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アンダーカレント・・・・・評価額1650円
2023年10月08日 (日) | 編集 |
水の底で、自分に出会う。

なんの予兆もなく夫が失踪し、一人で家業の銭湯を経営する女性のもとに、謎めいた男が現れ住み込みで働きはじめる。
仲の良かったはず夫は、なぜ姿を消したのか?
現れた男は何者なのか。
2004年から翌年にかけて、月刊アフタヌーンで連載された豊田徹也の同名漫画を、映画作家として脂の乗った円熟期を迎えている「窓辺にて」の今泉力哉監督が忠実に実写映画化した作品。
登場人物の心の奥底に向けて、沈み込んで行くような感覚は、映画でもそのままだ。
主人公の関口かなえを真木よう子が演じ、突然現れた謎の男・堀隆之に井浦新、消えた夫の悟に永山瑛太。
トリックスターの探偵ヤマサキを、リリー・フランキーが演じる。

関口かなえ(真木よう子)は、東京の下町で亡き父から引き継いだ銭湯・月乃湯を夫の悟(永山瑛太)と共に経営していたが、二ヶ月前に悟は突然失踪。
以来休業していた銭湯を再開した日に、組合に仕事を斡旋されたという堀隆之(井浦新)が訪ねてくる。
堀は自分のことを一切語ろうとしない風来坊のような男だったが、銭湯経営に必要な資格を全て持っていたために、住み込みで働くことに。
なんとか新しい生活も軌道に乗った頃、かなえは幼馴染のよう子(江口のりこ)から、行方不明の悟を見つけるために探偵のヤマサキ(リリー・フランキー)を紹介される。
ヤマサキの強力で悟を探しながら、かなえは堀との共同生活を通して、少しずつ癒されてゆく。
ある日、廃業する同業者から重油バーナーを譲ってもらえることになり、かなえは堀と共に受け取りに向かうのだが、現地に着いてみるとその同業者は失踪していた。
動揺するかなえの脳裏に、昔から繰り返し見て
いる奇妙な夢の記憶が蘇る。
それはかなえが水中に沈められ、誰かに首を絞められるというものだった・・・・


本作を端的に言えば、人間はどこまで他人に自分を見せられるのか?いやそもそも自分に対しても見せられているのか?という話だ。
「アンダーカレント(undercurrent)」という聞きなれないタイトルには、「水の深層」と同時に「底意」「暗示」と言う意味もある。
そのタイトル通りに、水のイメージが多用されている。
かなえの家業である銭湯の浴槽、飼い犬リクの散歩コースである川沿いの道、仕事で地方へ行った時にふと立ち寄る湖、海に面したカフェ。
そして、かなえの記憶の中にある水のイメージ。
なぜ彼女は水中に落ち、誰かに首を絞められる夢を見るのか。
なぜそれを「自分が望んでいること」だと思うのか。

水面は静寂に見えたとしても、深層に何があるのかは水の上からは見えない。
失踪した悟にも、自らのことを語らない堀にも、かなえ自身にも、表面的な人格の底に、自分でもよく分からない別の自分がいる。
例えば人と話をしている時に、意識せずに自分の口から出てきた言葉に、「こんなこと考えてたんだ」と自分で驚くというような経験をした人は多いだろう。
かなえと面談して、悟のことを根掘り葉掘り聞いたヤマサキは「悟のパーソナリティーが見えない」と言う。
彼の表面的に見えていた部分は、本当の自分を見せたいための、アリバイのようなものではないのかと。
そして、それは他の登場人物にも、少なからず当てはまる。

軸の部分にはかなえがいて、ヤマサキを介した夫の探索と、入れ替わるように現れた堀との関係がツートラックとなり、物語が展開してゆく。
奇妙なトライアングルを形作る登場人物たちは、物語を通して今まで見えていなかった自己の内面と向き合わねばならないのだ。
湯を沸かすのに薪を使っている月乃湯では、悟がいた頃から重油バーナーへの転換を検討していたのだが、物語の中盤に近県の廃業する同業者からバーナーを譲り受けに行く描写がある。
ところが、実際に取りに行ってみると、その同業者は火事を起こして失踪しており、自分で火をつけたのではと噂されている描写がある。
ここでも、表面に見えていた人間の顔と、その実際の行動とのギャップを見せつけられたかなえは、静かに動揺する。

人間の心を巡る物語は、やがてかなえの心の底の底に封じ込められていた、ある残酷な記憶を呼び起こし、堀の正体と悟が失踪した理由も明らかとなる。
ヤマサキの調査によって、過去がことごとく嘘であることが明らかになった悟は、再会したかなえに「いい人」や「好青年」と言った表層的な自分の底にあった、ずっと隠してきた本性を告白する。
彼は表層の自分と深層の自分とのギャップを、自ら認識し、逃げることを選んだ。
対して、堀の持つ事情はもう少し複雑だ。
彼の素性はかなえの持つ罪の記憶と密接に結びついていて、かなえが記憶を取り戻した今、それを明かすことは彼女をますます傷つけることになるのではないかと葛藤している。
悟は最初から自分の二面性を認識していたが、かなえと堀は物語を通して、水の底にいるもう一人の自分と向き合い、それぞれの答えを出してゆく。

キャストには実力者が揃っているが、MVPはクセ強キャラの探偵ヤマサキに、見事なハマりっぷりのリリー・フランキーだろう。
原作のヤマサキは映画よりは少し若い印象なのだが、連載時期を考えると本当に当て書きだったのかも知れない。
下着ドロの少年のエピソードが省かれていたり、映画らしく時間経過を強調したりしている以外、構成から進行までほぼ原作通りだが、意外にもラストを変えてきた。
個人的には、ここを改変しなくても堀と田島の会話でその後起こることは想像がつくし、映画版は少々引っ張りすぎと思う。
新たなラストは、それはそれで想像力を掻き立てるものだが、どちらかと言うと原作の方が好みだな。

ところで、かなえの経営している銭湯・月乃湯は、原作では特にどことは明示されていなかったと思うが、映画ではどうやら江戸川区らしい。
江戸川区はそのほとんどが海抜0メートル地帯のはずなのだが、映画の中では月乃湯の近くに小高い丘があり街を見渡す描写がある。
あの平坦な区にこんな高い場所あったかなあ?と近場の住人としては思ってしまった。
まあ、どうでもいいことなのだけど。

風呂上がりにお酒を飲むのは本当はいけないのだが、なぜか銭湯の近くには大抵飲み屋がある。
今回は下町の酒「ホッピー割り」をチョイス。
まだまだモノが足りていなかった前後復興期の1948年に、贅沢品のビールの代用品として発売されたホッピーは、関東圏で人気が高まった。
ホッピービバレッジは、ビアジョッキと甲種焼酎、ホッピーをキンキンに冷やし、ジョッキに焼酎1に対してホッピーを5の割合で注ぎいれる“三冷”を公式に推奨している。
体に悪いと分かっていても、銭湯の帰りには一杯やりたくなる。

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銭湯の女主人かなえの夫・悟が失踪した。 なんとか銭湯を再開すると、堀と名乗る男が住み込みで働きたいとやって来て、二人の不思議な共同生活が始まる。 一方、友人・菅野に紹介された探偵・山崎と悟の行方を探すことになったかなえは、夫のもうひとつの姿を知ることに…。 ミステリアス・ドラマ。 ≪なぜ男は現れ、なぜ夫は消えたのかー≫
2023/10/11(水) 02:13:48 | 象のロケット