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2023年03月16日 (木) | 編集 |
同じ星の人は、きっといる。
昨年、オリジナル脚本による味わい深い会話劇の傑作「窓辺にて」を作り出し、演出家として脂の乗った円熟期を迎えている今泉力哉。
安田弘之の同名漫画を原作とした本作も、素晴らしい仕上がりだ。
有村架純演じる主人公は、海辺の街にある「のこのこ弁当」で働く“ちひろ”さん。
彼女には、ほとんど執着心が無い。
もちろん食欲や性欲みたいな生物として当たり前の欲求は普通にあり、心と体が満たされることは楽しむ。
しかしこの世の全ては移ろいゆく儚いものだという、まるで仙人のような世界観を持っている。
ちひろさんにとっては恋愛も仕事も、家族すら人生を通り過ぎてゆく存在。
今の自分に対しても執着が無いので、元風俗嬢という過去も隠さない。
そんな彼女の周りには、様々な問題を抱えた人たちが集まってくるのだが、ちひろさんは彼・彼女らにあくまでも人として出来ることだけする。
ホームレスのおじさんには(たぶんちょっと臭かったのだろう)お風呂をすすめて、悩みを抱えた高校生には静かな居場所を紹介し、ひとり親でお腹を空かせた子供にはご飯を。
決してズカズカと心の中に踏み込みようなことはせず、人々はちひろさんとの緩い交流を通して、ほんの少しだけ変わってゆく。
この作家らしいゆったりとした時間の流れの中で、やがて少しずつ彼女自身の問題が見えてくる。
彼女はなぜ、こんな変わった人格になったのか。
“ちひろ”という名前も風俗嬢の時の源氏名で、現在の時系列で彼女が本名で交流するのはたった一人しかいないのだ。
彼女が働いていた風俗店で、あるお客さんが「僕たちは皆、人間っていう箱に入った宇宙人なんだ」という話をする。
誰もが同じ地球人だと思えば、「なぜ分かり合えないんだ」という気持ちが出てくるが、最初から皆別の星の人だと考えれば、「ああ、分からなくて当然だよね」という気持ちになる。
でも、この世界のどこかには、同じ星の人がいるかも知れない。
空っぽの箱に見えるちひろさんの奥底には、本名の彼女がひっそりと存在しているが、響き合う同じ星の人にはまだ出会えていないのだ。
だからちひろさんは人と出会った時、ある程度相手を分かる努力をするけど、一定以上は遠慮して相手との違いを尊重して距離を取る。
普通の感覚だとちょっと寂しい人生な気もするが、彼女にとってはそれが心地いい関係なのだろう。
本作を観ていて、流浪のちひろさんのキャラクターが、なんとなく寅さんに重なった。
寅さんの場合は人恋しくて、人を求めて、でもそれが叶わなくてという切なさがあったが、彼女はまだそこまで人に対して心を許せていない。
それでも、彼女自身もほんのちょっとずつ変わっていっている。
これは過去に色々あって、虚構の名前に隠れている本当の彼女が、人生の気づきをもらう物語。
ある登場人物が、ちひろさんに「あなたなら、どこにいても孤独を手放さずにいられる」という言葉を送る。
何かの結果として残念な孤独になってしまうのではなく、彼女は自分の能動的選択として幸せな孤独を選んでいる。
これを尊重できる人はなかなかいないだろうけど、まあいつかはちひろさんも同じ星の人にも出会えるだろう。
たまに出てくるネコがとてもかわいい。
前作に引き続き、素晴らしい傑作となった。
今回はロケ地となった焼津の地酒で1830年創業の老舗、磯自慢酒造の「磯自慢 特別純米 雄町53% 」をチョイス。
名前の通り雄町米を大吟醸並みの53%精米した純米酒。
フルーティーで自然な香りがフワッと立ち上がり、お米の旨味が喉に染み込む。
クセはなく、コクもありながらキレもいい、磯の食材にピッタリの辛口の酒だ。
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昨年、オリジナル脚本による味わい深い会話劇の傑作「窓辺にて」を作り出し、演出家として脂の乗った円熟期を迎えている今泉力哉。
安田弘之の同名漫画を原作とした本作も、素晴らしい仕上がりだ。
有村架純演じる主人公は、海辺の街にある「のこのこ弁当」で働く“ちひろ”さん。
彼女には、ほとんど執着心が無い。
もちろん食欲や性欲みたいな生物として当たり前の欲求は普通にあり、心と体が満たされることは楽しむ。
しかしこの世の全ては移ろいゆく儚いものだという、まるで仙人のような世界観を持っている。
ちひろさんにとっては恋愛も仕事も、家族すら人生を通り過ぎてゆく存在。
今の自分に対しても執着が無いので、元風俗嬢という過去も隠さない。
そんな彼女の周りには、様々な問題を抱えた人たちが集まってくるのだが、ちひろさんは彼・彼女らにあくまでも人として出来ることだけする。
ホームレスのおじさんには(たぶんちょっと臭かったのだろう)お風呂をすすめて、悩みを抱えた高校生には静かな居場所を紹介し、ひとり親でお腹を空かせた子供にはご飯を。
決してズカズカと心の中に踏み込みようなことはせず、人々はちひろさんとの緩い交流を通して、ほんの少しだけ変わってゆく。
この作家らしいゆったりとした時間の流れの中で、やがて少しずつ彼女自身の問題が見えてくる。
彼女はなぜ、こんな変わった人格になったのか。
“ちひろ”という名前も風俗嬢の時の源氏名で、現在の時系列で彼女が本名で交流するのはたった一人しかいないのだ。
彼女が働いていた風俗店で、あるお客さんが「僕たちは皆、人間っていう箱に入った宇宙人なんだ」という話をする。
誰もが同じ地球人だと思えば、「なぜ分かり合えないんだ」という気持ちが出てくるが、最初から皆別の星の人だと考えれば、「ああ、分からなくて当然だよね」という気持ちになる。
でも、この世界のどこかには、同じ星の人がいるかも知れない。
空っぽの箱に見えるちひろさんの奥底には、本名の彼女がひっそりと存在しているが、響き合う同じ星の人にはまだ出会えていないのだ。
だからちひろさんは人と出会った時、ある程度相手を分かる努力をするけど、一定以上は遠慮して相手との違いを尊重して距離を取る。
普通の感覚だとちょっと寂しい人生な気もするが、彼女にとってはそれが心地いい関係なのだろう。
本作を観ていて、流浪のちひろさんのキャラクターが、なんとなく寅さんに重なった。
寅さんの場合は人恋しくて、人を求めて、でもそれが叶わなくてという切なさがあったが、彼女はまだそこまで人に対して心を許せていない。
それでも、彼女自身もほんのちょっとずつ変わっていっている。
これは過去に色々あって、虚構の名前に隠れている本当の彼女が、人生の気づきをもらう物語。
ある登場人物が、ちひろさんに「あなたなら、どこにいても孤独を手放さずにいられる」という言葉を送る。
何かの結果として残念な孤独になってしまうのではなく、彼女は自分の能動的選択として幸せな孤独を選んでいる。
これを尊重できる人はなかなかいないだろうけど、まあいつかはちひろさんも同じ星の人にも出会えるだろう。
たまに出てくるネコがとてもかわいい。
前作に引き続き、素晴らしい傑作となった。
今回はロケ地となった焼津の地酒で1830年創業の老舗、磯自慢酒造の「磯自慢 特別純米 雄町53% 」をチョイス。
名前の通り雄町米を大吟醸並みの53%精米した純米酒。
フルーティーで自然な香りがフワッと立ち上がり、お米の旨味が喉に染み込む。
クセはなく、コクもありながらキレもいい、磯の食材にピッタリの辛口の酒だ。

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海辺の小さな街にある弁当屋で働いている、元・風俗嬢ちひろ。 彼女はその過去を隠そうともせず、誰に対しても分け隔てなく接していた。 そんなちひろの周りには、孤独を抱えた人々が吸い寄せられるように集まって来る。 ちひろ自身も孤独を抱えており、街での暮らしにも波があり心が揺れ動いていく…。 ヒューマンドラマ。 ≪さみしさも。 よろこびも。 心のままに生きていく。≫ PG-12
2023/03/18(土) 23:07:48 | 象のロケット
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