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2021年10月22日 (金) | 編集 |
三つの“真実”、本物はどれ?
中世のフランス。
マット・デイモン演じる、騎士ジャン・ド・カルージュの美しい妻マルグリットが、夫の旧友に強姦されたと告白する。
だが、加害者とされた男は疑惑を真っ向から否定。
目撃者はおらず、証拠もない。
夫は神のみぞ知る真実を証明するために、敗者が死刑となる決闘裁判の決行を王に訴える。
果たして、嘘をついているのは誰なのか?
フランスで法的に認められた最後の決闘裁判の顛末を描いた、エリック・ジェイガーのノンフィクションを、マット・デイモンとベン・アフレックの「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」コンビが、ニコール・ホロフセナーと共同で脚色。
歴史劇に定評のあるリドリー・スコットがメガホンを取り、デビュー作「デュエリスト 決闘者」以来となる「決闘」を描く。
デイモンと対決することとなる従騎士ジャック・ル・グリをアダム・ドライバー、鍵を握るマルグリットを「フリー・ガイ」が記憶に新しいジョディ・カマーが演じる。
14世紀末、イングランドとのいつ果てるとも知れない100年戦争が続くフランス。
勇猛さで知られるの従騎士ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)は、親友のジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)と共にイングランド軍との戦いに明け暮れていた。
二人が戦地から戻ると、アランソン伯ピエール2世(ベン・アフレック)が彼らの住む地方の君主に指名されており、二人もピエールに忠誠を誓う。
その後、財政難に陥ったジャンは、資産家の娘マルグリット・デ・ティブヴィル(ジョディ・カマー)と結婚。
しかしマルグリットの持参金として貰えるはずの土地が、既にピエールによって押収され、彼の財務官となったジャックに与えられていることを知り、訴訟を起こすも棄却。
さらにド・カルージュ家が何代にも渡って守護してきた砦の長官の座も、ジャックに奪われる。
数年後、ジャンはスコットランド遠征中に騎士に昇進し、報奨金を受け取りにパリに出向いた後帰還すると、マルグリットの様子がおかしい。
ジャンが問いただすと、彼の留守中ジャックが家に押し入り、強姦されたと言う。
普通に訴えても、ピエールに握り潰されると考えたジャンは、国王シャルル六世に決闘裁判での審判を訴え出るのだが・・・・
なるほど、これは確かに中世ヨーロッパ版の「羅生門」だ。
マルグリットはジャックに強姦されたと言うが、その場にいたのは当事者だけで、客観的に事実を知る者はいない。
同じ出来事も、当事者の認識の違いによって少しずつズレてゆく。
一人の人物が違う視点で語られた時、それまで見えなかった別の顔が見えてくるというワケ。
映画は、決闘裁判の当日を起点とした三章構成となっていて、ほぼ同じ時間軸が三人の視点で語られてゆく。
第一章がおよそ40分を費やして語られるジャン・ド・カルージュが語る「真実」。
ただし、肝心の強姦事件の時は、彼は留守だったので、実際に何が起こったのかは知り得ない。
次の40分強の第二章が、加害者とされたジャック・ル・グリの語る「真実」。
最後の第三章が、被害者のマルグリットの語る「真実」で、これこそが本当の「真実」だとメンションされる。
男二人が語る真実の冒頭部分には、まだマルグリットはいない。
当初は生死を共にした戦友同士で、無二の親友だった二人の運命は、戦地から帰った後に徐々に別れてゆく。
新たな支配者となったピエールの知遇を得たジャックは、その博学さを買われて領地の税務を担当するようになり、急速に力をつけてゆく。
一方のジャンは困窮し、ジャックの計らいでようやく税の支払いを逃れる状態。
彼は資産家の令嬢だったマルグリットと結婚することで、窮状を逃れようとするのだ。
ところが、彼女の持参金の一部だった土地がらみの揉め事で、ジャンとジャックは仲違いしてしまうのである。
ジャン視点で語られる第一章では、王に対する忠誠心旺盛で勇猛果敢、実直な生き方をしてきたジャンが、狡猾で卑劣なピエールとジャックによって、土地も役職も奪われてゆく。
マルグリットと結婚した後に、一度は彼女の助言もあってジャックと仲直りし、戦場で従騎士から騎士へと出世も果たす。
人生が上向いてきたと思った途端、帰還した家で涙を流すマルグリットから、驚くべき話を聞かされるのである。
同じ時系列をジャック視点で語る第二章では、だいぶ様相が異なって来る。
ジャックから見たジャンは、猪突猛進タイプで戦場で暴れる以外は才覚のない粗野な男。
正当な仕事の報酬として得た土地に対するジャンの訴訟や、砦の長官職についたことに対する怒りも、ジャックにしてみれば言いがかりである。
文武両道に優れた自分は官僚として取り立てられ、武芸しか脳のないジャンは戦地で戦って稼ぐしかないのは、当たり前だと思っている。
だが、ジャンの妻マルグリットを見て驚く。
美しいだけでなく、教養もあり自分と同じくらい博学な女性が、なぜジャンのような脳味噌筋肉男と結婚しているのか理解できず、彼女はジャンからの解放を望んでいると勝手に思い込む。
ここでポイントとなるのは、ジャックもマルグリットとセックスしたことは否定していないこと。
ただ彼はあくまでも合意の上でしたことで、強姦ではないと主張するのだ。
第一章と第二章は、二人の対照的な男の明暗の別れた人生の物語として描かれるが、物語のテーマはまだ曖昧。
そして男たちのドラマを下敷きに語られる、女視点の第三章でキレキレのスコット節が炸裂する。
正直第二章までの顛末は、21世紀の今から見ればいろいろ極端ではあるものの、「まあ中世の話だし、こんなものだよね」と思わないでもなかった。
ところが、第三章がマルグリット視点で語られはじめた途端、映画は強烈な現在性を帯びて来るのだ。
700年前の物語を21世紀時の今作った理由も、彼女の視点が入ることで完璧に納得できる。
この映画の男たちは、基本女性を所有物=財産だと考えている。
話を聞いたジャンが激昂したのも、マルグリットの痛みや怒りに共感していると言うよりは、自分の大切な所有物を奪われれ、名誉を汚されたと思っているからだ。
一方、自惚れ屋で、自分に靡かない女などいないと思っているジャックにとっても、彼女の本当の気持ちなどどうでもいい。
ジャックの辞書には、そもそも「強姦」という言葉は存在しないのだ。
マルグリットの身に起こったおぞましい事件は、男たちの中ではその前の土地を盗った盗られたという話と同じ文脈なのである。
聡明なマルグリットは、そんな時代の中でも自分ができること、やるべきことを見つけ、才覚の無い夫を助けて前向きに生きている。
ところが彼女のささやかな幸せは、身勝手な男たちによって簡単に踏みにじられてしまう。
第二章と第三章で描かれる、彼女が強姦されたシーンの描き分けはとりわけ秀逸だ。
ほとんど同じカット割、カメラワークなのだが、同じ事象に対する二人の認識の違いを役者の演技だけで描き切った。
マルグリットの視点では、彼女は苦痛に泣き叫び、誰がどう見ても乱暴されているのだが、ジャックの視点ではいわゆる「嫌よ嫌よも好きのうち」的に、彼女の拒絶がずっとマイルドに描かれているのだ。
なるほど、逮捕された強姦魔がよく言う、「合意の上」というのは、こういうことだったのだな。
しかし自分の名誉が一番大切なジャンは、負ければ妻も一緒に死刑になることを知りながら、決闘裁判を訴える。
また決闘裁判を認めるかの審問では、マルグリットがジャックに強姦された時、絶頂を感じたかを執拗に追及される。
これなどは、まさに現在で言うところのセカンドレイプであり、力を持った男が相対的に弱い立場にいる女を傷付ける構図は、時代が中世だとかは全く関係ない。
クライマックスの決闘はさすがリドリー・スコット。
想像していたよりもずっと泥臭く、彼の代表作の一つである「グラディエーター」のクライマックスを彷彿とさせる圧巻の仕上がり。
しかもこの時点で、第三章を観てきた観客はすっかりマルグリットに感情移入している。
ジャンが負ければ、マルグリットの運命は決まってしまうので、二人のクソ野郎の対決ではあるが、彼女を殺させないためにジャンを応援せざるを得ない。
実際に決闘するジャンとジャック、それを見守るマルグリットの肉体と精神の三つ巴の戦いは、心臓が縮み上がる瞬間が連続する。
ここだけでも観る価値が十分にあるが、14世紀という遠い昔の事件を題材に、歴史物では影に追いやられがちな女性の視点を入れることで、驚くべき現在性と普遍性を導き出しつつ、娯楽映画として昇華したこの映画の作り手たちは素晴らしい仕事をしている。
脚本の三人も見事だが、御歳83歳のリドリー・スコット、若いわ。
ラストシーンのマルグリットの達観とした表情には、男性中心の歴史を冷徹に見つめるスコットの視線が透けて見える。
この映画での、悲願のアカデミー監督賞もあるんじゃないだろうか。
今回は、映画の舞台となるフランスのノルマンディー地方の名産品、カルヴァドスの「ブラーX.O.」をチョイス。
林檎を原材料としたブランデーは他にもあるが、カルヴァドスを名乗れるのはノルマンディー地方で作られる物だけで、ノルマンデー沖でエル・カルヴァドール号と言う船が難破した故事に因む。
非常に強い酒だが、単に酔っぱらうだけでなく、消化を促進する効果があると言われ、8年〜15年ものの原酒をブレンドしたこちらは、食中、食後酒として人気だ。
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中世のフランス。
マット・デイモン演じる、騎士ジャン・ド・カルージュの美しい妻マルグリットが、夫の旧友に強姦されたと告白する。
だが、加害者とされた男は疑惑を真っ向から否定。
目撃者はおらず、証拠もない。
夫は神のみぞ知る真実を証明するために、敗者が死刑となる決闘裁判の決行を王に訴える。
果たして、嘘をついているのは誰なのか?
フランスで法的に認められた最後の決闘裁判の顛末を描いた、エリック・ジェイガーのノンフィクションを、マット・デイモンとベン・アフレックの「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」コンビが、ニコール・ホロフセナーと共同で脚色。
歴史劇に定評のあるリドリー・スコットがメガホンを取り、デビュー作「デュエリスト 決闘者」以来となる「決闘」を描く。
デイモンと対決することとなる従騎士ジャック・ル・グリをアダム・ドライバー、鍵を握るマルグリットを「フリー・ガイ」が記憶に新しいジョディ・カマーが演じる。
14世紀末、イングランドとのいつ果てるとも知れない100年戦争が続くフランス。
勇猛さで知られるの従騎士ジャン・ド・カルージュ(マット・デイモン)は、親友のジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)と共にイングランド軍との戦いに明け暮れていた。
二人が戦地から戻ると、アランソン伯ピエール2世(ベン・アフレック)が彼らの住む地方の君主に指名されており、二人もピエールに忠誠を誓う。
その後、財政難に陥ったジャンは、資産家の娘マルグリット・デ・ティブヴィル(ジョディ・カマー)と結婚。
しかしマルグリットの持参金として貰えるはずの土地が、既にピエールによって押収され、彼の財務官となったジャックに与えられていることを知り、訴訟を起こすも棄却。
さらにド・カルージュ家が何代にも渡って守護してきた砦の長官の座も、ジャックに奪われる。
数年後、ジャンはスコットランド遠征中に騎士に昇進し、報奨金を受け取りにパリに出向いた後帰還すると、マルグリットの様子がおかしい。
ジャンが問いただすと、彼の留守中ジャックが家に押し入り、強姦されたと言う。
普通に訴えても、ピエールに握り潰されると考えたジャンは、国王シャルル六世に決闘裁判での審判を訴え出るのだが・・・・
なるほど、これは確かに中世ヨーロッパ版の「羅生門」だ。
マルグリットはジャックに強姦されたと言うが、その場にいたのは当事者だけで、客観的に事実を知る者はいない。
同じ出来事も、当事者の認識の違いによって少しずつズレてゆく。
一人の人物が違う視点で語られた時、それまで見えなかった別の顔が見えてくるというワケ。
映画は、決闘裁判の当日を起点とした三章構成となっていて、ほぼ同じ時間軸が三人の視点で語られてゆく。
第一章がおよそ40分を費やして語られるジャン・ド・カルージュが語る「真実」。
ただし、肝心の強姦事件の時は、彼は留守だったので、実際に何が起こったのかは知り得ない。
次の40分強の第二章が、加害者とされたジャック・ル・グリの語る「真実」。
最後の第三章が、被害者のマルグリットの語る「真実」で、これこそが本当の「真実」だとメンションされる。
男二人が語る真実の冒頭部分には、まだマルグリットはいない。
当初は生死を共にした戦友同士で、無二の親友だった二人の運命は、戦地から帰った後に徐々に別れてゆく。
新たな支配者となったピエールの知遇を得たジャックは、その博学さを買われて領地の税務を担当するようになり、急速に力をつけてゆく。
一方のジャンは困窮し、ジャックの計らいでようやく税の支払いを逃れる状態。
彼は資産家の令嬢だったマルグリットと結婚することで、窮状を逃れようとするのだ。
ところが、彼女の持参金の一部だった土地がらみの揉め事で、ジャンとジャックは仲違いしてしまうのである。
ジャン視点で語られる第一章では、王に対する忠誠心旺盛で勇猛果敢、実直な生き方をしてきたジャンが、狡猾で卑劣なピエールとジャックによって、土地も役職も奪われてゆく。
マルグリットと結婚した後に、一度は彼女の助言もあってジャックと仲直りし、戦場で従騎士から騎士へと出世も果たす。
人生が上向いてきたと思った途端、帰還した家で涙を流すマルグリットから、驚くべき話を聞かされるのである。
同じ時系列をジャック視点で語る第二章では、だいぶ様相が異なって来る。
ジャックから見たジャンは、猪突猛進タイプで戦場で暴れる以外は才覚のない粗野な男。
正当な仕事の報酬として得た土地に対するジャンの訴訟や、砦の長官職についたことに対する怒りも、ジャックにしてみれば言いがかりである。
文武両道に優れた自分は官僚として取り立てられ、武芸しか脳のないジャンは戦地で戦って稼ぐしかないのは、当たり前だと思っている。
だが、ジャンの妻マルグリットを見て驚く。
美しいだけでなく、教養もあり自分と同じくらい博学な女性が、なぜジャンのような脳味噌筋肉男と結婚しているのか理解できず、彼女はジャンからの解放を望んでいると勝手に思い込む。
ここでポイントとなるのは、ジャックもマルグリットとセックスしたことは否定していないこと。
ただ彼はあくまでも合意の上でしたことで、強姦ではないと主張するのだ。
第一章と第二章は、二人の対照的な男の明暗の別れた人生の物語として描かれるが、物語のテーマはまだ曖昧。
そして男たちのドラマを下敷きに語られる、女視点の第三章でキレキレのスコット節が炸裂する。
正直第二章までの顛末は、21世紀の今から見ればいろいろ極端ではあるものの、「まあ中世の話だし、こんなものだよね」と思わないでもなかった。
ところが、第三章がマルグリット視点で語られはじめた途端、映画は強烈な現在性を帯びて来るのだ。
700年前の物語を21世紀時の今作った理由も、彼女の視点が入ることで完璧に納得できる。
この映画の男たちは、基本女性を所有物=財産だと考えている。
話を聞いたジャンが激昂したのも、マルグリットの痛みや怒りに共感していると言うよりは、自分の大切な所有物を奪われれ、名誉を汚されたと思っているからだ。
一方、自惚れ屋で、自分に靡かない女などいないと思っているジャックにとっても、彼女の本当の気持ちなどどうでもいい。
ジャックの辞書には、そもそも「強姦」という言葉は存在しないのだ。
マルグリットの身に起こったおぞましい事件は、男たちの中ではその前の土地を盗った盗られたという話と同じ文脈なのである。
聡明なマルグリットは、そんな時代の中でも自分ができること、やるべきことを見つけ、才覚の無い夫を助けて前向きに生きている。
ところが彼女のささやかな幸せは、身勝手な男たちによって簡単に踏みにじられてしまう。
第二章と第三章で描かれる、彼女が強姦されたシーンの描き分けはとりわけ秀逸だ。
ほとんど同じカット割、カメラワークなのだが、同じ事象に対する二人の認識の違いを役者の演技だけで描き切った。
マルグリットの視点では、彼女は苦痛に泣き叫び、誰がどう見ても乱暴されているのだが、ジャックの視点ではいわゆる「嫌よ嫌よも好きのうち」的に、彼女の拒絶がずっとマイルドに描かれているのだ。
なるほど、逮捕された強姦魔がよく言う、「合意の上」というのは、こういうことだったのだな。
しかし自分の名誉が一番大切なジャンは、負ければ妻も一緒に死刑になることを知りながら、決闘裁判を訴える。
また決闘裁判を認めるかの審問では、マルグリットがジャックに強姦された時、絶頂を感じたかを執拗に追及される。
これなどは、まさに現在で言うところのセカンドレイプであり、力を持った男が相対的に弱い立場にいる女を傷付ける構図は、時代が中世だとかは全く関係ない。
クライマックスの決闘はさすがリドリー・スコット。
想像していたよりもずっと泥臭く、彼の代表作の一つである「グラディエーター」のクライマックスを彷彿とさせる圧巻の仕上がり。
しかもこの時点で、第三章を観てきた観客はすっかりマルグリットに感情移入している。
ジャンが負ければ、マルグリットの運命は決まってしまうので、二人のクソ野郎の対決ではあるが、彼女を殺させないためにジャンを応援せざるを得ない。
実際に決闘するジャンとジャック、それを見守るマルグリットの肉体と精神の三つ巴の戦いは、心臓が縮み上がる瞬間が連続する。
ここだけでも観る価値が十分にあるが、14世紀という遠い昔の事件を題材に、歴史物では影に追いやられがちな女性の視点を入れることで、驚くべき現在性と普遍性を導き出しつつ、娯楽映画として昇華したこの映画の作り手たちは素晴らしい仕事をしている。
脚本の三人も見事だが、御歳83歳のリドリー・スコット、若いわ。
ラストシーンのマルグリットの達観とした表情には、男性中心の歴史を冷徹に見つめるスコットの視線が透けて見える。
この映画での、悲願のアカデミー監督賞もあるんじゃないだろうか。
今回は、映画の舞台となるフランスのノルマンディー地方の名産品、カルヴァドスの「ブラーX.O.」をチョイス。
林檎を原材料としたブランデーは他にもあるが、カルヴァドスを名乗れるのはノルマンディー地方で作られる物だけで、ノルマンデー沖でエル・カルヴァドール号と言う船が難破した故事に因む。
非常に強い酒だが、単に酔っぱらうだけでなく、消化を促進する効果があると言われ、8年〜15年ものの原酒をブレンドしたこちらは、食中、食後酒として人気だ。

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この記事へのコメント
リドリー・スコット監督は、見ごたえのある映画を撮りますねえ。
特に決闘シーンは、迫力がありました。
特に決闘シーンは、迫力がありました。
子供がアダム・ドライバーの子供じゃないと神様の裁定ではっきりさせる為にも裁判は必要だったのかもしれない。何か勝てばチャラって汚職議員の禊選挙みたいだ。
2021/11/08(月) 00:05:48 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
>風子さん
スコットと言えば、デビュー作が「決闘者」ですし、オスカーの作品賞取った「グラディエーター」も決闘がクライマックスでしたね。
この映画の泥臭い決闘も見応えたっぷりでした。
>ふじきさん
赤ん坊が完全にミニチュアのマット・デイモンだったのは笑っちゃった。
分かりやすすぎるw
スコットと言えば、デビュー作が「決闘者」ですし、オスカーの作品賞取った「グラディエーター」も決闘がクライマックスでしたね。
この映画の泥臭い決闘も見応えたっぷりでした。
>ふじきさん
赤ん坊が完全にミニチュアのマット・デイモンだったのは笑っちゃった。
分かりやすすぎるw
2021/11/10(水) 21:22:46 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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14世紀末のフランス。 騎士ジャン・ド・カルージュの妻マルグリットが、夫の旧友ジャック・ル・グリに強姦されたと訴える。 目撃者はおらず無実を主張されるが噂は広まり、真実は神による絶対的な裁き“決闘裁判”に委ねられることに。 勝者が正義となり、敗者は命拾いしても死罪。 もし夫が負ければ、妻までもが偽証罪で火あぶりの刑を受けることになるのだった…。 実話から生まれた歴史ドラマ。
2021/10/23(土) 00:32:23 | 象のロケット
◆『最後の決闘裁判』109シネマズ木場7
▲画像は後から。
五つ星評価で【★★★ダークですな】
「最後の決闘裁判」と言うタイトルで「サイゴの決闘相手はキーラ」とかつい言ってしまう老害。
「最後のケツを問う裁判」と言うタイトルで「サイゴ×キーラ」、キーラのお目々はキラキラだから壁ドンされないようにバックでズンドコとかつい思ってしまう腐女子的老害。
そんなにヒットしてないと聞いたので、明るく楽...
2021/11/07(日) 23:59:55 | ふじき78の死屍累々映画日記・第二章
最後の決闘はすごかったですね! そこは、さすがにリドリー・スコット!
2022/08/11(木) 14:36:37 | 或る日の出来事
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