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ショートレビュー「ミセス・ノイズィ・・・・・評価額1750円」
2020年12月11日 (金) | 編集 |
人を呪わば穴二つ。
 
篠原ゆき子が演じる、落ち目の小説家・吉岡真紀とその家族が越してきたマンションの隣室には、朝早くから何ごとかを唱えながら、盛大に布団を叩くおばさんが。
やがて真紀の娘の育児を巡る諍いから、彼女とおばさんは犬猿の仲となる。
そんな時、執筆に悩む真紀は、おばさんを題材にした連載小説「ミセス・ノイズィ」を若者向け雑誌に掲載し、センセーショナルなキャラクターが話題となり、バズってしまうのだ。
同時に、真紀とおばさんの喧嘩の様子が写った映像がネットに拡散し、いつの間にか「ミセス・ノイズィ」は“実話”として世間に広まってゆく。
 
本作がモチーフにしているのは、2005年に奈良県で起こったいわゆる“騒音おばさん事件”だ。
隣家トラブルの末に大音量で音楽を流し、「引っ越し!引っ越し!」と叫びながら、すさまじい勢いで布団を叩き続けるおばさんの姿は、当時大々的に報道されたので覚えている人も多いだろう。
結果的に彼女は隣家住人に対する傷害罪で逮捕され、有罪となったが、私たちは“騒音おばさん”という分かりやすいアイコン以外、彼女の実像を全く知らない。
同じように、本作の主人公の真紀は、隣家のおばさんの真実を知らないし、知ろうとしない。
実際映画の前半は、ひたすら隣人の言動に疲弊させられる真紀目線で話が進む。
引っ越してきて、いきなりトラブルになった彼女からしたら、おばさんは非常識で傲慢なとんでもない隣人で、同居している夫もキョドキョドしていて見るからに怪しい。
彼女に感情移入している観客も、おばさんを社会不適格者と思って観ている。
留守がちの夫が妻のトラブルに本気で向き合わず、曖昧な態度なのも余計に彼女の心をかき乱す。
 
しかし、映画はある時点から思わぬ方向へと舵を切る。
今度はおばさんの視点で同じ物語を描いてゆくことで、事象の多面性が明らかになってくるのだ。
大高洋子が好演するおばさんには、若田美和子という名前があり、彼女のすべての行動には理由がある。
本作はフィクションだが、この辺りは現実の事件の裁判で明らかになった、被告人の過去がヒントになっているのかも。
なぜ美和子は早朝に布団を叩くのか、なぜ真紀の娘を自宅に連れて行ったのか、改めて美和子の側から見たら、「なるほど」と思える理由がある。
もちろん彼女にも非はあるのだが、逆の視点から見ると真紀とどちらが悪いのか、一概には言えなくなってくる。
これは、あらゆるコミュニケーションツールが存在しているのに、根本の部分で不通である現代ニッポン人の物語で、日常を舞台としたもう一つの「羅生門」だ。
 
そして人気作家だった真紀が、スランプに陥った要因が、物語の状況と重なってくる。
嘗て高く評価されていた彼女の作品だが、今は「キャラクターや状況の面白さに頼り、全てが表層的」と評されている。
図らずもヒット作となった「ミセス・ノイズィ」で、彼女は作家としてブレイクスルーするどころか、自らの欠点を思いっきり掘り下げてしまっているのだ。
やがてある事件が起こり、小説の裏側にあった真実が明らかになった時、世間の手のひら返しが始まる。
それが間違っていても正しかったとしても、誰もが情報を発信でき、加害者にも被害者にもなりえる時代。
自分では悪気がなく炎上させていた方が、ちょっとしたきっかげで逆に炎上してしまうなど、決して他人事ではないだろう。
本作のプロットは非常によく考えられていて、監督と共同脚本を手がける天野千尋は、不幸にも対立してしまった二人の女性に寄り添い、主人公の作家というキャラクター設定を生かし、痛みはあるが希望もある彼女ならではの解決策を導き出す。
不通に陥った現代人に、ふと我が身を振り返らせる、厳しくも優しい寓話である。

今回は、パワフルなおばさんが出てくる映画ということで「ドラゴン・レディ」をチョイス。
ホワイト・ラム45ml、オレンジ・ジュース60ml、グレナデン・シロップ10ml、キュラソー適量をステアしてグラスに注ぎ、スライスしたオレンジを添える。
ドラゴン・レディとは、元々魅力的なアジア人女性を指す言葉だが、味わいは激しそうな名前とは逆に甘口で飲みやすい。
喧嘩した友だちとも、これを一緒に飲めば仲直り出来そう。

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引っ越したばかりの作家・吉岡真紀は、隣人・若田美和子の早朝から始まる激しい布団叩きの音や、嫌がらせの数々に悩まされる。 しかし、幼い娘は若田夫妻に懐き始めるし、仕事が忙しい夫からは気にし過ぎだと諭され、ストレスは溜まる一方。 そこで、美和子をネタにした小説を書き反撃に出るが、事態はマスコミを騒がす大事件へと発展してゆく…。 社会派コメディ。
2020/12/13(日) 02:41:56 | 象のロケット