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ショートレビュー「TITANE チタン・・・・・評価額1700円」
2022年04月10日 (日) | 編集 |
生まれてくるモノは・・・?

これはヤバい、ぶっ飛んでる。
ベジタリアン一家に育った少女が、初めて肉を食べたことから、抑えられないカニバリズム衝動を覚醒させる「RAW〜少女の目覚め〜」で、鮮烈な長編デビューを飾った、ジュリア・デュクルノー監督の第二作。
幼少期に交通事故に遭い、頭蓋骨にチタンのプレートを埋め込まれたアレクシアが主人公。
大人になった彼女は、モーターショーでモデルとして働いているのだが、無機物である車に対して性的な欲情を抱くようになっている。
ある日、勝手に動いて彼女の家にやってきた、ホットなアメ車とセックスして絶頂、“何か”を妊娠する。
膣からはモーターオイルが溢れ出し、お腹も少しづつ大きくなる。

これだけでも相当に変なんだが、アガト・ルセルが怪演するアレクシアは、でっかい鉄箸の様な髪飾りを身に付けていて、これを使って見境無しに人を殺しちゃうシリアルキラーでもあるのだ。
どんだけキャラクターの情報量多いねん。
スタイリッシュな映像と音楽に彩られ、エロスとバイオレンス、高度な芸術性と見せ物趣味的な俗っぽさが混じり合う展開は刺激的。
「RAW」の主人公だったガランス・マリリエール演じる同僚(役名も同じJustine)を衝動的に殺したアレクシアは、家に居合わせた彼女の友人たちも皆殺しにし、成り行きで自宅に放火し自分の両親も殺しちゃう。
しかし同僚の家から唯一逃れた女性に通報され、全国に指名手配される。

追われる身となったアレクシアは、サラシを巻いて胸と腹を押さえつけ、髪を切り鼻を骨折する自傷行為で顔を変え、バンサン・ランドンが演じる消防士のヴィンセントの息子、エイドリアンと偽り、当面の安住の地を手に入れる。
エンドリアンは子供の頃に失踪し、ヴィンセントはずっと彼のことを探し続けていたのだ。
当然喋ると女だとバレちゃうので、偽エイドリアンは一切言葉を発さない設定にして乗り切ろうとする。
だが、お腹の中では“何か”が育ってどんどん大きくなるし、消防隊長のヴィンセントは屈強な老マッチョで簡単には殺せない。
消防隊の見習いとして常に人目のある隊舎で暮らすうちに、なんとなくヴィンセントの正体に疑いを持つ者も出てくる。
孤独なアレクシアには出て行こうにも当ては無く、八方塞がりの状況に追い込まれてゆくのだが、偽りの命を授かった彼女と、偽りの息子を取り戻したヴィンセントの間には、いつの間にか奇妙な絆が生まれている。

有機物と無機物の融合は、デュクルノーも影響を受けていると語るクローネンバーグの「ビデオドローム」をはじめとする一連の作品、塚本晋也の「鉄男」などでも描かれたが、何かを生み出すという行為が中心にあることからも分かるように、やはりデュクルノーの表現は女性性が強い。
主人公がもう少し年少だった「RAW」は、厳格な家庭で純粋培養された少女が、原始的な本能を覚醒させ、自分が命を食らい子を産み育てる一匹の獣であることを、初めて意識する物語だった。
性愛とリンクしたカニバリズム衝動は、本作の殺人衝動にそのまま繋がる。
流された血はモーターオイルの精液となり、死と生を交換する形で新たな生命が生まれて来る。
色々振り切り過ぎて、途中シリアスなのかギャグなのか、一体何を描く物語なのか分からなくなる時間もあるが、最後まで観ると、やはりこれは愛の話なんだなと思う。
男女の愛、親子の愛、擬似的な愛、フェティシズムの愛、色々な愛がメルティングポットの様に混じり合い、最終的に生まれてくるモノを受け止めた、ヴィンセントの表情が印象的。

ところで去年のカンヌは、これがパルムドールで「アネット」が監督賞。
「アネット」もぶっ飛んでるなと思ったが、本作を観てしまうとむしろ大人しく感じてしまう。
ちょっととんがり過ぎじゃないの?審査委員長誰?と思ったらスパイク・リーか・・・なるほど。

今回は、モーターオイルのような黒いカクテル「トロイの木馬」をチョイス。
ギネスビールが公式命名したカクテルで、氷を入れたタンブラーに、よく冷やしたスタウト(ギネス)を半分注ぎ、コーラで満たして完成。
コーラの清涼感で、スタウトのクセはかなり抑えられているので、スタウトが苦手な人でも飲みやすい。
スタウトもコーラも黒なので一見するとスタウト、だが飲んでみると内部にコーラの甘みが隠れていることが、ギリシャ神話の故事を思わせることから名付けられた。
アレクシスの胎内で、育ち続ける“何か”にも通じる話ではないか。

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幼い頃に交通事故に遭い頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれている女性アレクシアは、車に対し異常な執着心を抱き危険な衝動に駆られるようになっていた。 罪を犯し行き場を失った彼女は、中年の消防士ヴァンサンが探している息子に成りすまし、奇妙な共同生活を始める。 だが彼女は、身体に重大な秘密を抱えていた…。 サスペンス・スリラー。 R-15
2022/04/12(火) 22:57:49 | 象のロケット