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ショートレビュー「クライ・マッチョ・・・・・評価額1400円」
2022年01月16日 (日) | 編集 |
91歳の見たユートピア。

これはもの凄くヘンテコな映画だ。
イーストウッドが演じるのは、テキサスに住む元ロデオのスター、マイク。
かつては男らしさを誇っていたが、今では妻子を亡くし孤独な生活を送っている老いぼれた爺さんが、元雇い主に依頼され、メキシコから彼の息子のラファを誘拐して来る。
なぜなら、別れた妻とメキシコシティで暮らしているラファが、虐待されていると言う噂を聞いたから。
老人と子供、ロードムービーという設定だけ見ると、「グラン・トリノ」や「パーフェクト・ワールド」と行った名作を思わせるのだが、テイストがまるで違う。
逃避行のはずが、緊迫感はゼロ。
一応、妻の部下やメキシコ警察に追われたりもするのだが、サスペンスな要素はほとんどなく、ひたすらのほほんとした自動車旅行が展開する。

ベースとなる物語の設定からしてゆるい。
豪邸に住んでるラファの母親は男たらしで、ドラッグのビジネスで儲けているらしい。
母の連れ込む男たちに虐待されたラファは、ストリートで暮らしているが、彼女は反抗的な息子に無関心。
ところが、マイクが現れた途端、なぜかラファに執着しはじめる。
妻のキャラクター造形がまるでデタラメだし、そもそもテキサスの牧場主と、メキシコのドラッグの元締めが、どこで、どうやって夫婦になったのか謎。
展開は行き当たりばったりで、当初明かされたなかった裏設定が、途中からこれまた唐突に出てくる。
原作の問題か脚色の問題か知らないが、ぶっちゃけシナリオはガタガタだ。

旅の行程も、むっちゃのんびり。
イーストウッドが前回主演した「運び屋」でも、ドラッグを運ぶ間に思いっきり寄り道していたが、怖いもんなしの爺ちゃんの辞書には「急ぐ」という文字が無い。
依頼主からはさっさと帰って来いと言われているのに、なぜか途中の村に落ち着いちゃって、何週間も馬の調教したり、獣医の真似事したり、似た境遇の老婦人と老いらくのロマンスまで。
旅の目的と同時に映画の方向性も失われて、しまいには観てて「これ何の映画だっけ?」と分からなくなってくる。
一応、最後の最後で、やっとこさ追いついた敵に襲われ、タイトルの“マッチョ”の意味も語られるのだが、たぶんイーストウッドは、もう誰かに何か伝えるためには、映画を作ってないのだと思う。

ゼロ年代に入ってからのイーストウッドの監督作品は、極めて端正な輪郭とバランスを持つ、次世代への遺言の様な作品が並んでいた。
ところが、10年代に入ると少しずつ様相が変わってくる。
硫黄島上陸作戦を描いた「父親たちの星条旗」では、わざわざ対になる「硫黄島からの手紙」を日本側からの視点で撮り、二部作としたくらいに公正さに拘っていたのに、同じく史実をベースとした「ハドソン川の奇跡」「リチャード・ジュエル」では、史実をねじ曲げてでも“悪役”を仕立て上げる。
フランスで起こったテロ事件を描いた「15時17分、パリ行き」では、事件の当事者本人に演じさせるという実験的な奇策を使う。
思うに、この辺りからイーストウッドの映画は、独り言に近くなっていったのだと思う。

極め付けが、88歳の時に主演した「運び屋」である。
実在の老運び屋にインスパイアされたこの物語で、イーストウッドが演じたのは、極端に承認欲求が強く、それゆえに家族を失い、道を踏み外してしまった男だ。
映画を観た方はお分かりだろうが、これは自らも私生活ではいろいろやらかしているイーストウッドの、過去への懺悔のような作品だった。
そして90を超えて演じた本作も、基本的には「運び屋」の延長線上にある。
本作を端的に言えば、嘗ては力でブイブイ言わせてた主人公が、気がつけば老いて周りに誰もいなくなってしまい、最後の旅でマッチョな生き方を捨てることで、理想郷を見つける話し。
これはもう、作者の人生最後の願望としか思えない。

もう若い世代へ伝えたいことがある訳じゃないから、子供を救うのはオマケ。
実際ラファのキャラクター造形も、他のキャラクターと同様に紋切り型だ。
時代設定が79年なのも、原作がそうと言うより、この時代が作者にとって人生で一番良かったんだろうなと思わされる。
心を通じ合える彼女と可愛い孫たちに囲まれた、まるで西部劇に出てくるような田舎町。
ぶっちゃけ、作品としての出来は素晴らしいとは言えないが、91歳の老巨匠がたどり着いた理想の世界はここかあ、という妙な納得感はある。
90まで生きて、こんな穏やかな老境に達してみたいものだ。

今回は、メキシコ名物のテキーラとはちみつを使ったカクテル「エル・ドラード」をチョイス。
テキーラ45ml、レモンジュース30ml、はちみつ3tspをシェイクして、氷を入れたグラスに注ぐ。
最後に、カットしたオレンジ一切れを沈めて完成。
テキーラの強烈な風味を、レモンの酸味とはちみつの甘味がマイルドに仕上げ、すっきりとした一杯。
「エル・ドラード」とは、南米のアンデス山脈に存在すると言われる伝説の黄金郷だが、テキサスにも同名の町がある。
ちなみに、ハワード・ホークス監督の「エル・ドラド」の舞台もテキサス州エル・ドラドだが、これは架空の町で実際のエル・ドラドとの関係は無い。

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コメント
この記事へのコメント
変った映画でした。巨匠の自然体というのはこんな構成になるのかと。カメラワークとか周囲が一流でしょうから何とか観ることができましたが、珍品の類かと。
でも観終えて、どこかで観たようなシナリオ化と思いながらも損したとは思わなかったです。
2022/01/17(月) 15:23:05 | URL | #mQop/nM.[ 編集]
こんばんは
変でしたねえ。もうあんまり映画の出来とかには興味がないのでしょう。映画というより、自分の作りたい世界を素直に表現したらこうなったという感じですね。不思議と心地よさを感じる映画でした。
2022/01/25(火) 22:20:50 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんにちは。
こんにちは。
宣伝でヒロミがこの映画のクリントイーストウッドのことを滅茶苦茶カッコいい!とほめそやしているのを見た時に、嫌な予感はしていました。
クリントイーストウッドにとってはこれが自然体で生きるということなのかもしれないし、過去の自分に対するスイートドリームスなのかもしれません。
2022/01/28(金) 12:55:23 | URL | ここなつ #/qX1gsKM[ 編集]
こんばんは
>ここなつさん
別にカッコよくはないですよねえ。
そもそも俺なんてカッコよくないぞ、って映画だし。
まさに自然体の91歳でした。
その意味では憧れる部分はあります。
2022/01/30(日) 21:28:23 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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アメリカ・テキサス州。 ロデオ界のスターだった老人マイクは、今は独り暮らし。 彼は恩義がある前の雇い主から、元妻とメキシコで暮らしている十代の息子ラフォを連れ戻して欲しいと頼まれる。 母親に愛想を尽かしていたラフォは国境を越える旅に同意するが、それはほぼ誘拐犯罪。 2人は警察や母親の追っ手に追われることに…。 ロードムービー。
2022/01/17(月) 22:34:44 | 象のロケット
イーストウッド、もう無理しないで。「危なっかしくて見てられない」というのは、それが円熟の演技に通じるコメディアン及びコメディエンヌか、ある種のホラー映画のヒロインにのみ許されるのであって、本当にそう観客に思わせてしまうのはやはり失敗なのだと思う。年の割には…とは言うものの、こんな風体で暴れ馬を調教したり、ならず者に睨みを効かせたりできるとは思えない。一挙手一投足がもうすっごく心配になってしま...
2022/01/28(金) 12:52:38 | ここなつ映画レビュー