2022年02月04日 (金) | 編集 |
彼女を、必要としている人がいる。
仮釈放中の「前科者」の更生を助けるため、彼らの保護観察を担当する新米保護司・阿川佳代の成長を描くTVドラマのザ・ムービー。
原作は、香川まさひとと川島冬二の同名コミック。
「あゝ、荒野」の岸善幸監督と脚本の港岳彦のコンビで、WOWOWOでドラマ化されたが、今回は岸監督が脚本、編集も兼務するオリジナルストーリーだ。
主演の有村架純や、前科者から彼女の親友となるみどりさん役の石橋静香ら、ドラマのレギュラー陣は続投。
ドラマ版を見ている方が理解できる情報量は多いが、一見さんでも問題なく鑑賞できるように作られている。
保護司という仕事は知っていたが、国家公務員なのに完全に無給のボランティアだとは、本作のドラマ版を見るまで知らなかった。
30分一話の二本で一つのエピソードを構成するドラマ版は、基本的に阿川さんと様々な事情を抱えた前科者のキャラクターの対抗で物語が進み、阿川さんはどちらかと言えば受身の狂言回し的存在。
対して映画版は、現在進行形の連続殺人事件を軸とし、群像劇の色彩が強い。
森田剛が好演する、壮絶な過去を持つ殺人犯の工藤誠を保護観察の対象者に迎えて、プロットはグッと複雑&ハードに。
全ての登場人物にとって、現在抱えている葛藤は過去に原因があり、それらの要素が事件の展開と共に明らかになってくる仕掛け。
そしてその中には、阿川さんが保護司となった理由も含まれている。
工藤誠が前科者となった背景は、とことん悲惨だ。
幼い頃にDVオヤジが実母を刺殺、弟と共に児童養護施設に入るも、そこでも職員から虐待を受ける。
仕事に就いても、就職先の先輩に酷い苛めを受け、ついに殺してしまったのだが、元々は真面目な人柄ゆえ、模範囚として仮出所し阿川さんと出会う。
ところが、人生の再出発まであと一歩というところで、復讐心の塊となったある人物と出会ってしまうのだ。
残酷な運命に翻弄される姿は、「もうホントやめてあげて」と思うくらい。
これは哀しい人間の罪と贖罪の物語であり、希望と絶望のドラマで、切ないファースト・ラブストーリーでもある。
工藤の物語と共鳴し合う様に描かれるのが、阿川さんの記憶に深く刻まれた過去の傷。
まだ阿川さんが10代の頃、とある事件に遭遇した彼女は、図らずも恋する人の大切な家族を奪ってしまうのだ。
阿川さんの愛読書である中原中也の詩集に、初恋の人から投げかけられた呪いの言葉。
あれを読んでしまった時、彼女の心にどれほどの衝撃が走っただろうか。
彼女が保護司をしているのは、自らの罪に対する贖罪であり、絶望の縁に立つ前科者に希望を見出させ、新たな被害者を生まないため。
人は生きていれば、それが犯罪に問われなかったとしても、必ず何か罪を犯す。
それを身にしみて知っているからこそ、阿川さんは誰に対しても優しくて厳しいのだ。
みどりさんが「同居人かよ!」と突っ込みたくなるくらい、阿川さんの家に馴染んでるのが可笑しいが、かつて保護観察の対象者だった彼女が、今度は過去の傷に直面した阿川さんに寄り添い、心の支えになるのがホッとする。
人間はお互いの関係が全て。
岸善幸監督は、「あゝ、荒野」に続いて素晴らしい作品に仕上げた。
救える心もあれば、救えない心もある。
丁寧に紡がれた、ぶつかり合う人間たちの、数十年に及ぶ因果応報の物語は観応え十分だ。
牛丼からはじまり、ラーメンで終わる物語には、ごく普通の酒が似合う。
現在日本で一番売れている酒、アサヒビールの「スーパードライ」をチョイス。
てっきり安めの発泡酒あたりに首位を奪われていると思っていたので、意外な気もするが、コロナの自粛生活で、せめて家飲みの酒ぐらいは好きなものを買いたいということか。
1987年に初登場し、日本のみならず世界的なヒット商品となったザ・ニッポンのビール。
スッキリ辛口で喉越し重視のテイストは、高温多湿の日本の夏にピッタリだけど、冬でも美味しい。
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仮釈放中の「前科者」の更生を助けるため、彼らの保護観察を担当する新米保護司・阿川佳代の成長を描くTVドラマのザ・ムービー。
原作は、香川まさひとと川島冬二の同名コミック。
「あゝ、荒野」の岸善幸監督と脚本の港岳彦のコンビで、WOWOWOでドラマ化されたが、今回は岸監督が脚本、編集も兼務するオリジナルストーリーだ。
主演の有村架純や、前科者から彼女の親友となるみどりさん役の石橋静香ら、ドラマのレギュラー陣は続投。
ドラマ版を見ている方が理解できる情報量は多いが、一見さんでも問題なく鑑賞できるように作られている。
保護司という仕事は知っていたが、国家公務員なのに完全に無給のボランティアだとは、本作のドラマ版を見るまで知らなかった。
30分一話の二本で一つのエピソードを構成するドラマ版は、基本的に阿川さんと様々な事情を抱えた前科者のキャラクターの対抗で物語が進み、阿川さんはどちらかと言えば受身の狂言回し的存在。
対して映画版は、現在進行形の連続殺人事件を軸とし、群像劇の色彩が強い。
森田剛が好演する、壮絶な過去を持つ殺人犯の工藤誠を保護観察の対象者に迎えて、プロットはグッと複雑&ハードに。
全ての登場人物にとって、現在抱えている葛藤は過去に原因があり、それらの要素が事件の展開と共に明らかになってくる仕掛け。
そしてその中には、阿川さんが保護司となった理由も含まれている。
工藤誠が前科者となった背景は、とことん悲惨だ。
幼い頃にDVオヤジが実母を刺殺、弟と共に児童養護施設に入るも、そこでも職員から虐待を受ける。
仕事に就いても、就職先の先輩に酷い苛めを受け、ついに殺してしまったのだが、元々は真面目な人柄ゆえ、模範囚として仮出所し阿川さんと出会う。
ところが、人生の再出発まであと一歩というところで、復讐心の塊となったある人物と出会ってしまうのだ。
残酷な運命に翻弄される姿は、「もうホントやめてあげて」と思うくらい。
これは哀しい人間の罪と贖罪の物語であり、希望と絶望のドラマで、切ないファースト・ラブストーリーでもある。
工藤の物語と共鳴し合う様に描かれるのが、阿川さんの記憶に深く刻まれた過去の傷。
まだ阿川さんが10代の頃、とある事件に遭遇した彼女は、図らずも恋する人の大切な家族を奪ってしまうのだ。
阿川さんの愛読書である中原中也の詩集に、初恋の人から投げかけられた呪いの言葉。
あれを読んでしまった時、彼女の心にどれほどの衝撃が走っただろうか。
彼女が保護司をしているのは、自らの罪に対する贖罪であり、絶望の縁に立つ前科者に希望を見出させ、新たな被害者を生まないため。
人は生きていれば、それが犯罪に問われなかったとしても、必ず何か罪を犯す。
それを身にしみて知っているからこそ、阿川さんは誰に対しても優しくて厳しいのだ。
みどりさんが「同居人かよ!」と突っ込みたくなるくらい、阿川さんの家に馴染んでるのが可笑しいが、かつて保護観察の対象者だった彼女が、今度は過去の傷に直面した阿川さんに寄り添い、心の支えになるのがホッとする。
人間はお互いの関係が全て。
岸善幸監督は、「あゝ、荒野」に続いて素晴らしい作品に仕上げた。
救える心もあれば、救えない心もある。
丁寧に紡がれた、ぶつかり合う人間たちの、数十年に及ぶ因果応報の物語は観応え十分だ。
牛丼からはじまり、ラーメンで終わる物語には、ごく普通の酒が似合う。
現在日本で一番売れている酒、アサヒビールの「スーパードライ」をチョイス。
てっきり安めの発泡酒あたりに首位を奪われていると思っていたので、意外な気もするが、コロナの自粛生活で、せめて家飲みの酒ぐらいは好きなものを買いたいということか。
1987年に初登場し、日本のみならず世界的なヒット商品となったザ・ニッポンのビール。
スッキリ辛口で喉越し重視のテイストは、高温多湿の日本の夏にピッタリだけど、冬でも美味しい。

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コンビニエンスストアに勤務する28歳の女性・阿川佳代は、犯罪や非行に陥った者の更生を助ける非常勤の国家公務員・保護司になって3年目。 担当する仮釈放中の殺人犯・工藤誠が忽然と姿を消し、折しも発生した連続殺人事件の容疑者となってしまう。 自動車修理工場で黙々と働き社員登用も間近だった工藤の無実を信じる阿川の前に、警察官となった元同級生・滝本真司が現れる…。 社会派ドラマ。
2022/02/07(月) 19:27:19 | 象のロケット
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