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夏への扉 ―キミのいる未来へ―・・・・・評価額1650円
2021年07月01日 (木) | 編集 |
バック・トゥ・ザ・パスト。

期待通りによく出来ていて、非常に面白かった。
巨匠ロバート・A・ハインラインが、1956年に発表した時間SFの古典中の古典、「夏への扉」を山崎賢人主演で実写映画化した作品。
日本でも長年に渡って愛され、特に福島正実訳のハヤカワ文庫版は、キーパーソン(?)となるネコのピートことペトロニウスの後ろ姿を描いた、中西信行の印象的な表紙イラストも相まって人気が高い。
世界中に多くのフォロワーを生んだ名作だが、意外にも長編映画化されるのはこれが初めてだと言う。
原作小説を「浅田家!」の菅野友恵が脚色し、三木孝浩が監督を務める。
主人公のダン改め高倉宗一郎を山崎賢人、ヒロインのリッキイに当たる松下璃子を清原果耶が演じる。

1995年の東京。
ロボット工学者として活躍する高倉宗一郎(山崎賢人)は、愛猫のピート(ペトロニウス)と一人と一匹暮らし。
開発している新型ロボットがマスコミに注目され、ちょっとした時の人となっている。
尊敬する科学者だった亡き父の想いを受け継いだ新技術、プラズマ蓄電池の開発も大詰め。
共に早くに両親を亡くした幼なじみの璃子(清原果耶)が、毎日のようにやって来て、世話を焼いてくれているが、彼女はもうすぐ寄宿制の学校に入るために引っ越しが決まっている。
そんな時、宗一郎は信頼していたビジネスパートナーの松下和人(眞島秀和)と恋人の白石鈴(夏菜)に裏切られ、全てを失った上に、コールドスリープ装置に入れられてしまう。
宗一郎が目覚めたのは30年後、2025年の東京だった。
自分が眠っている間に、璃子が死んでいたことを知った宗一郎は、ケアロボットのピート(藤木直人)の助けを借り過去に何があったのか調べ始めるのだが、自分と同姓同名の人物が、30年前の同じ時期に暗躍していたことを知る。
ある仮説を思いついた宗一郎は、鍵を握る物理学者の遠井博士(田口トモロヲ)を尋ねるのだが・・・・


小説の1970年と2000年のロサンゼルスという舞台設定は、1995年と2025年の東京に移されているが、元々定評のあるストーリーだけに、基本プロットは原作に非常に忠実
もちろん70年近く前の異国の小説だけに、細かいところは色々変わっているものの、大枠はほとんどそのままだ。
プロット上の最大の違いは、未来の世界の案内役として、藤木直人演じるなぜかネコと同じピートという名前のヒューマノイドロボットが出てくること。
このロボットと主人公の宗一郎にバディを組ませたのは、いいアイデアだった。
回路に問題があるらしく、時にはっちゃけた言動をするピートを狂言回し的に活用することで、ボリュームのある物語を効率的に前に進めることが出来ている。
小説のサットン夫妻に当たる、佐藤夫妻と出会うあたりに若干の駆け足感は残るが、十分に許容範囲内。

文学を映像化する時に問題となるリアリティラインの差も、脚色で丁寧に潰されている。
小説のダンの行動は、けっこう行き当たりばったり感があるのだが、映画ではそれぞれのシチュエーションの“動機”を描写することで、さほど気にならないレベルに補正。
まあその分、若干説明的な要素が増えてしまっているが、これは致し方あるまい。
またリッキイの描写は小説の段階で明らかに不足していて、疎遠だった彼女が最終的にコールドスリープしてまで、なぜ恋人としてずっと年上のダンを選ぶのかイマイチよく分からなかった。
これも共に両親を亡くした悲しみの中、二人が支え合って生きてきた設定を加えて関係性を強化し、さらに小説では彼女が21歳でコールドスリープする部分を、宗一郎と同じ27歳に変更。
眠りにつくまでに、璃子もロボット工学者として十分なキャリアを積む設定にモダナイズされている。
この辺りは、原作のままだと現在では主人公が光源氏みたいなロリコンオヤジと思われてしまうので、必然の改変だろう。
登場の時点から、璃子が宗一郎に抱いている恋心は自然に表現されていて、数多くの青春恋愛映画を作ってきた三木孝浩監督の面目躍如。
時空を超えたラブストーリーとしての説得力は、原作よりもむしろ強まっている。

ところで、小説の“現在”である1970年は、ハインラインが執筆した50年代から見たら近未来だが、映画の“現在”となる1995年は、2021年の今から見たら過去である。
むしろ映画の“未来”である、2025年の方が近い。
映画に描かれる1995年はほとんど現実と変わらないが、コールドスリープ技術が実用化されている、ほんの少しだけズレた世界だ。
実際には2025年になっても、あんな完璧なヒューマノイドロボットが完成しているとは思えず、いっそ小説と同じく2025年の近未来を“現在”に、2055年を“未来”にした方がしっくりくるようにも思うが、あえて過去を起点としたことは、どんな意味があるのだろうか。

おそらくこれは、“明るい未来観”を保つためだろうと思う。
もちろん例外はあるが、原作が書かれた50年代には未来は明るいものだった。
だが、80年代頃から環境問題などがクローズアップされ、徐々に人類は能天気な希望にあふれた未来に疑念を抱くようになる。
またテクノロジーの発達により、不確定要素が多くなりすぎて、未来を予測すること自体が難しくなってきた。
100年、200年先の未来なら完全に空想でもいい。
だが、例えば2025年を起点として、2055年のユートピアを描いたとしても、説得力を持たせることが出来るだろうか。
この映画が“現在”と設定した1995年は、阪神大震災、オウム真理教の地下鉄サリン事件が起こり、まさに未来が暗雲に閉ざされた年だった。
このダークな時代を舞台に、未来を明るく書き換える冒険を描くと言うアイディアは、なかなか面白い。
さらに、映画オリジナルの脚色で、ロボットのピートと言うオーパーツを過去に送り込むことで、2025年のロボット工学の発展にも、一定の説得力が生まれている。
卵が先か、鶏が先かの問題は残るけど。

原作は、時間SF映画の金字塔「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のアイディアの元になった話だから、オマージュもチラホラ。
田口トモロヲ演じるタイムマシン博士が、どこからどう見てもドクのパロディなのが可笑しい。
そして過去へ戻っての冒険の部分は、デイテールの脚色はあるものの、ほとんど小説のまま。
と言うか、ここからの筋立てはこの話のハイライトなので、余計な改変を加える必要はないだろう。
よく知られた物語だし、驚くべき要素は無いが、三木孝浩のウェットなストーリーテリングの感性との相性も良く、「夏への扉」の正攻法の映画化としては至極納得できる仕上がりだ。
今となっては時間ロジックの部分はちょっと古い印象もあるのだが、SFが売れない今の日本にあって、SF映画の分かりやすい入門編としても優れた作品だと思う。

ところで、ある意味主役のネコのピートは、ハヤカワ文庫の表紙の印象が強くて、もうちょっとシュッとしたイメージだったのだが、映画に出てきたのは完全に「俺、つしま」だった(笑
パスタとベーコンという、美味しそうな名前の二匹の俳優ネコが交代で演じているらしいが、これはこれでモコモコですごく可愛い。
ネコ映画としてもポイント高し。

今回は、夏への扉が開いた今こそ飲みたい、涼しさMAXなカクテル「モヒート」をチョイス。
大きめのタンブラーにイエルパブエナ(キューバミント)千切って入れ、ライムジュース30ml、砂糖2tspを加え、バースプーンなどで軽く潰す。
ラム40mlと適量なソーダを加え、氷と追加のミントを投入して完成。
モヒートはキューバ発祥のカクテルで、その名はスペイン語の「mojar(濡れる)」に由来する。
タンブラーの表面が結露で濡れるためとも言われるが、材料はキンキンに冷やしておいた方が美味しい。
料理にも使えるイエルパブエナは育てやすく、どんどん葉をつけるので観葉植物としてもオススメ。
ミントの香りがスーッと喉に抜け、まさに清涼感の塊のような夏のカクテルだ。

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コメント
この記事へのコメント
日本人に置き換えた名前で宗一郎と松下ってホンダとナショナルを思わせる技術系の名前だ。じゃ、璃子はホンダも憧れたかもしれない陸王か? 白石鈴なんて実在感がない名前で嘘っぽい。サットン夫婦が佐藤って何も考えてない翻案に笑った。瀬藤(ぜとう)さんだったら、元々はゼットン夫婦で最強だぜ。
2021/07/20(火) 09:56:56 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんにちは
>ふじきさん
多分、名前の由来は本当にホンダとナショナルだと思います。
日本が未来を信じていた時代の象徴として。
タイムマシン博士が遠井とか、翻訳物なのをいいことに、かなり名前では遊んでる。
2021/07/23(金) 14:52:28 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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1995年、東京。 高倉宗一郎は育ての親・松下の遺志を継ぎ、将来を期待される科学者として、愛猫のピートと、松下の娘・璃子との穏やかな日常の中で、研究に没頭する日々を送っていた。 しかし、罠にはめられ研究も会社も奪われ、強制的に冷凍睡眠させられてしまう。 目が覚めたのは30年後、2025年の東京だった…。 SFサスペンス。
2021/07/03(土) 12:02:08 | 象のロケット