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ショートレビュー「漁港の肉子ちゃん・・・・・評価額1700円」
2021年06月21日 (月) | 編集 |
世界は、本当に愛で満ちているの?

昭和レトロな東北の漁港の街に住み着いたのは、訳あり人生を辿って来た母娘
トトロみたいなまん丸の母ちゃんに育てられた、ボーイッシュな11歳の娘の成長を描くリリカルな青春ストーリーだ。
西加奈子の同名小説を、傑作「海獣の子供」の渡辺歩監督と作画監督・キャラクターデザインの小西賢一らメインスタッフが再結集して映画化。
タイトルロールの肉子ちゃんを大竹しのぶ、娘のキクコをCocomiが演じる。
企画・プロデュースを明石家さんまが手掛けているのも話題で、制作を担当したのは最近吉本絡みの作品が多いSTUDIO 4℃。
昨年末に公開された「えんとつ町のプペル」は、テリングはゴージャスだったものの、プロットが破綻していてちょっと残念な出来だったが、こちらは素晴らしい仕上がり。
企画ものと敬遠している人は、騙されたと思って是非観てほしい。

キャラクターの体型に引っ掛けて、作中では宮崎駿オマージュが激しいものの、内容的にはむしろ「じゃりん子チエ」の高畑イズムを意識させる作品だ。
実際、焼肉屋が重要な舞台の一つだったり(じゃりん子チエはホルモン屋だけど)、頼りない親に対して子供の方がしっかりしていたり、共通点も多い。
小西賢一は高畑作品への参加が多く、遺作となった「かぐや姫の物語」では作画監督を務めていたのも、高畑ジブリの系譜を感じさせる由縁だろう。

大竹しのぶが凄まじい演技の振り幅で怪演する肉子ちゃんは、食べることとダメンズが大好き
惚れっぽく、情に絆されて金を貢いだ挙句に騙され、借金抱えて各地を転々。
最後の彼氏だった小説家志望の男が、遺書を残して家を出たことから、彼を探し続けていつしか東北の日本海側にある今の街に流れ着き、焼肉屋で働きながら港に係留されている古いグラスボートに娘のキクコと住んでいる。
11歳のキクコは母とは正反対のスレンダーな体型で、顔も全く似ていない。
肉子の波乱万丈の人生を見て来たせいか、性格もかなりクール
クラスの同級生の関係を敏感に読み取って、打算的に面倒を避けるくらい大人に育っている。
愛嬌のあるデブの母を愛している反面、ちょっと恥ずかしくも思っているのはいかにも思春期。
私は知らなかったが、キクコを演じるCocomiはキムタクの娘さんらしい。
声優の発声じゃないなと思ってたけど、ナチュラルでとても良かったよ。

実は肉子の本名も漢字違いの見須子(みすじ)キクコなのだが、この親子の人生には、ちょっとした違和感があちこちに仕掛けられていて、それらが終盤の怒涛の展開によって回収される仕掛け。
シンプルな人情ものと見せかけて、実は相当にヘビーな方に持っていくのは西加奈子らしい。
実質的な主人公であるキクコの周りには、母の他にも永遠に完成しない街の模型を作っている変顔の同級生・二宮や、キクコにとってこの街で最初の友達となったマリア、母娘を見守っている焼肉屋の大将サッサンといったキャラクターが配され、それぞれとの関係がキクコの成長を後押しする。
やがて、歳の割には大人びているくらいに思っていたキクコが、実は誰にも知られないまま、大きな葛藤を心の底に秘めていたことが明らかとなる。
そして、キクコが自分の生まれて来た本当の意味を知り、大人の階段を少しだけ上がったことによって、ちょっと変わった母娘は、愛と悲しみの絆を共有する女同士として、新たな関係を結ぶのである。

やはり少女の成長譚だった「海獣の子供」と同様、心象を裏打ちする繊細な自然描写を含めて、渡辺歩監督が素晴らしい仕事をしている。
冒頭からの怒涛のカリカチュアで、アニメーションの動く楽しさを見せ、これもジブリを思わせる飯テロ攻撃も効果的で、実にお腹が減る映画だった。
ただ可愛い絵柄だが、構成がトリッキーなことと、ネグレクトなどの結構ドロドロした部分も描いているので、あまり小さな子供向けとは言い難い。
世の中綺麗事だけではないよ、ということなのだが、基本的にキクコと同じくらいの年代に向けた作品で、小学生以下にはちょっと厳しいかな。

今回はもちろんミスジ肉に合う酒。
秋田県の両関酒造の「花邑 純米吟醸 酒未来生酒 をチョイス。
隣県山形の銘酒「十四代」の高木社長から、技術指導というか全面的なプロデュースを受けて作られた酒。
優しく瑞々しくフルーティ。
ボディはライトで、余韻は穏やか。
軟らかくて濃厚な脂の旨味を持つ、ミズジ との相性は抜群だ。

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コメント
この記事へのコメント
> あまり小さな子供向けとは言い難い。

難しい事がおちびさん達に分かるようになるのは大きくなってからかもしれないけど、とりあえず肉子ちゃんの動きの面白さや、誰もが望まれてるという多幸感を感じてくれればいいかなと思います。
2021/06/22(火) 06:40:55 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
幼稚園くらいの子が来てたんだけど、後半肉子の人生が語られるあたりで飽きちゃって、結局走り回って親子で途中で出ちゃったんだよね。
やっぱ出会うべき年齢ってあって、小学生以下ではちょっと難しいと思います。
2021/06/28(月) 22:22:10 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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