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2023年04月26日 (水) | 編集 |
世界は優しくないけれど。
うう、メルヘンなタイトルに騙された・・・こんなしんどい内容だったとは。
共感力が強すぎるがゆえ、社会との距離感が掴めず、生きづらさを抱えた若者たちを描いた大前粟生の同名小説を、これが長編デビュー作となる金子由里奈監督が映画化した作品。
細田佳央太が演じる主人公の七森剛志は、友だちして好きと、恋愛として好きの違いが理解出来ず、社会が押し付ける男らしさや女らしさという定義にも疑問を感じている。
そんな迷える若者が、京都の大学に進学し、駒井蓮演じる同期の麦戸ちゃんと友だちになり、ぬいぐるみサークル、通称ぬいサーに入会する。
実はこのサークルは、ぬいぐるみを作るのではなく、喋るサークルなのだ。
部員たちは、部屋を埋め尽くすぬいぐるみから贔屓の子を選び、想いを打ち明ける。
誰かがぬいぐるみと喋っている時は、他の部員はヘッドホンをつけ、会話の内容を聞かないのがルール。
会話の内容は日頃の悩みだったり、恋愛だったり、社会問題についてだったり様々だ。
もっとも恋愛や男らしさ女らしさといったジェンダーの問題を含むと言っても、そこだけにフォーカスしている訳ではない。
七森もフツーに女の子との恋愛に憧れを持っているし、実際に作中で“彼女“も出来る。
しかしそれは、純粋な“好き“からではなく、サークルの人たちが当たり前に楽しんでいる恋愛というものを自分も経験してみたくなったから。
異性を好きになったことの無い七森には、恋愛のはじめ方が分からないのだ。
本作が描いているのは、ジェンダーよりもっと広い人間同士の繋がりであり、他者への共感。
もしかしたら、七森は恋愛関連の脳のシナプスの接続が遅れているだけで、そのうち恋が出来るかも知れないし、最初から恋愛シナプスが無い人なのかも知れない。
だが、世の中には大学生にもなったのなら、恋して当たり前、好きな人が出来ないのはおかしいという同調圧力がある。
自分の気持ちに可能な限り素直にいようとする七森も、その誘惑には抗えない。
ぬいサーの部員たちの中でも、七森と麦戸ちゃんは似たもの同士。
二人は特に感受性が豊かで、他人の痛みを自分のことのように感じてしまうほど共感力が強い。
知らない誰かの身に起ことに悩みを深め、苦しい心のうちを誰かに話すと、その人も傷付けてしまうのではないかと恐れ、ぬいぐるみにだけ本心を吐露する。
そんな性格だから、初めての一人暮らしで誰にも相談できずにどんどん追い詰められて、うつ状態になってしまう。
皆が社会の様々な不文律を「理不尽だ」と思いながら、鬱憤を押し殺すことで成立している社会は、見て見ぬふりの出来ない優しすぎる人には生きづらい。
新谷ゆづみ演じるもう一人の同期生で七森の“彼女“となる白城が、普通の人の視点を代弁。
彼女はリアリストで感情移入しやすいのだけど、七森と麦戸ちゃんを見ているとこっちが間違ってるような気分になる。
普通に考えれば優しい人が壊れない世界が理想、しかし現実は違う。
これは、ガラスのように繊細な心を持つ二人が、大切な人と居場所を見つけ、少しずつ現実の世界に適応できる道筋を見つけるまでの、優しくも厳しい物語。
映画が終わった時、七森と麦戸ちゃんの物語は、観客の大いなる共感に包まれるだろう。
金子由里奈監督は、原作の要素を殆ど落とすことなく再構成し、丁寧な演出でキャラクターたちに息を吹き込み、素晴らしいデビュー作を放った。
駒井蓮が素晴らしいのは知ってるけど、細田佳央太もボーっとしたキャラがフィット。
原作読んだ印象だと、もう少しだけ七森が精神的に成長すると、麦戸ちゃんとは恋愛相手としても上手く行きそうな気がする。
優しい人には、幸せになってもらいたい。
今回は個性を生かせる世界をイメージして、虹の様な層を持つカクテル、「エンジェルズ・デイライト」をチョイス。
グラスにグレナデン・シロップ、パルフェ・タムール、ホワイト・キュラソー、生クリームの順番で、15mlづつ静かに重ねてゆく。
スプーンの背をグラスに沿わせて、そこから注ぐようにすれば崩れにくい。
それぞれの比重の違いが、層を作り出すカラフルで不思議なカクテル。
複数の味が溶け合う感覚も楽しい。
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うう、メルヘンなタイトルに騙された・・・こんなしんどい内容だったとは。
共感力が強すぎるがゆえ、社会との距離感が掴めず、生きづらさを抱えた若者たちを描いた大前粟生の同名小説を、これが長編デビュー作となる金子由里奈監督が映画化した作品。
細田佳央太が演じる主人公の七森剛志は、友だちして好きと、恋愛として好きの違いが理解出来ず、社会が押し付ける男らしさや女らしさという定義にも疑問を感じている。
そんな迷える若者が、京都の大学に進学し、駒井蓮演じる同期の麦戸ちゃんと友だちになり、ぬいぐるみサークル、通称ぬいサーに入会する。
実はこのサークルは、ぬいぐるみを作るのではなく、喋るサークルなのだ。
部員たちは、部屋を埋め尽くすぬいぐるみから贔屓の子を選び、想いを打ち明ける。
誰かがぬいぐるみと喋っている時は、他の部員はヘッドホンをつけ、会話の内容を聞かないのがルール。
会話の内容は日頃の悩みだったり、恋愛だったり、社会問題についてだったり様々だ。
もっとも恋愛や男らしさ女らしさといったジェンダーの問題を含むと言っても、そこだけにフォーカスしている訳ではない。
七森もフツーに女の子との恋愛に憧れを持っているし、実際に作中で“彼女“も出来る。
しかしそれは、純粋な“好き“からではなく、サークルの人たちが当たり前に楽しんでいる恋愛というものを自分も経験してみたくなったから。
異性を好きになったことの無い七森には、恋愛のはじめ方が分からないのだ。
本作が描いているのは、ジェンダーよりもっと広い人間同士の繋がりであり、他者への共感。
もしかしたら、七森は恋愛関連の脳のシナプスの接続が遅れているだけで、そのうち恋が出来るかも知れないし、最初から恋愛シナプスが無い人なのかも知れない。
だが、世の中には大学生にもなったのなら、恋して当たり前、好きな人が出来ないのはおかしいという同調圧力がある。
自分の気持ちに可能な限り素直にいようとする七森も、その誘惑には抗えない。
ぬいサーの部員たちの中でも、七森と麦戸ちゃんは似たもの同士。
二人は特に感受性が豊かで、他人の痛みを自分のことのように感じてしまうほど共感力が強い。
知らない誰かの身に起ことに悩みを深め、苦しい心のうちを誰かに話すと、その人も傷付けてしまうのではないかと恐れ、ぬいぐるみにだけ本心を吐露する。
そんな性格だから、初めての一人暮らしで誰にも相談できずにどんどん追い詰められて、うつ状態になってしまう。
皆が社会の様々な不文律を「理不尽だ」と思いながら、鬱憤を押し殺すことで成立している社会は、見て見ぬふりの出来ない優しすぎる人には生きづらい。
新谷ゆづみ演じるもう一人の同期生で七森の“彼女“となる白城が、普通の人の視点を代弁。
彼女はリアリストで感情移入しやすいのだけど、七森と麦戸ちゃんを見ているとこっちが間違ってるような気分になる。
普通に考えれば優しい人が壊れない世界が理想、しかし現実は違う。
これは、ガラスのように繊細な心を持つ二人が、大切な人と居場所を見つけ、少しずつ現実の世界に適応できる道筋を見つけるまでの、優しくも厳しい物語。
映画が終わった時、七森と麦戸ちゃんの物語は、観客の大いなる共感に包まれるだろう。
金子由里奈監督は、原作の要素を殆ど落とすことなく再構成し、丁寧な演出でキャラクターたちに息を吹き込み、素晴らしいデビュー作を放った。
駒井蓮が素晴らしいのは知ってるけど、細田佳央太もボーっとしたキャラがフィット。
原作読んだ印象だと、もう少しだけ七森が精神的に成長すると、麦戸ちゃんとは恋愛相手としても上手く行きそうな気がする。
優しい人には、幸せになってもらいたい。
今回は個性を生かせる世界をイメージして、虹の様な層を持つカクテル、「エンジェルズ・デイライト」をチョイス。
グラスにグレナデン・シロップ、パルフェ・タムール、ホワイト・キュラソー、生クリームの順番で、15mlづつ静かに重ねてゆく。
スプーンの背をグラスに沿わせて、そこから注ぐようにすれば崩れにくい。
それぞれの比重の違いが、層を作り出すカラフルで不思議なカクテル。
複数の味が溶け合う感覚も楽しい。

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