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アフター・ヤン・・・・・評価額1700円
2022年11月02日 (水) | 編集 |
アンドロイドの心に、愛はあるか。

クローン技術やロボット工学が発展し、人間そっくりのアンドロイドが、“家族”として私たちと共生する近未来。
ある家庭の中国出身の養女に、母国文化を教える役目だったアンドロイドのヤンが、突然動作を止める。
コリン・ファレル演じる持ち主のジェイクは、なんとかヤンを再生しようと奔走するのだが、やがて彼はヤンの人生を記録したメモリバンクにアクセスし、そこでアンドロイドの“心”を見る。
アレクサンダー・ワインスタインが2016年に発表した短編小説をもとに、「コロンバス」が話題を呼んだ韓国系アメリカ人のコゴナダ監督が手がける、何とも不思議な手触りの作品。
主人公のジェイクはヨーロッパ系の白人、ジョディ・ターナー=スミス演じる妻のカイラはアフリカ系の黒人、娘のミカはアジア系、そしてアンドロイドのヤン。
これが、多様性が普通になった未来の家族の姿なのだろうか。
※核心部分に触れています。

中国茶の店を営むジェイク(コリン・ファレル)の家族は、妻のカイラ(ジョディ・ターナー=スミス)と養女のミカ(マレア・エマ・チャンドラウィジャヤ)、そして彼女のアイデンティティである中国の文化を教えるために購入したアンドロイドのヤン(ジャスティン・H・ミン)。
ところがある日、ヤンが突然動かなくなってしまう。
ヤンは「二番目の子」と言いう中古業者から購入したのだが、すでに店は無くなっていた。
彼に懐いていたミカは悲しむが、製造メーカーに修理に出すと新品交換になってしまうため、ジェイクは途方に暮れる。
隣人に紹介された修理屋でも直せなかったが、ヤンのメモリバンクを取り出すことに成功。
プロテクトがかかっていたその中身を見るために、ジェイクは博物館でアンドロイドの研究をしているクレオ(サリタ・チョードリー)に依頼し、ヤンの記憶を展示することを条件に中身を見るディバイスを手に入れる。
ヤンのメモリバンクには、ジェイクの知らない女性と会っているシーンがあった。
彼女のことを調べると、カフェで働いていたエイダ(ヘイリー・ルー・リチャードソン)というクローンの女性だと分かるのだが・・・・・


SiriやAlexaと言った対話できるAIが超進化して、肉体を持つ様になったらどうなるか。
この映画の世界には、“テクノサピエン”と呼ばれる、高度な知性を持つAIアンドロイドが存在する。
目的に応じた様々なタイプがあるようだが、見た目は人間とまったく見分けがつかない。
中国人の姿をしたヤンは、中国出身の養女ミカにとって、中国語や中国の歴史、文化などを教えてくれる兄の様な存在だ。
ハリウッドのSF映画では、人類に仇なす脅威として描かれることが多い人形アンドロイドだが、この作品に流れるのは万物に魂が宿るという東洋的、アニミズム的世界観
作品のパッケージこそ「機械に心はあるのか?」という類型的なものに見えるが、感情を理解し、人間的な反応をするヤンに心があるのは、ごく自然なこととして受け止められている。
ミカだけでなく、ジェイクやカイラにとっても、ヤンは四人目の家族なのだ。
映画の世界では人間のクローンも一般化されていて、人間、テクノサピエン、クローンという、同じ見た目ながら、生物としての成り立ちが全く異なる、三種類の“人”が存在し調和しているのである。
そして、ジェイクの家族の中にも、三つの人種が調和している。
これは、そんな全てが曖昧に溶け合う時代を背景に、“アンドロイドの死”という象徴的な出来事を軸に、喪失への向き合い方を描くユニークな寓話だ。

コゴナダは、中国茶を巡るジェイクとヤンの会話を使って、人間とアンドロイドの思考の違いを表現する。
ジェイクは、自分が中国茶に魅せられたのは味ではないという。
お茶を入れるまでの作法を含めた、プロセス全体が好きだと話すのだ。
文化系アンドロイドのヤンには、中国茶に関する膨大な知識があるが、それを知りたいかと問われると、ジェイクは興味が無さそうなのだ。
お互いに家族だと認識しているし、理解していると思っているが、実は微妙なズレがある。
だから改めてヤンを知ってゆくことが、ジェイクにとって喪失と向き合うことになるのだ。

テクノサピエンには、経験したことの中から重要だと思ったシーンを、一度に数秒間だけメモリバンクに記録する機能がある。
それはヤンの中にいく層ものアーカイブとして蓄積されており、ディバイスを手に入れたジェイクは、彼の記憶のアーカイブを過去へと遡ってゆく。
私はスマートフォンのカメラ機能にある、ライブフォトのモードが好きだ。
これはシャッターを押す前後1.5秒を記録し、その中の気に入った一枚を残すためのものだが、再生すると静止画でもない、動画でもない、止まった時が一瞬だけ動く不思議な感覚が味わえるのだ。
ヤンのアーカイブはもう少し長いが、ライブフォトの感覚に近く、それはまるで今はもういない大切な誰かの記憶の断片を辿る旅の様。
アンドロイドのヤンにとって、残すべき体験とはどんなことで、彼にとってジェイクたちはどんな存在だったのか。
アーカイブの旅を通して、ジェイクはヤンの人生を追体験し、エイダの登場に至って、自分がいかに彼を知らなかったのかに気付かされる。

ジェイクが、クローンにはあまりいい感情を抱いていないのが面白い。
自分から遠い存在のアンドロイドは受け入れても、より近いクローンには嫌悪を感じるのは、なるほどこういう人はいるだろうなと思わされる。
エイダの存在を知ったジェイクは、ヤンが彼女に恋愛感情を抱いていたのではないかと疑う。
だが、中古で購入したヤンは、ジェイクが考えていたよりも、ずっと長い人生を送ってきたことが、アーカイブの再深層で分かるのだ。
数十年前のメモリに写っていたのは、エイダの“オリジナル”となった女性。
若くして亡くなった彼女のことを、ヤンは大切な記憶としてアーカイブし、ずっと覚えていたのである。
人間とアンドロイド、思考の違いはあっても、生きた証としての思い出は変わらない。
それまでミカのためにヤンを再生しようとしていたジェイクは、彼の秘められた心を知ることで、アンドロイドや人間という属性から離れ、家族の一人のヤンとして彼を送ることを決めるのである。
この変化のプロセスを通し、ジェイクの心情を繊細に表現するコリン・ファレルが素晴らしい。

本作はテクノロジーを扱ったアメリカ映画だが、全編に夢うつつの様な独特のムードが漂う。
監督は韓国系、音楽は「37セカンズ」のアスカ・マツミヤと坂本龍一が書き下ろし、小林武武史の「グライド」や、UAの「水色」のインストルメンタル版も印象的に使われている。
カメラワークの小津安二郎リスペクトも相変わらずだし、お茶屋の主人公夫婦が揃ってラーメン食べてたり、ルックを含めて東アジアの文化がかなり色濃い。
形あるものはやがて崩れて動かなくなるが、本質は精神の奥底に眠っている。
終盤にブワーッと過去へと世界が広がってゆくあたりは、アンドロイドとクローンの設定だからこその内的な壮大さを感じさせ、ちょっと似た作品を思いつかない。
ゆったり地味なタッチではあるが、これはいわば東洋的視点で作られた「ブレードランナー」で、心とは何かを問う哲学的SF映画としてもなかなか秀逸。

今回は、夢を見ている様な作品なので、「ドリーム」をチョイス。
ブランデー40ml、オレンジキュラソー20ml、ペルノ1dashを氷と一緒にシェイクし、グラスに注ぐ。
ブランデーのコクと、オレンジキュラソーの甘味が作り出す味わいに、ベルノの香りが独特のアクセントを加える。
良質のナイトキャップとして知られる一杯なので、これを飲んでアンドロイドの夢を見よう。

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数十年先の“テクノ”と呼ばれる人型ロボットが、一般家庭にまで普及した近未来。 茶葉販売店を営む白人系の男ジェイク、黒人系の妻カイラ、アジア系の幼い養女ミカは、慎ましくも幸せな日々を送っていた。 ある日、ミカが兄のように慕うアジア系の顔立ちをしたAIロボットのヤンが故障してしまう。 ヤンのメモリバンクには、思いもよらぬ記録映像が残っていた…。 ファンタジック・ドラマ。
2022/11/05(土) 00:57:43 | 象のロケット