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クルエラ・・・・・評価額1700円
2021年05月31日 (月) | 編集 |
もう一つの、「ありのままで。」

ファッションデザイナー志望の少女エステラは、いかにして悪魔の様な女”クルエラ・ド・ヴィル“となったのか。
白と黒のツートンヘアが特徴的な「101匹わんちゃん」のディズニーヴィラン、正確に言えばヴィラントリオの誕生譚。
パンクムーブメントが盛り上がる70年代のロンドンで、数奇な運命に導かれたエステラがファッション業界で才能を開花させ、やがて自分が本当は何者なのかを知る。
エマ・ストーンがノリノリで演じるタイトルロールは、本作では文字通りに白黒決着をつけただけで、そんなに悪いことはしてないのだが、エキセントリックなキャラクターは非常に魅力的。
ディズニーヴィランの再定義としては「マレフィセント」に次ぐものだが、さすが小粒でもピリリと辛い人間ドラマを得意とする、クレイグ・ギレスピー監督だ。
彼の作品で一番有名なのが出世作の「ラースと、その彼女」と、アリソン・ジャネイにアカデミー助演女優賞をもたらした「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」だろうが、どの作品を見ても人間ドラマが丁寧。
この映画も、たとえ元のキャラクターを知らなかったとして、十分に楽しめる。
※核心部分に触れています。

1964年のイギリス。
生まれつきの白毛症で、白と黒の2色に分かれた髪を持ち、燃えるような情熱と抑えられない怒りを抱えた少女エステラ(エマ・ストーン)は、度重なるトラブルで小学校を放校される。
シングルマザーの母キャサリン(エミリー・ビーチャム)は援助を求めるために、とある邸宅を訪ねるが、不慮の事故で転落死。
怖くなったエステラは一人で逃げ出し、トラックの荷台に乗ってロンドンへとたどり着く。
ストリートキッズのジャスパー(ジョエル・フライ)とホーレス(ポール・ウォルター・ハウザー)と仲良くなったエステラは、廃屋の屋根裏を根城に、泥棒を生業にして成長してゆく。
10年が経ったころ、仕事で使う変装用の衣装の裁縫やデザインに才能を発揮していた彼女は、いつしかファッション業界に強い憧れを抱くようになる。
泥棒家業から足を洗い、一流百貨店のリバティに入店するも、仕事は雑用ばかり。
そんな時、酒に酔って店のディスプレイをめちゃくちゃにしてしまったところ、カリスマデザイナーのバロネス(エマ・トンプソン)に見いだされ、アシスタントとしてファッション業界に足を踏み入れるのだが・・・・


1961年に公開された「101匹わんちゃん」では、ダルメシアンのポンゴとパーディタ夫婦が、生まれたばかりの15匹の子犬をクルエラ一味に誘拐される。
クルエラはダルメシアンの毛皮を使ったコートを作るために、15匹の他にも99匹もの子犬をさらっている恐ろしい女なのだ。
彼女の計画は、子犬の居場所を知ったポンゴとパーディタと仲間たちによって阻止されるが、クルエラはそのルックスのインパクトもあって人気ヴィランとなる。
長身の悪女がデブとヤセの子分を従えたビジュアルは、日本のタイムボカンシリーズの三悪キャラクターにも大きな影響を与え、1996年に作られた実写リメイク版「101」と続編の「102」では、名女優のグレン・クローズがクルエラを怪演した。

前日譚となる本作では、エマ・ストーンが若き日のクルエラを演じる訳だが、物語の時代設定をオリジナルが制作したされた1960年前後から、パンクムーブメントの黎明期に当たる70年代半ばのロンドンに移したアイディアが秀逸。
当時の“英国病”によって社会が衰退し、人々が強い閉塞を感じている時代にあって、パンクの登場は音楽だけでなく政治やファッションなど多くの分野に影響を及ぼした一大カルチャームーブメントだった。
この時代設定によって、もともとぶっ飛んだキャラクターだったクルエラに、若さと共にとんがった反逆性が備わった。

物語の序盤、少女時代のエステラは、常に心に怒りを感じている。
シングルマザーのキャサリンに育てられ、学校に通うようになっても、協調性はゼロ。
男の子にも平気でケンカを売り、ついには小学校を追い出されてしまう。
だがそんなパンクなキャラクターは、突然のキャサリンの死をきっかけに、影をひそめる。
ジャスパーとホーレスと出会い、特徴的なツートンヘアも目立たない色に染めてしまう。
三人がストリートキッズからプロの泥棒トリオへと成長してゆく辺りは、いかにも20世紀のイギリス映画という風情。
ひょんなことからカリスマデザイナーのバロネスに気に入られ、スタッフとしてデザイナーを目指す様になると、今度は「プラダを着た悪魔」みたいなお仕事映画の趣だ。
ちなみにやたらと豪華な本作の脚本チームには、あの映画のアライン・ブロッシュ・マッケンナも原案で参加している。
彼女が生来のパンクな属性を取り戻すのが、実はバロネスこそがキャサリンを殺した敵だということを知った時。
それまでのまじめで出来る女のエステラは消え去り、怒りに燃えて復讐のためなら何でもする悪女クルエラが姿を現すのである。

髪の色を白黒に戻し、バロネスのパーティーに白いコートを纏って現れたクルエラが、一瞬で真っ赤なドレスに変身し、宣戦布告するシーンはまことにカッコいい。
ここから彼女が次々と仕掛ける世間を巻き込んだパフォーマンスは、守旧のバロネスと新世代クルエラのデザイナーバトルともなっている。
ゴミで出来た超長いドレスなど、度肝を抜く反逆的デザインは、まさに彼女のパンクなスピリットを象徴する。
ニーナ・シモンからクイーン、ドアーズ、ザ・クラッシュなど、絶妙なタイミングで映画を彩る時代を代表するサウンドもピタリと決まり、どこまでもスタイリッシュだ。
しかしこの辺りまでは、女性版のややマイルドな「ジョーカー」的な雰囲気で、ディズニー映画であることを忘れていた。
クルエラとバロネスの関係も、「ジョーカー」のホアキン・フェニックスとロバート・デ・ニーロとの愛憎関係とちょっと似ている。

ところが物語のミッドポイントを境にして、世界観は急速に神話的な様相を帯びてくるのだ。
自分に喧嘩を売っているクルエラの正体がエステラだとバロネスにバレ、一気に絶体絶命の危機に追い込まれると、それまで役割が分からないキャラクターだったマーク・ストロング演じるバロネスの執事が、重要なキーパーソンとして浮上してくる。
そして語られる、クルエラの出生の秘密。
この物語がある種の貴種流離譚であることが明らかになり、ついには“未来の話”である「101匹わんちゃん」の伏線まで盛り込んで、由緒正しいディズニーのお伽話の話型、それもパンクな本作らしく、従来の形ではなく反転したニューバージョンへと収束するのだからお見事だ。
ここでは、本来無償の愛を注ぐはずの生母が真のヴィランであり、悪の役割を押し付けられがちな義理の母は正しき者である。
孤児となった可哀想なお姫様は、王子様を待つのではなく、自らの才覚で世の中の権威に牙を剥き、ちょっと情けない男たちを従えて復讐を果たすのだ。
終盤の畳み掛けるような展開は、亡き母の無念をはらす痛快なクライマックスであるのと同時に、キャラクターとしてのクルエラも一気呵成に完成させる。
良くも悪くも、ヴィランがヴィランで無くなってしまった「マレフィセント」と違って、クールな悪を感じさせるところに着地するのもいい。
「アイ,トーニャ」でキャラクターに感情移入させながら、きっちりと内面のダークサイドを描いたギレスピーだけのことはある。

本作に続編があるとすると、時系列的には「101匹わんちゃん」の再リメイクとなるのだろうが、あの映画のクルエラとは、ダルメシアンへの態度をとっても、いまいち繋がらないような気がする。
いっそ、基本設定だけ借りてオリジナルストーリーでもいいのではないか。
とりあえず、一本だけでお終いにするにはあまりにも勿体無い、非常に魅力的なキャラクターだ。

今回は、悪魔のような女の物語ということで「デビルズ」をチョイス。
ポート・ワイン30ml、ドライ・ベルモット30ml、レモンジュース2dashを、氷と共に素早くステアして、グラスに注ぐ。
名前はコワイが、本作のクルエラがワルカッコいい人だったように、実はマイルドで飲みやすい。
優しく甘いポートワインに、ベルモットの香りがアクセントとなり、レモンの酸味が爽やかな味後味を演出する。

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2021/06/01(火) 22:29:02 | 象のロケット