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浜の朝日の嘘つきどもと・・・・・評価額1700円
2021年09月18日 (土) | 編集 |
映画は、人を救えるのか?

福島県南相馬市に実在するレトロな映画館、“朝日座”を舞台に、本当の意味で人生の拠り所となるのは何か?を描くタナダユキ監督のオリジナル脚本による秀作。
解体されてスーパー銭湯になることが決まっている古い映画館に、ある日突然高畑充希演じる謎の女が押しかけて来て、映画館再生を宣言する。
いったい彼女は何者なのか、なぜ何の縁もゆかりもない映画館を閉じさせまいとするのか。
もともと福島中央テレビの、開局50周年記念として企画された作品。
昨年の10月に、竹原ピストル演じる自殺志願の映画監督の再生を描く、同名の50分のスペシャルドラマが放送され、映画はその前日譚というユニークな二部構成だ。
ドラマ版では謎の人のままの高畑充希のキャラクターも、映画の方でじっくりと描かれているので、時系列通り映画→ドラマの順番の方が観やすいと思う。
朝日座の支配人役で落語家の柳家喬太郎が出演していて、ムッチャ口の悪い高畑充希との軽妙な掛け合いが楽しい。
主人公のメンターとなる、高校の先生役の大久保佳代子が素晴らしい。

小さな映画館・朝日座は、100年近くにわたり南相馬の映画文化を支えてきた。
だが震災にも台風にも耐えてきた映画館も、先の見えないコロナ禍で行き詰まり、支配人の森田保造(柳家喬太郎)は閉館を決意する。
保造が一斗缶で古いフィルムを燃やしていると、突然現れた若い女(高畑充希)が水をかけて消火しフィルムを救い出す。
“茂木莉子”と名乗る女は、東京の映画配給会社で働いていたが、ある人に頼まれて朝日座を再建するためにやって来たと話す。
しかし保造はすでに朝日座の売却と解体を決めてしまっていて、来月には映画館は解体され、その跡地にはスーパー銭湯が建つのだという。
自称茂木莉子は、朝日座を存続させるために、魅力的なラインナップを組むと同時に、借金を返すためのクラウドファンディングをスタート。
実は、彼女には高校時代の恩師の田中茉莉子(大久保佳代子)と交わした、ある約束があった・・・


映画は自称茂木莉子が朝日座を存続させようと奮闘する現在と、彼女は一体何者でなぜここにやって来たのか、過去の人生を並行して描いてゆく。
ことの発端は10年前に起こった東日本大震災で、彼女の本名は「浜野あさひ」という。
福島第一原発の周りから、人も物も去ってゆく中で、父親が除染作業員たちを運ぶタクシー会社を設立し、いわゆる震災成金となったことから家族がバラバラに。
震災をきっかけに、絶対的な拠り所として信じていた家族が、あっけなく崩壊するのを見た彼女は人生に絶望していたのだが、そんな時に出会ったのが型破りな茉莉子先生。
教員になる前は、映画配給会社に務めていたという茉莉子先生に感化されて、自らも映画好きとなったあさひは、その後も先生との交流を深め、まるで先生の人生を追うように映画の世界に。
この経験が、あさひの中で壊れてしまった“家族”という幻想と、それにかわり得るコミュニティの中心としての映画館のイメージを作り上げるのである。

二部作の全体を貫いているのが、価値観の衝突だ。
朝日座を解体して、リハビリ施設付きのスーパー銭湯を作ろうとしている会社の社長は、映画館を存続させても何も変わらないが、スーパー銭湯は過疎の町に雇用を生むという。
雇用が生まれれば、故郷を出て行ってしまった若者たちも戻ってくるかもしれない。
だがそれはあさひの目には、“血の繋がった家族”という簡単に壊れてしまう幻想に、人々がすがっているように見えてしまうのである。
彼女は自分と茉莉子先生のような、赤の他人同士でも築き上げられる新しいコミュニティの方が、街の未来のためには良いのではないかと考える。
ぶっちゃけ、どちらも正論である。
田舎には雇用が必要だし、それは潰れかけた映画館からは生まれない。
雇用が生まれれば、もしかしたら実際帰ってくる人もいるかもしれない。
一方で、映画には確かに人々を惹きつける力があるし、血の繋がりに頼らないコミュニティは、これからの日本社会に必要なものだろう。

そして、映画版では映画館とスーパー銭湯の間で揺れ動いた葛藤が、ドラマ版では対照的なスタンスの二人の映画監督の間で問われる。
竹原ピストル演じる川島健二は、純朴な映画青年像をまんま具現化したようなキャラクターで、撮りたくもないキラキラ青春映画で監督デビューするも、大コケさせてしまい、批評もズタボロ。
かつてのあさひと同じように、人生に絶望して南相馬を訪れた。
ところが、成り行きで新しい映画を作れることになるものの、いざ自由にやっていいとなったら、何を撮ったらいいのかさっぱり分からない
彼のアンチテーゼとして登場するのが、南相馬のドキュメンタリーを撮ろうとしていうる炎上監督の藤田慎二だ。
みるからにチャラいこの男は、何よりも有名になりたい、儲けたいという欲望が露骨。
しかし、震災と原発事故という未曾有の経験をした南相馬を、自分が世界に紹介しなければという情熱は本物だ。
真摯だが撮りたいものが見つからない監督と、俗物だが明確に撮りたいものがある監督。

そのものの在り方として、より相応しいのは何方なのか。
たぶんそれは、時代や場所、シチュエーションによって変化するものだと思う。
ある視点から見て間違っていても、別の視点からは正しいことなんて幾らでもある。
だから映画もドラマも、物語の帰結する先をゼロサムゲームにはしないのだ。
うまい具合に全員がウィンウィンという結末は、上手く行き過ぎでは?と思わなくもない。
だがこれはタイトル通り、息をするように嘘をつく、嘘つきどもの物語であり、嘘という虚構の中に真実を描くのが映画である。
彼らの嘘には、ちゃんと背景があるのだ。
その象徴となるのが、まさに朝日座。
実は現実の朝日座は、常設映画館としては30年近く前に閉館している。
にもかかわらず、その建物は解体されることなく地元の人々に守られ、不定期の映画上映やコミュニティイベントの場として活用されているという。
常設映画館としての存続という映画的な嘘の中に、新しいコミュニティーの中核としての映画館という真実があることが、本作に絶対的な説得力を付与する。

あさひのメンターとして、彼女の人生に大きな影響を与えた茉莉子先生は、最初に映画の投影法を解説してこんな話をする。
映画が動いて見えるのは人の目の残像現象で、残像現象を起こすには映像と映像の間に暗闇が必要、つまり映画を観ている時間の半分は、ただ暗闇を眺めている。
先生は「半分暗闇みながら、感動したり笑ったりしてるって、だから映画好きって根暗が多いのかもね。でもなんかいいよね」と話す。
この話が原体験となって、やがてあさひは朝日座再建へと邁進するのだが、映し出される虚構の光の半分の、見えない暗闇に隠された真実にスポットを当てたのは寓話としてまことに秀逸。
そしてどんな駄作でもたったワンカット“凄い画”があれば、凡百の“普通”の映画よりも記憶に残る。
これもまた真実である。

南相馬では地元の酒米「夢の香」を使った「御本陣」という地酒を町を上げて盛り上げようとしているのだが、今のところ地元以外ではふるさと納税でしか買えず、私もまだ飲んだことがない。
今回は同じ今回は被災地の宮城県から一ノ蔵の純米吟醸「蔵の華」をチョイス。
同名の酒造好適米「蔵の華」100%で仕込まれ、その名のとおりふくよかな吟醸香が広がる。
少し冷やして飲むと、まろやかでフルーティな純米吟醸らしい味わいを楽しめる。

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福島県・南相馬市。 100年近い歴史を持つ映画館「朝日座」は、大きな複合映画館(シネコン)に押され厳しい経営状況が続いていた。 閉館を決意した支配人・森田の前に、若い女性・茂木莉子が現れる。 彼女は朝日座を立て直すため、東京からやって来たのだった…。 ヒューマンドラマ。 ≪いらっしゃいませ、ようこそ映画館へ≫
2021/09/20(月) 08:03:06 | 象のロケット