fc2ブログ
酒を呑んで映画を観る時間が一番幸せ・・・と思うので、酒と映画をテーマに日記を書いていきます。 映画の評価額は幾らまでなら納得して出せるかで、レイトショー価格1200円から+-が基準で、1800円が満点です。ネット配信オンリーの作品は★5つが満点。
■ お知らせ
※基本的にネタバレありです。ご注意ください。
※当ブログはリンクフリーです。内容の無断転載はお断りいたします。
※ブログ環境の相性によっては、TB・コメントのお返事が出来ない事があります。ご了承ください
エロ・グロ・出会い系のTB及びコメントは、削除の上直ちにブログ管理会社に通報させていただきます。 また記事と無関係なTBもお断りいたします。 また、関係があってもアフェリエイト、アダルトへの誘導など不適切と判断したTBは削除いたします。

■TITLE INDEX
タイトルインディックスを作りました。こちらからご利用ください。
■ ツイッターアカウント
noraneko285でつぶやいてます。ブログで書いてない映画の話なども。
■ FILMARKSアカウント
noraneko285ツイッターでつぶやいた全作品をアーカイブしています。
フェイブルマンズ・・・・・評価額1800円
2023年03月06日 (月) | 編集 |
スピルバーグの作り方。

作った作品の総興行収入が100億ドルを超え、三度のアカデミー賞に輝いた、歴史上最も成功した映画監督、スティーヴン・スピルバーグが自らの少年時代をモチーフとして描く自伝的作品
5歳の時に映画と出会い、たちまち魅了されると父の8ミリカメラを使い、妹たちを役者にして自分の映画を撮り始める。
ピアニストの母と、コンピューターエンジニアリングの先駆者だった父、芸術と科学が出会う家庭で、映画の子はその才能を開花させてゆく。
しかし映画は、盤石に見えた家族に生じた小さな亀裂をも、写し取ってしまうのだ。
ミッシェル・ウイリアムズとポール・ダノが両親を演じ、スピルバーグの分身であるサミー役にはガブリエル・ラベル。
共同脚本のトニー・クシュナー、撮影監督のヤヌス・カミンスキー、音楽のジョン・ウィリアムズら、スピルバーグ組が結集。
これは70代の老年期を迎えたスピルバーグが、今の自分を形作っている“ファミリー”の面々、特に亡き両親に溢れんばかりの愛を捧げ、スピルバーグ家改めフェイブルマン家の人々を描くラブレターだ。

1952年1月10日、ニュージャージー州ハドン。
5歳のサミー・フェイブルマン(ガブリエル・ラベル/マテオ・ゾリアン・フランシス・デフォード)は、母のミッツィ(ミシェル・ウィリアムズ)と父のバート(ポール・ダノ)に連れられて、人生で初めての「映画」を観に来ていた。
セシル・B・デミル監督の「地上最大のショウ」の列車の衝突シーンに驚いたサミーは、父にねだって電気で動く列車のオモチャを買い、それを衝突させる遊びにのめり込んでゆく。
ある時、ミッツィがバートの8ミリカメラでそれを撮影したことで、サミーは初めて自分だけの映画を手に入れる。
やがて、コンピューターエンジニアのバートが親友のベニー(セス・ローゲン)と共にRCAからGEに転職し、一家はアリゾナ州へ移り住む。
ボーイスカウトに入ったサミーは映画作りに夢中になり、ジョン・フォードの「リバティ・バランスを撃った男」に触発された西武劇を、次は数十人ものエキストラを動員した本格的な戦争映画と次々と作品を作り出す。
しかし、バートがミッツィの反対を押し切って、カリフォルニアのIBMに転職を決めた夏、一家とベニーでキャンプに行った時の映像を編集していた時、サミーはあることに気付いてしまう・・・


映画監督が自分の幼少期、あるいは青春期を語る。
古くは「フェリーニのアマルコルド」、最近ではケネス・ブラナーの撮った「ベルファスト」まで、数々の秀作の隊列に、ついにスピルバーグが加わった。
しかも本作には、過去の類似作とは決定的に違うことがある。
多くの作品では、主人公はごく普通の生活を送っていて、日常の中で起こる小さな葛藤が、その後の作家性を形作っているのがなんとなく分かる。
しかしこの人は、子供の頃から8ミリカメラを使いこなしていたという、文字通りの映画の申し子なのだ。
彼の人生は映画作家としての成長と不可分で、まさに「映画監督スティーヴン・スピルバーグが出来るまで」の物語となっている。

5歳で「地上最大のショウ」のミニチュアの列車の衝突シーンに魅了され、映画と出会う。
列車のオモチャを衝突させる遊びを通じて、現実でないものも現実にしてしまう映画の魔法を知る。
物語の前半は父の転職で引っ越したアリゾナで、ボーイスカウト仲間と8ミリ映画作りに邁進し、着々とスキルを上げてゆくサミー少年が生き生きと描かれる。
サミーが表現するにあたって何かを掴んでゆく描写が、後にスピルバーグが作る数々の映画に反映されていて、それが観客との共有体験になっているのがなんとも素敵だ。
高校生の頃に作ろうとしている戦争映画の絵コンテが出てくるのだが、スピルバーグは絵が下手で有名。
小道具のコンテは画風がそのまんまなので、多分本人が描いているんじゃないだろうか。
まあ細かい描写を含めて、スピルバーグ映画のファンほど楽しめるのは間違いないだろう。
物語の中盤までは既に伝説化され、よく知られたエピソードも多いのだが、お母さんの秘密を知ってしまうあたりから、少しずつ両親絡みのエピソードが増えてゆく。

この映画の企画を、スピルバーグが初めて立ち上げたのは20年以上前のことだという。
当時はペニー・マーシャル監督、トム・ハンクス主演の「ビッグ」の脚本家でもある、スピルバーグの妹アン(本作ではジュリア・バターズが演じた眼鏡っ子のレジー)が「I’ll Be Home」というタイトルで脚本を執筆。
だが映画を観た方ならお分かりだろうが、かなりセンシティブな内容を含むために、両親を傷つけてしまうのではないか?と悩んだスピルバーグは企画をお蔵入りさせた。
その後、母のリアが2017年に97歳で亡くなり、父のアーノルドも2020年に103歳という大往生を遂げた。
ちょうどコロナ禍のロックダウンが始まり、今本当に語りたい物語は何か?と自問自答したことで、再び企画が動いだす。
スピルバーグも70代となって、いろいろ思うところもあったのだろう。
彼は餅は餅屋で滅多に脚本を書かない人(脚本でクレジットされるのは「A.I.」以来21年ぶり)だが、盟友のトニー・クシュナーと組んで自らの物語を紡ぎ出す。
登場人物の名前を変えたのは、ほぼ実話だがフィクションの要素もあるということで、ドイツ語で寓話の意味を持つ「fable」から「Fabelman」としたそうだ。

本作の中で、サミーにとってユニークな助言をするのが、ジャド・ハーシュ演じるボリス伯父さん。
サーカスのライオン使いで、映画界でも活動しているという変わり者で、親戚の中でもちょっと怖がられているのだが、彼がアーティストとしての心得を教えてくれる。
芸術と家族、どちらも大切なものだが、いずれ心の中で引き裂かれる
もしサミーが芸術家としての道を選ぶのなら、覚悟が必要だと。
映画との出会いとなった「地上最大のショウ」がサーカスの話だし、この人のことは聞いたことが無かったのでメタファー的なキャラクターかと思っていたら、ちゃんとモデルがいるらしい。
とことんユニークな家系なんだな。
しかしボリスの預言通り、サミーは映画を撮ったことで、家族の亀裂に気付いてしまうのだ。
家族旅行の編集をしていたサミーは、背景に映るミッツィとベニーのただならぬ親密さに心を乱される。
人は態度を取り繕うが、フィルムは嘘をつかない
やがてごく小さかった亀裂は顕在化し、両親の離婚に繋がってしまう。

思春期真っ只中のサミーは、大きなショックを受ける。
もし自分が映画を撮っていなかったら?気付いたことをミッツイに告げなかったら?もしかすると亀裂は隠れたままで、最愛の両親の別離はなかったのではないか。
悩める少年の家族に対する想いと、映画を撮りたいという情熱がバッティングし、終盤はカリフォルニアを舞台とする高校最終学年編。
ジレンマに陥り映画作りは一旦封印するも、ここでは反ユダヤ主義のイジメという新たな問題に見舞われる。
もっとも、ギークのくせにすぐに彼女が出来たり、割とリア充だったりするので「ちょっと盛ってない?」と思ってしまった(笑
結局映画からは逃れられず、 高校のイベントの記録映画を撮ることになるが、プロムの日の上映会で、サミーをイジメていたジョックの生徒が彼の“演出”に打ちのめされるあたり、なかなか深い。
映画は撮り方、見せ方によっては、残酷な武器となるのだ。

そして映画界入り前後のエピローグでは、ある超大物監督(演じるはなんとデヴィッド・リンチ!)との出会いが描かれる。
彼とのごく短い会話でも、かつてボリスから聞かされた芸術家の業とも言うべき覚悟の話が出るが、いきなり「監督として覚えておかなければいけないこと」を助言される。
これは完全に実話だそうだが、この直後に描かれるスピルバーグ一流の遊び心溢れるラストカットに注目してほしい。
70代を迎えた映画監督の自伝というと、終活的な匂いを感じ取る向きも多いだろうが、これはむしろ「物語は終わらない!」という力強い宣言だ。
両親が亡くなった年齢を見ても、どうやらスピルバーグ家は長寿の家系らしく、これからもまだまだ楽しませてくれるだろう。

しかし天才が花開くには、やっぱり家庭環境はとても重要だなと感じた。
お父さんの科学的思考と、好きなものに対するギークな集中力。
お母さんの芸術的才能と、子供の自由な感受性に対する寛容、どちらが欠けても、サミーはこれほど早く才能を開花させることは出来なかっただろう。
その意味で、やっぱり彼は二人の作品なのだな。
一人の天才の原点としての映画との出会いから始まる物語は、最終的に人生と家族に関する、ミニマムだが普遍的な一代記となり、大いなる共感に包まれるのである。

今回は、スピルバーグとも長年の親交があるコッポラのワイナリーが作る、その名も「シャルドネ "ディレクターズ カット" ルシアン リバー ヴァレー」をチョイス。
すっきりとした喉越しの、辛口の白。
フルーティー&スパイシーな香りが広がり、とても飲みやすい。
映画好きにはコッポラのプロダクション名にもなっている、ゾートロープをモチーフとしたボトルデザインもたまらない。
聞くところによると、コッポラは新作の「Megalopolis」の制作費を捻出するために、ワイナリーの権利をほとんど売ってしまったようだが、大丈夫なんだろうか。

ランキングバナー 
記事が気に入ったらクリックしてね






スポンサーサイト




コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
初めて映画館を訪れ映画に夢中になった少年サミー・フェイブルマンは、8ミリカメラを手に家族の休暇や旅行の記録係となり、妹や友人たちが出演する作品を制作する。 そんなサミーを芸術家の母は応援するが、科学者の父は不真面目な趣味だと考えていた。 そんな中、一家は西部へ引っ越すことに…。 映画監督スティーブン・スピルバーグの自伝的物語。
2023/03/07(火) 23:16:04 | 象のロケット