fc2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。ネット配信オンリーの作品は★5つが満点。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係な物や当方が不適切と判断したTB・コメントも削除いたします。
■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
呪詛・・・・・評価★★★★+0.6
2022年07月16日 (土) | 編集 |
火佛修一心薩嘸吽。

これマジでアカンやつや。
台湾で大ヒットした、モキュメンタリーホラー。
冒頭、YouTubeで「あなたは祈りを信じていますか?」と語りかける女性が映し出される。
彼女の名はリー・ルオナン。
6年前に、山奥に住むある氏族に伝わる伝統宗教のタブーを侵し、幼い娘のドォドォともども呪われてしまったと言う。
事件に関わった者は、皆不条理な死を遂げ、生き残っているのは彼女と娘だけ。
彼女は視聴者に奇妙な符号を見せ、その宗教に伝わる「火佛修一心薩嘸吽(ホーホッシオンイー シーセンウーマ)」という呪文を唱え、娘の命を救うために協力して欲しいと求める。
「返校 言葉が消えた日」「哭悲/The Sadness」と、秀作が続き盛り上がりを見せる台湾ホラーの真打ち登場。
ケヴィン・コー監督が作り上げたのは、台湾南部の高雄市で起こった実際の事件にインスパイアされたという、それはそれは恐ろしい作品である。
日本ではNetflix直行となったが、作品の特性上も劇場よりも配信が相応しい。
どうせなら、夜中に一人で観ることを強くお勧めする。
※完全ネタバレ。観る前には読まないで。

リー・ルオナン(ツァイ・ガンユエン)は、養護施設に預けられていた娘のドォドォ(ホアン・シンティン)を自宅へと迎える。
出産後長く精神病院にかかっていて、ようやく子供と暮らすことが認められたのだ。
だが、ドォドォが家に来てすぐに、怪異が起こり始める。
電気が勝手に消える。ドォドォが宙に浮く“悪者”の姿を見る。
ルオナンの持ち物から、不気味な芋虫が大量に見つかる。
そして、ドォドォの体にも異変が。
それらは全て、6年前にオカルト系のYouTubeチャンネルを配信していた、ルオナンと婚約者のアードン(ショーン・リン)とその弟アーユエン(ウェン・チンユー)の体験から始まっていた。
アードンの祖父の住む村は、大黒仏母という神を信仰していて、アードンとアーユエンは禁じられた地下道に立ち入ってしまう。
二人は謎の死を遂げ、当時ルオナンと関わった者たちも次々と死んでいた。
ドォドォの里親だったチーミン(カオ・インシュアン)の協力を得たルオナンは、娘を救うために大黒仏母の正体を探り始めるのだが・・・・


現在のホラー映画に、90年代以降強い影響を与えた系譜は二つある。
一つは、1999年に大ヒットした「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」に代表される、モキュメンタリー。
モキュメンタリー自体は昔からある手法だが、この作品はメリーランドの森に伝わる「魔女伝説」をでっち上げ、映画は伝説を取材しに来て、行方不明となった学生たちが残した物という触れ込みで公開された。
わずか6万ドルで製作された小品が、口コミが口コミを呼び全世界で2億4千万ドルを超える興行収入を稼ぎ出したことで、類似作品が雨後の筍のように作られた。
そしてもう一つの系譜が、「リング」「呪怨」の両シリーズに代表されるJホラーである。
両シリーズ共にハリウッドでリメイクされたことからも分かるように、怪異の正体を明確にしないまま、真綿で首を絞められるように展開するJホラーの恐怖表現は、世界的には非常に新鮮に受け止められ、その影響は現在まで色濃く残る。
モキュメンタリーもJホラーも粗製濫造の結果、勢いを失って行ったが、この二つのDNAを最狂の形で融合させたのが本作である。

一応、実話が元になっているという触れ込みだが、高雄で起こった事件では6人の家族にそれぞれ古代の神々が取り憑き、お互いに傷つけ合ったり、糞尿をかけ合ったり、しまいには死者まで出てしまったという。
相当に奇妙な事件ではあるが、本作の内容とは似ても似つかないので、あくまでもインスパイアという程度で、実質オリジナルと言っていい。

主人公のルオナンは元々YouTuberで、待ちに待った娘との生活をビデオ日記にするという設定ではあるが、「そのシチュエーションでなぜカメラ回す?」ってジャンル的欠点は相変わらず。
だが、メッチャ面白いのでそこは目を瞑ろう。
映画の冒頭で流れるYouTube動画は、すでにドォドォの体に異変が現れ、虐待を疑われたルオナンが娘と共に逃亡中の段階。
彼女は6年前の過ちで受けた呪いによって、家族が自動車事故で全員死んだこと、その時のカメラを警察に持って行ったところ、警察官たちが次々と自殺してしまったことなどを語る。
そして、「祈りとは意志であり、意志の力で結果は変えられる」と、前記した呪文を娘のために一緒に唱えてほしいと訴えるところでビデオは終わる。
ここから映画は時間を遡り、数週間前のドォドォとの同居の開始と怪異の出現へ。
当局は、自分が呪いにかかっていると思い込んでいるルオナンには養育能力が無いと判断し、娘は養護施設で育っているのだが、ようやく一時的に同居する許可が出て、彼女はドォドォに“本当の名前”を教えるのだ(ドォドォは愛称)。
さらに進むと、全ての始まりとなる6年前の取材旅行の映像が紹介され、以降映画は複数の時系列を並行に語ってゆき、少しずつ核心に迫ってゆく。

状況の悪化と共に、小出しで呪いの謎が解かれてゆくミステリータッチは、まさに「リング」などのJホラーの醍醐味。
ルオナンたちは、アードンの祖父を訪ねた時に、大黒仏母の儀式を受けていて、仏母に自分の名前を捧げていたことが分かる。
その時、妊娠中だったルオナンは、期せずしてお腹の中にいる娘の名前まで、捧げてしまっていたのである。
その後、YouTubeのネタ欲しさに、大黒仏母の像が安置される絶対タブーとされる地下道に踏み行ったことで、地獄の蓋が開いてしまう。
娘がドォドォとして生きていた間は何も起こらず、彼女が自分の本当の名前を知った瞬間から、怪異が起こり始めるのはこのためだ。
この名前による支配は、ル=グウィンの「ゲド戦記」や「千と千尋の神隠し」にも通じる要素で面白い。
その後も道教の道士を頼るも返り討ちにされたり、チーミンが中国奥地まで大黒仏母の謎を探りに行ったりと物語は進行するが、事態は好転しない。

そしてついに、本作の本当の凶悪さが明らかにされる瞬間がやって来る。
この作品の何がヤバいって、モキュメンタリーの特性を生かして、画面のこっち側を思いっきり巻き込んで来るのだ。
再び、禁断の地下道に入った彼女は、視聴者に向けて「火佛修一心薩嘸吽(ホーホッシオンイー シーセンウーマ)」の呪文を一緒に唱えて欲しいと言う。
そして唱え終わった後に、「ごめんなさい、嘘をついた」と語り始めるのである。
大黒仏母の正体は、「仏」とは名ばかりの太古の邪神で、「火佛修一心薩嘸吽(ホーホッシオンイー シーセンウーマ)」は祈りの言葉ではない。
意味は「自らの名前を捧げて共に呪いを受ける」で、あまりにも強い仏母の呪いの力を薄めるため、唱えた人々に分け与えるための呪文だったのだ。
呪いの中心は仏母の顔で、それを凝視すればより強く呪われる。
そしてルオナンの傍には、顔を布で覆われた大黒仏母像が立っている。
彼女は、最初から全て知っていて、ドォドォが受けた大黒仏母の呪いを視聴者(つまり映画を観た全員)に分けることで、娘を救おうとしていたのである。
こんなの観たことない。
フィクションと知っていても、「なんてことしてくれたんだ・・・」と思わず呟いてしまったではないか。
事前に「ものすごく怖い」という評判を聞いて、太陽が輝く日曜日の昼間に観たのだが、夜中に一人で観てたら、マジで眠れなくなっちゃうだろ。
モキュメンタリー技法では、オンデマンド時代ならではの新しい切り口で、アジアのオカルトホラーとしても「哭声/コクソン」以来の秀作と言っていい。
はい、ではもう一度「火佛修一心薩嘸吽(ホーホッシオンイー シーセンウーマ)」と唱えましょう。

今回は、台湾から「金門高粱酒」をチョイス。
名前の通り、中国大陸と目と鼻の先、かつては中台両軍の激しい砲撃戦の舞台ともなった金門島で醸造されている。
58度もあるので、飲んだ瞬間喉がカーッと熱くなる。
こんな強い酒でもストレートで飲むのが一般的というから、酒豪が多い土地なのも頷ける。
お酒は、世界各地の文化で神への捧げ物だが、さすがの大黒仏母も、これで浄化できちゃうかもしれない。

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

返校 言葉が消えた日 [ ツォン・ジンファ[曾敬□] ]
価格:3502円(税込、送料無料) (2022/7/16時点)






スポンサーサイト




コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック