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ジョン・ウィック:コンセクエンス・・・・・評価額1800円
2023年09月23日 (土) | 編集 |
最後にして最強。

これは途方もない映画だ。
伝説の殺し屋ジョン・ウィックの復讐を描く、シリーズ第四弾にして一応の完結編。
第二作の「チャプター2」で掟を破り、殺し屋の世界を仕切る主席連合から追われる身となったジョンが、自らの自由のために最後の戦いに赴く。
外連味たっぷり、全編に渡り徹底的に決め込まれた動くグラフィックノベルは、169分に渡って供されるアクションのフルコースの趣で、満腹感半端ない。
大団円ということで、キャストも思いっきり豪華。
主演はもちろんキアヌ・リーブスで、ローレンス・フィッシュバーンやイアン・マクシェーンのレギュラー陣は続投。
主席連合から送り込まれる新たな刺客にドニー・イェン、大阪コンチネンタルホテルの支配人に真田広之、アクション界の二大レジェンドがキャスティングされている。
監督は第一作から変わらず、スタント畑出身のチャッド・スタエルスキが務める。
※核心部分に触れています。

キング(ローレンス・フィッシュバーン)に匿われながら、首席連合に対する戦いを準備するジョン・ウィック(キアヌ・リーブス)は、モロッコで主席の一人を殺し宣戦布告。
首席連合の全権を取り付けたヴィンセント・デ・グラモン侯爵(ビル・スカルスガルド)は、ニューヨークのコンチネンタルホテルを廃棄し、支配人のウィンストン(イアン・マクシェーン)を追放、コンセルジュのシャロン(ランス・レディック)を処刑。
ジョンを良く知る盲目の殺し屋ケイン(ドニー・イェン)を呼び寄せ、ジョン抹殺を命令する。
大阪コンチネンタルホテルの支配人でもある旧友のシマズ・コウジ(真田広之)の元に身を寄せたジョンを、首席連合の暗殺部隊がホテルを急襲し、ケインと犬使いの賞金稼ぎミスター・ノーバディ(シャミア・アンダーソン)も加わり、大バトルが繰り広げられる。
コウジはケインと戦って殺され、娘のアキラ(リナ・サワヤマ)は復讐を誓う。
ニューヨークに戻ったジョンは、ウィンストンの助言を受け、首席連合を代表するグラモン侯爵と決闘することを決意。
必要な資格を得るために、かつて自分を殺し屋へと育てた組織ルスカ・ロマへ向かう・・・・・


第一作の「ジョン・ウィック」を観た時、コミック原作だろうと思った。
単体の実写作品としては、世界観の作り込みが異様に凝っていたからだが、その後完全なオリジナルだと聞いて驚いた。
この映画の世界には、基本殺し屋とその周囲の人物しか登場せず、一般の人たちは画面に映っていても殺し屋たちの抗争とは無関係
象徴的なのは、ベルリンで首席連合の一人で金歯の巨漢キラ・ハーカンと戦うシークエンスだ。
巨大なナイトクラブで殺し屋たちが銃やナイフで殺し合っているのに、周りの人々は意に介さずという感じで踊り狂っているのである。
パリの凱旋門でのカーアクションも同様で、逆走し撃ちまくる殺し屋たちの周りで、一般の車は普通に走っている。
これは日本の漫画によくある、戦闘が始まると戦いの舞台が異界となり、普通の街には影響を及ぼさない描写に近い、このシリーズの世界だけの「お約束」である。
実録路線に変更する前の東映任侠映画にも通じるものがあるが、この約束があるからどんな無茶なことしても「巻き添えは?」とか「警察は?」とかの疑問のノイズが入らないユニークな仕掛け。

物語自体はジョンの復讐と自由を求める戦いと非常にシンプルで、様々なシチュエーションのアクションを組み込むことをファーストプライオリティにした構成の考え方は、「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」に近い。
ただし、最終的な脚本の完成前に二部作の撮影に入った彼方と違い、本作は物語の終着点がはっきりしているのと、同じアクションでも目的が「殺す」ことに特化してるので、ストーリーを含めてベクトルが明快。
ここでアクションの華となるのが、共にジョンの旧友という設定のドニー・イェンと真田広之演じるケインとコウジだ。
ドニー・イェンは「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」でも、座頭市の影響を受けたと思しき盲目の戦士を演じていたが、ケインの武器は仕込み杖でモロ座頭市の現在版。
中盤の見せ場となる、ケインとコウジの殺陣の技術がぶつかり合う大迫力の刀対決には、アクション映画ファンなら思わず厨二な脳汁が迸ってしまうのでは。
本作で描かれる大阪は、サムライ&ニンジャのいわゆる「変な日本」なのだが、決して嫌な感じを受けないのは、二人のアジア人レジェンドへの作り手のリスペクトが滲み出ているからだろう。

本作の魅力は、アクションだけではなく凝りにこった世界観もだが、面白いのが美術や歴史への目配せと引用だ。
グラモン侯爵なる前時代的な肩書を持つボスキャラが、ウィンストンから決闘の挑戦状を受け取るのはなぜかルーブル美術館で、フランスの自由への闘争の象徴とされる“マリアンヌ”を描いたドラクロワの代表作「民衆を導く自由の女神」の前。
つまりこの男は、目の前の絵の意味を見ていないのである。
ジョンを育てたロマの犯罪組織「ルスカ・ロマ」の本部にはドイツのボーデ美術館が、キラ・ハーカンのナイトクラブにはベルリンの旧国立美術館の外観が使われている。
また殺し屋ラジオ局は、どういうことかエッフェル塔にある様だ。
これら美術館や博物館といった歴史的建造物の持つ重厚長大なデザイン性が、何世紀も続いているかのような殺し屋ソサエティの強固なイメージを形作り、単なるガンアクションの見本市に止まらない、それぞれに過去の重荷を背負った殺し屋たちの、ドラマチックな背景要素となっているのである。

クライマックスの決闘の舞台が、グラモンの主張したモダーンだが軽薄なポンピドゥー・センターではなく、モンマルトルの丘に聳えるサクレ・クール寺院なのも同じ文脈だろう。
ここへ通じるフォワイヤティエ通りの200段超えの階段を使った最終関門では、ジョンのイタタな階段落ちが最大の見どころ。
おそらく映画史上最も長い階段落ちで、なぜか真田広之も友情出演していた「蒲田行進曲」が頭によぎる(笑
犬好きに悪人なしという、ミスター・ノーバディのトンチの効いた役割もいい。
ところで彼は殺しで5000万ドル貯めることを目標としていたようだが、一体そんなに何に使うつもりだったのだろう。
劇中に何かヒントあったっけ?
それまでの大ドンパチとは対照的な、グラモン(と代理人のケイン)との決闘の駆け引きも、単純なようでいて実は頭脳戦という展開に参った。

日本公開まで一年も待たされた一作目から、ずいぶんと長い旅だったが、物語の中での経過時間はたぶん全部で1ヶ月程度?
最初は面白いがやや一本調子で、二作目で軽々と前作を超えて、豪華なブリッジ作品だった三作目を経て、修羅の道に生きる殺し屋たちのドラマとして、完璧な完結編だろう。
おそらく生身の人間にこれ以上のアクションを求めてしまうと、確実にやり過ぎになってしまうだろうし。
また勝手にジョン・ウィックの下町版だと思っている「ベイビーわるきゅーれ」の伊澤彩織が、リナ・サワヤマのスタントダブルで参加してるのも、個人的に胸熱だった。
いつか、この二つのシリーズのクロスオーバーが観たい。
ところでエンドクレジット後に「いやー、やっぱそう来るか」という重要なエピローグがあるので、絶対席を立たない様に。
この熱気がみなぎる傑作を作り上げた人たちには、盛大な拍手を贈りたい。

ジョン・ウィックの物語は完結したが、徹底的に作り込まれた殺し屋ワールドは、如何様にも活用可能。
すでにウィンストンの若き日を描く前日譚ドラマの「コンチネンタル」がAmazonプライムで配信中。
さらに第三作の「ジョン・ウィック:パラベラム」にチラリと登場した「バレリーナ」を主人公としたスピンオフが、アナ・デ・アルマス主演で制作中で、来年6月に本国公開されるという。
殺し屋ワールドは、まだまだ広がり続けそうだ。

今回はフランスが舞台なので、血のようなボルドーの赤「シャトーラグランジュ 2017」をチョイス。
カベルネソーヴィニヨン78%、メルロ18%、プティヴェルド4%で作られるワインは、口当たり滑らかなフルボディの辛口。
つけ合わせるなら絶対お肉!
赤身のステーキとの相性は抜群だ。
このシャトーは40年前からサントリーが経営権を持っていて、長く安定的に質の高いワインを供給してくれている。

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コメント
この記事へのコメント
最高でした!
ノラネコさんさん☆
ご無沙汰しております。
ジョン・ウィック最高でしたね~
私てっきりこれで終わりなのかと思ったら、続編があるというウワサですけど、スピンオフのことなのかな?
圧巻の長回しアクションは飽きることなく観られました!それにしても少なくとも日本でドンパチやったら警察来るでしょう?(笑)
2023/10/03(火) 10:07:12 | URL | ノルウェーまだ~む #gVQMq6Z2[ 編集]
こんばんは
>ノルウェーまだ~むさん
まあ韓国映画の「ハント」も東京でドンパチやってたし・・・
来年のスピンオフは2と3の間の話で、一応ジョン・ウィックも出てくるらしいです。
まあ時系列を変えるとか、本人の話でもいくらでもやりようはあると思いますけど。
2023/10/04(水) 21:01:36 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
こんばんは
アクションに次ぐアクションのオンパレードにびっくりしました。
ラストではぐっと人間ドラマになっていましたね。
エンドクレジットの後も、しっかり見ましたよ。
2023/10/31(火) 22:02:29 | URL | 風子 #z8283xuI[ 編集]
こんにちは
>風子さん
前作では設定が複雑になりすぎて、ややとっ散らかってしまっていましたが、今回は本筋に回帰した印象です。
素晴らしい仕上がりでした。
2023/11/04(土) 15:16:25 | URL | ノラネコ #xHucOE.I[ 編集]
なげーよ。
あの長い階段落ちを短くしろとは言わないが、ドニーさんや真田広之に賛辞を送りながら、インド映画だったらここで歌と踊りが入るのになどと思って見てた。
2023/11/28(火) 11:18:44 | URL | fjk78dead #-[ 編集]
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