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BLUE GIANT・・・・・評価学1750円
2023年02月24日 (金) | 編集 |
音が、光となって弾け飛ぶ!

めちゃくちゃ面白い。
仙台から上京し、世界一のテナーサックス奏者を目指す18歳の宮本大と、熱い音楽仲間たちの濃厚すぎる1年半の物語。
2013年から2016年にかけてビッグコミックで連載され、現在も続編シリーズが進行中の石塚真一のベストセラージャズ漫画を、「名探偵コナン ゼロの執行人」の立川譲監督でアニメーション映画化した作品だ。
当然音楽が重要になるが、漫画では想像するしかないオリジナル曲を、ジャズピアニストの上原ひろみが作曲。
劇中のトリオ「The JASS」の演奏を上原(ピアノ)、馬場智章(サックス)、石若駿(ドラム)が担当しパワフルな演奏を聴かせ、山田裕貴、間宮祥太朗、岡山天音ら若手人気俳優がキャラクターVCを務める。
情熱のブルーが迸る、日本映画では珍しい音楽映画の傑作だ!

世界一のサックス奏者を夢見る宮本大(山田裕貴)は、故郷の仙台の高校を卒業すると上京し、同郷の大学生 玉田俊二(岡山天音)のアパートに居候。
右も左も分からない東京で、一緒に演奏する仲間を探す。
ある日、寂れたジャズバー「TAKE TWO」のオーナー、アキコ(木下紗華)に紹介されてライブハウスを訪れた大は、同い年の凄腕ピアノマン、沢辺雪祈(間宮祥太朗)と出会う。
二人に触発された俊二がドラムをはじめ、素人ながらなんとか形になってくると、三人はトリオ「The JASS」を結成。
当初は演奏できる場所すら見つかなかったが、個性の違う三人の演奏が化学反応を生み、The JASSは瞬く間に東京のジャズシーンを駆け登ってゆく。
やがて彼らは、日本最高峰の名門ジャズクラブ「SO BLUE」への、10代のうちの出演を目指すようになり、雪祈が関係先のツテを頼って、SO BLUEの責任者に演奏を見に来てもらうが、手痛いダメ出しをされてしまう・・・


若い頃、米国でとあるインディーズ映画の撮影に参加した時のこと。
出演者が日本人のミュージシャンだったのだが、ロケ先の米国人関係者も実はアマチュアのミュージシャン。
日本人のキャストは英語があまり上手くなく、撮影が終わってたどたどしく歓談している時「お前の楽器いいね」という感じでどちらかともなく演奏が始まり、いつの間にかセッションに。
言葉で話していた時とは全く違って、みんな水を得た魚の如く自由に音を響かせていて、スタッフも皆聞き入っていた。
私は小学校の頃のリコーダーの演奏会で、「君は音出さなくていいから」と言われたくらい楽器が出来ないので、だんだんと熱気を帯びてゆくセッションを見て「ああ、共通言語のあるミュージシャンていいなあ」と思ったものだ。

本作のキャラクターも、言葉よりもまず音楽。
東京という未知の世界にやって来た大は、ライブハウスの演奏で雪祈のピアノに魅了され、いきなり「俺と組もう」と誘う。
それに対する雪祈のアンサーも、「まずは聴かせろ」なのである。
彼らはお互いの音を聴くことで、普通の会話からよりもずっと多くのインフォメーションを得ているのだ。
ど素人だった俊二もまた、大の演奏を聴いて音楽の魅力に目覚めて、いつしか仲間に。
映画の序盤は、トリオ「The JASS」結成から彼らが徐々に才能を開花させてゆくプロセス。
三人の中で中心となるのはサックスの大だが、彼は最初から最後まで全くぶれないキャラクターで、もちろん奏者としての成長はあるものの、基本変化しない狂言回し的なキャラクター。
作中で変化してテーマを伝える物語的な主人公はあとの二人、特に最初からある程度完成している雪祈なのである。

SO BLUEの責任者が見守るステージで、大のサックスと俊二のドラムは合格点をもらったものの、雪祈のピアノは酷評される。
曰く「小手先の技術だけで弾いている」と。
音楽家の家に生まれ、トリオの中で最もキャリアが長い雪祈は、自分の音楽の本質がどこにあるのか、いつしか見失っている。
物語の後半になると大がやや引っ込み、スランプの雪祈がブレイクスルーを果たすまでの葛藤が前面に出る形で物語が展開し、The JASSの刹那的な栄光と悲劇とその先の怒涛のクライマックスへと突き進む。

それにしても、原作のストーリーディレクターを務め、映画化に当たってこれほどクオリティの高い脚本をモノにした“NUMBER 8”って何者?と思ったら、原作の連載開始時からの担当編集者だとか。
「MASTERキートン」の長崎尚志パターンだけど、日本の漫画編集者って作者顔負けのクリエイティブの才能を持つ人も結構いるのだな。
こういう人たちが、世界市場の8割を占めると言われる、巨大な漫画産業を支えているのかも知れない。
まあ、ちょっととんとん拍子に進みすぎの気もするが、10巻の漫画を2時間にまとめてるので多少のダイジェスト感は致し方あるまい。
ちなみに原作は未読だが、クライマックスのSO BLUEに集った観客たちには、それぞれドラマがあるのだろうなとは思った。
その意味で、読んでた方が深く楽しめるのだろうが、とりあえず本作単体で観ても特に問題は無い親切な作り。

クライマックスを含めて、とにかく演奏シーンのクオリティが高く、非常に聞き応えのある作品なので、音響のいい劇場での鑑賞は必須。
テレビのしょぼいスピーカーじゃ魅力半減で、これこそ劇場で観るべき作品だ。
思いの丈を全てぶつけるようなパワープレイで聴かせる大のサックス、キャリアが浅いが故に必死に叩く俊二のドラム、そして華麗なテクニックを見せつける雪祈のピアノと、トリオならではの個性も見事に表現されている。
もちろん映画なので、それぞれの音を視覚化する映像も、漫画がそのまま動き出したようなものから、抽象アニメーション風、果ては「インターステラー」に出てきたようなブラックホールみたいな表現まで、実に多彩。
音が光となって溢れ出す描写もカッコよく、最後まで聴き惚れた。

素晴らしい作品だが、唯一ちょっと残念に思ったのが演奏シーンのCG表現。
全部がそうではないのだが、明らかに質感が他の部分から浮いているカットが多々ある。
本作のCGは技術的文脈で言えば「THE FIRST SLAM DUNK」と同じ。
私も楽器の演奏シーンのあるアニメーション作品に参加したことがあるが、実際の演奏と合わせるのがすごく大変で、これを手描きでやれなかったのは仕方がないと思うけど、該当カットをもうちょっと馴染ませられなかったか。
しかし、多少の欠点を補って余りある、圧巻の映像&音楽を存分に味わえる傑作であることは間違いない。
エンドクレジット後にも重要なシーンがあり、ここがないと実質オチにならないので、あわてて席を立たないように。

今回は、「ブルームーン」をチョイス。
ドライ・ジン30ml、クレーム・ド・バイオレット15ml、レモンジュース15mlをシェイクしてグラスに注ぐ。
「ブルームーン」はビリー・ホリデーはじめ、多くの歌手が歌った名曲のタイトルでもあり、ブルート言いつつ、実は幻想的な淡いパープルカラーのカクテルだ。
見た目にも涼し気だが、ジンの雑味のない華やかさとレモンの酸味もクールさを引き立てる。
「BLUE GIANT」の強烈な熱気は、「BLUE MOON」で冷まそう。

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コメント
この記事へのコメント
この映画を試しに新橋文化で見てみたかった気もする。
2023/03/28(火) 10:22:26 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
まあジャジーなムードはある。音はあんま良くなかったけど。
2023/04/02(日) 20:55:24 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
晩年の新橋文化で「ストリート・オブ・ファイヤー」を見たんですが、台無し感がちょっと凄かったです。
2023/04/04(火) 09:26:29 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
それは退廃感という意味で合ってるのではw
2023/04/10(月) 21:20:34 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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楽譜も読めずジャズの知識もないまま全力でテナーサックスを吹いてきた宮本大(ミヤモトダイ)、幼い頃からピアノに全てを捧げてきた沢辺雪祈(サワベユキノリ)、ドラム初心者の玉田俊二(タマダシュンジ)。 共に18歳の3人は、“JASS”というジャズバンドを結成することに…。 アニメーション。 ≪二度とないこの瞬間を 全力で鳴らせ≫
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