2021年04月08日 (木) | 編集 |
ヒーローは決して負けない。
竹宮ゆゆこの同名小説を、SABU監督が映画化した作品。
トリッキーな作劇で、「えっ、まさか?」というところに着地するが、とても良かった。
中川大志演じる高校3年生の濱田清澄は、ひょんなことから、同級生たちから激しいいじめにあっている1年生の蔵本玻璃と知り合う。
強い正義感を持つ清澄は玻璃のことを放っておけなくなり、頑なに他人を拒んでいた玻璃も、清澄に対して徐々に心を開いてゆく。
映画の前半は、石井杏奈が演じる玻璃のキャラクターがちょっと痛々しいものの、いじめられっ子の少女を、正義漢の少年がその優しさで救ってゆくという、どこにでもありそうなの学園青春ものだ。
ところが、物語の中盤から映画はその装いを大きく変えてくる。
玻璃が心を閉ざしていたのには、実は家族にまつわる誰にも言えない秘密があったがゆえ。
予想だにしなかったその秘密に触れてしまったことで、清澄と玻璃は絶体絶命の危機に陥る。
冒頭の嵐の意味づけがよく分からなかったので、主人公たちと絡まないままの、北村匠海と原田知世の立ち位置がずっと疑問だったのだが、なるほどこれは狙い。
「UFOを撃ち落とした結果、死んだのは何人?」
終わってみると、このファーストカットの問いに全ての答えがあるので、注目してみて欲しい。
後半になって物語の全貌が見えてくると、いよいよそれまで巧妙に隠れていた“UFO”の攻撃がはじまり、清澄と玻璃はお互いを生き残らせるために、ヒーローとして究極の戦いをはじめる。
清澄少年の語る、ヒーローの三原則。
ヒーローは悪の敵を身逃さない。
ヒーローは自分のためには戦わない。
ヒーローは決して負けない。
つまりヒーローとは、自分でない誰かを傷付けようとする悪を見逃さず、決して悪に負けてはならないのである。
その必死の心を、私たちは“愛”と呼ぶ。
これは”愛”と”永遠“に関する寓話で、魅力を言語化するのが非常に難しい作品だ。
愛によって生かされた者は、その愛を引継ぎ、また別の誰かに愛を注ぐことで、例え肉体が滅んだとしても精神は永遠に生き続ける。
SABU監督と言えば疾走する映画で知られるが、本作では一応清澄が走る描写はあるものの、映画そのものは決して勢いで押し流すスタイルではない。
むしろトリッキーな作劇に隠して、キャラクターの心情を丁寧に描いているのが印象に残るが、彼らの内面では愛の激流が流れている。
いかにも一本気な中川大志と、捨てられた子猫のような石橋杏奈は、それぞれ運命の恋人たちを好演。
堤真一の不気味さ、コミックリリーフ気味の松井愛莉と清原果耶の尾崎姉妹コントラスト。
そして物語の結果として、北村匠海と原田知世の決意を秘めたキャラクター。
さすが役者出身の監督らしく、俳優を生かすのが実に上手い。
普通の学園ものとは、一味も二味も違った刺激的な青春活劇だ。
しかし、私的には大好物な作品だったんだが、相当にクセが強いから、これをハッピーエンドと捉えるかどうかを含めて、お客さんを選びそうではある。
今回は、毒のある甘い青春映画なので「スウィート・ポイズン」をチョイス。
ライト・ラム30ml、ココナッツ・ラム60ml、ブルー・キュラソーを氷と共にシェイクし、冷やしたグラスに注ぎ、適量のパイナップル・ジュースで満たし、最後にカットしたパイナップルを飾る。
ゴシック小説の世界を再現していることで知られる、ニューヨークのテーマレストラン、“Jekyll and Hyde Club”の人気カクテル。
色合いは名前の通り毒々しいが、味わいは甘めでスッキリとした初恋の味。
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竹宮ゆゆこの同名小説を、SABU監督が映画化した作品。
トリッキーな作劇で、「えっ、まさか?」というところに着地するが、とても良かった。
中川大志演じる高校3年生の濱田清澄は、ひょんなことから、同級生たちから激しいいじめにあっている1年生の蔵本玻璃と知り合う。
強い正義感を持つ清澄は玻璃のことを放っておけなくなり、頑なに他人を拒んでいた玻璃も、清澄に対して徐々に心を開いてゆく。
映画の前半は、石井杏奈が演じる玻璃のキャラクターがちょっと痛々しいものの、いじめられっ子の少女を、正義漢の少年がその優しさで救ってゆくという、どこにでもありそうなの学園青春ものだ。
ところが、物語の中盤から映画はその装いを大きく変えてくる。
玻璃が心を閉ざしていたのには、実は家族にまつわる誰にも言えない秘密があったがゆえ。
予想だにしなかったその秘密に触れてしまったことで、清澄と玻璃は絶体絶命の危機に陥る。
冒頭の嵐の意味づけがよく分からなかったので、主人公たちと絡まないままの、北村匠海と原田知世の立ち位置がずっと疑問だったのだが、なるほどこれは狙い。
「UFOを撃ち落とした結果、死んだのは何人?」
終わってみると、このファーストカットの問いに全ての答えがあるので、注目してみて欲しい。
後半になって物語の全貌が見えてくると、いよいよそれまで巧妙に隠れていた“UFO”の攻撃がはじまり、清澄と玻璃はお互いを生き残らせるために、ヒーローとして究極の戦いをはじめる。
清澄少年の語る、ヒーローの三原則。
ヒーローは悪の敵を身逃さない。
ヒーローは自分のためには戦わない。
ヒーローは決して負けない。
つまりヒーローとは、自分でない誰かを傷付けようとする悪を見逃さず、決して悪に負けてはならないのである。
その必死の心を、私たちは“愛”と呼ぶ。
これは”愛”と”永遠“に関する寓話で、魅力を言語化するのが非常に難しい作品だ。
愛によって生かされた者は、その愛を引継ぎ、また別の誰かに愛を注ぐことで、例え肉体が滅んだとしても精神は永遠に生き続ける。
SABU監督と言えば疾走する映画で知られるが、本作では一応清澄が走る描写はあるものの、映画そのものは決して勢いで押し流すスタイルではない。
むしろトリッキーな作劇に隠して、キャラクターの心情を丁寧に描いているのが印象に残るが、彼らの内面では愛の激流が流れている。
いかにも一本気な中川大志と、捨てられた子猫のような石橋杏奈は、それぞれ運命の恋人たちを好演。
堤真一の不気味さ、コミックリリーフ気味の松井愛莉と清原果耶の尾崎姉妹コントラスト。
そして物語の結果として、北村匠海と原田知世の決意を秘めたキャラクター。
さすが役者出身の監督らしく、俳優を生かすのが実に上手い。
普通の学園ものとは、一味も二味も違った刺激的な青春活劇だ。
しかし、私的には大好物な作品だったんだが、相当にクセが強いから、これをハッピーエンドと捉えるかどうかを含めて、お客さんを選びそうではある。
今回は、毒のある甘い青春映画なので「スウィート・ポイズン」をチョイス。
ライト・ラム30ml、ココナッツ・ラム60ml、ブルー・キュラソーを氷と共にシェイクし、冷やしたグラスに注ぎ、適量のパイナップル・ジュースで満たし、最後にカットしたパイナップルを飾る。
ゴシック小説の世界を再現していることで知られる、ニューヨークのテーマレストラン、“Jekyll and Hyde Club”の人気カクテル。
色合いは名前の通り毒々しいが、味わいは甘めでスッキリとした初恋の味。

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