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ショートレビュー「異端の鳥・・・・・評価額1700円」
2020年10月28日 (水) | 編集 |
異端の鳥の旅路のはては。

第二次世界大戦中の東欧のどこか。
ユダヤ人の少年がナチスの迫害を逃れ、辺境に住むおばの家に疎開している。
しかし、ある日おばは突然死し、家も火事で全焼してしまう。
少年は生きるために、当て所のない旅に出る。
自らもホロコーストを体験したイェジー・コシンスキが1965年に出版した小説を、チェコ出身のヴァーツラフ・マルホウ監督が映画化した作品。
35ミリのフィルム撮影、シネマスコープのモノクロ画面で展開する、169分に及ぶ長尺の寓話的な物語は、全編が15-25分程度の9つのエピソードで構成されている。
観ながら、登場人物が喋っているのはどこの言葉なんだろう?と思っていたが、本作ではスラブ系言語を基に作られたInterslavicという人工の言語が使われているという。
舞台を特定させず、この時代の東欧ならどこでもありえた話という普遍性を強める工夫だろう。

ほとんど台詞がなく、終盤まで名を明かされない少年は、荘厳な自然を巡る過酷な旅の途中で老若男女、敵味方の様々な人々に出会う。
たまにいい人もいるのだが、ほとんどは戦争の時代の底辺に生きる人々で、少年は彼らとの関わりの中でありとあらゆる酷い目にあう。
それは時として目を背けたくなるほど凄惨なのもので、海外映画祭では耐えられなくなって退席する者が続出したという。
いや正しくは、悲惨な目に遭うのは少年だけではない。
ドイツ軍、ソ連軍、コサックの残党が入り乱れる戦場では、命は空気よりも軽く、自分が明日生きていられるのか、運命を知るものは誰もいないのである。

原題の「Nabarvené ptáče /The Painted Bird(着色された鳥)」とは、“周囲とは異なる者”の比喩。
劇中、鳥を売ることを生業にしている男の家で、野鳥にペンキで色をつけて飛ばしてみると、仲間の鳥に受け入れられず、攻撃されて死んでしまうエピソードがあるのだが、転じてこの時代の被差別民族のユダヤ人である少年を意味する。
“異物”である少年は、誰もが利己的にならざるを得ない残酷な時代に、幼くして誰の庇護も得られない孤独な存在なのである。
正義が損なわれ悪が支配する世界では、生きるために暴力には暴力で抵抗せざるを得ない。
幾度となく自分が傷つけられたように、やがて他人を攻撃することを覚えた少年からは、無垢なる子供時代が急速に失われてゆく。

少年を演じるペトル・コトラールをはじめ、ほとんどが無名の俳優たちの中に、ハーヴェイ・カイテルやジュリアン・サンズ、ステラン・スカルスガルドといった名優たちが要所要所に配され、画面を締めている。
エンディングは、同じく少年の戦争体験を描いた「太陽の帝国」を思い出したが、少年のやさぐれっぷりはあの映画の比ではないし、それもやむを得ないよねと思うくらい悲惨な話。
それでも絶滅収容所送りになるよりは、多少はマシだったのかも知れない。
ただエグい描写が続くのは確かだが、9つのピースが揃い、一つの絵巻物が完成した時の映画的カタルシスは格別だ。
タルコフスキーの「僕の村は戦場だった」思わせる絵画的映像は美しく、ゆったりとしたテンポで描写されるモノクロの画面からは、どこかフォークロアな詩情が漂い、不思議と後味は悪くない。
少年の寓話的な旅を通し、人間の本質を明らかにした秀作である。

今回は東欧で広く飲まれている蒸留酒、シュペヒトの「スリヴォヴィッツ」をチョイス。
シュペヒトはドイツの銘柄だが、ラベルにも使われている東欧産の紫色スモモを蒸留し、オークの樽で熟成させたもの。
キンキンに冷やして小さなショットグラスで飲むのがおすすめ。
喉がカーッと熱くなる。
ブランデーの一種でアルコール度数は相当に高いのだが、現地ではビールのチェイサーがわりに飲まれたりもするそう。
どんだけ強いんだか。

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コメント
この記事へのコメント
寓話的
ノラネコさん☆
凄い映画を観た!って感じがしました。
非常にリアルな話なのでしょうけれど、寓話的に作られていてその辺りが見事でした。
ラスト自らの名前を取り戻したシーンは泣けました。原作ではラストが違うらしいですね。
2020/10/29(木) 11:15:09 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
こんばんは
>ノルウェーまだ~むさん
これ徹底的にリアルに作ったら、それこそ正視できない話になったんだと思います。
どこかフォークロアっぽいのが救いでした。
ラストが違うんですねー、原作を読んでみたくなりました。
2020/11/01(日) 15:34:54 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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