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※noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
※noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。


2022年05月29日 (日) | 編集 |
映画の夢が大空を飛ぶ!
最初に予告編が公開されてから早3年。
コロナ延期組のラスボスにして真打ち、「トップガン マーヴェリック」が満を持しての登場だ。
売り出し中の若手俳優だったトム・クルーズを、一躍トップスターに押し上げた前作から36年。
アメリカ海軍のエリートを養成する戦闘機兵器学校、通称“トップガン”出身の伝説の戦闘機乗り“マーヴェリック”が帰ってくる。
ただし、今回は教官として。
彼の任務は、生還の確率が限りなくゼロに近い過酷なミッションに向けて、親子ほど歳の離れた若いパイロットを訓練すること。
当初続投するはずだったトニー・スコット監督が2012年に亡くなったため、企画を仕切り直して再スタート。
ジェリー・ブラッカイマーが前作に続いてプロデュースし、監督は「オブリビオン」でもトム・クルーズと組み、相性の良いところを見せたジョセフ・コシンスキー。
前作の劇中で亡くなった、マーヴェリックの相方“グース”の息子、“ルースター”をマイルズ・テラーが演じる。
※ラストに触れています。
ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル大佐(トム・クルーズ)は、アメリカ海軍の全パイロットの中でただ一人、過去40年間で三機の撃墜を記録している伝説的なパイロットだ。
だが今は、極超音速実験機“ダークスター”のテストパイロットの任務についていた。
有人機開発のプログラムを中止して、全ての予算をドローンに振り向けようとするケイン少将(エド・ハリス)の前で、目標測度のマッハ10をクリアしてみせたマーヴェリックは、予定を超えた速度に挑戦し、機体を空中分解させてしまう。
懲罰を覚悟していたマーヴェリックだが、かつて“アイスマン”のコードネームで知られたカザンスキー海軍大将(ヴァル・キルマー)から、サンディエゴのノースアイランド航空基地へ向かうように命令が下る。
待っていたのは、12名の若き戦闘機乗りたち。
その中にはマーヴェリックの元相方のレーダー迎撃士官で、事故で命を落としたグースの息子、ブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショウ(マイルズ・テラー)もいた。
マーヴェリックは3週間以内に彼らを訓練し、6名を選抜して、ある非常に危険なミッションに挑ませなければならない。
曲者揃いの訓練生の中でも、マーヴェリックにわだかまりを持つルースターは反発を募らせるが・・・・
冒頭、空母の艦上で戦闘機の発艦作業が慌ただしく行われている中、お馴染みの「Danger Zone」が鳴り響く。
忠実にオリジナルを再現し、大いなるリスペクトを込めたオープニングだ。
しかし、そこにマーヴェリックはいないのである。
場面が変わると、モハべ砂漠の古びた格納庫で、彼は第二次世界大戦中のP−51(正確には偵察機仕様のF-6Kらしい)をレストアしている。
流石のマーヴェリックも、もはや悠々自適の引退生活?と思わせておいて、ロッカーの扉を開けて懐かしのフライトジャケットを纏い、バイクのカバーを取るとそこには愛車のカワサキGPZ900Rが変わらぬ姿を見せる。
そして颯爽とバイクを走らせると、そこには未来的な極超音速実験機、“ダークスター”が彼を待っているのだ。
実は私はオリジナルの「トップガン」を、それほど高く評価していない。
トニー・スコットが亡くなった時、当ブログの追悼記事で私的な彼のベスト5を紹介しているのだが、そのリストにも入ってないし、あえて選ぶならトップ10にギリギリ入るか入らないか程度。
前作は当時流行していたMTVの影響を受け、ありきたりな物語をスタイリッシュで派手な映像と、ビートの効いた音楽で盛り上げようとするお祭り映画の典型。
いわば同じジェリー・ブラッカイマーのプロデュース作で、ジョルジオ・モロダーが音楽を担当し、大ヒットした「フラッシュダンス」の男の子版だ。
実際に今観ると、アメリカ海軍の全面強力で作られた映像は確かにカッコはいいものの、テンプレ的で薄っぺらな物語は、ちょっと現在ではないなと思う。
それにも関わらず、本作を観るとまるでオリジナルが名作であったかの様に思え、キャラクターとの36年ぶりの再会に感涙してしまうのである。
なぜか?
それは本作が単なる続編という以上に、前作を内包しつつキャラクターに対してメタ的なアプローチを取っているからだ。
オリジナルの「トップガン」が公開されたのは1986年。
ソビエト連邦との冷戦の時代だから、一昔どころか一世代以上昔と言ってもいいだろう。
当時マーヴェリックが乗っていた、F-14トムキャットは米海軍からは全て退役し、所属していた空母エンタープライズもスクラップになった。
同期の仲間は皆退官したり、海軍に残っていても将官に出世したりしているのに、マーヴェリックは階級も大佐止まりで生涯一パイロットして飛び続けている。
しかし、そんなマーヴェリックに、有人機プロジェクト廃止論者のケイン少将が「君らはいずれお払い箱だ」と言い放つ。
それに対して、マーヴェリックは「そうだとしても、今じゃない」と答えるのだ。
社会のあらゆる部分で自動化とAI化が進み、人間の仕事が縮小しているのは、パイロットでなくても同じ。
以前はたった1カット、俳優とCGが入れ替わっても組合が大騒ぎしたのに、今では現実の俳優よりもCGの出番の方が多いんじゃない?という映画も珍しくない。
ケインとマーヴェリックの会話は、パイロットを俳優に置き換えても成立するのだ。
人間じゃなくても出来るかもしれない、でもまだ人間にしか出来ないことがある。
これは、可能な限り自らの肉体を使うことに拘ってきた、トム・クルーズの俳優としての矜持を感じさせる。
本作の作劇的な特徴が、前作から本作の間に流れた歳月の余白をうまく使っていることだ。
例えばジェニファー・コネリーが演じるペニー・ベンジャミンは新キャラクターだが、唐突に登場してマーヴェリックと昔話をはじめる。
彼と彼女が過去に恋仲にあったことは示唆されるが、具体的にどんなドラマがあったのかは語られない。
だが想像力を刺激するには十分で、このワンシーンだけで、観客は自分の知らないマーヴェリックの歴史があることを実感するのである。
他のキャラクターも同様で、太平洋艦隊司令官にまで上り詰め、今は病で死の床にあるアイスマンとマーヴェリックが、今もSNSで連絡を撮り続けている描写や、ルースターが父グースの十八番だった「Great Balls Of Fire」を熱唱するシーンに、前作との間にあったであろう様々なドラマを自然に感じさせるのだ。
マーヴェリックの人生そのものである、海軍の組織自体も変わった。
12人の訓練生は、人種的にも前作よりもはるかに多様になり、女性のパイロットもいる。
アメリカ海軍に初めての女性戦闘機パイロットが誕生したのは、90年代に入ってからで、前作の時点では誰もいなかったのである。
「トップガン」という別の世界線でも、現実と同じように社会は変わり、マーヴェリックたちの人生も、ずっと続いていたのだと錯覚させる。
このメタ的なアプローチは、物語論としてもなかなかユニークである。
全体の軸となるのは、マーヴェリックとルースターとの確執。
これも具体的に描かれている過去のインフォメーションは最小限だが、このリーダーを信じて、命を預けられるか?という戦闘機パイロットしての核心に通じるポイントに的を絞り、十分な重みを持つ。
また家族のいないマーヴェリックにとって、ルースターは親代わりになって見守っていた存在でもあり、擬似的な父と息子の親離れ、子離れの巣立ちのドラマとしても見応えがある。
もちろん、本来のスカイアクションとしても、圧倒的な大迫力。
中盤までは、前作を思わせるマーヴェリック先生と訓練生たちとの訓練が続く。
なんだかんだで、マーヴェリックも教官としてだけでなく、実働部隊の隊長も務めることになるのだが、彼らが遂行するミッションのターゲットは、山に囲まれたすり鉢状の谷底にある稼働直前の核施設。
地対空ミサイルと戦闘機によって守られている施設に、レーダーをかい潜って接近し、核燃料が運び込まれる前に破壊しなければならない。
任務の特性からマーヴェリックたちは4.5世代戦闘機のF/A-18E/Fでミッションに挑むが、相手はロシアのSu-57っぽい第5世代戦闘機で空中戦になれば分が悪い。
敵の具体的な国名などは伏せられているが、秘密裏に核開発をしてる設定と、装備している兵器類などから、ロシアとイランを合わせたような架空の国家。
しかし、このミッションの法的根拠は、もう少し明示して欲しかった。
偶然とは言え、ウクライナの戦争が起こったことで、「脅威だから攻撃する」ではプーチンの理屈と同じになってしまい、そこはちょっと引っ掛かった。
たぶんに「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」のデススタートレンチに影響を受けたと思われるミッションは、極めてスリリングで、これだけでクライマックスとして十分な熱量。
しかし、本作の本当のクライマックス、クライマックスのクライマックスはこの後にやって来る。
そう、この映画の予告編には、米軍では退役したはずの、かつてのマーヴェリックの愛機、F-14がチラリと登場していたのだ。
私は予告編を観た時に「いまだにF-14が現役のイランでミッション中に撃墜され、イラン空軍の機体をぶんどってくる設定では?」とツイートしたが、まさかその通りになるとは(笑
もちろんイラン設定ではないが、敵はなぜかポンコツのF-14を装備していて、撃墜されたマーヴェリックとルースターがコンビを組んで機体を奪取、脱出を図るのだ。
かつてのグースのポジションにルースターが収まったことで、彼らの確執は完全に解消する。
このくだりは「トップガン」と言うよりも、トム・クルーズのもう一つの大ヒットシリーズ、「ミッション:インポッシブル」みたいなノリだが、当初はもう少し普通の軍事作戦として描かれていたらしい。
しかし、同シリーズの脚本家兼監督として知られ、本作では共同脚本として参加しているクリストファー・マッカリーが、この少年漫画みたいなスピーディーで胸熱な展開を強烈に推したとか。
ありがとう、マッカリー!
勝手知ったるF-14と、本来なら勝ち目の無い第5世代戦闘機との戦いも、敵がF-14を味方と思い込んで近づく形でステルスの意味を失わせ、それぞれのメカとしての特性を生かした、超接近戦としたことでそれなりに説得力のあるものとなった。
前作の大きな不満点が、敵のミグ戦闘機役に使われた米国製のF-5が、F-14の相手をするには完全に役者不足だったこと。
小さすぎて、どうにも強そうに見えないのだ。
対してこちらは、CGで最新鋭機のSu-57を再現しているので、力関係は逆転。
古きが新しきを征するのは、ちょっと「バトルシップ」風味も感じられる。
そして最後は、きちんと若者を立てて、老兵マーヴェリックはロートルマシンのF6-Kに乗って去ってゆくのである。
いやあ、もうカッコ良すぎるだろう。
途中からずっとウルウルしていたところに、エンドクレジットのトニー・スコットへの献辞で、もう涙腺が完全に決壊してしまった。
史上最高の“続編”の一つであるのは確かだが、キャラクターの老いも含めて、前作から30年以上の時間経過にきちんと意味を与えたのが最大の成功要因。
続編のあり方として、今後一つの指標となる作品だろう。
今回は、南カリフォルニアのスカッとした空気にピッタリな「コロナ エキストラ」をチョイス。
前作の時代には、ライムを一切れビンに突っ込むのが定番だったが、最近はリサイクルが難しいのでやらないらしい。
仕方ないので、ライムを絞り入れよう。
柑橘のフレッシュな香りを効かせたコロナは、夏に飲むと本当に気持ちいいのだ!
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最初に予告編が公開されてから早3年。
コロナ延期組のラスボスにして真打ち、「トップガン マーヴェリック」が満を持しての登場だ。
売り出し中の若手俳優だったトム・クルーズを、一躍トップスターに押し上げた前作から36年。
アメリカ海軍のエリートを養成する戦闘機兵器学校、通称“トップガン”出身の伝説の戦闘機乗り“マーヴェリック”が帰ってくる。
ただし、今回は教官として。
彼の任務は、生還の確率が限りなくゼロに近い過酷なミッションに向けて、親子ほど歳の離れた若いパイロットを訓練すること。
当初続投するはずだったトニー・スコット監督が2012年に亡くなったため、企画を仕切り直して再スタート。
ジェリー・ブラッカイマーが前作に続いてプロデュースし、監督は「オブリビオン」でもトム・クルーズと組み、相性の良いところを見せたジョセフ・コシンスキー。
前作の劇中で亡くなった、マーヴェリックの相方“グース”の息子、“ルースター”をマイルズ・テラーが演じる。
※ラストに触れています。
ピート・“マーヴェリック”・ミッチェル大佐(トム・クルーズ)は、アメリカ海軍の全パイロットの中でただ一人、過去40年間で三機の撃墜を記録している伝説的なパイロットだ。
だが今は、極超音速実験機“ダークスター”のテストパイロットの任務についていた。
有人機開発のプログラムを中止して、全ての予算をドローンに振り向けようとするケイン少将(エド・ハリス)の前で、目標測度のマッハ10をクリアしてみせたマーヴェリックは、予定を超えた速度に挑戦し、機体を空中分解させてしまう。
懲罰を覚悟していたマーヴェリックだが、かつて“アイスマン”のコードネームで知られたカザンスキー海軍大将(ヴァル・キルマー)から、サンディエゴのノースアイランド航空基地へ向かうように命令が下る。
待っていたのは、12名の若き戦闘機乗りたち。
その中にはマーヴェリックの元相方のレーダー迎撃士官で、事故で命を落としたグースの息子、ブラッドリー・“ルースター”・ブラッドショウ(マイルズ・テラー)もいた。
マーヴェリックは3週間以内に彼らを訓練し、6名を選抜して、ある非常に危険なミッションに挑ませなければならない。
曲者揃いの訓練生の中でも、マーヴェリックにわだかまりを持つルースターは反発を募らせるが・・・・
冒頭、空母の艦上で戦闘機の発艦作業が慌ただしく行われている中、お馴染みの「Danger Zone」が鳴り響く。
忠実にオリジナルを再現し、大いなるリスペクトを込めたオープニングだ。
しかし、そこにマーヴェリックはいないのである。
場面が変わると、モハべ砂漠の古びた格納庫で、彼は第二次世界大戦中のP−51(正確には偵察機仕様のF-6Kらしい)をレストアしている。
流石のマーヴェリックも、もはや悠々自適の引退生活?と思わせておいて、ロッカーの扉を開けて懐かしのフライトジャケットを纏い、バイクのカバーを取るとそこには愛車のカワサキGPZ900Rが変わらぬ姿を見せる。
そして颯爽とバイクを走らせると、そこには未来的な極超音速実験機、“ダークスター”が彼を待っているのだ。
実は私はオリジナルの「トップガン」を、それほど高く評価していない。
トニー・スコットが亡くなった時、当ブログの追悼記事で私的な彼のベスト5を紹介しているのだが、そのリストにも入ってないし、あえて選ぶならトップ10にギリギリ入るか入らないか程度。
前作は当時流行していたMTVの影響を受け、ありきたりな物語をスタイリッシュで派手な映像と、ビートの効いた音楽で盛り上げようとするお祭り映画の典型。
いわば同じジェリー・ブラッカイマーのプロデュース作で、ジョルジオ・モロダーが音楽を担当し、大ヒットした「フラッシュダンス」の男の子版だ。
実際に今観ると、アメリカ海軍の全面強力で作られた映像は確かにカッコはいいものの、テンプレ的で薄っぺらな物語は、ちょっと現在ではないなと思う。
それにも関わらず、本作を観るとまるでオリジナルが名作であったかの様に思え、キャラクターとの36年ぶりの再会に感涙してしまうのである。
なぜか?
それは本作が単なる続編という以上に、前作を内包しつつキャラクターに対してメタ的なアプローチを取っているからだ。
オリジナルの「トップガン」が公開されたのは1986年。
ソビエト連邦との冷戦の時代だから、一昔どころか一世代以上昔と言ってもいいだろう。
当時マーヴェリックが乗っていた、F-14トムキャットは米海軍からは全て退役し、所属していた空母エンタープライズもスクラップになった。
同期の仲間は皆退官したり、海軍に残っていても将官に出世したりしているのに、マーヴェリックは階級も大佐止まりで生涯一パイロットして飛び続けている。
しかし、そんなマーヴェリックに、有人機プロジェクト廃止論者のケイン少将が「君らはいずれお払い箱だ」と言い放つ。
それに対して、マーヴェリックは「そうだとしても、今じゃない」と答えるのだ。
社会のあらゆる部分で自動化とAI化が進み、人間の仕事が縮小しているのは、パイロットでなくても同じ。
以前はたった1カット、俳優とCGが入れ替わっても組合が大騒ぎしたのに、今では現実の俳優よりもCGの出番の方が多いんじゃない?という映画も珍しくない。
ケインとマーヴェリックの会話は、パイロットを俳優に置き換えても成立するのだ。
人間じゃなくても出来るかもしれない、でもまだ人間にしか出来ないことがある。
これは、可能な限り自らの肉体を使うことに拘ってきた、トム・クルーズの俳優としての矜持を感じさせる。
本作の作劇的な特徴が、前作から本作の間に流れた歳月の余白をうまく使っていることだ。
例えばジェニファー・コネリーが演じるペニー・ベンジャミンは新キャラクターだが、唐突に登場してマーヴェリックと昔話をはじめる。
彼と彼女が過去に恋仲にあったことは示唆されるが、具体的にどんなドラマがあったのかは語られない。
だが想像力を刺激するには十分で、このワンシーンだけで、観客は自分の知らないマーヴェリックの歴史があることを実感するのである。
他のキャラクターも同様で、太平洋艦隊司令官にまで上り詰め、今は病で死の床にあるアイスマンとマーヴェリックが、今もSNSで連絡を撮り続けている描写や、ルースターが父グースの十八番だった「Great Balls Of Fire」を熱唱するシーンに、前作との間にあったであろう様々なドラマを自然に感じさせるのだ。
マーヴェリックの人生そのものである、海軍の組織自体も変わった。
12人の訓練生は、人種的にも前作よりもはるかに多様になり、女性のパイロットもいる。
アメリカ海軍に初めての女性戦闘機パイロットが誕生したのは、90年代に入ってからで、前作の時点では誰もいなかったのである。
「トップガン」という別の世界線でも、現実と同じように社会は変わり、マーヴェリックたちの人生も、ずっと続いていたのだと錯覚させる。
このメタ的なアプローチは、物語論としてもなかなかユニークである。
全体の軸となるのは、マーヴェリックとルースターとの確執。
これも具体的に描かれている過去のインフォメーションは最小限だが、このリーダーを信じて、命を預けられるか?という戦闘機パイロットしての核心に通じるポイントに的を絞り、十分な重みを持つ。
また家族のいないマーヴェリックにとって、ルースターは親代わりになって見守っていた存在でもあり、擬似的な父と息子の親離れ、子離れの巣立ちのドラマとしても見応えがある。
もちろん、本来のスカイアクションとしても、圧倒的な大迫力。
中盤までは、前作を思わせるマーヴェリック先生と訓練生たちとの訓練が続く。
なんだかんだで、マーヴェリックも教官としてだけでなく、実働部隊の隊長も務めることになるのだが、彼らが遂行するミッションのターゲットは、山に囲まれたすり鉢状の谷底にある稼働直前の核施設。
地対空ミサイルと戦闘機によって守られている施設に、レーダーをかい潜って接近し、核燃料が運び込まれる前に破壊しなければならない。
任務の特性からマーヴェリックたちは4.5世代戦闘機のF/A-18E/Fでミッションに挑むが、相手はロシアのSu-57っぽい第5世代戦闘機で空中戦になれば分が悪い。
敵の具体的な国名などは伏せられているが、秘密裏に核開発をしてる設定と、装備している兵器類などから、ロシアとイランを合わせたような架空の国家。
しかし、このミッションの法的根拠は、もう少し明示して欲しかった。
偶然とは言え、ウクライナの戦争が起こったことで、「脅威だから攻撃する」ではプーチンの理屈と同じになってしまい、そこはちょっと引っ掛かった。
たぶんに「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」のデススタートレンチに影響を受けたと思われるミッションは、極めてスリリングで、これだけでクライマックスとして十分な熱量。
しかし、本作の本当のクライマックス、クライマックスのクライマックスはこの後にやって来る。
そう、この映画の予告編には、米軍では退役したはずの、かつてのマーヴェリックの愛機、F-14がチラリと登場していたのだ。
私は予告編を観た時に「いまだにF-14が現役のイランでミッション中に撃墜され、イラン空軍の機体をぶんどってくる設定では?」とツイートしたが、まさかその通りになるとは(笑
もちろんイラン設定ではないが、敵はなぜかポンコツのF-14を装備していて、撃墜されたマーヴェリックとルースターがコンビを組んで機体を奪取、脱出を図るのだ。
かつてのグースのポジションにルースターが収まったことで、彼らの確執は完全に解消する。
このくだりは「トップガン」と言うよりも、トム・クルーズのもう一つの大ヒットシリーズ、「ミッション:インポッシブル」みたいなノリだが、当初はもう少し普通の軍事作戦として描かれていたらしい。
しかし、同シリーズの脚本家兼監督として知られ、本作では共同脚本として参加しているクリストファー・マッカリーが、この少年漫画みたいなスピーディーで胸熱な展開を強烈に推したとか。
ありがとう、マッカリー!
勝手知ったるF-14と、本来なら勝ち目の無い第5世代戦闘機との戦いも、敵がF-14を味方と思い込んで近づく形でステルスの意味を失わせ、それぞれのメカとしての特性を生かした、超接近戦としたことでそれなりに説得力のあるものとなった。
前作の大きな不満点が、敵のミグ戦闘機役に使われた米国製のF-5が、F-14の相手をするには完全に役者不足だったこと。
小さすぎて、どうにも強そうに見えないのだ。
対してこちらは、CGで最新鋭機のSu-57を再現しているので、力関係は逆転。
古きが新しきを征するのは、ちょっと「バトルシップ」風味も感じられる。
そして最後は、きちんと若者を立てて、老兵マーヴェリックはロートルマシンのF6-Kに乗って去ってゆくのである。
いやあ、もうカッコ良すぎるだろう。
途中からずっとウルウルしていたところに、エンドクレジットのトニー・スコットへの献辞で、もう涙腺が完全に決壊してしまった。
史上最高の“続編”の一つであるのは確かだが、キャラクターの老いも含めて、前作から30年以上の時間経過にきちんと意味を与えたのが最大の成功要因。
続編のあり方として、今後一つの指標となる作品だろう。
今回は、南カリフォルニアのスカッとした空気にピッタリな「コロナ エキストラ」をチョイス。
前作の時代には、ライムを一切れビンに突っ込むのが定番だったが、最近はリサイクルが難しいのでやらないらしい。
仕方ないので、ライムを絞り入れよう。
柑橘のフレッシュな香りを効かせたコロナは、夏に飲むと本当に気持ちいいのだ!

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この記事へのコメント
ノラネコさん☆
ありきたりなスカイアクションとラブロマンスの映画を、ここまでの史上最高の続編にまで引き上げたのは、やっぱりトム・クルーズの情熱と思い入れなのかもしれませんね。
見事に潔く完コピしつつ、世代交代を上手に描いて、なんだかすっかり新しい映画のように感じてしまいました。
ほんと、中盤から涙うるうるしっぱなしでしたよ。
ありきたりなスカイアクションとラブロマンスの映画を、ここまでの史上最高の続編にまで引き上げたのは、やっぱりトム・クルーズの情熱と思い入れなのかもしれませんね。
見事に潔く完コピしつつ、世代交代を上手に描いて、なんだかすっかり新しい映画のように感じてしまいました。
ほんと、中盤から涙うるうるしっぱなしでしたよ。
こんにちは、ノラネコさん
これ4DMXで観るのがオススメだと聞いたんですけど、私は2Dで十分でしたねぇ。
硬軟取り混ぜて飽きさせない工夫がされていたのは見事だと思いました。
来年はイーサン・ハントの新作だし、トム・クルーズはどこまで行くんでしょうね?
これ4DMXで観るのがオススメだと聞いたんですけど、私は2Dで十分でしたねぇ。
硬軟取り混ぜて飽きさせない工夫がされていたのは見事だと思いました。
来年はイーサン・ハントの新作だし、トム・クルーズはどこまで行くんでしょうね?
2022/06/03(金) 23:16:09 | URL | ケフコタカハシ #oibKWSZc[ 編集]
>ノルウェーまだ~むさん
期待を遥に上回る面白さでした。
世代的に前作は青春ど真ん中だったのですが、あれから30年以上の時間の経過をうまい具合に使ってきましたよね〜。
トムが自分の老いを、作品に反映させたのは初めてだったと思います。
>ケフコタカハシさん
私は2回目IMAXでしたが、もう没入感は素晴らしかったです。
今まであまり歳を感じさせなかったトムが、珍しく若さを前に出さなかったので、このままうまい具合に歳をとっていければ、イーストウッドみたいなポジションに収まりそう。
期待を遥に上回る面白さでした。
世代的に前作は青春ど真ん中だったのですが、あれから30年以上の時間の経過をうまい具合に使ってきましたよね〜。
トムが自分の老いを、作品に反映させたのは初めてだったと思います。
>ケフコタカハシさん
私は2回目IMAXでしたが、もう没入感は素晴らしかったです。
今まであまり歳を感じさせなかったトムが、珍しく若さを前に出さなかったので、このままうまい具合に歳をとっていければ、イーストウッドみたいなポジションに収まりそう。
前作未見ですが(MIGがF-5?なんじゃそれ?と思い映画館に足が向きませんでした)、面白かったです。「トム・クルーズのための映画」としては(皮肉ではなく)、Knight &DayやMission Impossible: Rogue Nationに匹敵する面白さでした。惜しむらくは、Naval AviatorとしてレストアするのはP-51ではなく、アメリカ海軍艦載機の名機、例えばF8Fあたり、であって欲しかったです。状態の良い物が無いのかも知れませんが。
>チップマークさん
当時F−5をミグ役に使ったのは、撮影協力したアグレッサー部隊がそのまま仮想ミグ21として使っていたからだそうで、実機を使う以上は他の選択肢は無かったのでしょう。
P-51はトムの私物だそうですよ。毎日あれで通勤してたとか。
アメリカでは当時の戦闘機をレストアしている人も多いですが、海軍機はなかなか程度の良いのが少ないそうです。
当時F−5をミグ役に使ったのは、撮影協力したアグレッサー部隊がそのまま仮想ミグ21として使っていたからだそうで、実機を使う以上は他の選択肢は無かったのでしょう。
P-51はトムの私物だそうですよ。毎日あれで通勤してたとか。
アメリカでは当時の戦闘機をレストアしている人も多いですが、海軍機はなかなか程度の良いのが少ないそうです。
こんにちは!
いつも拝見しております。
トップガン、前作は観ていないのですが観に行きました。
個人的にはいくつかの70~80年代映画を連想しました。
◆ライトスタッフ
パイロットは不要、これからはAI操縦という部分は、飛行機の最高速度挑戦は時代遅れと言われたサムシェパードのようでした。司令官にエドハリスが出ていたのもそのため?なんて思ってしまいました。
◆ファイヤーフォックス
マーベリック達が敵基地で堂々とF14に乗り込み飛び立つところはイーストウッドがゆっくり歩きながらファイヤーフォックスに乗り込むところを連想しちゃいました。マーベリックは上手くいきすぎ、、と思ったりしたのですが、「ファイヤーフォックス」へのオマージュであれば納得、と自分なりに考えました。
ぜんぜん関係ないかも知れませんが・・・
◆スターウォーズEp4
デススターへの攻撃のようですよね。
あと、仲間がF14を助けにきて敵機を爆撃するところは、ハンソロがダースベイダー機を撃ちにきたところ、という感じでした。
あと、「無情の世界」「ゲットイットオン」等の70年代ロックも熱かったです。
BerlinのTakeMyBreathAwayもかかるのかな、なんて期待しましたが。。
前作を観てませんがいい出来栄えだったと思います!
いつも拝見しております。
トップガン、前作は観ていないのですが観に行きました。
個人的にはいくつかの70~80年代映画を連想しました。
◆ライトスタッフ
パイロットは不要、これからはAI操縦という部分は、飛行機の最高速度挑戦は時代遅れと言われたサムシェパードのようでした。司令官にエドハリスが出ていたのもそのため?なんて思ってしまいました。
◆ファイヤーフォックス
マーベリック達が敵基地で堂々とF14に乗り込み飛び立つところはイーストウッドがゆっくり歩きながらファイヤーフォックスに乗り込むところを連想しちゃいました。マーベリックは上手くいきすぎ、、と思ったりしたのですが、「ファイヤーフォックス」へのオマージュであれば納得、と自分なりに考えました。
ぜんぜん関係ないかも知れませんが・・・
◆スターウォーズEp4
デススターへの攻撃のようですよね。
あと、仲間がF14を助けにきて敵機を爆撃するところは、ハンソロがダースベイダー機を撃ちにきたところ、という感じでした。
あと、「無情の世界」「ゲットイットオン」等の70年代ロックも熱かったです。
BerlinのTakeMyBreathAwayもかかるのかな、なんて期待しましたが。。
前作を観てませんがいい出来栄えだったと思います!
2022/07/04(月) 10:31:31 | URL | zep1813 #-[ 編集]
>「無情の世界」「ゲットイットオン」等の70年代ロックも熱かったです。
「無法の世界」でした。「無情」はストーンズでしたね。。
「無法の世界」でした。「無情」はストーンズでしたね。。
2022/07/04(月) 12:53:51 | URL | zep1813 #-[ 編集]
>zep1813
「ライトスタッフ」と「エピソード4」は明らかに意識してますけど、なるほど「ファイヤーフォックス」ね。
確かに妙に堂々とした乗っ取りは似てるかも知れませんね。
本作を見ると、このままトム・クルーズがいい感じで歳を重ねてゆくと、案外イーストウッドのポジションにストンとハマるような気がします。
「ライトスタッフ」と「エピソード4」は明らかに意識してますけど、なるほど「ファイヤーフォックス」ね。
確かに妙に堂々とした乗っ取りは似てるかも知れませんね。
本作を見ると、このままトム・クルーズがいい感じで歳を重ねてゆくと、案外イーストウッドのポジションにストンとハマるような気がします。
ようやく見てきました。いやー、面白かった。
こういうの“で”良いんだよ、というか、こういうの“が”良いんだよ。
オッサンだから楽しめるんだろうかと不安視してたんですが、割と世代満遍なく受けてるようで、こういうのが好きなオッサンとしては何より。
ラストで救助の礼を言われたルースターが、「父の代わりです」って返して(原語だとMY dad would've done、だったかな?ちょっと意味合い違うかもだけど)、この二人はその辺りからすれ違っちゃってたんだなあと納得。トムに父親代わりは無理だよねえ。
マイルズ・テラーがアンソニー・エドワーズに上手く似せてましたが、ビル・プルマンに似てるなぁと感じた火器担当が実際に息子だったのが嬉しかったです。
こういうの“で”良いんだよ、というか、こういうの“が”良いんだよ。
オッサンだから楽しめるんだろうかと不安視してたんですが、割と世代満遍なく受けてるようで、こういうのが好きなオッサンとしては何より。
ラストで救助の礼を言われたルースターが、「父の代わりです」って返して(原語だとMY dad would've done、だったかな?ちょっと意味合い違うかもだけど)、この二人はその辺りからすれ違っちゃってたんだなあと納得。トムに父親代わりは無理だよねえ。
マイルズ・テラーがアンソニー・エドワーズに上手く似せてましたが、ビル・プルマンに似てるなぁと感じた火器担当が実際に息子だったのが嬉しかったです。
2022/09/07(水) 20:49:51 | URL | 焼き鳥 #9L.cY0cg[ 編集]
>焼き鳥さん
まあこれはおっさんの方が楽しめる映画だと思いますよw
空中戦あり、スポ根あり、人情ドラマあり、大人の恋愛あり、擬似親子の確執あり、娯楽映画全部入りの内容で、まさにザ・万人向け。
これがヒットしなかったら、映画終わりじゃないですかねえ。
まあこれはおっさんの方が楽しめる映画だと思いますよw
空中戦あり、スポ根あり、人情ドラマあり、大人の恋愛あり、擬似親子の確執あり、娯楽映画全部入りの内容で、まさにザ・万人向け。
これがヒットしなかったら、映画終わりじゃないですかねえ。
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