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ウルフウォーカー・・・・・評価額1700円
2020年11月04日 (水) | 編集 |
オオカミ少女はこわくない。

アイルランドのアニメーションスタジオ、カートゥーンサルーンによる、ケルト民話をもとにしたアニメーション映画三部作の素晴らしい完結編。
今回モチーフとなるのは、一つの魂が人間と狼の二つの体に宿る「ウルフウォーカー」だ。
17世期のアイルランドを舞台に、開拓の邪魔になる狼を退治するために、イングランドからやってきたハンターの娘が、ひょんなことから森の狼たちを統べるウルフウォーカーの娘と友だちとなったことで、大騒動が巻き起こる。
「ブレンダンとケルズの秘密」「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」に続いてメガホンをとるのはトム・ムーア監督。
共同監督を、カートゥーンサルーンの作品のほか「パラノーマン ブライス・ホローの謎」に、ヴィジュアル開発、コンセプト・デザイナーとして参加した、ロス・スチュアートが務める。
美しい色彩で描かれる、詩情あふれるフォークロア・アニメーションだ。

1650年、アイルランドのキルケニー。
少女ロビン(オナー・ニーフシー)は、頻発する狼の襲撃に対応するため、イングランドからよばれて来たハンターのビル・グッドフェロー(ショーン・ビーン)の娘。
クロスボウが得意な快活な性格だが、住民はイングランド人を歓迎しておらず、ロビンは城壁の外へ出ることを禁じられている。
ある日、密かに父を追って森に入ったロビンは、誤って飼っているハヤブサのマーリンを射てしまう。
すると傷付いたマーリンを、森の奥からやってきた不思議な少女が拐ってゆく。
少女を追って行った先は、狼の群れが潜む森の深淵。
メーヴ(エヴァ・ウィッテカー)と名乗った少女は、傷を治す癒しの能力を持ち、夜になると狼の姿となって群を統べるウルフウォーカーだった。
メーヴの母親のモルは狼の姿になったまま行方不明となり、人間の肉体は眠り続けている。
ロビンは、彼女のためにモルを探そうとするのだが・・・・


77年生まれのトム・ムーア監督はジブリ作品で育った世代で、その影響を受けているというが、本作は三部作のなかでも一番オマージュが分かりやすい。
古の日本同様アニミズム信仰の強いアイルランドに、宗主国イングランドからやって来た護国卿は、開拓を進めるために森を焼き狼を駆逐しようとしている。
そのために、彼の手足となって働いているのがハンターのビル。
これは「人間vs自然」の構図だけでなく、巨大な狼に乗った少女というビジュアルからも完全にアイルランド版の「もののけ姫」だ。
イングランド人をヤマトに、アイルランド人をエミシに見立てると、ウルフウォーカーの母モルが山犬の神モロで娘のメーヴがサン、ハンターの娘ロビンがアシタカ、護国卿がエボシ御前の役回り。
ただ自然を荘厳な美しさで描き、崇拝に近い感情を感じさせる「もののけ姫」と比べると、妖精の国アイルランドのムーアの世界は、もう少し自然との距離が近く「となりのトトロ」的な感覚だ。

本作のモチーフとなるウルフウォーカーは、スラブ民話が起源とされる狼男とはちょっと違う。
昼は人間、夜は狼の姿となり、ウルフウォーカーに噛まれた人間も新たな眷属になるのは同じだが、一つの体が変身するのではなく、人間の体が眠ると魂が抜けだして狼の体として具現化するのだ。
狼になっている間は人間の体は眠ったままで、どちらかの体が傷つくと、もう一つの体も傷つく
もとに戻るには、二つの体がすぐ近くになければならない。
悪魔的存在として描写されることが多い狼男に対して、ウルフウォーカーはどちらかと言えば森のヌシ的な存在として描かれている。
ただし、これはケルトの伝統を受け継ぐアイルランド的な見方。
支配者であるイングランド人にとっては、狼は淘汰すべき自然の象徴である。

本作がユニークなのは、この時代のアイルランドならではの対立軸が複数あること。
自然と人間だけでなく、キリスト教とケルト文化にルーツを持つアニミズム的土着信仰、支配者のイングランドと植民地のアイルランドなど、重層的な対立構造が絡み合う仕組み。
ユーラシア大陸の西の果てにあるアイルランドは、歴史を通して海峡を隔てた東の大国イングランドの影響下にあった。
イングランドでは1642年からピューリタン革命が勃発し、絶対王政が打破される。
これによってイングランドの支配が弱まると、アイルランド ・カトリック同盟が一時的に島の支配を確立するも、映画の前年の1649年にクロムウェル率いるイングランド軍によって全土が占領され、アイルランドの植民地化が完了する。
映画の舞台となるキルケニーが、イングランドから派遣されている護国卿と軍隊によって抑圧的に支配され、街の人々がイングランド人を嫌っているのはこのような背景があるからなのだ。
だが、信ずるものが違っても、それぞれの行動にも大義がある。
ウルフウォーカーが森を大切にするように、護国卿は狼を殺し森を文明の光で照らすことが、神から与えられた役割だと信じいている。
エボシ御前に彼女なりの正義があったように、本作の悪役にも彼なりの理由があるのだ。

古の時代の自然と人間の関わりを描く映像は、まるで絵巻物のように優美。
カートゥーンサルーンのキャラは丸いイメージがあるが、今回はケルト文化を象徴するウルフウォーカーのモルとメーヴを丸基調とし、イングランド人のビルとロビンは角を強調したデザインに。
全体にアイルランド人は丸っぽく、イングランド人は角ばらせることで、両者のコントラストを際立たせている。
そして直線的なキルケニーの街に対し、神秘的な森にはあちこちに丸や螺旋、渦巻のデザインが施されている。
「ブレンダンとケルズの秘密」や「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」でも曲線は強調されていたが、これはケルト文化以前のピクト文化の時代から伝わる文様をもとにしているという。
遠近法のパースを無視して、平面に複数の視点から見た映像を描きこむことによって立体を表現する、キュビズム的な背景手法もユニーク。
以前の作品と比べても、本作は映像のデザイン性が極めて高く、動かして楽しく、止めても美しいのが特徴だ。

カートゥーンサルーンのケルト三部作は、基本的に子どもたちに向けた作品
昭和の子どもたちが夢中になった、「まんが日本昔ばなし」みたいなものである。
護国卿との最後の戦いは、ウルフウォーカーが二つの体を持ち、狼になっている間は人間の体は眠ったままという弱点を使い、スリリングに展開する。
もっとも争いは描かれるが、描写としては抑えられたもので、残酷さは一切感じさせないのは、あえて生々しくリアリティ重視で描く宮崎駿と違うところだ。
そのためにストレートに受け取ると、最後なんかは甘々に感じられるかもしれない。
だがおそらく、観客の大人たち、そして子どもたちも「あの四人はその後どうなったのだろう?」と疑問に感じるのは最初から狙っていると思う。
現在のアイルランドに狼はいないことは、アイルランドの観客は当然知っているからだ。
映画は入り口であり、歴史への興味を「彼らがいつ、どのように絶滅したのか知りたい」まで動かすことで物語は完成するのである。
民族の歴史を描く優れた教育映画であり、素晴らしい娯楽映画だ。

今回は、アイリッシュウィスキーの「カネマラ 12年」をチョイス。
この銘柄の特徴は、まろやかかつスモーキーさが控えめで、ウィスキーが苦手な人にも比較的飲みやすいこと。
ピート香が効いていて、全体にスパイシーな中に旨味が浮かび上がってきて、なかなかに味わい深い。
クセが強くないので、ウィスキーベースのカクテルにしても良いと思う。

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中世アイルランドの町キルケニー。 森の開拓を進めるイングランドの権力者・護国卿の命令で、ハンターの男ビルは幼い娘ロビンを連れオオカミ退治のためにこの町へやって来た。 ロビンは森で、行方不明の母親を探している野性の少女メーヴと友達になる。 メーヴは傷を癒す魔法の力を持つ“ウルフウォーカー”で、眠っている間は魂が抜けだしてオオカミの姿になるのだった…。 伝説から生まれたファンタジー・アニメ。
2020/11/09(月) 00:29:30 | 象のロケット