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2022年04月30日 (土) | 編集 |
子供も大人もムズカシイ。
マイク・ミルズの、私小説作家らしい持ち味がうまく出た秀作だ。
主人公は、ホアキン・フェニックス演じる、ニューヨークに暮らすラジオジャーナリストのジョニー。
彼は全米各地で子供たちにインタビューし、現在と未来に対する声を集めている。
ある時、ロサンゼルスに住む妹のヴィヴが、サンフランシスコベイエリアで仕事をしている夫の病気のため、しばらく家を空けることになると聞かされる。
9歳の甥っ子ジェシーを心配したジョニーは、彼の世話をするためにはるばるロサンゼルスにやってくるのだ。
しかし、彼自身は一人者で子育て経験全く無し。
ジェシーともほとんど会ったことがなく、二人の間には最初からビミョーな空気が漂っている。
くるくるヘアのジェシーは、一見してジョニーとよく似ていて、ミニチュアサイズのジョニーなんて言われるのだが、彼はジェシーが何を考えているのがイマイチよく分からないのだ。
中年男が初めての体験に戸惑いながらも、今まで単なる取材対象だった子供との関係を、改めて模索してゆくあたりは、ダスティン・ホフマンが離婚騒動の中で、初めて息子に向き合うダメ親父を演じた、懐かしの「クレイマー、クレイマー」風味。
大人は子供を単純化して見がちだけど、子供は大人と思考回路が違うだけで、心は繊細でとても複雑。
そんな当たり前のことに、初めて気づいてゆく。
やがて、夫の病気が悪化したことでヴィヴのベイエリア滞在が長引き、ジェシーはジョニーに連れられてニューヨーク、次いで南部ニューオーリンズへの取材の旅に同行する。
この映画がユニークなのは、フィクションのドラマと、ドキュメンタリーとしてのインタビューパートが同じ作品の中で自然に混じり合っていることだ。
ジョニーの同僚のロクサーヌを演じるモリー・ウェブスターは、実際にラジオジャーナリストであり、劇中の子供たちへのインタビューシーンに、シナリオは存在しない。
冒頭のデトロイトを含めて三つの都市で集められた子供たちのインタビューと、ホアキンが作中で読んでいる本からの引用が、彼にとって重要な示唆となって物語に厚みを与え、ドビュッシー の「月の光」の優美なメロディーが、実質的な主題曲となって情感が深めてゆく。
名手ロビー・ライアンによる落ち着いたモノクロ映像にも当然意図がある。
この手法により、この映画は新しくも見えるし、古くも見えるエイジレスな作品となった。
テリングの工夫によって、本来“記録”であるはずのインタビューパートが、過去形の時間軸から解き放たれ、現在進行形の物語の一部となるのである。
マイク・ミルズは、「人生はビギナーズ」で父なる者への、前作の「20センチュリー・ウーマン」で母なる者への想いを描いた。
彼の映画ではいつも、ごく近しいと思っていた人物の、意外な別の顔が現れて、主人公は大いに戸惑う。
「人生はビギナーズ」では奥手の青年が、年老いた父から突然ゲイであることをカミングアウトされ、「20センチュリー・ウーマン」では、女手一つで15歳になるまで息子を育ててきた母が、これ以上は育て方が分からないと、息子に近い年齢の若い女性二人に助けを求める。
どちらもミルズ自身の経験に基づいた作品だが、今度は初めて擬似的な父親としての視点から物語を紡いだ。
本作の企画は、彼とパートナーのミランダ・ジュライとの間に、2012年に子供が生まれたことと無関係ではあるまい。
大人の頭では理解不能なジェシーに振り回され、疲れ果てたジョニーは、電話でヴィヴに愚痴るが、ヴィヴはそれが子育てで、決して慣れることはないと語る。
タイトルの「C'mon C’mon」には「こっちに来て」以外にも「大丈夫だよ」とか「ほら」など幾つかの意味がある。
人間はみんな複雑で、たとえ家族でも自分以外の心の奥底までは誰にも分からない。
でもだからこそ少しずつお互いを理解して、歩み寄ってゆくしかない。
キャラクターに寄り添う、優しい視点が印象的だ。
今回はモノクロ映像が印象的な映画なので、白と黒が混じり合う甘いカクテル、「カルーアミルク」をチョイス。
コーヒー・リキュールのカルーア30mlと牛乳90mlを氷を入れたタンブラーに注ぎ、軽くステアする。
コーヒー牛乳のような味わいだが、カルーアのアルコール度数は20%あるので、チューハイ並みの強さ。
お酒と牛乳の組み合わせは古くから多くあり、カルーアの代わりにバーボンと牛乳を合わせると、「カウボーイ」というカクテルになる。
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マイク・ミルズの、私小説作家らしい持ち味がうまく出た秀作だ。
主人公は、ホアキン・フェニックス演じる、ニューヨークに暮らすラジオジャーナリストのジョニー。
彼は全米各地で子供たちにインタビューし、現在と未来に対する声を集めている。
ある時、ロサンゼルスに住む妹のヴィヴが、サンフランシスコベイエリアで仕事をしている夫の病気のため、しばらく家を空けることになると聞かされる。
9歳の甥っ子ジェシーを心配したジョニーは、彼の世話をするためにはるばるロサンゼルスにやってくるのだ。
しかし、彼自身は一人者で子育て経験全く無し。
ジェシーともほとんど会ったことがなく、二人の間には最初からビミョーな空気が漂っている。
くるくるヘアのジェシーは、一見してジョニーとよく似ていて、ミニチュアサイズのジョニーなんて言われるのだが、彼はジェシーが何を考えているのがイマイチよく分からないのだ。
中年男が初めての体験に戸惑いながらも、今まで単なる取材対象だった子供との関係を、改めて模索してゆくあたりは、ダスティン・ホフマンが離婚騒動の中で、初めて息子に向き合うダメ親父を演じた、懐かしの「クレイマー、クレイマー」風味。
大人は子供を単純化して見がちだけど、子供は大人と思考回路が違うだけで、心は繊細でとても複雑。
そんな当たり前のことに、初めて気づいてゆく。
やがて、夫の病気が悪化したことでヴィヴのベイエリア滞在が長引き、ジェシーはジョニーに連れられてニューヨーク、次いで南部ニューオーリンズへの取材の旅に同行する。
この映画がユニークなのは、フィクションのドラマと、ドキュメンタリーとしてのインタビューパートが同じ作品の中で自然に混じり合っていることだ。
ジョニーの同僚のロクサーヌを演じるモリー・ウェブスターは、実際にラジオジャーナリストであり、劇中の子供たちへのインタビューシーンに、シナリオは存在しない。
冒頭のデトロイトを含めて三つの都市で集められた子供たちのインタビューと、ホアキンが作中で読んでいる本からの引用が、彼にとって重要な示唆となって物語に厚みを与え、ドビュッシー の「月の光」の優美なメロディーが、実質的な主題曲となって情感が深めてゆく。
名手ロビー・ライアンによる落ち着いたモノクロ映像にも当然意図がある。
この手法により、この映画は新しくも見えるし、古くも見えるエイジレスな作品となった。
テリングの工夫によって、本来“記録”であるはずのインタビューパートが、過去形の時間軸から解き放たれ、現在進行形の物語の一部となるのである。
マイク・ミルズは、「人生はビギナーズ」で父なる者への、前作の「20センチュリー・ウーマン」で母なる者への想いを描いた。
彼の映画ではいつも、ごく近しいと思っていた人物の、意外な別の顔が現れて、主人公は大いに戸惑う。
「人生はビギナーズ」では奥手の青年が、年老いた父から突然ゲイであることをカミングアウトされ、「20センチュリー・ウーマン」では、女手一つで15歳になるまで息子を育ててきた母が、これ以上は育て方が分からないと、息子に近い年齢の若い女性二人に助けを求める。
どちらもミルズ自身の経験に基づいた作品だが、今度は初めて擬似的な父親としての視点から物語を紡いだ。
本作の企画は、彼とパートナーのミランダ・ジュライとの間に、2012年に子供が生まれたことと無関係ではあるまい。
大人の頭では理解不能なジェシーに振り回され、疲れ果てたジョニーは、電話でヴィヴに愚痴るが、ヴィヴはそれが子育てで、決して慣れることはないと語る。
タイトルの「C'mon C’mon」には「こっちに来て」以外にも「大丈夫だよ」とか「ほら」など幾つかの意味がある。
人間はみんな複雑で、たとえ家族でも自分以外の心の奥底までは誰にも分からない。
でもだからこそ少しずつお互いを理解して、歩み寄ってゆくしかない。
キャラクターに寄り添う、優しい視点が印象的だ。
今回はモノクロ映像が印象的な映画なので、白と黒が混じり合う甘いカクテル、「カルーアミルク」をチョイス。
コーヒー・リキュールのカルーア30mlと牛乳90mlを氷を入れたタンブラーに注ぎ、軽くステアする。
コーヒー牛乳のような味わいだが、カルーアのアルコール度数は20%あるので、チューハイ並みの強さ。
お酒と牛乳の組み合わせは古くから多くあり、カルーアの代わりにバーボンと牛乳を合わせると、「カウボーイ」というカクテルになる。

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アメリカ・ニューヨークでラジオジャーナリストをしているジョニーは、独身の中年男。 9歳の甥ジェシーの世話を頼まれ、ロサンゼルスの妹の家へを訪れる。 ジョニーの顔すら覚えていなかったジェシーと2人きりの生活は、戸惑いの連続。 妹の不在は延長され、やがてジョニーの仕事にも影響が出ることに…。 ヒューマンドラマ。 ≪君の話を聞かせて≫
2022/04/30(土) 23:08:08 | 象のロケット
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