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ショートレビュー「熊は、いない・・・・・評価額1650円」
2023年09月27日 (水) | 編集 |
これまた映画ではない。

イラン当局から出国禁止と20年間の映画制作禁止令を出されながら、自らを主人公とした「映画らしき物」を作り続けている巨匠ジャファル・パナヒ監督。
2010年に当時のアフマディーネジャード政権に逮捕され、禁錮6年を言い渡されるも、実際の長期収監は免れ、2011年の「これは映画ではない」を皮切りに、自らタクシー運転手に扮した「人生タクシー」や、ある少女の自殺動画から始まってイラン映画人の悲哀を描いた「ある女優の不在」など、イラン当局を煙に巻く虚実を曖昧にしたモキュメンタリー手法の作品を次々に発表。
当然イラン国内では上映禁止なものの、権力と闘う不屈の映画監督として国際的な名声はますます高まるという皮肉な状況に。
本作もベネチア国際映画祭で、審査員特別賞を獲得している。

今回のパナヒは、トルコから偽造パスポートで国外逃亡しようとするバクティアルとザラのイラン人カップルを主人公にした、ドキュメンタリードラマ(もちろん全部仕込み)を撮影中。
彼自身はイラン内の国境の村に滞在しながら、現場を仕切る助監督のレザにリモートで演出指示を出しているのだが、電波状況が悪く撮影はなかなか進まない。
そんな時に、村の古めかしい掟が原因となった、若者たちの三角関係に巻き込まれ、ドキュドラマの内容と、村で起こっていることがシンクロしてくる仕掛け。
バクティアルは業者からザラのパスポートを手に入れるが、資金不足で自分のものは調達出来ず、ザラは先に出発することを拒否する。
村ではゴザルという娘を巡って、生まれた時に決められた許嫁のジェイコブと、テヘランで教育を受けたインテリのソルドゥスが対立。
ジェイコブは写真を撮りまくっていたパナヒのカメラに、ゴザルとソルドゥスの逢い引きの証拠が写っているはずだから、それをよこせと要求する。
パナヒはそんな写真を撮った覚えはないというが、村人は納得せず、それなら神に誓いを立てろと無茶振り。

トルコのカップルも村のカップルも、それぞれ別の理由で閉塞した状況に置かれ、抵抗している。
そしてまた、パナヒ自身も抵抗しているのだ。
助監督のレザはトルコに密入国して、現場で直接指揮を取れば簡単だと言う。
しかしパナヒにとって、イランから逃げることは、当局の圧力に負けることを意味する。
タイトルの「熊は、いない」とは、ある村人がパナヒに告げる言葉。
誓いの場所に向かう時に、村人がこの道にはクマが出るので一人は危ないと警告する。
続けて彼は、誓いは真実である必要はない、平和をもたらすなら嘘も許されると告げるのだ。
そして誓いを済ませたパナヒに、村人は「熊なんていない」と言うのだ。
イランでは熊は南東部に生息してるが、トルコ国境付近にはいない。
つまり「熊が出るぞ」とは、人々を怖がらせるための単なる脅しということ。

だが、物語の終盤に起こることを見ると、本当に恐ろしい熊は人間の心の中にいるのだと思わされる。
誰も幸せにしない掟は、何のためにあるのか。
田舎の村ではソルドゥスが駆け落ちを宣言し、パナヒの滞在を知った治安機関が暗躍し始め、ドキュメンタリードラマの現場ではザラが行方不明に。
そして、二組のカップルを絶望が襲う
描かれていることはシリアスだし悲劇なのだが、小太りで見るからに温和なおじさんというパナヒのキャラクターが、絶望的な物語の中での微かな癒し。
だが、本作の完成後の昨年7月11日に、「反体制的な宣伝」を行なったとして彼はまた逮捕されてしまった。
反発するイラン監督協会も釈放を求める声明を出しているが、このままだと2010年に宣告された6年間の禁固刑に服することになる。
現在進行形の迫害に、まさに「熊は、いる」ことが証明されてしまった。
そしてこの熊がいるのは、決してイランだけとは限らないのである。

今回は熊繋がりで、薩摩酒造の「SLEEPY BEAR スリーピーベア」をチョイス。
琥珀色のウィスキー然としたルックスだが、同社の本格芋焼酎を樫樽で22年間寝かせたもの。
熟成が進んだ味わいは、まろやかでコクがあり、ぶっちゃけよく知る芋焼酎よりウィスキーに近い。
鹿児島では、一日の終わりに焼酎を飲む事で疲れ(だれ)を取る(やめ)「だれやめ」と言う風習があるらしく、“眠たい熊"の名の通り、より深い眠りに誘うような、一日の終わりに飲む極上の一杯を目指したそう。

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映画監督パナヒは、トルコとの国境付近にあるイランの小さな村から、トルコで撮影している助監督レザにリモートで指示を出している。 それは偽造パスポートで国外逃亡しようとしている男女のドキュメンタリードラマだった。 一方、パナヒが滞在する村でも、古いしきたりで結婚できない男女が逃亡しようとしており、パナヒ自身もそのトラブルに巻き込まれていく…。 社会派ドラマ。
2023/09/30(土) 15:12:24 | 象のロケット