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仕掛人・藤枝梅安・・・・・評価額1650円
2023年02月10日 (金) | 編集 |
表と裏は紙一重。

昭和を代表する時代小説の巨匠・池波正太郎が創造した人気キャラクター、品川台町に住む人気の鍼医者にして、裏の顔は庶民の恨みを金で晴らすヒットマン、仕掛人・藤枝梅安の活躍を二部作として描く燻銀の娯楽時代劇。
色々と黒い噂のある料理屋の女将の仕掛を依頼されたことをきっかけに、江戸の闇に蠢く悪が燻り出される。
過去に緒形拳や萬屋錦之介、渡辺謙ら時代のスターたちが演じてきた梅安を、本作では豊川悦司が演じ、相方となる吹き矢を得意とする仕掛人・彦次郎に片岡愛之助。
菅野美穂、天海祐希、早乙女太一らが脇を固める。
前編では、小説の一冊目となった短編集「殺しの四人」のエピソードを、大森寿美男が巧みにミックスして脚色。
テレビで数々のドラマ演出を手がけ、映画監督としても「星になった少年 Shining Boy & Little Randy」などの作品があるベテラン、河毛俊作がメガホンを取った。
本作は池波正太郎生誕100年に向けたプロジェクトの第一弾で、4月には「仕掛人・藤枝梅安2」が、来年にはもう一つの代表作「鬼平犯科帳」が松本幸四郎主演で公開される予定だ。

藤枝梅安(豊川悦司)には、品川台町の腕のたつ針医者という昼の顔と、「蔓(つる)」と呼ばれる元締めから、金で悪人の殺しを請け負う仕掛人という二つの顔があった。
ある夜、仕掛人仲間でもある彦次郎(片岡愛之助)の家に泊まった梅安は、帰り道に凄腕の剣客・石川友五郎(早乙女太一)が襲ってくる刺客を切り捨てる現場を目撃する。
その後、梅安は蔓の羽沢の嘉兵衛(柳葉敏郎)から、人気の料理屋「万七」の女将・おみの(天海祐希)の仕掛を依頼される。
三年前、別の蔓の田中屋久兵衛から依頼され、万七の前の女将だったおしずを仕掛けたのは梅安だった。
よからぬ胸騒ぎを感じた梅安は、万七の女中のおもん(菅野美穂)と深い仲になり、店の内情を探る。
うわさ通り、おみのはなかなかの悪女らしい。
そんなある日、万七を訪れた梅安は、挨拶に来たおみのの顔を見て驚く。
おみのは、遠い昔に生き別れた母の若い頃に瓜二つだったのだ・・・・・


最近のチャラいTVの必殺シリーズとも、懐かしの緒形拳版とも別物だ。
どこまでもハード&ダークな、新たな仕掛人・梅安の物語。
タイトルロールの豊川悦司がいい。
この人、最近の「そして僕は途方に暮れる」でもそうだったが、強烈に懐の深い“怪優“になって来た。
人を生かす医者と人を屠る仕掛人という、正反対の二つの顔を持つ複雑なキャラクターにピッタリとハマる役者はそういない。
硬のトヨエツと軟の片岡愛之助との、仕掛人コンビの相性もいい感じだ。

しかし気になる点もある。
本作は、登場人物の過去の因縁が、やたら込み入っている。
その要因は複数の話を組み合わせて構成しているため、それぞれのエピソードごとの過去を描く必要があるからだ。
梅安と実の妹であるおみのの過去、かつて強盗だった時代の彦次郎とおみのの過去、はたまた3年前の仕掛を巡る梅安の過去、石川友五郎とお市が刺客に追われる原因となった過去。
全く違う話をシームレスに結合させている大森寿美男の技は素晴らしいのだが、結果的に回想説明要素が多くなり、134分の長尺に。
この辺りはもうちょっと整理して、テンポよく綴ってほしかったところ。
二部作ゆえに次回作で生かしてくるのかも知れないが、本作だけだとヒロインに当たる菅野美穂のキャラクターの位置付けも中途半端だ。

しかし、これらの欠点を補って余りあるのが、映像的な魅力
一見して本作は極端に彩度が低く、シーンによってはほとんどモノクロに見える部分も。
夜は明暗のコントラストを強調し、闇の中でフワッと浮かび上がるシルエットと滲む光を描く。
どこかで見たイメージだと思ったが、なるほどこれは葛飾応為の浮世絵の映像版だ。
原恵一監督のアニメーション映画「百日紅 〜Miss HOKUSAI〜」で、その若き日が描かれた北斎の娘にして天才の血を受け継いだ絵師、葛飾応為の作品は父親を含む同時代の浮世絵師の作品とはまるで異なっている。
作風は西洋絵画の影響を強く受け、特に晩年の作品ではペタッとした浮世絵とは違い、光と影のグラデーションで構成されて、闇の中から光と色彩が鮮やかに浮かび上がるのである。
偶然なのか、意図したものなのかは分からないが、本作の夜の映像設計は応為の作品に酷似しており、画的な未見性は本作の大きな魅力になっている。
まあ、クセは強くあえて深みを捨てているので、好みは別れると思うが。

また非常に印象的なのが、たっぷりと尺を取り繰り返し出てくる料理の描写だ。
無精なのか彦次郎は湯豆腐ばっかり食べているが、梅安は削り節と小葱の入ったお粥とか、凝った柚子入り年越し蕎麦とか、色々作っては彦次郎に奢る。
この料理に関しては彩度をくっきりさせているため、飯テロレベルに美味しそうで、「これ江戸グルメの映画だったっけ?」一瞬映画のジャンルが分からなくなるほど。
特に一番最初に作るお粥は、「帰ったら早速作ろう」と思ってしまった(笑
しかしこれらのホッコリとした食事のシーンが強調するのは、常に最後の晩餐を意識する、仕掛人の業なのである。

仕掛人が手にかけるのは、生かしておいては世間の為にならない悪人という縛りがある。
だが、三年前に梅安が仕掛たおしずは、仕事熱心ないい女将で、殺されるゆわれなど無い。
依頼人と仕掛人の間に蔓が入ることによって、両者は直接会わないというシステムを悪用され、梅安は要らぬ仕掛をしてしまったのである。
仕掛人は正義の味方などではなく、所詮金で雇われた人殺しに過ぎないという無情感が全編を貫き、悪者をやっつける仕掛のカタルシスなどは皆無。
製作母体が違うので当たり前だが、緒形拳版以後の「必殺」シリーズの定番となった、カッコいい名テーマ曲「荒野の果てに」もかからない。
浮かび上がるのは、正義も悪も表裏一体、仕掛る者、仕掛られる者、ちょっとしたことでどちらに転ぶのか分からない、人間の業の深さだ。
これぞ酸いも甘いも噛み分ける、大人の娯楽時代劇である。
一応二部作の前編だが、本作のみでもちゃんと完結していて、エンドクレジット後に4月公開の「仕掛人・藤枝梅安2」への長めのブリッジの映像あり。

とりあえず「レジェンド&バタフライ」に本作と、この時代に攻めた作りの時代劇が続けて出てくるのは嬉しい限りだ。
しかし、本作は典型的な「今、入らない邦画」だろう。
この種の時代劇は地方依存度が高いが、地方の劇場にはコロナ禍以降ターゲットの中高年層が戻っていない。
好評だし、都内だけだと結構入ってる様に見えるが、おそらく地方は全滅状態。
多くのミニシアター系作品も同様だけど、もう少し地方が盛り返さないと、日本の映画興行はヤバイままだろう。

今回は、江戸の地酒「屋守 純米 荒走り」をチョイス。
「金婚」で知られる東村山市久米川町の豊島屋酒造の四代目が、「東京の旨い酒を全国に発信したい」と20年ほど前に立ち上げた銘柄。
「荒走り」は、日本酒の最初の搾り部分を瓶詰めしたもの。
純米酒らしい米の香り、豊潤な旨味が詰め込まれ、なおかつ軽快さもあわせ持つのが特徴だ。
梅安の、美味しそうな江戸グルメと合わせてみたくなる。

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コメント
この記事へのコメント
トヨエツは何を演じても基本、トヨエツではあるのだけど、それでそれぞれ違和感ないのが面白いなあ。私のこの映画でのお気に入りは出たとたんに屑とわかる六角精児です。
2023/02/12(日) 16:38:56 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
トヨエツは歳とってドラマとかの主役をはれなくなってきた時に、一時期低迷してたけど、二番手三番手の役をやるようになってグッと深みを増したと思います。
この梅安は代表作の一つになり得るでしょう。
六角精児も何やっても同じだけどよかった。
2023/02/24(金) 21:43:31 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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江戸時代。 品川台町の藤枝梅安には、腕の良い鍼医者という表の顔と、人を殺める冷酷な“仕掛人”という裏の顔があった。 今回の標的は、料理屋・万七の内儀おみの。 しかし梅安は三年前にも、万七の前妻おしずの仕掛を依頼されていた。 梅安は万七の女中おもんから店の内情を聞き出すことに…。 時代劇。
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