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ショートレビュー「ちょっと思い出しただけ・・・・・評価額1650円」
2022年02月20日 (日) | 編集 |
ちょっと、思い出しちゃった日々。

タクシー運転手の伊藤沙莉と舞台の照明スタッフとして働く池松壮亮の、恋の終わりから始まりまでを描く青春ストーリー。
コロナ禍の2021年7月26日を起点に、二人の人生の過去6年間を、一年一日縛りで遡ってゆく。
なるほど、コレは「ナイト・オン・ザ・プラネット」ミーツ「ワン・デイ 23年のラブストーリー」だな。
もともとクリープハイブの尾崎世界観が、ジャームッシュの映画から着想を得て、本作の主題歌にもなっている「ナイトオンザプラネット」を制作。
次に松井大吾監督が、この歌からイメージを広げて映画にしたという。

伊藤沙莉演じる葉と、池松壮亮の照生は、映画の冒頭時点でもう付き合ってない。
7月26日は照生の誕生日で、二人にとっての様々なイベントがあった記念日なのだ。
2021年のこの日、「トイレに行きたい」という客の要望で、葉はある劇場の前でタクシーを停車し、自分もよく知る場内へと足を踏み入れる。
そしてそこで、誰もいないステージで踊る照生を見る。
既に別れた今、偶然起こったこの出来事によって、彼女の中の記憶が触発されてゆく。
物語の中で、特に何か大きな事件が起こる訳ではない。
関係が微妙で将来を見渡せない時期、翌年のプロポーズを予言したラブラブの絶頂期、友情が恋愛に変わった付き合い始め、舞台の出演者と客として出会った馴れ初めなど、カレンダーの7月26日が少しずつまくられてゆく。
6年の間に、ダンサーだった照生は足の怪我で裏方に転向し、このことが二人の関係に少なからず影響したことも示唆される。

「ナイト・オン・ザ・プラネット」は、世界の5つの都市のタクシー運転手を主人公としたオムニバスだが、本作に引用されているのは最初のロサンゼルス編
ここではウイノナ・ライダー演じるタクシー運転手が、映画のキャスティング・ディレクターをしているジーナ・ローランズを乗せ、なぜか映画に出演しないかと誘われる。
しかし整備士になる夢を持つライダーは、映画スターになるチャンスを断ってしまう。
偶然の出会いと人生の岐路、そして別れを描いたこのエピソードが、一晩を6年に引き伸ばした上で、本作のベースになっているのだ。
関係が一晩になるのか、6年になるのか、それとも一生になるのかは神のみぞ知るだが、人生の物語は一期一会の繰り返しで出来てる。
一つの恋が行き詰まって終わることで、また新しい恋が生まれる。

「今」から振り返れば、美しい思い出も全ては過ぎ去った過去で、偶然の邂逅がきっかけとなって「ちょっと思い出しただけ」という訳。
主役の二人が抜群によくて、誰もが記憶にもある、青春のビタースイートな思い出に重ね合わせて楽しめるだろう。
松井監督は「花束みたいな恋をした」に似てることを気にしてるようだが、過去の恋愛を思い出す話という共通点はあるものの、さほど連想することはなかった。

ただ現在から過去に遡るという設定を知らずに観たので、序盤ちょっと混乱した。
レトロな電動式カレンダーが、時間経過を表すのに使われているのだが、月日と曜日しか表示されないので、前に進んでるんだか遡ってるのだか分からない。
葉の車が新型のジャパンタクシーから旧型のクラウンに変わったところで、やっと構造を理解した。
近くの席にいたカップルのお客さんは、最後まで混乱してたみたいで、「どこが何年なのか分からなかった。分かった?」と聞き合っていた。
言葉によらない映画文法に慣れている人には、画面に映るものや展開で何となく理解できちゃうんだけど、せめて年は表示すべきじゃなかったか。
永瀬正敏のキャラクターが、象徴的な装置にしかなってないとか、首都圏の住人にとっては地理関係が不自然に感じるなど、いくつか気になる部分はあるが、ありがちなほど普遍性の強い題材を、トリッキーなテリングで未見性のある作品に昇華したのはお見事だ。

今回はカクテルの「ビタースイート」をチョイス。
ドライ・ベルモット25mlとスイート・ベルモット25ml、オレンジ・ビターズ1dash、アンゴスチュラ・ビターズ1dashを、氷を入れたミキシンググラスで軽くステアし、グラスに注ぐ。
最後にオレンジピールを一片入れて完成。
仄かなオレンジ色が美しく、名前の通りちょっと痛くて甘酸っぱい、青春の思い出の味。

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怪我でダンサーの道を諦め照明スタッフとなった男・照生(てるお)と、タクシードライバーの彼女・葉(よう)。 物語はふたりが別れてしまった後から始まり、時が巻き戻されていく。 愛し合った日、喧嘩した日、冗談を言い合った日、出会った日…。 コロナ禍より前の世界に戻れないように、誰もが戻れない過去を抱えて生きている…。 ラブストーリー。
2022/02/20(日) 23:08:31 | 象のロケット