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2022年10月23日 (日) | 編集 |
友情・裏切・勝利!

「バーフバリ」二部作で世界の度肝を抜いた、S・S・ラージャマウリ監督最新作。
舞台は、植民地時代のインド。
地方を訪れた英国総督夫妻が、歌の上手い少数民族の村娘を拉致し、英雄ビームが奪還に動く。
総督側には、大義のために英国のインド支配を支える警察官となったラーマがいて、ひょんなことから二人の男は、お互いの素性を知らぬまま親友になってゆく。
友情・筋肉・アクション・筋肉・ダンス・筋肉な筋肉至上主義の映画。
劇場の気温設定が50度くらいになってるんじゃない?てくらい、めちゃくちゃ熱い。
上映時間が179分もある大長編だが、全くダレる部分がなく、エンドロールまであっという間だ。
ラーマ役に「マガディーラ 勇者転生」以来、ラージャマウリと二度目のタッグを組むラーム・チャラン、ビーム役は「バードシャー テルグの皇帝」のN・T・ラーマ・ラオ・Jr.が演じる。
※核心部分に触れています。

1920年代、大英帝国の植民地となっていたインド。
悪辣な英国総督のスコット・バクストン(レイ・スティーブンソン)と妻のキャサリン(アリソン・ドゥーディ)は、歌の上手いゴンド族の少女を気まぐれで拉致する。
部族の守護者コムラム・ビーム(N・T・ラーマ・ラオ・Jr.)は、少女を奪還するために、イスラム教徒に変装し仲間と共にデリーへと向かう。
藩王国の使者から何者かが自分を狙っていると警告を受けた総督は、正体不明のゴンド族の男を逮捕した者を、特別捜査官へと昇進させると宣言。
ただ一人応じたのは、インド人警察官のラーマ・ラージュ(ラーム・チャラン)だった。
ラーマは策略を巡らせて、ゴンド族の男の正体を暴こうとするが、ラーマとビームは偶然鉄道の事故から少年を救うために共闘することとなり、お互いに素性を知らないまま親友となってゆく。
だが、ある事態をきっかけにビームの正体がラーマにばれ、二人は総督府で開かれたパーティで、激しくぶつかり合うことになるのだが・・・・・


「熱血」という言葉が、これほど相応しい映画は他にないだろう。
まずは密度の濃い、圧倒的な熱量を持つ映像に心を鷲掴みにされる。
CGバリバリは同じでも、技術のベクトルがハリウッド映画とは違う。
ラージャマウリのファーストプライオリティは、リアルな映像ではなく、誰も観たことのないカッコいい映像を作り出すこと。
「バーフバリ」の樽カタパルトとかが典型だが、優先されるのはリアリティよりも、それが斬新で面白いかどうか。
本作ではラーマが炎、ビームが水の属性を与えられていて、両者の闘いでは炎の赤と水の青がキーカラーとなって画面が構成されている。
CGであることはあえて隠そうとせず、実写を素材として使ってデザインから作り上げるという、アニメーション映画みたいなことをやっているのである。

作劇の点でも、本作はとてもユニークだ。
179分の上映時間のうち、インターバル(実際にはないけど)が表示されるまでの前半は、物語の視点はビームに置かれている。
ビームは、理不尽にさらわれた少女を救い出すヒーローで、インド人なのに警察官として英国の犬となったラーマは、闇堕ちしたヴィランのポジション。
しかし後半、ラーマの背負っている重過ぎる過去が描かれると、それまでの世界が一変する。
ラーマは革命指導者の父によって、幼い頃からゲリラ戦のノウハウを叩き込まれて育ち、父が英軍によって殺された後に警察官となる。
彼の真の目的は、警察の要職にまで上り詰め、武器を移送する権限を持つこと。
インド人は勇敢だが、英軍の銃には敵わない。
大量の銃を人々に届け、英軍に対抗する術を持たせることこそが、ラーマの秘めたる大義なのである。
ビームは少女を救い出そうとするが、ラーマは国を救おうとしている。
ここに来て、主人公が入れ替わるのだ。
まあ二人の男の片方の名前がラーマで、婚約者の名はシータだと分かった時点で、ああこっちが実質的に主役だなと想像はつく。
インド人は本当に「ラーマーヤナ」が大好きなんだな。

実はビームもラーマも完全なフィクションのキャラクターではなく、英国に抵抗した実在の人物で、インドでは広く知られ、英雄視されているという。
コムラム・ビームは、植民地下の抑圧的な藩王国から独立を目指したゴンド族の革命家で、1940年に武装警官によって殺害されるまで、10年にわたってゴンド族の反乱軍を指揮していた。
ラーマ・ラージュは、実際にはアルリ・シタラーマ・ラージュという名で、ゲリラ部隊を組織し、英軍や警察に対して何度も攻撃を繰り返した。
彼は1924年に英軍に捕らえられ、即日処刑されたという。
史実では彼ら二人が出会うことはなかったようだが、本作では同時代の英雄という縁で大幅に脚色されて、最後にはほとんど神格化されている。
囚われたラーマがビームに救出され、「ラーマーヤナ」のラーマのように、弓を持って現れたシーンは、日本で観てもテンション爆上がりだったが、多分インドでの盛り上がりはこんなもんじゃないのだろう。
これが「ラーマーヤナ」の現代版だとすると、ボスキャラの総督は羅刹王ラーヴァナということになるが、このように実話にストーリーテラーが脚色を加えることで、物語は徐々に神話としての神性を獲得してゆく物なのかも知れない。
本作は英国の抑圧に対する民族主義的な英雄譚で、エンディングテーマがボースやガンジーら、インド独立運動の闘士たちに捧げられてることからも、スタンスは明らかだ。

しかし英国人の中にも、ビームに協力するジェーンとかいい人はいるんだけど、総督夫妻がインド人の血を見るのが趣味っていう悪辣なサディストっぷり。
捕まったビームをラーマが鞭打つシーンで、なかなか膝を屈さないビームに剛を煮やした妻のキャサリンが、「コレを使いなさい」って細かい刃が無数に生えた恐ろしげな鞭を投げ渡すのだが、あんたそんなのどこから持って来たのよ。
ナチスドイツか、中国の抗日映画の日本軍か、というレベルの徹底的な悪に造形されてるのを見ても、インドの反英感情は今も相当なものなのだろう。
そう言えば、先日エリザベス女王が死去した時も、インドを含む旧植民地諸国から届く声は辛辣な批判が多かった。
その分、英軍との戦闘シークエンスは、虐げられた民の「この恨み、晴らさでおくべきか!」って叫びが聞こえて来そうなくらいに容赦がない。
銃弾が体にめり込む描写をスローで見せてくれるのだから、インド人は溜飲を下げるのだろうが、相当にイタタなショットがいっぱいあるので、苦手な人には注意が必要だ。

面白いのが、インド映画でお馴染みのミュージカルで、本作ではヨーロッパのダンスをひけらかす英国男に対して、ラーマとビームがダンス対決を持ちかけ、倒れるまで踊り続けるというどっかで聞いたような勝負をする。
この会場で演奏しているオーケストラに、一人だけドラム担当の黒人の楽団員がいるのだが、彼がラーマの叩いたドラムのリズムに反応して、ノリノリの笑顔で自分もドラムを叩き始める。
そして激しいリズムについて来られなくなった英国男は、敗北を喫するのである。
さりげない描写だが、植民地帝国の被支配者同士のささやかな連帯を示していて、作り込みの細やかさを感じさせる。
豪快だが、決して大味な映画ではないのだ。

ところでS・S・ラージャマウリ監督には、是非日本に来てジャンプ漫画の実写化を撮って欲しい。
特に実写化が発表された筋肉至上主義漫画、「ゴールデンカムイ」を映像化するのに、彼ほどの適任者は世界中探してもいないだろう。
まあ5時間くらいの上映時間と100億ぐらいのバジェットが必要だけど、たぶん世界興行収入300億くらい稼ぐから、余裕っしょ。

今回は、インドのワイン銘柄スラ・ヴィンヤーズから情熱の赤、「スラ・ヴィンヤーズ・シラーズ 2021」をチョイス。
アメリカでビジネスマンとして活躍していたラジーブ・サマントが故郷のインドに戻り、1997年に創設した新興ヴィンヤードだが、急速に知名度が高まっている。
シラーズは黒胡椒のようなスパイシーさに、ベリー系のフルーティーなアロマ。
喉越しは滑らかで、インド料理との相性もバッチリ。
CPが高いのもありがたい。
ベジタリアンマークが付いているのも、いかにもインドらしい。

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コメント
この記事へのコメント
遅コメ失礼。

> CGバリバリは同じでも、技術のベクトルがハリウッド映画とは違う。ラージャマウリのファーストプライオリティは、リアルな映像ではなく、誰も観たことのないカッコいい映像を作り出すこと。

これ、東宝特撮と大映特撮の違いで言われる言葉みたい。
東宝はリアル志向。嘘に見えない映像を作るために特撮を使う。大映は凄い絵を作る事が目的。
2023/02/28(火) 23:33:33 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
あーなるほどね。
大映の場合は初期は特撮のノウハウ、が不足していて、あれしか作れなかったのが実情みたいですけどね。
ミニチュアなんかは明らかに作り込みに差があったし。
まあ結果的にそういうイメージになったのでしょう。
2023/03/06(月) 21:30:44 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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1920年、英国植民地時代のインド。 イギリス人総督の妻がゴーンド族の幼い少女マッリを気に入り、デリーの公邸へ連れ去った。 ゴーンド族のリーダーであるビームは、マッリ奪還のためアクタルと名を変えデリーの街に潜伏中。 それを知った英国政府は、インド人警察官ラーマに彼らの生け捕りを命じる。 2人は互いの素性を知らぬまま意気投合し、親友となった…。 アクション・エンターテインメント。
2022/10/24(月) 09:06:50 | 象のロケット
◆『RRR』ユナイテッドシネマ豊洲3 ▲火炎太鼓なビーム(左)と足でピアノを弾きそうなラーマ(右)。 五つ星評価で【★★★★「超」が付く。】 もう本当何やってるんかいなという相変わらずのインド映画。普通に喋ってるのに空気の圧が強い。映像や音が重低音で、朗々と歌い上げたりしないけど、空気感がオペラなのだと思う。こういう空気感をまとうとどんな非常識な事をやっても無敵。ダンスと肩車とか並の映画...
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