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白蛇:縁起・・・・・評価額1650円
2021年08月05日 (木) | 編集 |
千年先でも愛してる。

唐の末期、蛇狩りたちの村に住む若者・許宣は、不思議な力を持つ美女・白を助けて冒険の旅に出る。
日本でもクリーンヒットとなった「羅小黒戦記~ぼくが選ぶ未来~」に続いて、チームジョイが紹介する中国アニメーション映画第二弾。
こちらも2年前に在日中国人向けに字幕版で限定公開されたものを、改めてクオリティの高い吹替え版を制作して正式公開。
おなじみ「白蛇伝」を、中国の新興アニメーションスタジオの追光動画とワーナーブラザーズが、中米合作でCGアニメーション化した作品だ。
とは言っても、よく知られた民話そのまんまではなく、元の話に繋がるビギニング的な作りになっており、かなり現代的なアレンジを効かせている。
脚本は大毛、監督は黄家康と趙霽が務める。

世の中が乱れていた晩唐の頃。
国師(柴田秀勝)の命令によって、人々が蛇を大量に捕獲していた。
蛇狩の村に住む許宣(佐久間大介)は、ある時滝のそばに倒れていた不思議な力を持つ美女・白(三森すずこ)を助ける。
実は彼女は白蛇の化身で、国師を暗殺しようとするも失敗し、記憶を失っていたのだ。
白の持っていた宝具の簪に、宝青坊の刻印があったことから、二人は彼女の記憶を取り戻すための旅に出て、すぐに恋におちる。
だが、白が人間の宣と共にいる所を見た蛇族は、彼女が裏切ったと勘違いし、刺客として妹の青(佐倉綾音)を送り込んでくる。
国師の部下の道士(石川界人)も白を狙い、姉妹との間に戦いが起こる。
一方、宝青坊の主(悠木碧)を尋ねた宣は、白とずっと一緒にいるために自分を妖怪にして欲しいと願う。
その頃、集められた蛇たちの精気を吸収した国師は、恐ろしい魔力を身につけ、蛇族との最終決戦に出ようとしてた・・・・


追光動画のCEOを務めるギャリー・ワン(王微)は 、名門ジョンズ・ホプキンス大学で学び、米国でキャリアをスタートさせると、32歳の若さでYouTubeよりも早く動画サイトTudouを設立。
小説家兼劇作家としても活動し、2013年に追光動画を設立すると、経営者としてだけでなく会社の最初の映画「ガーディアン・ブラザーズ -小門神-」では監督・脚本もこなしたスーパーマンだ。
彼だけでなく、現在の中国のアニメーション業界には、欧米や日本で映像教育を受け、国際感覚を持った才能豊かなスタッフが山ほどいる。
近年中国のアニメーションが怒涛の勢いで優れた作品を送り出し、その多くが本作のように極めて中国的でありながら、一方でハリウッド的なテイストを持っているのも、単に中米合作だからという訳でもないのだろう。

本作の原作は、中国の四大民間説話の一つ「白蛇伝」だ。
我が国でも古くから親しまれ、円谷英二が特技監督を務めた豊田四郎監督の「白夫人の妖恋」や、日本最初の長編カラーアニメーション映画となった東映動画の「白蛇伝」は、映画史的にも重要な作品である。
南宋の時代、西湖の辺りに住む青年・許宣は白蛇の化身・白娘子と恋におちる。
一度は別れたものの白娘子は諦めず、蘇州にまで追ってきて許宣と暮らし始めるのだが、最後は法海和尚の法力によって小間使いの青青と共に正体を暴かれ、封じられる。
大体はこんな話だが、民話なので色々なバリエーションがあり、後日修行で法力を身に付けた許宣が二人を解放する版もある。
本作は誰もが知る「白蛇伝」の物語ではなく、原作から500年前の晩唐の時代を舞台としているのが最大の特徴。
これは白と宣の恋があまりにも運命的なため、彼らの前世でも何かがあったのでは?というところからの発想だという。
また原作では白娘子が拾った青魚の化身だった青青が、本作では白の妹の青に変わっている。

落ち着いた印象のヒロインに、勝気な性格の妹がいるのは、「アナと雪の女王」を彷彿とさせ、蛇狩の村にあって蛇を狩らない宣のキャラクターは、どこか「ヒックとドラゴン」のヒックを思わせる。
感情移入しやすいキャラクターを作り、作品世界に入りやすくするのはハリウッド脚本術のセオリー通り。
道士、国師、蛇母の三段階の敵役は徹底的に冷酷で利己的に、一方でホッコリさせるコミックリリーフとして宣の愛犬のハラマキを配置。
余談だがハラマキは原語では肚兜(どぅどう)なので、イメージとしては金太郎の前掛けに近い。
物語の変数を作り出すトリックスターは、ツンデレの中国版阿修羅男爵こと宝青坊の主の化け狐ちゃん。
中国古典を題材としながら、キャラクター造形や物語の構造は、ディズニーやドリームワークスといった米国産アニメーションをベンチマークして極めてモダンだ。

墨絵アニメーションの伝統を感じさせる冒頭から、蛇狩の村の仙境のような世界観。
傘を持って空を飛ぶ描写は、「となりのトトロ」へのオマージュか。
二人が恋におちる川の舟旅は、山水画のような情景で唄をやりとりするロマンチックさ。
遊び心の詰まったおもちゃ箱のような宝青坊のビジュアルに、インディ・ジョーンズ的な迷宮からの脱出劇もあれば、巨大化した白と双頭の大蛇となった蛇母が戦う迫力満点のクライマックスは、もはや怪獣映画だ。
これだけ盛り盛りに盛ってもバランスが崩壊しないのは、全ての要素が大なり小なり中国の民話伝説には含まれていて、作品の世界観に吸収出来ているのと、物語の軸となるラブストーリーがしっかりしているからだろう。
中国四千年のカルチャーキャパシティ、恐るべしだ。
墨で描かれた古の世界に、想像力でカラフルな色をつけたような美術はとても魅力的で、キャラクターデザインもハリウッド映画調ではあるのだが、東洋人の顔を魅力的に見せる造形センスはやはり異なる。
3DCGの映像デザインとして、中国アニメーションはもはやハリウッドと双璧と言っていい。

上々の仕上がりの冒険ファンタジーの、ごく短い序盤の間に主人公カップルのキャラクターを立て、二人が恋に落ちる筋立てを説得力のあるものにしているのは大したものだ。
中国ではまだまだアニメーション映画=子供向けという認識が強く、上映時間を95分前後にすることを求められるそうで、いろいろ切り詰めた中で最もコンパクトにキャラクターの感情を進められるのが恋の唄という訳か。
二人の恋の顛末は、「タイタニック」が大きな影響を与えているように見えるが、やっぱり宣を朴訥で情の深いキャラクターにしたのが効いていて、時空を超える真実の愛に涙。
これだけピュアなラブストーリーにしておいて、500年後の結末が原作通り封じられたままだとあまりにも不憫なので、ハッピーエンドの東映動画版につながるということにしておこう。
ちなみに中国では、今年7月23日に続編「白蛇2:青蛇劫起」が公開中。
脚本の大毛と、監督の黄家康は続投。
予告を観ると、法海和尚と戦った青が現在にタイムスリップする?
本作の共同監督の趙霽が撮った「ナタ転生」みたいなノリなのかもしれないが、同じスタジオの作品だし、もしかするとクロスオーバーもありかも。
“中国民話ユニバース”とか、ムッチャ面白そうだ。
個人的には、宝青坊の化け狐ちゃんを主人公にした、スピンオフのTVシリーズとか見てみたい。
作った宝具がいろいろ問題起こして、それを狐ちゃんがツンデレな対応で解決してゆくとか、いくらでも作れそう。

今回は「白」つながりで、白酒「江小白」をチョイス。
白酒といえば、貴州茅台酒などの高級酒が有名で、ビジネスシーンの贈答品や接待の席に出され、年配の男性に好まれるイメージ。
対して江小白は、新しイメージ戦略を駆使し、白酒に縁の無かった若者たちの間で人気沸騰。
この辺りも、近年の中国アニメーションに通じるものがある。
今は蒸留酒でも、比較的アルコール度数が低く、フルーティでクセのないまろやかさが好まれるのは、万国共通なのかもしれない。

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