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ショートレビュー「楽園の夜・・・・・評価★★★★+0.5」
2021年09月14日 (火) | 編集 |
死にたがりたちの大狂宴。

ヤクザもののテグは、唯一の家族である姉と姪を何者かに殺され、報復として敵対組織のボスを襲撃すると、済州島に渡って身を隠す。
島でのテグの隠れ家は銃器密売をしているクトの家で、彼は難病で余命幾ばくもない姪のジェヨンと共に暮らしている。
同じ家で過ごすうちに、テグとジェヨンは反発しながらも距離を縮めてゆくのだが、彼らの知らないところで、ある陰謀が動き出す。
「新き世界」「V.I.P. 修羅の獣たち」などの燻銀の韓流ノワールで知られる、パク・フンジョン監督による、刹那的な滅びの詩。
ヤクザもののテグをオム・テグ、ヒロインのジェヨンをチョン・ヨビンが演じ、鮮烈な印象を残す。

舞台となる済州島の自然豊かで美しい風景と、そこで起こる血で血を洗うバイオレンスのコントラストは、90年代の北野武、特に「ソナチネ」を彷彿とさせる。
抗争の最中に主人公のヤクザが南国の島に隠れ、そこでファムファタールと出会って、破滅に向かって突き進むという基本プロットはほぼ共通する。
主人公が、自分の知らないうちに上部組織の陰謀に巻き込まれ、捨て駒となっている点も同じだ。
もちろん、オマージュは捧げても、独自性も強い。
物語的には新しい要素はなく、むしろどこかで見たようなシチュエーションの連続なのに、全体を通して観ると、紛うことなきパク・フンジョン印の作家映画に仕上がっている。

本作の最大の特徴は、登場人物たちの関係が、まるで悪意ある神が導いたかのように、重なりあっていること。
例えば、テグの姉は不治の病を患っていて、済州で出会うジェヨンも病名は明かされないものの、極めて生存率の低い病に冒されている。
またテグが可愛がっている幼い姪は、抗争に巻き込まれてる形で母と共に殺されるが、ジェヨンは子供の頃に叔父のクトの仕事の巻き添えで家族を失っている。
本作は登場人物たちが、お互いの中に自分の心の傷を見る構造になっているのである。
テグとジェヨン、そしてクトは、同じ悲しみの鎖で縛られた運命共同体。
彼らを含め、この映画の登場人物全員が死の香りに取り憑かれた人たちで、物語が帰結する先は最初から一つしか見えない。

陰謀を巡らす悪は、何処までもゲスに。
自ら死に突き進む男女は、束の間の邂逅にその瞬間の意味を見出す。
アウトローでありながらも、生真面目なテグに対し、もう自分は死ぬものと覚悟を決めているジェヨンの方が、ぶっ飛んだ性格なのが面白い。
「ソナチネ」のヒロインは受動的な待つ女だったが、戦闘ヒロインものの快作「The Witch/魔女」をモノにしたパク・フンジョンは、もはや恐れるものが何も無いジェヨンを、寝起きに銃をぶっ放し、自分からグイグイ行動する能動的キャラクターに造形する。
対照的な性格だが、似た願望を抱えるテグとジェヨンの掛け合いと、質・量とも充実のアクションが組み合わされ、物語が進んでゆくのである。

規制の厳しい日本から見たら、羨ましくなるど迫力のカーチェイスに、リアリティと映画的なダイナミズムを両立させた見事なガンファイト。
キャラの濃い全員悪人たちが織りなす、因果応報の殺し合いのドラマは見応え十分だ。
伏線通りではあったけど、クライマックスをある人物に委ねるのは、見事な割り切り。
めちゃめちゃカッコよくて、しびれまくった。
ハッピーエンド、バッドエンドに割り切れない、この作家ならではの詩情を感じさせるラストには、ベストラストショット賞をあげたくなる。

今回は済州島の焼酎、「ハンラサン(漢拏山)」をチョイス。
漢拏山は、楕円形の済州島の中央にそびえる火山で、この山の地下の岩盤を通って濾過された地下水で作られている、まろやかな焼酎。
映画の中で印象的なのが、この焼酎と最後の晩餐的に出てくるムルフェ(水刺身)だ。
済州島と釜山の近くの浦項の郷土料理で、名前の通りコチジャンベースの冷たいスープに、白身魚やイカの刺身、キュウリやナシ、ネギなどの野菜をたっぷり入れたもの。
冷やし中華的に食べられている夏の風物詩で、私も釜山でいただいたことがあるが、なかなか美味しかった。

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