2022年03月10日 (木) | 編集 |
セカイは”音”で出来ている。
大晦日の夜、親友のグレイスを亡くした主人公オーブリーは、悲しみに耐えかねて思い出の詰まった彼女の家に忍び込み、眠り込んでしまう。
翌朝目を覚ますと、街はしんしんと降り続く雪に閉ざされ、人の姿はどこにも見えない。
困惑するオーブリーの耳に、トランシーバーから謎の男の声が聞こえてくる。
どうやら眠っている間に異世界への扉が開き、街は未知の生物が跋扈する終末の世界へ変貌。
扉を閉じるには、亡き友グレイスが街のあちらこちらに隠した、七本のミックステープを見つけなければならないらしい。
だがオーブリーにとって、そんなことは知ったことではない。
世界が変貌したことよりも、グレイスを失ったことの方が、彼女にとってはずっと衝撃が大きいのだ。
孤独のうちに思い出に囚われたオーブリーは、あっさりと状況を受け入れ、グレイスの買っていたカメと共に家に篭城し、全く動こうとしない。
監督・脚本はこれがデビュー作となるA・T・ホワイト。
主人公のオーブリーを、2018年版「ハロウィン」で注目されたヴァージニア・ガードナーが演じる。
一月に「未体験ゾーンの映画たち」の一本として限定公開され、唯一無二の独特のムードとスタイルで、様々な反応を引き起こした作品が、スクリーン数は少ないものの一般公開される。
これは、なかなか稀有なことである。
いよいよ食料が尽きた時、オーブリーはようやくグレイスの残したヒントを頼りに、ミックステープを探しに外に出るのだが、街には人間を捕食するモンスターが徘徊している。
あえてジャンルに当てはめれば、ある種のポストアポカリプス・ホラーと言えるかもしれないが、ぶっちゃけ世界観やストーリーは、最後まで観てもよく分からない。
オーブリーとグレイスが本当はどんな関係だったのかとか、何度か出てくる顔の無い男は誰?とか、どういう仕組みでテープが異世界と繋がるのかとか、幾つのもクエッションが頭の中を飛び交うのだが、たぶん最初から説明する気がない。
ただ、二人は何らかの確執を抱えていて、オーブリーが後悔の気持ちを持っていたのは確かだろう。
冒頭に「based on a true story(実話に基づく)」というクレジットが出るが、本作は実際に親友の突然の死に直面したホワイトが、自分自身の傷ついた心に対するセラピーを兼ねて、想いを込めて作った作品だという。
つまりこれは、映画全体がオーブリー=ホワイトの心象風景と思っていい。
ヒントを紐解き、ミックステープを探す冒険は、亡くなったグレイスの気持ちを理解するためのプロセスであり、今はもう心の中にしかいない彼女を感じながら、オーブリーは少しずつ彼女の死を受け止めてゆく。
ホワイトはミュージシャンでもあり、突然アニメーションになったり、本作の制作現場が写るメタ構造になったり、ミックステープが象徴するように、テリングはまるで音楽のように自由奔放で直感的。
この映画の世界は言葉と言うより「音」で出来ていて、音波の力があれば世界を壊すことも、救うことも出来る。
ある意味、究極のセカイ系の作品で、映画を観るというよりも、抽象的な音で彩られた音楽を聴くような独特の映画体験だ。
アニメーションパートを手掛けているのは、日本の手塚プロで、リメイク版「どろろ」で総作画監督を務めた青木一紀らが参加している。
常識的な映画文法から言えば、かなり特殊な作品なのだが、一つのイメージを作り込むことに拘ったテリングは独創的。
テンプレ的な娯楽映画を求める層にはオススメ出来ないが、個人的にはかなり好き。
人間を捕食する「クワイエット・プレイス」っぽい小型モンスターや、「ミスト」を思わせる巨大モンスターなど、造形感覚も独特だ。
今回は、雪に閉ざされた異世界のイメージで「スノーボール」をチョイス。
アドヴォカート40mlとライムジュース5mlをシェイクし、氷を入れたグラスに注ぎ、最後に冷やしたソーダで満たして完成。
ベースとなるアドヴォカートは、オランダが原産の卵のリキュールで、優しい甘みが特徴。
スノーボールも、アドヴォカートの甘味とライムの酸味がバランスしたソフトな味わいで、とても飲みやすい。
レモネードソーダなど、フレーバー付きのソーダを使って、味のアレンジを加えても楽しい。
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大晦日の夜、親友のグレイスを亡くした主人公オーブリーは、悲しみに耐えかねて思い出の詰まった彼女の家に忍び込み、眠り込んでしまう。
翌朝目を覚ますと、街はしんしんと降り続く雪に閉ざされ、人の姿はどこにも見えない。
困惑するオーブリーの耳に、トランシーバーから謎の男の声が聞こえてくる。
どうやら眠っている間に異世界への扉が開き、街は未知の生物が跋扈する終末の世界へ変貌。
扉を閉じるには、亡き友グレイスが街のあちらこちらに隠した、七本のミックステープを見つけなければならないらしい。
だがオーブリーにとって、そんなことは知ったことではない。
世界が変貌したことよりも、グレイスを失ったことの方が、彼女にとってはずっと衝撃が大きいのだ。
孤独のうちに思い出に囚われたオーブリーは、あっさりと状況を受け入れ、グレイスの買っていたカメと共に家に篭城し、全く動こうとしない。
監督・脚本はこれがデビュー作となるA・T・ホワイト。
主人公のオーブリーを、2018年版「ハロウィン」で注目されたヴァージニア・ガードナーが演じる。
一月に「未体験ゾーンの映画たち」の一本として限定公開され、唯一無二の独特のムードとスタイルで、様々な反応を引き起こした作品が、スクリーン数は少ないものの一般公開される。
これは、なかなか稀有なことである。
いよいよ食料が尽きた時、オーブリーはようやくグレイスの残したヒントを頼りに、ミックステープを探しに外に出るのだが、街には人間を捕食するモンスターが徘徊している。
あえてジャンルに当てはめれば、ある種のポストアポカリプス・ホラーと言えるかもしれないが、ぶっちゃけ世界観やストーリーは、最後まで観てもよく分からない。
オーブリーとグレイスが本当はどんな関係だったのかとか、何度か出てくる顔の無い男は誰?とか、どういう仕組みでテープが異世界と繋がるのかとか、幾つのもクエッションが頭の中を飛び交うのだが、たぶん最初から説明する気がない。
ただ、二人は何らかの確執を抱えていて、オーブリーが後悔の気持ちを持っていたのは確かだろう。
冒頭に「based on a true story(実話に基づく)」というクレジットが出るが、本作は実際に親友の突然の死に直面したホワイトが、自分自身の傷ついた心に対するセラピーを兼ねて、想いを込めて作った作品だという。
つまりこれは、映画全体がオーブリー=ホワイトの心象風景と思っていい。
ヒントを紐解き、ミックステープを探す冒険は、亡くなったグレイスの気持ちを理解するためのプロセスであり、今はもう心の中にしかいない彼女を感じながら、オーブリーは少しずつ彼女の死を受け止めてゆく。
ホワイトはミュージシャンでもあり、突然アニメーションになったり、本作の制作現場が写るメタ構造になったり、ミックステープが象徴するように、テリングはまるで音楽のように自由奔放で直感的。
この映画の世界は言葉と言うより「音」で出来ていて、音波の力があれば世界を壊すことも、救うことも出来る。
ある意味、究極のセカイ系の作品で、映画を観るというよりも、抽象的な音で彩られた音楽を聴くような独特の映画体験だ。
アニメーションパートを手掛けているのは、日本の手塚プロで、リメイク版「どろろ」で総作画監督を務めた青木一紀らが参加している。
常識的な映画文法から言えば、かなり特殊な作品なのだが、一つのイメージを作り込むことに拘ったテリングは独創的。
テンプレ的な娯楽映画を求める層にはオススメ出来ないが、個人的にはかなり好き。
人間を捕食する「クワイエット・プレイス」っぽい小型モンスターや、「ミスト」を思わせる巨大モンスターなど、造形感覚も独特だ。
今回は、雪に閉ざされた異世界のイメージで「スノーボール」をチョイス。
アドヴォカート40mlとライムジュース5mlをシェイクし、氷を入れたグラスに注ぎ、最後に冷やしたソーダで満たして完成。
ベースとなるアドヴォカートは、オランダが原産の卵のリキュールで、優しい甘みが特徴。
スノーボールも、アドヴォカートの甘味とライムの酸味がバランスしたソフトな味わいで、とても飲みやすい。
レモネードソーダなど、フレーバー付きのソーダを使って、味のアレンジを加えても楽しい。

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