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2021年11月22日 (月) | 編集 |
苦しくても、辛くても、生きてゆく。
インターネットで出会った三人の高校生、友也、あおい、涼。
夏に花火をすると現れるという、都市伝説の“サマーゴースト“を探しに出かけた彼らは、「佐藤絢音」と名乗る若い女の幽霊と出会う。
「君の肝臓を食べたい」などの小説の装画で知られ、タムラコータロー版「ジョゼと虎と仲間たち」ではコンセプトデザインを担当したloundrawが、自らのイラストを基にアニメーション映画化した作品。
僅か40分の短編だが、充実した映画的時間を味わえる、素晴らしい仕上がりだ。
今回は本名の安達寛高名義の乙一の脚本、これが劇場用映画初監督となるloundrawの演出も極めてハイレベル。
幽霊に出会えるのは、死に惹かれる者だけ。
それぞれに葛藤を抱えた三人の若者は、幽霊の絢音と出会ったことで、生と死の境に足を踏み入れ、ひと夏の冒険で生きることの意味に向き合ってゆく。
ストーリー進行はテンポ良く、三人それぞれの幽霊に会いたい理由を描き出す。
厳格な母に支配された友也は、好きな絵の道を否定され、生きる意味を見失っている。
凄惨ないじめにあっているあおいは、死という救いの誘惑に、抗えられなくなっている。
そしてバスケに打ち込んできた涼は、突然自分の命が残り少ないことを知らされる。
立場は違えど、彼らは皆現在の生に苦悩し、その裏側としての死がどういうものかを知りたがっているのだ。
三人の前に現れた佐藤絢音の幽霊は、いわば彼らのアンチテーゼ。
死にたくないのに不慮の死を遂げた彼女は、自分の体がどこにあるのかも分からず、ただ目的もなく彷徨っている存在。
だから彼女は、友也に自分の体探しを手伝って欲しいと言う。
やがて彼女の願いに応えることに、生の意味を見出した友也の青春の熱は、あおいや涼にも広がってゆく。
彼らは“死”を探すことによって、生の意味を知るのである。
本作は制作もloundrawの設立したFLAT STUDIOが担当しているが、この人のイラスト作品や過去のアニメーション作品から感じるのが、光と影の独特な捉え方。
光の使い方は新海誠に通じるものがあるが、ユニークなのは影の方だ。
多くの作品では、キャラクターが逆光気味に描かれていて、光は射し込んでいても、その表情は影の中。
本作でもマジックアワーの儚げな光が印象的に使われ、キャラクターは影になっている描写が多い。
見えているものはほんのわずかで、暗い部分にこそ核心がある。
これは、光と影の芸術である、映画そのもののあり方にも通じる。
イラスト作品も単なる絵というよりも、作者の頭の中にあるカメラのレンズで捉えられていて、おそらく彼にとって、イラストという表現は限りなく映画に近いもので、静止画からアニメーションへの展開は必然だったのかも知れない。
これは、三人三様の葛藤を抱えた高校生+幽霊のリリカルな青春映画であり、アニメーション表現を生かした詩的な幻想映画でもある。
青春の輝きと痛みを併せ持つ、高校生たちのキャラクターもいいが、特筆すべきは川栄李奈がVCを務める、妙に人間臭い“サマーゴースト”だ。
聞かれてもないのに、自分からフルネームを名乗る幽霊って初めて見たかも。
この上映時間で幽玄を感じさせる、作品の密度の濃さは素晴らしい。
おそらく、loundrawという名前は今後のアニメーションシーンにおいて、大きな存在感を持つことになるだろう。
その大きな一歩となる、小さな宝石の様な秀作だ。
マジックアワーの美しい映画だったので、同じ日没後の薄明の時間帯を指す「トワイライト・ゾーン」をチョイス。
ホワイト・ラム30ml、グレープフルーツ・ジュース30ml、アプリコット・ブランデー1tsp、クレーム・ド・カシス1/2tspを氷と共にシェイクし、グラスに注ぐ。
柑橘系の酸味が効いて、サッパリとした甘味のカクテル。
この時間帯を日本では逢魔時と呼び、怪異に出会いやすくなると言い伝えられているので、”サマーゴースト”がこの時間に現れるのもまことに正しい。
スピルバーグがプロデュースした映画版「トワイライト・ゾーン/超次元の体験」が日本公開された1984年に、日本バーテンダー協会のカクテル・コンペで優勝した作品だ。
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インターネットで出会った三人の高校生、友也、あおい、涼。
夏に花火をすると現れるという、都市伝説の“サマーゴースト“を探しに出かけた彼らは、「佐藤絢音」と名乗る若い女の幽霊と出会う。
「君の肝臓を食べたい」などの小説の装画で知られ、タムラコータロー版「ジョゼと虎と仲間たち」ではコンセプトデザインを担当したloundrawが、自らのイラストを基にアニメーション映画化した作品。
僅か40分の短編だが、充実した映画的時間を味わえる、素晴らしい仕上がりだ。
今回は本名の安達寛高名義の乙一の脚本、これが劇場用映画初監督となるloundrawの演出も極めてハイレベル。
幽霊に出会えるのは、死に惹かれる者だけ。
それぞれに葛藤を抱えた三人の若者は、幽霊の絢音と出会ったことで、生と死の境に足を踏み入れ、ひと夏の冒険で生きることの意味に向き合ってゆく。
ストーリー進行はテンポ良く、三人それぞれの幽霊に会いたい理由を描き出す。
厳格な母に支配された友也は、好きな絵の道を否定され、生きる意味を見失っている。
凄惨ないじめにあっているあおいは、死という救いの誘惑に、抗えられなくなっている。
そしてバスケに打ち込んできた涼は、突然自分の命が残り少ないことを知らされる。
立場は違えど、彼らは皆現在の生に苦悩し、その裏側としての死がどういうものかを知りたがっているのだ。
三人の前に現れた佐藤絢音の幽霊は、いわば彼らのアンチテーゼ。
死にたくないのに不慮の死を遂げた彼女は、自分の体がどこにあるのかも分からず、ただ目的もなく彷徨っている存在。
だから彼女は、友也に自分の体探しを手伝って欲しいと言う。
やがて彼女の願いに応えることに、生の意味を見出した友也の青春の熱は、あおいや涼にも広がってゆく。
彼らは“死”を探すことによって、生の意味を知るのである。
本作は制作もloundrawの設立したFLAT STUDIOが担当しているが、この人のイラスト作品や過去のアニメーション作品から感じるのが、光と影の独特な捉え方。
光の使い方は新海誠に通じるものがあるが、ユニークなのは影の方だ。
多くの作品では、キャラクターが逆光気味に描かれていて、光は射し込んでいても、その表情は影の中。
本作でもマジックアワーの儚げな光が印象的に使われ、キャラクターは影になっている描写が多い。
見えているものはほんのわずかで、暗い部分にこそ核心がある。
これは、光と影の芸術である、映画そのもののあり方にも通じる。
イラスト作品も単なる絵というよりも、作者の頭の中にあるカメラのレンズで捉えられていて、おそらく彼にとって、イラストという表現は限りなく映画に近いもので、静止画からアニメーションへの展開は必然だったのかも知れない。
これは、三人三様の葛藤を抱えた高校生+幽霊のリリカルな青春映画であり、アニメーション表現を生かした詩的な幻想映画でもある。
青春の輝きと痛みを併せ持つ、高校生たちのキャラクターもいいが、特筆すべきは川栄李奈がVCを務める、妙に人間臭い“サマーゴースト”だ。
聞かれてもないのに、自分からフルネームを名乗る幽霊って初めて見たかも。
この上映時間で幽玄を感じさせる、作品の密度の濃さは素晴らしい。
おそらく、loundrawという名前は今後のアニメーションシーンにおいて、大きな存在感を持つことになるだろう。
その大きな一歩となる、小さな宝石の様な秀作だ。
マジックアワーの美しい映画だったので、同じ日没後の薄明の時間帯を指す「トワイライト・ゾーン」をチョイス。
ホワイト・ラム30ml、グレープフルーツ・ジュース30ml、アプリコット・ブランデー1tsp、クレーム・ド・カシス1/2tspを氷と共にシェイクし、グラスに注ぐ。
柑橘系の酸味が効いて、サッパリとした甘味のカクテル。
この時間帯を日本では逢魔時と呼び、怪異に出会いやすくなると言い伝えられているので、”サマーゴースト”がこの時間に現れるのもまことに正しい。
スピルバーグがプロデュースした映画版「トワイライト・ゾーン/超次元の体験」が日本公開された1984年に、日本バーテンダー協会のカクテル・コンペで優勝した作品だ。

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