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街の上で・・・・・評価額1750円
2021年04月21日 (水) | 編集 |
ぼくたちの、ちょっとこんがらがった青春。

快進撃を続ける今泉力哉監督による、下北沢を舞台とした群像劇。
古着屋で働く青は、浮気された上にフラれた恋人の雪のことが忘れられない。
そんな時、美大に通う女性から彼女が監督する自主映画への出演を依頼される。
読書好きの青の小さなセカイを中心に、幾つものセカイの波紋が、お互いに影響し合いながら広がってゆく。
映画全体の大きなフレームになるのは、下北沢の街そのものだ。
共同脚本に、「音楽」などで知られる漫画家の大橋裕之を迎えたオリジナルストーリー。
主人公の青を「あの頃。」にも出演していた若葉竜也、恋人の雪に穂志もえか、青が通う古本屋の店員に古川琴音、自主映画の監督に荻原みのり、映画の衣装スタッフで青と仲良くなる城定イハに中田青渚と、生きのいい若手俳優たちがリアリティたっぷりに街の人々を演じる。

下北沢の小さな古着屋で働いている荒川青(若葉竜也)は、人生ではじめてできた恋人の雪(穂志もえか)から、浮気を告白され、別れを告げられてしまう。
失意の青だったが、古本屋で買った本を読んで暇をつぶし、夜にはふらりとライブに行ったり、馴染みの店でランチをしたり、平凡な日常のサイクルは変わらない。
そんなある日、店にやって来た美大生の高橋町子(萩原みのり)から、彼女が監督する自主制作映画に出演してほしいと頼まれる。
演技なんてやったことが無いので断ろうと思っていたところ、行きつけのバーで「それは告白だ!」と焚きつけられ、馴染みの古本屋の店員の冬子(古川琴音)に、演技の練習ビデオを撮ってもらったりしているうちに、だんだんとその気になってくる。
しかし撮影の当日、緊張のし過ぎで何テイク撮ってもNGとなり、最後には代役を使われてしまう。
打ち上げ会場で青が落ち込んでいると、衣装スタッフの城定イハ(中田青渚)から誘われて、なぜか彼女の部屋に行くことに・・・・


冒頭、本を読む青の姿が映し出される。
これは彼の出演した自主制作映画のワンカットなのだが、完成した映画に青の姿は無い。
初めての経験にガッチガチに固まってしまった彼の演技は、下手すぎて使えなかったのだ。
この映画を端的に言えば、下北沢の街を俯瞰で描いた点描画のような作品だ。
点描画は、遠くからはたくさんの情報が見えているようで、ある程度以上近寄ると全ては小さな色の点となって意味を失ってしまう。
青の幻の出演カットのように、この街の上では日々様々な出来事が起こり、その殆どは誰も見ることは無いけど、確かに存在している。
そしてそれは下北沢という街の持つ色彩を、人知れず豊かにしているのだ。

青の行動範囲は異様に狭い。
基本的にはアパートの部屋と勤務先の古着屋、そして近所の古本屋や飲食店だけ。
電車に乗ったりする描写もなく、全て徒歩圏内。
下北沢の街の中に存在する、彼の小さなセカイである。
ここでは、誰もが自分のセカイと、物語を持っている。
普段は独立して存在しているセカイ同士が、何らかのきっかけでぶつかり合うと、波紋が生じ、一つの波紋がまだ誰かのセカイとぶつかり、絡み合って複雑な模様を描き出してゆく。

面白いのがそれぞれのキャラクターには、文化の街・下北沢を象徴する様々な要素が紐づけられていること。
青は元ミュージシャンで、今はファッションの仕事をしている。
古本屋の冬子はもちろん本・文学で、町子は映画、衣装担当のイハは映画とファッションだ。
友情出演というには相当ガッツリ出ている、朝ドラ俳優役(実際に2本出ている)の成田凌は芝居。
唯一、青の元カノの雪は何をやっている人なのか不明だが、交友関係からすると彼女も芝居関係なのかもしれない。
中盤で青がカフェの店長と文化と街について語るシーンがある。
店長は漫画や映画、小説といった文化はずっと残るから、どんどん変化する街よりもすごいと語る。
それに対して青は、変わってもなくなっても、あったことは事実だから街もすごいと言う。
街はそこにいる人も店も文化も内包して、常に変化してゆく。
そして本作の登場人物は全員、下北沢という街を形作る色の点なのである。

今泉力哉監督といえば、恋愛映画マイスターとして知られるが、今年公開された「あの頃。」では恋愛モードを封印し、新しい可能性を見せた。
一方、先に完成していた本作は、コロナ禍のために公開が延期されていたが、恋愛模様を内包しつつも、様々な形の人の繋がりを描き、最後にはある種の映画論まで。
いわば今までの集大成的な、今泉力哉全部入りの賑やかさがある。
本作が撮影されたのは2019年だが、今観ると人々が誰もマスクをせず居酒屋で騒いだり、ライブハウスに行ったり、なんの心配もなく日常を楽しんでいる風景が懐かしく思える。
青が務める古着のヒッコリー、古書のビビビ、カフェCITY COUNTRY CITY、ライブハウスのTHREE、小劇場のザ・スズナリからミニシアターのトリウッドまで、本作では実在の場所や店がそのまま使われていて、見知った街が非常に映画的にフレーミングされ、本当にこの街にいそうな人たちの、ちょっとした日常と非日常の合間の物語にワクワク。

もともと俳優の個性を引き出すのには定評のある今泉監督だけに、本作でも若い才能のアンサンブルが見事なハーモニーを奏でてくれる。
全体の軸となる若葉竜也は最近飛ぶ鳥を落とす勢いだが、中盤から登場する城定イハ役の中田青渚が、インパクトのある名前と関西弁キャラクターで美味しいところを全部持ってゆく。
若葉竜也と成田凌は、「愛がなんだ」でも共演しているが、過去作との俳優陣のオーバーラップと役柄の遊び心は、作家のパラレルユニバース的な楽しみもある。

そして、本作はフィックスの長回しショットが非常に印象的。
中でも青がイハの家に招かれて、二人っきりのムッチャながーくてちょいドキドキする、恋バナのシーンは抜群の安定感で本作の白眉。
フィックスの長回しは、演出力の無い人が撮るととことん悲惨だが、これはむしろずっと眺めていたくなる不思議な魅力があふれている。
そんな長い夜が開けた後に起こる、路上で5人の男女の恋愛感情がそれぞれの思惑込みでぶつかりあう、爆笑シーンとのコントラスト。
絶妙な緩急の付け方が、ストーリーテリングのダイナミズムを生み出している。
小さな色の点は混じり合い、弾き合い、一つのユニークな風景となって、青の小さなセカイは、いつの間にか下北沢という”世界”の一部となっている。
いい意味で肩の力が抜けた、今泉監督の円熟を感じさせる傑作。
ところで城定秀夫監督が「じょうじょうひでお」だと、イハのおかげで知った。
失礼ながら、ずっと「しろさだ」だと思い込んでいた。

今回は、青の愛飲酒「レモンサワー」をチョイス。
まさに財布に優しい庶民のカクテルで、多種多様なうまい缶が発売されているが、配合なんかは結構個人の好みが出るもの。
ここでは我が家のレシピを。
氷にを入れたグラスに、冷やした甲種焼酎100ml、ペリエ250ml、レモンの絞り汁適量を注ぎ、軽くステアする。
炭酸水はお好みでいいが、ある程度強めのものがおすすめ。
最後に、1/4にカットしたレモンを飾って完成。
氷が溶けて薄まってきたら、レモンを絞るとある程度相殺できるので、大きめにしておく。
レモンに含まれるクエン酸が、肝機能を促進するおかげで悪酔しにくいのもあって、量的には人生で一番飲んでる酒かもしれない。

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下北沢の古着屋で働く青年・荒川青(あお)は、恋人・川瀬雪に浮気された挙句フラれてしまう。 そんな時、美大に通う女性監督から自主製作映画への出演を依頼された。 行きつけの飲み屋では常連客から「それは告白だ!」と焚きつけられ、演技の練習にも力が入るが…。 青春ドラマ。 ≪誰も見ることはないけど、確かにここに存在してる≫
2021/04/26(月) 04:30:30 | 象のロケット
◆『街の上で』ギンレイホール ▲胸板薄い同士という感じが初々しい。にしてもコロナ禍前はネオンが明るいな。 五つ星評価で【★★★★きゅんきゅん】 何かとってもよい感じにステキな女の子と、上手く熟成されてる脚本に出会ったなあという感じ。好みは主人公を私的に利用する関西弁の女の子(↑写真の子)。利用が前面に出すぎてるつーか、役に立たないとポイステっぽい女映画監督はイヤ。男女が逆だったら、あーは...
2022/03/22(火) 15:50:10 | ふじき78の死屍累々映画日記・第二章