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ショートレビュー「福田村事件・・・・・評価額1650円」
2023年09月07日 (木) | 編集 |
普通の人が、一番怖い。

1923年9月6日に起こった、関東大震災直後。
混乱のどさくさに紛れて、反体制派抹殺を狙う官製デマが吹き荒れる中、千葉の福田村で香川から来た薬の行商人一行が朝鮮人と間違われ、村人たちが組織した自警団に虐殺された「福田村事件」の顛末を描く。
佐伯俊道、井上淳一、荒井晴彦という濃い面々の共同脚本を、「FAKE」などの作品で知られるドキュメンタリストの森達也がメガホンを取り、初の長編劇映画として仕上げた。

特定の主人公を置かない群像劇のスタイルだが、物語の一応の軸となるのは井浦新と田中麗奈演じる澤田夫妻。
夫はこの村の出身だが、朝鮮で教師をしていたインテリで、日本軍の虐殺行為を目撃したことがトラウマになっている。
集団となった時、人間がいかに恐ろしいことをしでかすか理解している人物で、物語を客観的に見通す役割だ。
この事件は加害者側、被害者側双方が口を閉ざしているために謎が多く、終盤に描かれる虐殺事件のあらましは、裁判で明らかとなった事実に即しているが、村人や行商人たち一人ひとりのキャラクターなどは基本的にフィクションである。

映画の前半は、震災が起こる前の村人たちの人間模様と、各地を回ってゆく行商人の一行、朝鮮人や社会主義者への憎悪を煽る記事を書かされる、地元新聞の女性記者が苦悩を深めてゆく様子が並行に描かれる。
映画の福田村では不倫と寝取られが横行している設定で、グチャグチャドロドロのメロドラマはいかにも荒井晴彦らしい。
後から振り返ると、一応全てのエピソードは伏線として機能しているものの、やや冗長に感じるし、夫の徴兵を妻の浮気の理由にしたがるのは、意図は分かるが昭和のロマンポルノみたいで女性キャラクターの描き方としてどうなんだ?とモヤモヤする。
東出昌大演じる渡し船の船頭のキャラクターが、不倫大好きなプレイボーイなのはちょい悪意を感じて可笑しいのだけど。

中盤で震災が起こってからは、撒き散らされるデマによって人々が疑心暗鬼となり、やがて凄惨な事件に繋がるのだが、これが震災のずっと以前から権力の意を受けたマスコミの印象操作が招いた結果であることを、前半丁寧に描いていることが効いてくる。
権力の座にある為政者は、いつの時代も変化を嫌う。
大正デモクラシーで社会主義運動が盛り上がりを見せ、朝鮮半島では1919年に三・一独立運動が起こったことは、権威主義的な当時の為政者にとっては脅威。
そんな時に起こった震災は、彼らにとってはどさくさに紛れて邪魔者を一掃するチャンスと思えたのかも知れない。
劇中で描写される、プロレタリア劇作家の平澤計七が警察署内で殺された「亀戸事件」の他にも、この時に起こった反体制派弾圧をモチーフとした作品は「金子文子と朴烈」「菊とギロチン」なども記憶に新しい。

福田村で殺された行商人たちが被差別部落の出身で、永山瑛太演じるリーダーの沼部が同じく差別を受ける朝鮮人に同情的なのも、歴史を通じて存在して来た、支配と被支配、差別と被差別の構造を強く印象付ける。
一方で加害者となった自警団の中心である在郷軍人会のメンバーも、1918年から22年まで、ロシア革命に干渉するためにシベリアに展開するも、三千人以上と言われる甚大な犠牲者を出しただけで、何も得られなかったと評される“シベリア出兵”の帰還兵がほとんどだ。
無意味な戦争に駆り出された挙句、今度は官製デマに踊らされて、無実の人を殺してしまうのだから、強烈なアイロニー。

ここに描かれているのは100年前に起こった事件だが、扇動された民衆は一度理性のタガが外れると、いかに簡単に狂気の沙汰に走るかは、現在でも世界のあちこちで目にすること。
フェイクニュースが作り出す分断の罪なども含めて、人間はいつの時代も変わらないことを、改めて突きつけられる。
本作は間違いなく力作だが、この映画の作り手たちのSNSでの言動には、作品内容との不一致が見られるのは残念。
やはり人間というのは、自分のことが一番見えないのかも知れないな。

今回は千葉の地酒、飯沼本家の「甲子(きのえね) 純米吟醸 氷室瓶囲い」をチョイス。
純米吟醸らしいフルーティーな吟醸香が広がり、口あたりはソフトでまろやか。
適度な酸味と甘味がほどよくバランスし、微ガス感も特徴的。
今の季節なら、山菜の天ぷらなどと合わせると美味しい。

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コメント
この記事へのコメント
町の広場みたいなところで、あーでもない、こーでもない、と言ってるうちに一人目の犠牲者が出て、そこから先は「もう行くしかない」みたいなスピードで騒ぎに拍車が掛かるのが、こういう言い方は何だが素晴らしかった。
2023/09/26(火) 23:39:38 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
こんばんは
>ふじきさん
まあこの種の大衆心理が招いた事件あるあるだと思いました。
この辺りは裁判資料が残ってるので、結構近い状況だったのでしょうね。
普通の人が集団になった瞬間タガが外れちゃうのが、まことに恐ろしい。
2023/09/27(水) 23:10:28 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんばんわ。
アメリカの合衆国議会議事堂襲撃事件といい、中国政府による福島処理水に対する輸入規制といい、自分の目で確かめていないことなのに、その不確かなものを事実と誤認するところには、いつも不安を煽る存在がいますよね。
それが100年前の日本でも、昨今のアメリカや中国でも、為政者というのが恐ろしいこと。人は100年やそこらでは変われないのかも知れませんね。
2023/10/14(土) 00:17:06 | URL | にゃむばなな #-[ 編集]
こんばんは
>にゃむばななさん
まあフェイクニュースという点では、現代の方がひどいかも知れませんね。
広まる速度も加速度的に早くなってるし。
早速ガザの件でもデマが広まっているので、信じたいものだけ信じるのはもう人間の性なのかも知れませんね。
2023/10/16(月) 21:41:31 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
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