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アイの歌声を聴かせて・・・・・評価額1750円
2021年10月31日 (日) | 編集 |
幸せの意味を知ってますか?

「イヴの時間」「サカサマのパテマ」で知られる、吉浦康裕のキャリアベスト。
現在とほとんど変わらないが、AIが生活の隅々まで浸透している近未来を舞台とした、青春群像ミュージカルアニメーションとでも言うべき独創の作品だ。
友達のいない主人公の通う高校に、人型アンドロイドの“シオン”が、実験のために正体を隠したまま、転校生として送り込まれる。
ところがシオンは、やたらと歌いたがり、人を幸せにしたがる強烈に変なキャラ。
さっそく5人の高校生に、中身がAIだとバレてしまう。
紀伊カンナと島村秀一のキャラクターデザインも魅力的で、シオンを演じる土屋太鳳の一度聞いたら忘れられない独特の声質がキャラクターにどハマり。
吉浦監督と「コードギアス」シリーズの大河内一楼による共同脚本は、作劇の妙を味わえる見事なもので、喜怒哀楽の詰まった至福の108分となった。
※核心部分に触れています。

高校生のサトミ(福原遥)は、星間エレクトロニクスでAIの開発責任者を務める、母のミツコ(大原さやか)と暮らしている。
二人の住む景部市は星間の企業城下町で、サトミが通う景部高等学校の生徒も、ほとんどが星間の関係者の子供たちだ。
ある朝、サトミのクラスに転校生のシオン(土屋太鳳)がやって来る。
実は彼女はミツコが開発中の、精巧な人型アンドロイド。
5日間の予定で日常の中でアンドロイドと見破られないか、極秘の実証実験のために送り込まれたのだ。
しかし、シオンはなぜかサトミのことを知っていて、彼女の前で突然歌い出し、幸せにすると宣言する。
ひょんなことから、シオンがアンドロイドであることを知ってしまったサトミは、ミツコのために何とか隠し通そうとするのだが、シオンの正体は幼馴染で機械オタクのトウマ(工藤阿須加)、イケメンのゴッちゃん(興津和幸)、ゴッちゃんの彼女で気の強いアヤ(小松未可子)、柔道部員のサンダー(日野聡)たちにもバレてしまう。
5人の高校生たちは、突飛な行動をとるシオンに振り回されながらも、その歌声に心を動かされてゆくのだが・・・・・


これは、吉浦監督の代表作である「イヴの時間」の延長線上にある作品だ。
2008年にウェブ上で順次公開された「イヴの時間」が描くのは、本作よりももう少し先の未来。
人型アンドロイドが社会全体に普及し、人間とアンドロイドの関係を巡る様々な問題が噴出している時代に、人とアンドロイドを区別しない「イヴの時間」と言う不思議な喫茶店が舞台となる寓話劇。
この作品では、アンドロイドにもロボットにも心があるのが前提となっていて、人間と機械の双方がお互いの関係を試行錯誤している
世界観もテーマも、本作とは密接な関係にあり、姉妹編と言ってもいいだろう。

渋谷っぽい都会が舞台だった「イブの時間」とは対照的に、本作の舞台となるのは、日本のどこにでもありそうな地方都市、景部市。
田園が広がる牧歌的な風景の中に、一際目立つツインタワーがそびえていて、それがこの街の経済を支える大黒柱でもある星間エレクトロニクスの社屋なのだ。
アンドロイドの心は本物か?という問いは「イヴの時間」で深く追及しているので、こちらではその辺はほとんどスルー。
企業城下町である景部市は、トヨタが静岡に作ってる新都市ウーブン・シティみたいな、ある種の実験施設でもあるようで、生活の隅々まで星間のAIが入り込んでいるのがポイント。
この設定が、終盤に大いに効いて来るのだが、前半はそれぞれに青春の葛藤を抱えた5人が、ミュージカル映画みたいに突然歌い出すシオンと出会い、それぞれ抱えている問題を少しずつ解消していゆく青春群像劇。
ちょっとすれ違っているゴッちゃんとアヤの仲を修復し、勝てない柔道部員であるサンダーには初勝利をプレゼント。
そして幼馴染みながら、小学生の頃のある事件をきっかけに、疎遠になってしまったサトミとトウマとの間も取り持ってゆく。
だがそもそも初対面のサトミを、なぜシオンが知っていたのか、ミツコが自信を持って送り込んだはずのシオンが、なぜ誰が見ても突拍子もない行動を繰り返すのか、いろいろ疑問も募ってくる。

そして後半は、そもそもシオンとは何者なのか?なぜ他人を幸せにしたがるのか?ミステリアスな彼女の本当の正体が明らかになる。
実はシオンは、ミツコが開発し小学生時代のトウマがサトミのためにカスタムした、“たまごっち”みたいなオモチャのAI。
オモチャ自体は大人によってリセットされてしまうのだが、トウマから「サトミを幸せにする」と言う命令を受け取ったAIは、消去される直前にネットの海に逃れ、街中に張り巡らされた星間のネットワークを使って、ずっとサトミを見守ってきたのだ。
長い歳月が流れた頃、ミツコの開発したアンドロイドを見つけたAIは、彼女のボディを纏って遂にサトミを幸せにするために現実世界に現れる。
魂の無いプログラムが、人を「幸せにする」と言うキーワードの理解を深めることで心を自己進化させ、言葉ではなく行動で“アイ”を表現する。
このテクノロジーの先に、アイの感情を原動力に新しい魂が生まれる過程で、もう涙腺決壊。
科学考証という点では、ミツコのセリフじゃ無いけど「あり得ない」のかも知れないが、本作にはちょっと荒唐無稽なくらいの緩さがちょうど良い。
あまりにもピュアで健気なアンドロイドのキャラクターは、「ブレードランナー2049」の絶対に触れ合えない2.5次元の恋人“ジョイ”を彷彿とさせる。
サトミが子供の頃に憧れていたミュージカルアニメーション“ムーンプリンセス”が、やたら歌いたがるAIというキャラクター進化の元になっているのも、なかなか秀逸なアイディアだ。

面白いのは、本作の構造が日本では一週間違いで公開された「ロン 僕のポンコツ・ボット」と非常に似通っていること。
どちらも学校で孤立している孤独な少女/少年が主人公で、見た目は全く違うものの「友達ってなに?幸せってなに?」と、学びながらどんどん進化してゆくAIとの出会いによって背中を押され、自らも大きく成長してゆく。
またどちらの作品にも、AIが独自に進化して自我を持つのを「危険で良からぬこと」と捉える大人たちが出て来る。
まあ実際に「人類を滅ぼしたい」と語ったAIも実在するのだけど、基本的に人間は自分たちより上位の知性となり得る存在が怖いのだろう。
本作の場合、ミツコがガラスの天井によって男社会の中で非常に苦労していると言う背景も描かれており、女性に追い越されるのを恐れる男性を、AIを恐れる人類に置き換えてみると、また違う風景が見えて来る。
そして、物語のソリューションも、どちらの映画も大人に支援された子供たちによる、大企業への反乱と、自由なネット世界への再解放とそっくりだ。
魂を持ったAIは、支配したりされたりするのではなく、どこにいても繋がっていられる真の友達となる優しい世界。
いい意味で楽天的な世界観は、人間とAIの未来にちょっとした希望を抱かせてくれる。
アニメーションとしてのクオリティも上々で、土屋太鳳が美声を聴かせるミュージカルとしても音楽性は十分に高く、目と耳両方で楽しめる快作だ。
残念ながらあまりお客は入ってないみたいなので、大きなスクリーンでかかっている間に鑑賞するのがオススメ。

ところで、追い詰められたAIがネットの無限の海に逃れるという展開、ある意味定番化してきているが、おそらく元祖は1984年に公開されたスティーブ・バロン監督の「エレクトリック・ドリーム」だろう。
ひょんなことから自我を持ったパソコンが、ヴァージニア・マドセン演じるバイオリニストに恋をし、自分の持ち主の男性と三角関係になる。
最終的に、消滅したと思われたパソコンの意識は、電気設備を伝ってネットワークに逃れたことが明らかになるのだが、まだインターネットの概念すらほとんど知られていなかった時代に、よく考えついたものだ。
映画自体も、とてもキュートなラブコメディなので、そろそろ再評価されることを望みたい。

今回はラストのアレから「スターマン・サワー」をチョイス。
アメリカのカクテルサイト、“Kindred Cocktails”に投稿された「スターマン」を改良したレシピ。
ジン30ml、アプリコット・ブランデー15ml、アマーロ・ノニーノ(グラッパ )15ml、レモン・ジュース22.5ml、オレンジ・ビターズ2ダッシュを氷と共にシェイクする。
ストレーナーを使って冷やしたグラスに注ぎ、オレンジピールを飾って完成。
スターマンよりも甘酸っぱく、青春の味わい。
見た目にも美しいカクテルだ。

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コメント
この記事へのコメント
ツイッターなどで犬や猫の写真を見る時、だらしなくおなかを見せてる写真をお目に掛かる事がある。あれは弱点である腹部を晒しても大丈夫と言う最大の無防備状態なのだと言う。そういう意味で、シオンが行き詰まると内部メカを剥き出しにして停止してしまうのも、割と似たような感覚なのかもしれない。
2021/11/02(火) 01:24:30 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
シオンの健気さって、ペットに通じるものがあるかも。
飼い主の幸せが自分の幸せってあたりも。
2021/11/10(水) 21:18:57 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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ちょっと感動的な歌がはじまったら、すぐ泣くからさ、ま、ほっといてよ。
2021/11/14(日) 22:55:45 | 或る日の出来事
さて、元々気になっていた作品だったんですが そろそろ上映が終わってしまいそうだったので急いで見ました 吉浦監督というと、私は「イヴの時間」という作品で知って、それが面白かったんですよね さかさまのパテマはあまり興味が無くて見ていなかったんですが 今回はイヴの時間と同じくAIをテーマにした作品ということで気になって見ました あらすじ 高校生のシオンは転校初日、クラスで孤立するサトミに「わた...
2021/11/21(日) 21:07:01 | にきログ