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「L/R15」愛なのに/猫は逃げた・・・・・評価額1650円」
2022年04月07日 (木) | 編集 |
愛と猫は逃げるもの。

今泉力哉と城定秀夫が、お互いの脚本をR15+指定のラブストーリーとして映画化する、ユニークなコラボ企画が「L/R15」だ。
先攻の「L」が今泉脚本、城定演出の「愛なのに」で、後攻の「R」が城定脚本、今泉演出の「猫は逃げた」になる。
一部の登場人物が重なっている他、かわいい白黒ハチワレ猫が両作品に登場して、世界をつなげる役割を果たす。

「愛なのに」では、瀬戸康史演じる古本屋の店主・多田浩司が、突然河合優実の女子高校生・矢野岬からプロポーズされ、戸惑う。
多田には、大学で出会って以来、ずっと好きだった人がいるのだが、彼女は別の男と婚約中。
しかし、男が浮気していたことから、彼女は自分も浮気をすると宣言し、なんとその相手に多田を指名する。
面白いのが、登場人物の背景情報がほとんど描写されないこと。
例えば多田はなぜ古本屋をやっているのか、誰からからどうやって受け継いだのか、それまでどんな人生を送ってきたのか、一方の岬は全く接点がなさそうな多田をどうやって知り、恋に落ちたのか。
通常のラブストーリーでは重要な要素になりそうな部分が、スッポリと抜け落ちているのだ。
大人の登場人物たちは、色々めんどくさい四角関係の中で、用意されたそれぞれの役割を演じ、対照的に、ひたすら真っ直ぐな岬の恋心のピュアさが際立つという寸法。

様々な愛のカタチを描く群像劇でもあり、キャラクターの掛け合いの楽しさに笑いっぱなし。
愛に迷って抱いた葛藤の解決法も、人それぞれ。
当初は31歳と16歳という年齢差に戸惑い、岬の「好きです」アピールを持て余し気味だった多田も、思いっきり打算的な大人の関係を経験した結果、徐々に岬の気持ちを受け入れてゆく。
まあ彼女の場合、もうちょっと大人になると、あっさり夢から覚めそうな気もするが、とりあえず多田の「愛を否定するな!」は、真理であり名言。
全体に、世界観やキャラクターはすごく今泉力哉っぽいのに、全体としては紛うことなき城定秀夫カラーに仕上がっている。
どんなにドロドロの展開でも、中心にはピュアなものがあるというのはいかにも今泉脚本らしいが、城定演出とのマッチングは非常に良く、両者の個性がグッと濃くなった印象。
これも強い作家性を持つ者同士のコラボの面白さか。
ストーリーとテリングを分離すると、ここまで分かりやすいハイブリッドなテイストになるとは思わなかった。

そして二本目の「猫は逃げた」は、愛猫カンタの親権で揉めている、離婚寸前の漫画家と雑誌記者夫婦の話。
山本奈衣瑠が演じる漫画家の町田亜子は、編集者と不倫の仲。
彼女の夫で週刊誌記者の町田広重が、「愛なのに」の多田の同窓生という設定なのだが、彼も彼で同僚とダブル不倫中。
夫婦はお互いに別れることには同意しているものの、なんとなくもろもろ割り切れなくて、猫をダシにして結論をズルズル引き伸ばしている状態で、お互いの新しい相手にはさっさと離婚しろとプレッシャーをかけられてる。
そんなある日、カンタが家に帰ってこなくなる。

一本目の「愛なのに」にも、チラチラ出てきた白黒猫が、こちらではある意味真の主役
関係者の恋の嵐が静かに吹き荒れる中、その中心にいる物言わぬ狂言回しが猫という訳。
実際には、カンタはある人物の陰謀によって姿を消している訳だが、その人物も結果的に猫によって予測しなかった境地へと導かれる。
ちなみに俳優猫カンタの本名は、オセロというのだそう。
白黒猫だからだろうが、まさにこの二部作を表しているようで面白い。
私的イメージとしては、「愛なのに」が黒で、「猫は逃げた」が白。
なぜなら、作家同士のコラボによって、其々の色がグッと濃くなった「愛なのに」に対して、こちらはむしろ普段よりも作家性が薄色に感じる。
もちろんこれは決してつまらないと言う訳じゃなくて、こちらの方がより軽妙で喉ごしスッキリという意味。
「愛なのに」が濃厚なダークエールのポーターだとすれば、「猫は逃げた」はもうちょっとライトなペールエールなのだ。
両者のベッドシーンを比較してみても、城定演出はよりエロくネチっこく、今泉演出は割と淡白だから、これも両者の個性なのだろう。
画面のアスペクト比も、「愛なのに」はシネスコで「猫は逃げた」はスタンダードな16:9なのもそれぞれらしい。

この映画の猫は愛の象徴で、愛の迷路に迷ってしまった人間たちの導き手。
カンタがいなくなったことによって、登場人物全員が自分と向き合い、それぞれの結論にたどり着く。
自分の本当に大切なものが、本当はどこにあるのか気付かせてくれる、幸せの青い鳥みたいな存在なのだ。
その意味で「愛なのに」の場合には、登場人物の中でただ一人大人のはかりごととは無縁の岬が、「猫は逃げた」のカンタのポジションと言えるかも知れない。
どちらも物語の帰結する先はちょっと出来過ぎの気もするが、ほっこりさせてもらった。
また「猫は逃げた」は、カンタの出番自体はさほど多くないものの、その存在感は猫映画としても一級品だ。
あー、モフモフしたい。

今回は、2000年にブライアン・ベアードとさゆり夫婦によって、沼津に設立されたベアードビールから、ポーターの「黒船ポーター」とペールエールの「わびさび ジャパン ペールエール」の二本をチョイス。
シルキーでビターな正統派ポーターと、日本の夏にぴったりな清涼でドライなペールエールは、どちらも丁寧に作られていて飲み心地よし。
まさにオセロの表と裏のような味わいの違いを、飲み比べてみるのも楽しい。

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コメント
この記事へのコメント
「愛を否定するな」と言ってた本人が決して純愛でない関係に手を出していた皮肉。そして、人に注ぐ愛より、猫に注ぐ愛の方が説得力があった二本目。一本目は河合優実パートがないと成人映画みたいだし、二本目は濡れ場をカットしても恋愛映画として成立しそう。
2022/11/04(金) 01:14:23 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
まあ矛盾する者、それが人間てことでしょう。
今泉力哉は基本あんまエロいのは撮れなさそうで、城定監督とのテイストの差も面白かった。
2022/11/09(水) 21:43:07 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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