてきた。
彼の映画は演出一流、シナリオ三流で、特に単独シナリオの作品は、たいてい前半だけなら傑作なのに後半グダグダになって空中分解してしまう。
ところが、本作は最後まですごく面白いじゃないか。
劇映画ではなく、NHKの8Kドラマとして制作されたという成り立ちのためか、プロットが最後まできっちりと設計されていてスキがない。
なぜ民間人の優作が、聞くだけならまだしも軍の秘密を直接見ることができたのか?というあたりは疑問だが、直接描写しないことでうまく誤魔化している。
TV放送は見逃したのだが、同じような制作経緯を持つイ・チャンドン監督の「バーニング」が、ドラマ版と劇場版とで大きく構成を変えたのに対し、本作はフレームレートを24fpsに変換し、スクリーンサイズと色調を調整しているだけだという。
もともと演出家としては優れていただけに、綿密に構成されたシナリオを得た本作は鬼に金棒である。
重大な国家機密を知ってしまった福原優作を演じるのは高橋一生だが、物語の主人公はタイトル通り、黒沢清とは三度目のタッグとなる蒼井優が怪演する聡子だ。
物語の始まりの時点では、聡子がドラマを持っていないため、いつもの黒沢作品とは逆に、むしろ前半がやや冗長に感じられた。
しかし、満洲を旅していた優作が帰って来てからは、妻と夫と憲兵隊が本心を隠したまま腹の底を探り合う、三つ巴のコンゲームとなり全く目が離せなくなる。
ミスリードを誘うタイトルに騙されるが、国家による組織的戦争犯罪に義憤を感じた私人が、正義感から裏切りを図るという、ヨーロッパ映画を思わせる切り口もユニーク。
日本映画で「国家vs個人」の構図を持つ歴史劇は珍しく、そこに時代の波に翻弄される夫婦の愛の騙し合いが加わる。
いつしか二人の共通の目的となる真実の暴露を、お互いを守りながら出来るのか?という展開は全く先を読ませない。
面白いのは、いつもは常に映画的であろうとする黒沢作品には珍しく、演劇的なテリングが目立つことだ。
物語の重要な舞台となる優作の商社の倉庫や、容疑者が連行される憲兵隊の詰め所などが、まるで大きなステージのようにだだっ広く、前面に開けた空間であること。
主人公の蒼井優を筆頭に、演者の台詞回しがやたらと芝居がかっていることと相まって、一瞬観劇しているような錯覚におちいる。
このような演劇的なテリングが、作り込まれた美術や衣装、独特の色調の画面と相まってレトロな時代感を強めているのである。
光と影の演出など、ところどころにらしさを見せるが、いつものクセは抑え気味。
やっぱり天才肌の演出家の作品は、抑制を効かせたほうが面白いものになる。
相変わらず死んだ目をした東出昌大演じる、密かに主人公に想いを寄せる憲兵隊分隊長のサイコっぽさもいい。
今回は二人の脱出地の一つ、「シャンハイ」の名を持つカクテルを。
ジャマイカ・ラム30ml、アニゼット7.5ml、レモン・ジュース22.5ml、グレナデン・シロップ2dashを、氷と共にシェイクしてグラスに注ぐ。
ジャマイカ・ラムとアニゼットの独特な香りとグレナデン・シロップが作る淡い赤が、エキゾチックなアジアの都市を連想させる。
大人な女性に似合う、やや甘口のカクテル。

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この記事へのコメント
この監督にしては珍しく最後まで見応えある展開でした。
優作はグローバルな見地から、聡子は夫への愛のために、生死を賭けた行動を起こし、東出ふんする憲兵は日本国のため(?)に行動するという・・・・考えさせられました。
白黒フィルムの人体実験のシーンが衝撃的でした。
蒼井優の演技が光り、背の高い東出の憲兵スタイルも似合っていました。
優作はグローバルな見地から、聡子は夫への愛のために、生死を賭けた行動を起こし、東出ふんする憲兵は日本国のため(?)に行動するという・・・・考えさせられました。
白黒フィルムの人体実験のシーンが衝撃的でした。
蒼井優の演技が光り、背の高い東出の憲兵スタイルも似合っていました。
>karinnさん
実際を見ていない聡子にとっては、全てが出演している自主制作の活動写真みたいなもので、夫のためということを自らの行動原理にするしかなかったのでしょう。
転じて、当時の日本人にとって戦争犯罪の事実が遠いことの比喩でもあると思います。
いまだにフェイクニュースだと主張する人もいますからね。
実際を見ていない聡子にとっては、全てが出演している自主制作の活動写真みたいなもので、夫のためということを自らの行動原理にするしかなかったのでしょう。
転じて、当時の日本人にとって戦争犯罪の事実が遠いことの比喩でもあると思います。
いまだにフェイクニュースだと主張する人もいますからね。
2020/11/01(日) 15:32:12 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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1940年、兵庫県・神戸市。 聡子は貿易会社・福原物産を営む夫・福原優作と、洒脱な洋館で何不自由ない生活を送っていた。 しかし、満州への出張から戻ってから、優作と部下で甥の竹下文雄は人が変わったようになってしまう。 更に、幼馴染でもある神戸憲兵分隊本部分隊長・津森泰治から、優作が満州から女を連れ帰り、更に国家機密にも関わっていることを知らされる…。 戦争ヒューマンドラマ。
2020/10/28(水) 01:55:42 | 象のロケット
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『岸辺の旅』 『散歩する侵略者』の「黒沢清監督」が「蒼井優」と「高橋一生」を主演に迎えて贈る歴史ラブ・サスペンス。
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