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2023年06月09日 (金) | 編集 |
女たちの決断。
カナダの作家、ミリアム・トウズによる実話にインスパイアされた同名小説を、サラ・ポーリーが監督・脚本を務め映画化したハードな群像劇。
非道な性暴力が蔓延するキリスト教の一派、メノナイトの村。
男たちの殆どが、逮捕された仲間の保釈を請求するため村を留守にした二日間に、女たちが一堂に会し、絶望的な暴力を前に自分たちは今度どうするべきか投票を行う。
選択肢は三つ。
「何もしない」「男たちと戦う」「村を出てゆく」
結果「戦う」と「出てゆく」が同数となり、選択を託された代表者たちによる会議が開かれる。
議論の中心となるのは、クレア・フォイとルーニー・マーラーが演じる対照的なキャラクター。
幼い娘を暴行され、怒り心頭で「戦う」を主張するサロメと、レイプの結果妊娠し「出てゆく」を選択するべきだと言うオーナだ。
この二人を軸として、女たちは意見をぶつけ合い、時には感情的になりながらも、徐々に結論に近づいてゆく。
映画では北アメリカの架空の土地が舞台となっているが、ベースとなった実際の事件は南米ボリビアのメノナイトのコミュニティで起こった。
2005年から2009年にかけて、村の男たちが家畜用鎮静剤を家の中に噴霧し、意識を失わせた後に女たちをレイプした。
暴行の痕跡だけで記憶が無いために、被害者にも何が起こったのか分からず、当初は悪魔や幽霊の仕業とされ、予期せぬ妊娠をした者も多くいた。
被害者の数は151人に上り、逮捕された11人の男たちには長期の懲役刑が課せられたという。
舞台となるのが、メノナイトの村という特殊性が物語のキモ。
19世紀そのものの生活様式で知られるアーミッシュは、メノナイトの分派。
メノナイトの場合、アーミッシュほど戒律は厳しくなく、コミュニティによってはかなり現代的なところもあるのだが、映画の村は電気や自動車も拒否し、ほとんどアーミッシュのような生活を送っている。
そのため、映画がはじまってしばらくは、観客も100年くらい前の話なのかと錯覚している。
ところが中盤で"Daydream Believer"をスピーカーから響かせて、外界から国勢調査の車が現れ、この前時代的な物語が展開されているのが、現代であることに驚愕する仕掛け。
女性の就学を認めていないために女たちは皆文盲で、誰も外の世界に出たことが無いゆえ、自分たちがいかに虐げられた環境にいるのかも知らない。
ただ男たちの行為が、徹底的な非暴力と平和主義を掲げる信仰に反しているのは間違いなく、人間としての尊厳を奪われたまま、目を瞑る訳にはいかないのだ。
アメリカ映画で「議論」を描いた作品は今年「対峙」という秀作があったが、本作も時間と共に白熱する激論から目が離せない。
小さなコミュニティとは言っても事情は様々で、彼女たちも決して一枚岩ではない。
村を出てしまっては天国に行けない、男たちを許すべきだという意見もあれば、地獄に堕ちたとしても男たちを殺すという過激な主張も。
しかし、オーナの母であるアガタが、聖書の「ピリピ人への手紙」を引用する形で、平和主義という信仰の原点を思い出させる。
暴力に暴力で対抗するのではなく、勇気を持って出て行くことで、信仰を裏切らずに自分たちを守れると言うのだ。
復讐心にとりつかれ納得いかない者も、やがて説得され矛を収める。
多岐に渡る意見が出て、やがて集団として一つの未来を描き出すのは、まさに民主主義の原点だ。
村の男たちは、愛想を尽かされて捨てられた訳だが、男で唯一村に残り会議の書記を務めた、ベン・ウィショーのはみ出し者の教師が希望となる。
女性を尊重できる男になるか、暴力で支配しようとする男になるか、全ては教育次第。
彼女たちの置かれた環境はかなり特殊だが、結局のところ男たちが価値観を変えられるかにかかっているのは、普遍的な事実だろう。
沈んだ心を映し出したかのように、極端に彩度を落とし、光と影を強調した映像が印象的。
静かに力強く真理を描く、大変な力作である。
今回は、歌詞と物語がシンクロし、エンディングテーマにもなっている"Daydream Believer"から、「デイドリーム・マティーニ」をチョイス。
シトラスウォッカ90ml、オレンジジュース30ml、トリプルセック15ml、シロップ1dashを氷を入れたミキシンググラスでステアし、冷やしたグラスに注ぐ。
甘味と酸味がバランスし、柑橘類の香りが清涼さを際立たせる。
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カナダの作家、ミリアム・トウズによる実話にインスパイアされた同名小説を、サラ・ポーリーが監督・脚本を務め映画化したハードな群像劇。
非道な性暴力が蔓延するキリスト教の一派、メノナイトの村。
男たちの殆どが、逮捕された仲間の保釈を請求するため村を留守にした二日間に、女たちが一堂に会し、絶望的な暴力を前に自分たちは今度どうするべきか投票を行う。
選択肢は三つ。
「何もしない」「男たちと戦う」「村を出てゆく」
結果「戦う」と「出てゆく」が同数となり、選択を託された代表者たちによる会議が開かれる。
議論の中心となるのは、クレア・フォイとルーニー・マーラーが演じる対照的なキャラクター。
幼い娘を暴行され、怒り心頭で「戦う」を主張するサロメと、レイプの結果妊娠し「出てゆく」を選択するべきだと言うオーナだ。
この二人を軸として、女たちは意見をぶつけ合い、時には感情的になりながらも、徐々に結論に近づいてゆく。
映画では北アメリカの架空の土地が舞台となっているが、ベースとなった実際の事件は南米ボリビアのメノナイトのコミュニティで起こった。
2005年から2009年にかけて、村の男たちが家畜用鎮静剤を家の中に噴霧し、意識を失わせた後に女たちをレイプした。
暴行の痕跡だけで記憶が無いために、被害者にも何が起こったのか分からず、当初は悪魔や幽霊の仕業とされ、予期せぬ妊娠をした者も多くいた。
被害者の数は151人に上り、逮捕された11人の男たちには長期の懲役刑が課せられたという。
舞台となるのが、メノナイトの村という特殊性が物語のキモ。
19世紀そのものの生活様式で知られるアーミッシュは、メノナイトの分派。
メノナイトの場合、アーミッシュほど戒律は厳しくなく、コミュニティによってはかなり現代的なところもあるのだが、映画の村は電気や自動車も拒否し、ほとんどアーミッシュのような生活を送っている。
そのため、映画がはじまってしばらくは、観客も100年くらい前の話なのかと錯覚している。
ところが中盤で"Daydream Believer"をスピーカーから響かせて、外界から国勢調査の車が現れ、この前時代的な物語が展開されているのが、現代であることに驚愕する仕掛け。
女性の就学を認めていないために女たちは皆文盲で、誰も外の世界に出たことが無いゆえ、自分たちがいかに虐げられた環境にいるのかも知らない。
ただ男たちの行為が、徹底的な非暴力と平和主義を掲げる信仰に反しているのは間違いなく、人間としての尊厳を奪われたまま、目を瞑る訳にはいかないのだ。
アメリカ映画で「議論」を描いた作品は今年「対峙」という秀作があったが、本作も時間と共に白熱する激論から目が離せない。
小さなコミュニティとは言っても事情は様々で、彼女たちも決して一枚岩ではない。
村を出てしまっては天国に行けない、男たちを許すべきだという意見もあれば、地獄に堕ちたとしても男たちを殺すという過激な主張も。
しかし、オーナの母であるアガタが、聖書の「ピリピ人への手紙」を引用する形で、平和主義という信仰の原点を思い出させる。
暴力に暴力で対抗するのではなく、勇気を持って出て行くことで、信仰を裏切らずに自分たちを守れると言うのだ。
復讐心にとりつかれ納得いかない者も、やがて説得され矛を収める。
多岐に渡る意見が出て、やがて集団として一つの未来を描き出すのは、まさに民主主義の原点だ。
村の男たちは、愛想を尽かされて捨てられた訳だが、男で唯一村に残り会議の書記を務めた、ベン・ウィショーのはみ出し者の教師が希望となる。
女性を尊重できる男になるか、暴力で支配しようとする男になるか、全ては教育次第。
彼女たちの置かれた環境はかなり特殊だが、結局のところ男たちが価値観を変えられるかにかかっているのは、普遍的な事実だろう。
沈んだ心を映し出したかのように、極端に彩度を落とし、光と影を強調した映像が印象的。
静かに力強く真理を描く、大変な力作である。
今回は、歌詞と物語がシンクロし、エンディングテーマにもなっている"Daydream Believer"から、「デイドリーム・マティーニ」をチョイス。
シトラスウォッカ90ml、オレンジジュース30ml、トリプルセック15ml、シロップ1dashを氷を入れたミキシンググラスでステアし、冷やしたグラスに注ぐ。
甘味と酸味がバランスし、柑橘類の香りが清涼さを際立たせる。

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2010年、自給自足で生活するキリスト教一派の村で連続レイプ事件が発生。 男性たちは事件を「悪魔の仕業」「作り話」だと否定していたが、ある日それが実際に犯罪だったことが明らかになった。 男性たちが街へ出かけている2日間に、尊厳を奪われた女性たちは自らの未来を懸けた話し合いを行う…。 実在の事件から生まれたストーリー。
2023/06/10(土) 22:27:56 | 象のロケット
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