2023年01月27日 (金) | 編集 |
ダメ人間の逃避行。
2018年に上演された同名演劇を原作に、作者の三浦大輔と主演の藤ヶ谷太輔が再タッグを組んで映画化した作品。
「そして僕は途方に暮れる」といえば、昭和世代には大澤誉志幸が1984年にリリースした名曲だが、本作でも再アレンジした上で、テーマ曲として使われている。
藤ヶ谷太輔演じる主人公の裕一は、とにかく面倒臭いことから逃げる。
いい歳して定職にも付かず、恋人の前田敦子のヒモ状態なのに、浮気していることを責められアパートから逃走。
同郷の友人の中尾明慶を頼るも、怠惰過ぎる生活態度を咎められて逃走。
今度はバイト先の先輩のアパートに転がり込むも、ここでもトラブルを起こして逃走。
ついには東京で泊めてくれる者がいなくなり、仕方なく母親が一人で暮らす北海道は苫小牧へと逃げ帰ることになる。
故郷に戻ったはいいものの、母親は母親でヤバい問題を抱えていて、そこはもう裕一にとって安住の地ではない。
そして追い詰められたダメ男の前に、豊川悦司演じる父親の浩二が姿を表す。
かつて家族を捨て、今はほぼ世捨て人だという浩二に、抗えない血の繋がりを感じた裕一は、もっとダメ人間な父をメンターに、スマホの電源を切り、それまでの人生のあらゆる関係を断つ生活をはじめる。
しかし、誰とも関わらないと決めても、そう簡単にはいかない。
田舎町なんて、歩いているだけで周りは知った顔だらけ。
世捨て人のはずの父だって、借金している知り合いに会わないよう、逃げ回っているのが現実だ。
ずっと誰かに頼って生きてきて、めんどくさいことから顔を背けてきた裕一も、その生き方の究極形と言える、浩二の人生を見て覚悟を決めざるを得なくなる。
本作中で特徴的なのが、逃げる裕一が振り返るカット。
自分の過去から逃げても、どこかで気になって、振り返ってしまう。
とことんダメなんだけど、どこか人たらしのところがあって、憎まれ役になりきれない裕一役の藤ヶ谷太輔がいい。
やってることを考えれば普通に非共感キャラなんだが、確かに人とちゃんと向き合うってめんど臭い時もあるし、共感できる部分もあるよね?って匙加減が絶妙。
また豊川悦司の浩二のキャラクターは、彼が「ラストレター」で演じた阿藤に被るのが可笑しいが、もはやこの役者でなければ演じられないと思わされる怪演。
キャストは舞台からの続投組と、映画で新たにキャスティングされた者に別れるが、皆それぞれに最初から当て書きされたかの様に、ピタッとハマっている。
あらゆる問題から逃げ続けるダメ人間の、遅すぎる成長寓話としても面白いが、それだけでは終わらせない。
今までは他人と真剣な関係を築かなかったので、なあなあで許されて来たのだろうが、いざ変わろう決意した時点で、自分がしてきたことの代償を払わねばならない。
なるほど、劇中でなんとなく示唆されているものの、こう落とすとは読めなかった。
裕一ほどでないにしろ、一度くらいは対人関係で問題を抱えて、逃げたことは誰でもあるはず。
逃げながら振り返る藤ヶ谷太輔が、「だってしょうがないじゃん!お前ならどうするんだよ?」と問いかけてくる。
トンチの聞いた展開で、現実逃避した先にある、因果応報のシニカルな捻りも見事だ。
今回は苫小牧からも程近い栗山町の地酒、小林酒造の「北の誉 純米大吟醸」をチョイス。
北海道の酒米、「彗星」を精米歩合45%まで磨き上げた大吟醸。
飲み口は軽やかで、スッと喉に旨みが広がる。
大吟醸としては香りはさほどでもないが、しっかりとした造りでキレがあり、とても飲みやすい。
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2018年に上演された同名演劇を原作に、作者の三浦大輔と主演の藤ヶ谷太輔が再タッグを組んで映画化した作品。
「そして僕は途方に暮れる」といえば、昭和世代には大澤誉志幸が1984年にリリースした名曲だが、本作でも再アレンジした上で、テーマ曲として使われている。
藤ヶ谷太輔演じる主人公の裕一は、とにかく面倒臭いことから逃げる。
いい歳して定職にも付かず、恋人の前田敦子のヒモ状態なのに、浮気していることを責められアパートから逃走。
同郷の友人の中尾明慶を頼るも、怠惰過ぎる生活態度を咎められて逃走。
今度はバイト先の先輩のアパートに転がり込むも、ここでもトラブルを起こして逃走。
ついには東京で泊めてくれる者がいなくなり、仕方なく母親が一人で暮らす北海道は苫小牧へと逃げ帰ることになる。
故郷に戻ったはいいものの、母親は母親でヤバい問題を抱えていて、そこはもう裕一にとって安住の地ではない。
そして追い詰められたダメ男の前に、豊川悦司演じる父親の浩二が姿を表す。
かつて家族を捨て、今はほぼ世捨て人だという浩二に、抗えない血の繋がりを感じた裕一は、もっとダメ人間な父をメンターに、スマホの電源を切り、それまでの人生のあらゆる関係を断つ生活をはじめる。
しかし、誰とも関わらないと決めても、そう簡単にはいかない。
田舎町なんて、歩いているだけで周りは知った顔だらけ。
世捨て人のはずの父だって、借金している知り合いに会わないよう、逃げ回っているのが現実だ。
ずっと誰かに頼って生きてきて、めんどくさいことから顔を背けてきた裕一も、その生き方の究極形と言える、浩二の人生を見て覚悟を決めざるを得なくなる。
本作中で特徴的なのが、逃げる裕一が振り返るカット。
自分の過去から逃げても、どこかで気になって、振り返ってしまう。
とことんダメなんだけど、どこか人たらしのところがあって、憎まれ役になりきれない裕一役の藤ヶ谷太輔がいい。
やってることを考えれば普通に非共感キャラなんだが、確かに人とちゃんと向き合うってめんど臭い時もあるし、共感できる部分もあるよね?って匙加減が絶妙。
また豊川悦司の浩二のキャラクターは、彼が「ラストレター」で演じた阿藤に被るのが可笑しいが、もはやこの役者でなければ演じられないと思わされる怪演。
キャストは舞台からの続投組と、映画で新たにキャスティングされた者に別れるが、皆それぞれに最初から当て書きされたかの様に、ピタッとハマっている。
あらゆる問題から逃げ続けるダメ人間の、遅すぎる成長寓話としても面白いが、それだけでは終わらせない。
今までは他人と真剣な関係を築かなかったので、なあなあで許されて来たのだろうが、いざ変わろう決意した時点で、自分がしてきたことの代償を払わねばならない。
なるほど、劇中でなんとなく示唆されているものの、こう落とすとは読めなかった。
裕一ほどでないにしろ、一度くらいは対人関係で問題を抱えて、逃げたことは誰でもあるはず。
逃げながら振り返る藤ヶ谷太輔が、「だってしょうがないじゃん!お前ならどうするんだよ?」と問いかけてくる。
トンチの聞いた展開で、現実逃避した先にある、因果応報のシニカルな捻りも見事だ。
今回は苫小牧からも程近い栗山町の地酒、小林酒造の「北の誉 純米大吟醸」をチョイス。
北海道の酒米、「彗星」を精米歩合45%まで磨き上げた大吟醸。
飲み口は軽やかで、スッと喉に旨みが広がる。
大吟醸としては香りはさほどでもないが、しっかりとした造りでキレがあり、とても飲みやすい。

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フリーターの菅原裕一は、同棲して5年になる恋人・里美と些細なことで言い合いになり、家を飛び出してしまう。 親友、大学時代の先輩や後輩、姉のもとを渡り歩き、母が1人で暮らす北海道・苫小牧の実家へ辿り着くが、そこも居辛くなって雪降る街へ。 途方に暮れる裕一の前に、10年前に家を出て行った父が現れる…。 ヒューマンドラマ。
2023/01/28(土) 00:27:46 | 象のロケット
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