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2023年03月30日 (木) | 編集 |
理想の父親の姿とは。
認知症患者の視点で世界を描いた傑作、「ファーザー」のフロリアン・ゼレールが描く、もう一つの親子の物語。
ヒュー・ジャックマン演じる敏腕弁護士のピーターは、ニューヨークで妻のベスと生まれたばかりの息子を育てている。
仕事も順調でキャリアアップに繋がるオファーも受けており、人生は順風満帆。
そんな時、別れた妻のケイトから、17歳の息子ニコラスの異変を知らされる。
ニコラスはもう1ヶ月も学校に行っておらず、ケイトとは会話がほとんど成立しないので原因も分からない。
でも、彼の中で確実に何かが起こっている。
ピーターは一時的にニコラスを引き取り、父親として彼を心の闇から救い出そうと奮闘する。
本作は「ファーザー」の前日譚として書かれたゼレールの戯曲、「Le Fils(息子)」を原作としており、撮影監督のベン・スミサードや編集のヨルゴス・ランプリノスらスタッフの多くも続投。
ただピーターの父を演じるアンソニー・ホプキンスの役名は、どちらの映画でも“アンソニー”ではあるのだが、二人が同一人物なのかは明示されない。
このことからも分かるように、タイトルの「The Son 息子」には二重の意味がある。
ピーターはアンソニーにとっては息子だが、ニコラスにとってはたった一人の父なのだ。
家庭を顧みない厳格で傲慢なアンソニーの元で育ったピーターは、わだかまりを引きずる父を反面教師として理想の父親として振る舞おうとする。
オファーされていた選挙参謀の仕事も断り、息子の理解者として寄り添おうとすることで、自分はアンソニーとは違うと示そうとするのだ。
だが彼の決意は、意欲とは裏腹に空回りし続ける。
ニューヨークに引き取って、しばらくは上手くいっているように見える。
ニコラスは何も語らないが、異変の原因が元の学校で起こった何かだと考えたピーターは、学校を変われば元に戻ると思っている。
実際、新しい学校に通いだしたニコラスは、徐々に“普通”を取り戻している様に見える。
だが全ては虚像なのである。
思春期の心に巣食う闇は、想像以上に深く手強い。
実はニコラスは新しい学校には行っておらず、ベッドのマットレスの下にはナイフを隠して、自傷行為を繰り返している。
ついに彼は、医師から「急性うつ病」という病名を診断される。
本作が切ないのは、誰も悪くないこと。
登場人物の全員が、良かれと思って出来ることを全てやる。
でも、どうしても上手く行かない。
愛は人と人の繋がりの上で、とても重要な感情だが、愛で全ては救えない。
中盤に作劇用語でいう「チェーホフの銃」が、まんまの形で出てくる。
物語の中で登場させた要素は、必ず使わなければならないという原則だが、ほとんどの人は銃の存在が明かされた時点で、最悪の結末を想像したはず。
しかも本作が憎いのは、終盤にあるユニークな工夫をした上で落とすこと。
私はあそこで心底ホッとしたので、ますますキツく感じた。
親子と言っても所詮は他人で、心のうちは分からない。
自分の理想を追求しても、そもそも求めているものが皆違う。
主演のヒュー・ジャックマンが素晴らしく、とてもいい映画なのだが、同時にひどくやるせない話でもあり、心を容赦なく抉ってくるのから、観るなら精神状態がいい時にするべき。
本作を「ファーザー」の前日譚と捉えると、傲慢に開き直った20世紀の父親が、数年後には死ぬまで出られない心の迷宮に落ちるのも皮肉だ。
ところで、本作の原作「Le Fils(息子)」は、ゼレールの戯曲シリーズ「家族三部作」の最終章。
第二部に当たるのが「ファーザー」の原作「Le Père(父)」で、第一部の「La Mère(母)」のみ未映画化。
映画は第三部として「マザー」をやるのだろうか?
今回は、ビターな映画に合わせて、甘酸っぱくほろ苦いカクテル「ニューヨーク」をチョイス。
ライまたはバーボンウィスキー45ml、ライムジュース15ml、グレナデン・シロップ1/2tsp、砂糖1tspをシェイクしてグラスに注ぎ、オレンジピールを絞りかけて完成。
ウィスキーのコクとライムの酸味がバランスし、グレナデン・シロップと砂糖のほのかな甘味がアクセント。
成熟した大人のためのカクテルだ。
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認知症患者の視点で世界を描いた傑作、「ファーザー」のフロリアン・ゼレールが描く、もう一つの親子の物語。
ヒュー・ジャックマン演じる敏腕弁護士のピーターは、ニューヨークで妻のベスと生まれたばかりの息子を育てている。
仕事も順調でキャリアアップに繋がるオファーも受けており、人生は順風満帆。
そんな時、別れた妻のケイトから、17歳の息子ニコラスの異変を知らされる。
ニコラスはもう1ヶ月も学校に行っておらず、ケイトとは会話がほとんど成立しないので原因も分からない。
でも、彼の中で確実に何かが起こっている。
ピーターは一時的にニコラスを引き取り、父親として彼を心の闇から救い出そうと奮闘する。
本作は「ファーザー」の前日譚として書かれたゼレールの戯曲、「Le Fils(息子)」を原作としており、撮影監督のベン・スミサードや編集のヨルゴス・ランプリノスらスタッフの多くも続投。
ただピーターの父を演じるアンソニー・ホプキンスの役名は、どちらの映画でも“アンソニー”ではあるのだが、二人が同一人物なのかは明示されない。
このことからも分かるように、タイトルの「The Son 息子」には二重の意味がある。
ピーターはアンソニーにとっては息子だが、ニコラスにとってはたった一人の父なのだ。
家庭を顧みない厳格で傲慢なアンソニーの元で育ったピーターは、わだかまりを引きずる父を反面教師として理想の父親として振る舞おうとする。
オファーされていた選挙参謀の仕事も断り、息子の理解者として寄り添おうとすることで、自分はアンソニーとは違うと示そうとするのだ。
だが彼の決意は、意欲とは裏腹に空回りし続ける。
ニューヨークに引き取って、しばらくは上手くいっているように見える。
ニコラスは何も語らないが、異変の原因が元の学校で起こった何かだと考えたピーターは、学校を変われば元に戻ると思っている。
実際、新しい学校に通いだしたニコラスは、徐々に“普通”を取り戻している様に見える。
だが全ては虚像なのである。
思春期の心に巣食う闇は、想像以上に深く手強い。
実はニコラスは新しい学校には行っておらず、ベッドのマットレスの下にはナイフを隠して、自傷行為を繰り返している。
ついに彼は、医師から「急性うつ病」という病名を診断される。
本作が切ないのは、誰も悪くないこと。
登場人物の全員が、良かれと思って出来ることを全てやる。
でも、どうしても上手く行かない。
愛は人と人の繋がりの上で、とても重要な感情だが、愛で全ては救えない。
中盤に作劇用語でいう「チェーホフの銃」が、まんまの形で出てくる。
物語の中で登場させた要素は、必ず使わなければならないという原則だが、ほとんどの人は銃の存在が明かされた時点で、最悪の結末を想像したはず。
しかも本作が憎いのは、終盤にあるユニークな工夫をした上で落とすこと。
私はあそこで心底ホッとしたので、ますますキツく感じた。
親子と言っても所詮は他人で、心のうちは分からない。
自分の理想を追求しても、そもそも求めているものが皆違う。
主演のヒュー・ジャックマンが素晴らしく、とてもいい映画なのだが、同時にひどくやるせない話でもあり、心を容赦なく抉ってくるのから、観るなら精神状態がいい時にするべき。
本作を「ファーザー」の前日譚と捉えると、傲慢に開き直った20世紀の父親が、数年後には死ぬまで出られない心の迷宮に落ちるのも皮肉だ。
ところで、本作の原作「Le Fils(息子)」は、ゼレールの戯曲シリーズ「家族三部作」の最終章。
第二部に当たるのが「ファーザー」の原作「Le Père(父)」で、第一部の「La Mère(母)」のみ未映画化。
映画は第三部として「マザー」をやるのだろうか?
今回は、ビターな映画に合わせて、甘酸っぱくほろ苦いカクテル「ニューヨーク」をチョイス。
ライまたはバーボンウィスキー45ml、ライムジュース15ml、グレナデン・シロップ1/2tsp、砂糖1tspをシェイクしてグラスに注ぎ、オレンジピールを絞りかけて完成。
ウィスキーのコクとライムの酸味がバランスし、グレナデン・シロップと砂糖のほのかな甘味がアクセント。
成熟した大人のためのカクテルだ。

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再婚し子供が生まれたばかりの弁護士ピーターは仕事にも恵まれ、順風満帆な人生を送っていた。 ある日、前妻ケイトと暮らしていた17歳の息子ニコラスが、父親の家に引っ越したいと訴えてくる。 ニコラスは学校へも行かず、心に病を抱えていたのだった。 ピーターと新しい妻ベスは同居を受け入れ、ニコラスは安定してきたように思えたが…。 ヒューマンドラマ。
2023/04/03(月) 08:03:23 | 象のロケット
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