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2022年11月04日 (金) | 編集 |
第35回東京国際映画祭の鑑賞作品つぶやきまとめ。
ノースマン 導かれし復讐者・・・・・評価額1750円
ロバート・エガースは初の大作(たぶん過去の二作とは予算規模が10倍は違うはず)で、濃い作家性を保ったまま見事な傑作をものにした。
10世紀のアイスランドの荒涼とした風景の中で展開するのは、父を殺されたバイキングの王子、アムレートの神話的貴種流離譚。
シェイクスピアの「ハムレット」のモデルとなったバイキングの英雄が、残酷な運命に導かれながら目的を遂げるまでの物語は、とにかくダーク。
ジュリアン・ブラシュケの映像は、非常に重厚かつカッコいいのだが、終始陰鬱な空気がスクリーンに充満している。
超自然的な描写も多く、どこまでが現実なのか境界が分からない不思議なムードはエガースらしい。
中盤までは割とストレートな復讐譚なんだが、終盤になって価値観の逆転が起こる構造。
時代が時代ゆえ、人も動物もやたらと簡単に死ぬし、血もいっぱいでる。
命の価値が限りなく軽い時代だからこそ、バイキングは死に意味を求め、ヴァルハラの神話を生み出したのかも知れないな。
同じ英雄ものの歴史劇でも、例えば「バーフバリ」が燃えたぎる真っ赤な炎だとすれば、これは静かに燃える青白い情念の炎。
公開されたら再鑑賞は確定。
マンティコア・・・・・評価額1650円
タイトルは、体は虎で顔が人間の伝説上の人喰いの幻獣。
描かれるのは、ゲーム会社でモンスターの3Dモデラーをしている人付き合いが苦手で恋愛下手の主人公の、なんとも間の悪い青春。
孤独な主人公にも、人生で初めて恋人ができそうになるのだが、過去に行ったあることがきっかけとなり、自分が人喰いの怪物だという烙印を押されてしまう。
人の世では怪物は生きられない。
では主人公の存在が許される唯一の道は?という話。
大怪作「マジカル・ガール」の監督だから、終盤まで物語がどこに向かうのか、さっぱり分からないトリッキーさ。
ディテールの日本趣味も相変わらず。
結局、救われたんだか、そうじゃないんだかも、観る人によって解釈は180度異なるだろう。
青年の行為も、それをバッシングする側も、「やり過ぎ」と暗に批判してる様にも思えるし。
はたして、真のマンティコアは誰なのか、静かに毒を盛り込みつつ、不定形で掴み所の無い感触は実にこの作家らしい。
観客の意識を試すロールシャッハテストみたいな、ユニークな秀作。
バルド、偽りの記録と一握りの真実・・・・・評価額1600円
これは何とも形容し難い大怪作。
あえて言えば、おじさんのセカイ系。
アメリカで活躍するイニャリトゥ似のジャーナリストで映画監督の男が、故郷メキシコへ一時帰国する。
だが彼の目に写る懐かしの故郷は、現実と虚構、過去と現在、生者と死者がシームレスに入り混じった奇妙な世界。
荒野を歩く男の影が、鳥の様にフワリと浮かび上がるオープニングショットは「バードマン」を思わせるが、全編ワンカット風だったあの作品とは違う意味でのシームレス。
死の香りが漂う世界観は、イニャリトゥ色はもちろん強いのけど、過去の作品よりもむしろ大林宣彦の「戦争三部作」とか、ホドロフスキーの「リアリティのダンス」とかの“遺作”の匂いが。
一応、不思議な世界観には終盤論理的な理由付けがしてあるのだが、「ちょ、ちょっとイニャリトゥ死ぬん?早過ぎない?」と思ってしまった・・・(´;ω;`)
まあ終わってみれば、子供は大きくなり両親は旅立ち、色々思うところのある年齢を反映し、実験的な手法で心象風景を描いた極めて個人的な作品。
誰にでもオススメは出来ないが、超カッコいい長回しショットも多く、個人的にはこれはこれで好きな作品。
ドント・ウォーリー・ダーリン・・・・・評価額1450円
オリヴィア・ワイルドの監督二作目。
主人公のフローレンス・ピューは、砂漠の中に作られた50年代風の街に夫と共に暮らしている。
毎朝夫たちは、クリス・パインの経営する街の運営会社に働きに出るが、妻たちは優雅な暮らしを楽しんでる。
有能な夫たちと貞淑な妻たちの、完璧な生活。
ところが、あることがきっかけとなり、主人公はこの街の生活に疑念を抱く。
覚えのない記憶の断片は何なのか?夫たちは何の仕事をしているのか?
これ、世界観が映画化もされたアイラ・レヴィンのSF ホラー、「ステップフォードの妻たち」にそっくり。
もしかしてリメイク?オチまで同じ?と思ってたら、さすがにそこは変えてきた。
しかし結局陰謀の動機も小説とほぼ同じなので、強くインスパイアされているのは間違いないだろう。
いわゆる謎が謎を呼ぶ展開で、先を読ませずに面白いんだけど、ネタバラしで明らかになる秘密が、既視感バリバリなのと、設定の説明がちょっと雑なのが難点。
こっちでああすると、なぜあっちでそうなるのかよく分からない。
ダメ男たちのミソジニーがテーマだが、これも終盤の展開が矢継ぎ早過ぎて分かりにくいかも。
中間テストまでA-だったのが、期末試験で焦ってB-かC+になっちゃった印象。
終盤の組み立てのまずさと、描写不足が勿体無い。
クロンダイク・・・・・評価額1650円
2014年のウクライナ、ドンパス。
親露の分離派の支配する村で暮らす、ある農民夫婦の物語。
妻は間もなく臨月を迎えるが、家の壁は分離派に“誤射”されて大穴が空いている。
そしてまたしても“誤射”によって、家の近くに撃墜されたマレーシア航空機の残骸が降ってくる。
今起こっていることの根っこ。
ロシアの侵略は今年突然始まった訳ではなく、8年前からずっと続いている事実が赤裸々に描かれている。
本作の内容の様ななおぞましいことが、今年はウクライナ各地に広がったと思うと、胸が痛い。
終盤出てくる傭兵が、悪名高いワグネルだな。
早く逃げて!と思っちゃうのだが、それは今まで築いた物を全てを捨てるということ。
自分たちは何も悪くない訳だし、土地に根ざして生きてきた人たちには、そう簡単に決められものではないのだろう。
人生の岐路の決断がどっちに転ぶかは、トランプのゲームの様に予測不能。
しかし最悪に最悪が重なる状況の中でも、最後の最後に希望となるのは、やっぱり新しい命なんだな。
まさに今観るべき力作なんだけど、ちゃんと正式公開されるよな?
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ノースマン 導かれし復讐者・・・・・評価額1750円
ロバート・エガースは初の大作(たぶん過去の二作とは予算規模が10倍は違うはず)で、濃い作家性を保ったまま見事な傑作をものにした。
10世紀のアイスランドの荒涼とした風景の中で展開するのは、父を殺されたバイキングの王子、アムレートの神話的貴種流離譚。
シェイクスピアの「ハムレット」のモデルとなったバイキングの英雄が、残酷な運命に導かれながら目的を遂げるまでの物語は、とにかくダーク。
ジュリアン・ブラシュケの映像は、非常に重厚かつカッコいいのだが、終始陰鬱な空気がスクリーンに充満している。
超自然的な描写も多く、どこまでが現実なのか境界が分からない不思議なムードはエガースらしい。
中盤までは割とストレートな復讐譚なんだが、終盤になって価値観の逆転が起こる構造。
時代が時代ゆえ、人も動物もやたらと簡単に死ぬし、血もいっぱいでる。
命の価値が限りなく軽い時代だからこそ、バイキングは死に意味を求め、ヴァルハラの神話を生み出したのかも知れないな。
同じ英雄ものの歴史劇でも、例えば「バーフバリ」が燃えたぎる真っ赤な炎だとすれば、これは静かに燃える青白い情念の炎。
公開されたら再鑑賞は確定。
マンティコア・・・・・評価額1650円
タイトルは、体は虎で顔が人間の伝説上の人喰いの幻獣。
描かれるのは、ゲーム会社でモンスターの3Dモデラーをしている人付き合いが苦手で恋愛下手の主人公の、なんとも間の悪い青春。
孤独な主人公にも、人生で初めて恋人ができそうになるのだが、過去に行ったあることがきっかけとなり、自分が人喰いの怪物だという烙印を押されてしまう。
人の世では怪物は生きられない。
では主人公の存在が許される唯一の道は?という話。
大怪作「マジカル・ガール」の監督だから、終盤まで物語がどこに向かうのか、さっぱり分からないトリッキーさ。
ディテールの日本趣味も相変わらず。
結局、救われたんだか、そうじゃないんだかも、観る人によって解釈は180度異なるだろう。
青年の行為も、それをバッシングする側も、「やり過ぎ」と暗に批判してる様にも思えるし。
はたして、真のマンティコアは誰なのか、静かに毒を盛り込みつつ、不定形で掴み所の無い感触は実にこの作家らしい。
観客の意識を試すロールシャッハテストみたいな、ユニークな秀作。
バルド、偽りの記録と一握りの真実・・・・・評価額1600円
これは何とも形容し難い大怪作。
あえて言えば、おじさんのセカイ系。
アメリカで活躍するイニャリトゥ似のジャーナリストで映画監督の男が、故郷メキシコへ一時帰国する。
だが彼の目に写る懐かしの故郷は、現実と虚構、過去と現在、生者と死者がシームレスに入り混じった奇妙な世界。
荒野を歩く男の影が、鳥の様にフワリと浮かび上がるオープニングショットは「バードマン」を思わせるが、全編ワンカット風だったあの作品とは違う意味でのシームレス。
死の香りが漂う世界観は、イニャリトゥ色はもちろん強いのけど、過去の作品よりもむしろ大林宣彦の「戦争三部作」とか、ホドロフスキーの「リアリティのダンス」とかの“遺作”の匂いが。
一応、不思議な世界観には終盤論理的な理由付けがしてあるのだが、「ちょ、ちょっとイニャリトゥ死ぬん?早過ぎない?」と思ってしまった・・・(´;ω;`)
まあ終わってみれば、子供は大きくなり両親は旅立ち、色々思うところのある年齢を反映し、実験的な手法で心象風景を描いた極めて個人的な作品。
誰にでもオススメは出来ないが、超カッコいい長回しショットも多く、個人的にはこれはこれで好きな作品。
ドント・ウォーリー・ダーリン・・・・・評価額1450円
オリヴィア・ワイルドの監督二作目。
主人公のフローレンス・ピューは、砂漠の中に作られた50年代風の街に夫と共に暮らしている。
毎朝夫たちは、クリス・パインの経営する街の運営会社に働きに出るが、妻たちは優雅な暮らしを楽しんでる。
有能な夫たちと貞淑な妻たちの、完璧な生活。
ところが、あることがきっかけとなり、主人公はこの街の生活に疑念を抱く。
覚えのない記憶の断片は何なのか?夫たちは何の仕事をしているのか?
これ、世界観が映画化もされたアイラ・レヴィンのSF ホラー、「ステップフォードの妻たち」にそっくり。
もしかしてリメイク?オチまで同じ?と思ってたら、さすがにそこは変えてきた。
しかし結局陰謀の動機も小説とほぼ同じなので、強くインスパイアされているのは間違いないだろう。
いわゆる謎が謎を呼ぶ展開で、先を読ませずに面白いんだけど、ネタバラしで明らかになる秘密が、既視感バリバリなのと、設定の説明がちょっと雑なのが難点。
こっちでああすると、なぜあっちでそうなるのかよく分からない。
ダメ男たちのミソジニーがテーマだが、これも終盤の展開が矢継ぎ早過ぎて分かりにくいかも。
中間テストまでA-だったのが、期末試験で焦ってB-かC+になっちゃった印象。
終盤の組み立てのまずさと、描写不足が勿体無い。
クロンダイク・・・・・評価額1650円
2014年のウクライナ、ドンパス。
親露の分離派の支配する村で暮らす、ある農民夫婦の物語。
妻は間もなく臨月を迎えるが、家の壁は分離派に“誤射”されて大穴が空いている。
そしてまたしても“誤射”によって、家の近くに撃墜されたマレーシア航空機の残骸が降ってくる。
今起こっていることの根っこ。
ロシアの侵略は今年突然始まった訳ではなく、8年前からずっと続いている事実が赤裸々に描かれている。
本作の内容の様ななおぞましいことが、今年はウクライナ各地に広がったと思うと、胸が痛い。
終盤出てくる傭兵が、悪名高いワグネルだな。
早く逃げて!と思っちゃうのだが、それは今まで築いた物を全てを捨てるということ。
自分たちは何も悪くない訳だし、土地に根ざして生きてきた人たちには、そう簡単に決められものではないのだろう。
人生の岐路の決断がどっちに転ぶかは、トランプのゲームの様に予測不能。
しかし最悪に最悪が重なる状況の中でも、最後の最後に希望となるのは、やっぱり新しい命なんだな。
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