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ショートレビュー「FUNAN フナン・・・・・評価額1700円」
2020年12月26日 (土) | 編集 |
国境を越える、その日まで。

1970年代、ポル・ポト率いる狂信的な極左過激組織クメール・ルージュに全土を制圧されたカンボジアを舞台に、一人の女性が辿る苦難の旅路を描くアニメーション映画。
主人公のチョウのヴォイスキャストにベレニス・べジョ、夫のクンをルイ・ガレルが演じる。
「ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん」などの、レイアウトアーティストとして知られるデニス・ドゥ監督は、フランス生まれのカンボジア系二世。
この物語はのちに亡命者となった彼の実の母親をモデルに、緻密な取材を重ねて構成されているのだが、実写ではなく「絵」で表現することで、より普遍的な物語となっている。
2018年のアヌシー国際アニメーション映画祭で、長編最高賞となるクリスタル・アワードを受賞した作品だ。
タイトルの「FUNAN フナン」とは、1世紀頃から500年に渡って繁栄した、古代カンボジアの扶南国のこと。

ベトナム戦争の終結で、アメリカを後ろ盾とするロン・ノル政権が崩壊し、クメール・ルージュがプノンペンを陥落させたのは1975年4月。
究極の反知性カルトに支配された国民の運命は、とことん悲惨だ。
不安定ではあったが、平和で豊かだった日常はある日突然断ち切られる。
都市に住む住人は、今まで農民たちを搾取してきたのだから、これからは全員が農村へと移り住み、自分で自分の糧を作り出さねばならないと言う考え方から、首都プノンペンの住民たちは一切の財産・地位を奪われ、農村部へと強制移住させられる。
それは“平等”をスローガンにした新たな搾取構造、奴隷生活の始まりである。

主人公のチョウとクンの夫婦は、プノンペンから田舎へ移動する途中、一人息子のソヴァンと離れ離れになってしまう。
幼い子供を探しに戻ることすら許されず、チョウにとってはソヴァンが生きていて、いつか再会できると信じることが、この世の地獄を生き抜く糧となる。
だが、事態は改善するどころか、どんどん悪化してゆく。
革命の名の下に、あらゆる自由は否定され、明日生きていられるかすら、新たな支配者の思惑次第。
原始共産制を理想社会とするクメール・ルージュは、知識人をまとめて殺してしまったので、当然ながら農業にしろインフラにしろ、まともな計画を建てられるリーダーがいない。
デタラメな事業から生み出されるのは、深刻な生産性の低下と人手不足。
食事すら満足に取れず、子は親から少年兵として洗脳するために、夫は妻から労働力として引き離され、家族はバラバラ。

やがて残された者の中でも、生きるために敵にこびる者と、尊厳だけは奪われまいとする者に溝が生まれてゆく。
1975年からベトナム軍の侵攻によりポル・ポト政権が崩壊するまでの4年間に、カンボジアのキリング・フィールドで起こったことは、様々な作品で描かれてきたが、これは一人の女性の話なのでグッと凝縮されていて余計に怖い。
しかし、ドゥ監督は物語を白黒二元論で語ることは極力避けている。
クメール・ルージュの兵士となったチョウのいとこや、彼女から子供を奪ったことに罪悪感を募らせている党幹部の娘のエピソードは、悪をなすのも善をなすのも、結局同じ人間であることを端的に表現している。
87分というコンパクトな上映時間にもかかわらず、描かれている辛いことが多すぎて、本来ならば悲劇であるはずの終盤のある事件すら、“希望”と感じてしまうのが悲しい。
やっとたどり着いた国境の向こうのタイに、元の祖国と同じ平和な風景が広がっているのが、この世界の理不尽さを象徴する。
ドゥ監督は片渕須直の影響を受けているそうで、確かにアプローチ的には「この世界の片隅に」に通じる部分もあるのだが、徹底的な救いの無さはむしろヨン・サンホに近い気がする。
戦争や圧政で祖国を追われた難民の存在は現在も重要な問題で、この映画は過去を鏡にして今を描いた作品だということは、決して忘れてはいけないことだろう。

今回は主人公が目指すタイの国民的ビール、ブーンロード・ブルワリーの「シンハー」をチョイス。
1933年にドイツと技術提携し生まれたジャーマンスタイルだが、南国ビールの例に漏れず、すっきり爽やか系のキレのある味わい。
ビアグラスに氷を入れて注ぐのが南国流。
脱出までの極限の緊張状態をくぐり抜けたら、喉の渇きを癒したい。

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