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2021年10月10日 (日) | 編集 |
「真実」は、本当にあるのか?
人間社会のダークサイドを鋭く突いた、パワフルな力作である。
春本雄二郎監督が、自らのオリジナル脚本を自主制作体制で映画化した作品で、「この世界の片隅に」の片渕須直監督がプロデューサーとして参加している。
物語の主人公は、瀧内公美演じるドキュメンタリー番組の監督、木下由宇子。
彼女は、3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件の関係者に取材し、真相を追っている。
事件では女子高生だけでなく、彼女との淫行を疑われた教師も後を追うように自ら命を絶っていて、由宇子は学校の隠蔽体質だけでなく、マスコミの過剰報道も彼を追い詰めたと考えている。
このため、真実を暴けばTV局の身内批判ともなることから、なかなか上層部から放送の許可を得られずにいるのだ。
そんな時、父の木下政志が経営し由宇子も講師を務める学習塾で、事件が起こる。
塾生の小畑萌が妊娠していることが分かり、彼女から子供の父親が政志だと打ち明けられた由宇子は、自己矛盾に陥ってしまう。
もし世間にこのことが知られたら、政志は確実に終わりだが、それだけでは済まない。
ちょうど同じような教師と生徒の事件を取材している由宇子も、道義的な責任を問われることになるのは必至。
長い歳月を費やして取材してきた作品は、放送されることなく、お蔵入りとなるだろう。
ドキュメンタリー監督としての彼女のキャリアも、取り返しのつかない傷を負う。
真実を追求することに情熱を燃やしてきた由宇子は、あっさりとこちらの事件を隠蔽することにするのだ。
非常に分かりやすい、ダブルスタンダードの葛藤。
由宇子は人生を守るために、嘘をつくことを決めた。
ポイントになるのは、「身内」と「他人」という概念だ。
自分の人生に影響を及ぼす、政志や萌、そして番組関係者は「身内」で、それ以外は「他人。」
人は自分と身内に甘く他人に厳しいから、マスコミは興味本位で過剰報道するし、今の時代個人もSNS上でとことん非難する。
そしてそんな攻撃から身を守るために、自己保身の嘘をつくのだ。
だが、それは別に由宇子だけではないだろう。
家族がおぞましい罪を犯していて、その事実を公表するかどうかを自分に委ねられたら、「それでも、正しいことをします」と、胸を張って言える人がいったい何人いるだろうか。
しかもこの映画は、ここから更に捻ってくるのだ。
私たちは誰かの話を聞く時、無意識にバイアスがかかった目で相手を見る。
この人は誠実そう、この人は悪そう、この人は嘘をつかなそう。
人だけでなく組織に対しても同じだ。
この組織は信用できないけど、こっちは信用できそう。
でも抱いたイメージが本当かどうかなど、誰にも分からないのだ。
誠実な人でも、自分と身内のためなら嘘をつくし、一見粗暴そうな人が、実は人一倍強い倫理観を持っているかも知れない。
そのことは自分が一番良く分かっているはずなのに、由宇子はバイアスによって他人の嘘に気付けない。
たくさんの人のついた嘘がたまり、そこに決して埋まることのない「真実の空白」が生まれてしまうのである。
ある意味、吉田恵輔の「空白」と同じことをやっているのだが、アプローチは全く異なる。
自分が作っている作品と、現実で直面しているシチュエーション。
一見似ているが本質的には真逆と思われた二つの事件は、いつしかクロスし由宇子を究極の選択へと追い込んでゆく。
光を当てるときは、それが真実かを見極めなければならず、真実を知りたければ、空白を見なければならない。
色々な意味で、人間って恐ろしいと思わせられ、モヤモヤと緊張が続く152分。
劇場の暗闇で、自問自答を求められる問題作である。
今回はヘビーな展開の連続に、カラカラになった喉を潤す「ギムレット」をチョイス。
英国海軍将校がジンを飲み過ぎることを憂いだ軍医のギムレット卿が、ライム・ジュースと混ぜるのを勧めたことから生まれた健康カクテル。
ドライ・ジン45ml、ライム・ジュース15mlをシェイクしてグラスに注ぎ、スライスしたライムを一片添えて完成。
ドライな味わいとライムの酸味が、ドヨーンとした頭をすっきりさせてくれる、フレッシュなカクテルだ。
ギムレットにシロップ1tspを加えて、冷やしたソーダで割った「ギムレット・ハイボール」にしても美味しい。
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人間社会のダークサイドを鋭く突いた、パワフルな力作である。
春本雄二郎監督が、自らのオリジナル脚本を自主制作体制で映画化した作品で、「この世界の片隅に」の片渕須直監督がプロデューサーとして参加している。
物語の主人公は、瀧内公美演じるドキュメンタリー番組の監督、木下由宇子。
彼女は、3年前に起きた女子高生いじめ自殺事件の関係者に取材し、真相を追っている。
事件では女子高生だけでなく、彼女との淫行を疑われた教師も後を追うように自ら命を絶っていて、由宇子は学校の隠蔽体質だけでなく、マスコミの過剰報道も彼を追い詰めたと考えている。
このため、真実を暴けばTV局の身内批判ともなることから、なかなか上層部から放送の許可を得られずにいるのだ。
そんな時、父の木下政志が経営し由宇子も講師を務める学習塾で、事件が起こる。
塾生の小畑萌が妊娠していることが分かり、彼女から子供の父親が政志だと打ち明けられた由宇子は、自己矛盾に陥ってしまう。
もし世間にこのことが知られたら、政志は確実に終わりだが、それだけでは済まない。
ちょうど同じような教師と生徒の事件を取材している由宇子も、道義的な責任を問われることになるのは必至。
長い歳月を費やして取材してきた作品は、放送されることなく、お蔵入りとなるだろう。
ドキュメンタリー監督としての彼女のキャリアも、取り返しのつかない傷を負う。
真実を追求することに情熱を燃やしてきた由宇子は、あっさりとこちらの事件を隠蔽することにするのだ。
非常に分かりやすい、ダブルスタンダードの葛藤。
由宇子は人生を守るために、嘘をつくことを決めた。
ポイントになるのは、「身内」と「他人」という概念だ。
自分の人生に影響を及ぼす、政志や萌、そして番組関係者は「身内」で、それ以外は「他人。」
人は自分と身内に甘く他人に厳しいから、マスコミは興味本位で過剰報道するし、今の時代個人もSNS上でとことん非難する。
そしてそんな攻撃から身を守るために、自己保身の嘘をつくのだ。
だが、それは別に由宇子だけではないだろう。
家族がおぞましい罪を犯していて、その事実を公表するかどうかを自分に委ねられたら、「それでも、正しいことをします」と、胸を張って言える人がいったい何人いるだろうか。
しかもこの映画は、ここから更に捻ってくるのだ。
私たちは誰かの話を聞く時、無意識にバイアスがかかった目で相手を見る。
この人は誠実そう、この人は悪そう、この人は嘘をつかなそう。
人だけでなく組織に対しても同じだ。
この組織は信用できないけど、こっちは信用できそう。
でも抱いたイメージが本当かどうかなど、誰にも分からないのだ。
誠実な人でも、自分と身内のためなら嘘をつくし、一見粗暴そうな人が、実は人一倍強い倫理観を持っているかも知れない。
そのことは自分が一番良く分かっているはずなのに、由宇子はバイアスによって他人の嘘に気付けない。
たくさんの人のついた嘘がたまり、そこに決して埋まることのない「真実の空白」が生まれてしまうのである。
ある意味、吉田恵輔の「空白」と同じことをやっているのだが、アプローチは全く異なる。
自分が作っている作品と、現実で直面しているシチュエーション。
一見似ているが本質的には真逆と思われた二つの事件は、いつしかクロスし由宇子を究極の選択へと追い込んでゆく。
光を当てるときは、それが真実かを見極めなければならず、真実を知りたければ、空白を見なければならない。
色々な意味で、人間って恐ろしいと思わせられ、モヤモヤと緊張が続く152分。
劇場の暗闇で、自問自答を求められる問題作である。
今回はヘビーな展開の連続に、カラカラになった喉を潤す「ギムレット」をチョイス。
英国海軍将校がジンを飲み過ぎることを憂いだ軍医のギムレット卿が、ライム・ジュースと混ぜるのを勧めたことから生まれた健康カクテル。
ドライ・ジン45ml、ライム・ジュース15mlをシェイクしてグラスに注ぎ、スライスしたライムを一片添えて完成。
ドライな味わいとライムの酸味が、ドヨーンとした頭をすっきりさせてくれる、フレッシュなカクテルだ。
ギムレットにシロップ1tspを加えて、冷やしたソーダで割った「ギムレット・ハイボール」にしても美味しい。

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この記事へのコメント
誰だって隠しているっことはあるもの。バレたら困ることなんてないという人なんているのかと思うくらい。
なのに、誰もが他人を安易に批判する。正しさを振りかざそうとする。それが本当に正しいのかもわかっていないのに。
もし私が由宇子と同じ立場なら、もちろん事件は隠蔽しますよ。政志の言う謝罪なんて、理想としては人間としてあるべき姿ですけど、現実には綺麗事ですもん。
なのに、誰もが他人を安易に批判する。正しさを振りかざそうとする。それが本当に正しいのかもわかっていないのに。
もし私が由宇子と同じ立場なら、もちろん事件は隠蔽しますよ。政志の言う謝罪なんて、理想としては人間としてあるべき姿ですけど、現実には綺麗事ですもん。
>にゃむばななさん
劇中でも言ってたけど、当然隠しますよね。
私でも隠すと思います。
この映画が怖いのは、主人公のダブスタのさらにその先を見せて来ることでしょうね。
人間社会に真実なんて本当にあるのか?というくらいの絶望。
怖い映画です。
劇中でも言ってたけど、当然隠しますよね。
私でも隠すと思います。
この映画が怖いのは、主人公のダブスタのさらにその先を見せて来ることでしょうね。
人間社会に真実なんて本当にあるのか?というくらいの絶望。
怖い映画です。
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